2002年1号

ポストCOP7セミナー概要 (第43回地球環境問題懇談会)

 2001年12月3日、新霞ヶ関ビル灘尾ホールで標記セミナーを(財)地球環境戦略研究機関(IGES)との共催で開催した。11月10日までモロッコで開催された国連気候変動枠組条約第7回締約国会議(COP7)において、COP6再開会合で採択された京都議定書運用ルールの政治的合意「ボン合意」を法的文書にする作業が完了し、日本を含む各国は議定書締結に向けた国内制度の整備を開始している。今回のセミナーでは、COP7の決定事項や今後の国内制度の行方を注目する企業・シンクタンクを中心に300名近くの参加者が来場した。また、今回は外務省の岡庭健気候変動枠組条約室長も加わり交渉全般に渡る報告を行った他、GISPRIで研究している排出権取引実験の報告も行った。ここでは、政府交渉担当者の報告及び参加者からの質問への回答についてその概要を報告する。

プログラム(敬称略)

司会:西岡 秀三(IGES気候変動プロジェクトリーダー)
・開会挨拶
  木村 耕太郎(GISPRI専務理事)
・政府交渉担当者によるCOP7報告
  岡庭  健(外務省 気候変動枠組条約室長)
関 総一郎(経済産業省 地球環境対策室長)
高橋 康夫(環境省 温暖化国際対策推進室長)
・「京都体制のルールと使い方」
  松尾 直樹(IGES上席研究員・GISPRI主任研究員)
・「京都議定書7条4項にもとづく排出割当量等の運用細則について」
  二宮 康司(IGES研究員)
・「GISPRI排出権取引制度の設計:実験研究」
  草川 孝夫(大阪大学大学院経済学研究科)
・参加者からの政府交渉担当者への質問票への回答
・閉会挨拶
  森嶌 昭夫(IGES理事長)

交渉担当者によるCOP7の報告

<外務省 岡庭室長>
COP6再開会合での政治合意を法的文書に置き換える作業が終了。議定書は大きな節目を迎え、日本政府としても地球温暖化対策推進本部決定の通り2002年の議定書締結に向けた準備を本格化。
各国の批准の状況は、EU、カナダは2002年の締結を表明。ロシアは締結の意思は表明しているが時期は不明。豪州新政権の締結の意志は不明。
COP7で途上国の温暖化対策を支援する3つの基金の設立が決定。COP8以降に活動開始。ドナー国となる日本としては基金の先進国間の分担、先進国の資金提供状況のCOPレビュー実施などが今後の検討課題。
途上国参加問題については今回も大きな進展はなし。一方、トルコの附属書I国からの削除(附属書Ⅰ国には残る)やカザフスタンの附属書Ⅰ国追加の追認決定などは、今後途上国の参加の道筋を開く一歩と評価。今後もCOPやその他の多国間・二国間協議などを通して途上国参加に最大限努力。
米国参加問題については、日米ハイレベル協議等で対話を行っているが、テロ事件の影響で気候変動に関する米国政府の政策レビューが進まない状況。今後も参加の働きかけを継続。一方、議会では温暖化問題を次回選挙論点とする民主党の議員が要職に就任するなど今後も注目。

<経済産業省 関室長>
京都メカニズムについては「ある程度」使いやすいものになったと評価。
共同実施やCDMでは事業の開始時期やクレジット獲得開始時期が決定。CDM理事会副議長となった岡松氏を通して政府や企業の意見を反映させたい。
国内制度は多様な選択肢をこれから検討。CDMやJI実施にあたって企業に対して早急にマニュアル・指針作りを開始。
排出量取引は約束期間リザーブによって「売り手責任」になったと認識。水準を割り込む取引については取引ログがチェック。クレジットの互換性も確保。
メカニズム参加資格と法的拘束力のある遵守制度受入の関連は日本の主張通り切り離され、将来に選択肢を残した。また、一度停止されたメカニズム参加資格の迅速な回復の具体的手順の一部が決定。

<環境省 高橋室長>
団長の川口環境大臣の個人的な信頼関係などもありアンブレラグループの代表として厳しい交渉の中良い成果を得た。
COP6再開会合で議論されなかった、7条4項(割当量の計算方法・登録簿等)、5条1項(排出量・吸収量推計の国内制度)、5条2項(インベントリーに問題がある場合の修正・調整)、7条1項(国別報告の内容)、8条(報告のレビュー)の手順が決定。さらに詳細を今後継続して検討。
3条14項(産油国への悪影響)やメカニズムの国内対策への補足性に関する報告義務は課されるが、メカニズム参加資格とは関連はなし。
吸収源については、3条4項森林管理の上限やCDM吸収源活動の上限が正式に決定。一方、ロシアからの3条4項上限値変更については最終段階で承認。国内吸収源の推計やモニタリング、報告の手順についてはIPCCと連携しながらCOP9で決定。
3条4項の上限値は「努力すれば達成可能」な数字。林野庁と環境省共同で検討を実施中。
CDM吸収源活動及びバンキングの上限による企業のクレジットの制約については、現実的に上限値を超過する可能性は低いが、政府として数値を把握することは必要。

(文責:高橋 浩之)

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