気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の会合が3月9日~11日にジュネーブで開催され、日本からIPCC副議長である弊研究所専務理事の清木克男、IPCCの活動においても活躍されている国立環境研究所西岡統括研究官等が出席した。
昨年9月にモルディブで開催された第13回全体会合において、第三次評価報告書(TAR)に向けたビューロー・メンバーが選定されて以降、初のビューロー会合であった。
本会合では、昨年12月の国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の第3回締約国会議(COP3)で決定された「京都議定書」に基づき、今後IPCCで取り上げるべき課題を中心に検討・議論した。
(1) 京都議定書に関係するIPCCの作業プログラム
・シンクおよび3種の追加ガス(HFCs, PFCs, SF6)の目録の推定手法の開発、気候観測システムの維持・充実等について取り組むこととなった。特にシンクについて、その重要性を確認した。
(2) IPCC-UNFCCC事務局のジョイントWG
・TARシンセシス・レポート(各WGの報告書を統合した報告書)に含める政策関連の科学的疑問とともにCOP3の結果 から出てきた以下の課題等について、UNFCCC締約国会議(COP)およびその補助機関SBSTAと協議することとなった。開催時期はWG報告書の骨子について検討するスコーピング会合に向けて、6月のCOPの補助機関会合の前(5月上旬)の予定。
a. 吸収源
b. 政策関連の科学的疑問
c. 目録作成およびその手法に関する作業のマネージメントと資金供給
d. 全球気候観測システム(GCOS)
e. HFCs, PFCs, SF6に関する知見
d. 適応策
e. クリーン開発メカニズム(CDM)、共同実施(JI)および排出権取引を利用した柔軟なメカニズム
(3) 国別温室効果ガス目録
・OECD/IEAと共同で作業を進めている国別 温室効果ガス目録については、その重要性が増大していることから取り組み体制を強化することとなり、次回のビューロー会合までに、その対応について検討することとなった。
(4) 第三次評価報告書シンセシス・レポート
・シンセシス・レポートの作成プロセスについて議論され、早期に含めるべき政策関連の科学的疑問について検討することとなった。採択/承認方法については、次回全体会合で決定することを確認した。
(5) 今後の作業/会合予定
・スコーピング会合
(第16回ビューロー会合を含む) 6月29日-4日間
・第14回全体会合
(第17回ビューロー会合を含む) 9月28日-6日間
本会合の目的は、WGビューローが報告書の構成(案)を検討するとともに、報告書構成(案)に基づき各国から送られた候補者の履歴書(Curriculum Vitae)を基に$代表執筆者等を選定することであった。
3つのWGの報告書作成に向けて各国政府から提出された代表執筆者(LA)、執筆協力者(CA)、査読編集者(RE)の履歴書は、積み上げると1mを超える高さとなり、政府ノミネート締め切りからの時間的余裕がなかったことから、ノミネートされた候補者のリストが作成できていなかった。そのため、3つのWGビューローによる全体会合を開催して、今回の選定の基本的な考え方を検討した。その結果 、次のとおり。
・LAについては各章、地域バランス等を考慮の上、その章を取りまとめる統括執筆者(CLA)候補を4名程度選定することとする。しかし作成に際して必要なLAを加える等のflexibilityは保たせることとし、基本的にはLAは各章7名程度とする。
・REについては各章、先進国・途上国から各1名の計2名とし、1名はビューロー・メンバー、1名は独立した幅広い知識のある専門家とする。
・CAについては、今回選定しない。
その後、WG毎に分かれて各々の方法で章毎にLA、REの候補を選定した。今回候補となったLAは6月のスコーピング会合に出席し、スコーピングを深める作業を行う中核となる予定。しかしスコーピング会合に招待されるLAは、地域バランス、WG間の重複等を考慮し、最終的にWG共同議長が決定し、各国政府に通 知することとなった。なお、スコーピング会合に招待されるLA(WG3ではCoordinating Teamと呼んでいる)は、スコーピング会合に向け各WGの事務局(TSU)とともに報告書の骨子について検討することとなる。なお、REはスコーピング会合に招待しないこととなった。
今回、各WGビューローで検討・作成した報告書構成(案)については、今後各国政府へ配付し、意見聴取する予定。