7月9-11日にスイスのジュネーブでIPCC第13回ビューロー会合が開催された。本会合では、主として第三次評価報告書(TAR)についてのワトソン次期議長の提案について議論した。本会合での議論を基にワトソン次期議長が見直しを行い、9月のモルジブでの第13回全体会合でTARの方向性について決定することとなった。また、全体会合ではTARの新ビューロー・メンバーについても決定されることとなっている。
ワトソン次期議長の第三次評価報告書に関する提案について議論、検討した。今年9月の全体会合で決定するのは、あくまでTARのアウトライン、スコープであり、章立て等については来年3月の全体会合で決定することとなった。
総会へ提出される提案のポイントは次のとおり。
報告書の構成は、第一次評価報告書の時に近い形の、
WG1 : 気候変動の科学的知見
WG2 : 気候変動の影響と適応策(含$経済社会的観点)
WG3 : 気候変動の緩和策(含$経済社会的観点)
地域分析・評価を重視する。
公平性など各WG共通の課題(Cross-Cutting Issues)については、新WG3または特別チームのどちらで対応するかを議論する。
統合報告は、各WG報告書の政策立案者向け要約(SPM)の要約でなく、気候変動枠組条約の締約国会議(COP)が求める内容に包括的に応えるものとする。
現在進行中の特別報告のうち、1999年完成予定の排出シナリオについては新WG3に移行するが、その他は現WG2が1998年末の完成まで担当する。
TSU(WGの実質的事務局)の資金拠出については、従来どおり先進国の共同議長国がすべてを負担する案と、一部資金等をIPCC信託基金と副議長の先進 国が負担する案の2案を議論する。
完成はWG報告書は2000年末から2001年第1四半期、統合報告は2001年の第2四半期末を目指す。
開発途上国及び経済移行期国からの参加、また産業界及びNGOからの参加を積極的に促す。
付属書1国、途上国および経済移行期国の計32カ国からの計58名の候補者リストが提示されるとともに、会場で7カ国から候補者を出す旨の発言があった。日本から、WG3共同議長及びWG2副議長の候補者をノミネートしている。ビューロー構成は、付属書1国と非付属書1国の現在のバランスを維持することとし、柔軟性を持たしつつも地域バランスを考慮することとなっている。
TSUを持つこととなる付属書1国からのWG共同議長国については、WG1のイギリス及びWG2のアメリカはほぼ確定したと言える。WG2共同議長については、当初カナダが関心を示していたが財政的な問題からノミネートを見送ることとなり、候補者が全くないことからアメリカが会場で候補者を出すことを表明することとなった。IPCC信託基金への毎年の拠出金の約1/3はアメリカであり、慢性的な財政難にあるIPCCにとってアメリカの貢献は不可欠であろう。
WG3共同議長については、日本、オランダ及びドイツの3カ国がノミネートしており、今後、ボーリン議長・ワトソン次期議長が各国とコンタクトをとって、調整が進められる。
これまでの決定方法からみて、モルジブではビューロー・メンバーについて議長が提案を行い、その提案について地域別
の会合をもって意見調整を行い、全体会合で承認することとなると予想される。
新ビューロー体制が決定次第、来年3月開催の全体会合での承認に向け、第二次評価報告書の統括執筆者等の専門家とともに、TARの章立て、構成について検討を始めることとなっており、2001年完成を目指して本格的にTAR作成作業が開始される。TARでは、例えば、緩和策についての技術的、経済的だけでなく市場ポテンシャルまで地域別 に評価を行うなど、いままで以上にCOPに有用な情報を提供することを目指している。