地球環境
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決定書3/CP.7

経済移行国におけるキャパシティ・ビルディング


締約国会議は、

決定書11/CP.5を想起し、

条約4.1条、4.2条、4.5条、4.6条、5条、6条、12条を想起し、

京都議定書2条、3条、5条、6条、7条、10条、17条に留意し、

さらにその決定書9/CP.2、6/CP.4、7/CP.4を想起し、

科学的・技術的助言のための補助機関および実施のための補助機関の関連する提案[1]を検討した上で、

さらにブエノスアイレス行動計画の実施に関するボン合意を含むその決定書5/CP.6を想起し、

1. 下記附属書に含まれる経済移行国でのキャパシティ・ビルディング活動のための枠組を採択し

2. 経済移行締約国での条約実施を支援するため、本枠組の即時発効を決定し、

3. 条約の下で明らかとなっている多くのキャパシティ・ビルディング分野はまた、京都議定書発効時での経済移行締約国による同議定書参加の準備にも関連性があることに留意し、

4. 本枠組実施の効果性を定期的に検討すると決定し、

5. 条約の附属書IIに含まれる締約国(附属書 II 締約国)および経済移行締約国に対し、締約国会議および補助機関が、本枠組実施の進展状況を監視できるようにするため、国別報告書作成の指針に合わせて、情報を提供することを求め、

6. 附属書II締約国に対し、地球環境ファシリティーの権限内で同ファシリティーを通すことを含め、多国間機関を通して、また適切ならば二国間機関ならびに民間部門を通して、経済移行締約国自身の優先策に合致する同国内行動計画の策定に対する援助を含めた、キャパシティ・ビルディングのための本枠組実施に資金的および技術的支援を利用可能にするよう促し、

7. さらに、多国間および二国間機関に対し、キャパシティ・ビルディングのための本枠組実施への支援として、その活動を協調するように求め、

8. 京都議定書の締約国の会議として機能する締約国会議に対し、その第一回セッションにおいて、下記附属書に含まれる枠組と一致する、条約の下でのキャパシティ・ビルディング枠組で、京都議定書の実施に関係するキャパシティ・ビルディングでの優先分野について追加的な記述のある決定書を、採択することを薦め、

9. 事務局に対して、条約の8条に則り、下記を行うよう要請する。

(a) 本枠組の実施を容易にするため、多国間および二国間の組織と協力する。

(b) 締約国会議および補助機関が本枠組の実施の進展状況を監視するのに必要とする情報を、収集し、処理し、まとめ、広める。

附属書

経済移行国におけるキャパシティ・ビルディングの枠組

A.  目的

1. キャパシティ・ビルディングのための本枠組の目的は、条約の下での経済移行国(EIT締約国)におけるキャパシティ・ビルディング活動のための行動、および京都議定書発効時でのEIT締約国の参加準備の行動について、その範囲と基礎を設定することである。

B.  指針原則と手法

2. EIT締約国キャパシティ・ビルディングのための本枠組は、特に条約の4.1条、4.2条、4.5条、4.6条、5条、6条、12条、および決定書9/CP.2、6/CP.4、7/CP.4、11/CP.5 [2]に含まれる関連条項により指針を受け、また情報を得ており、京都議定書の2条、3条、5条、6条、7条、17条を考慮している。

3. EIT締約国は、附属書Iに含まれる締約国として、排出制限・削減の数量約束を有しており、これらは条約を実施する上でのこれら諸国の既存能力に挑戦を課する。市場経済への移行プロセスにある締約国として、これら諸国は、気候変化問題に対処する自国の能力を強化する必要がある。このため、キャパシティ・ビルディングは、 EIT締約国による条約の下での約束の効果的な実施と、京都議定書発効時でのEIT締約国の同議定書参加準備において、重要なものである。

4. EIT締約国のためのキャパシティ・ビルディングは、国が主導でなければならず、自国の持続可能な開発戦略とも合致し、国内でのイニシアティブおよび優先策を反映し、EIT締約国自身により決定され優先度がつけられたニーズに対応し、主にEIT締約国自体により、そして適当とされるなら条約の規定に則って他の締約国や関連する組織との共同で、執り行われることとする。

5. キャパシティ・ビルディングは、EIT締約国による条約の効果的な実施に貢献するとともに、京都議定書発効時でのEIT締約国による同議定書参加への準備に寄与するものでなければならない。

6. キャパシティ・ビルディングへの努力は、人的、組織的、技術的能力の開発をやりやすくするような状況下で行われるとき、より効果的となる。

7. キャパシティ・ビルディングは、実績本位のものでなければならず、またその監視および評価、費用効果の高さ、そして効率性をやりやすくする統合的でプログラム化された形で実施されなければならない。

8. キャパシティ・ビルディングは、本枠組の3項に関連する専門知識を向上するため、関連機関、組織構造、人的資源を、強化するまたは適当ならば構築することを目的とした継続的なプロセスである。

9. 能力は、持続可能性を志向し、条約の下でのEIT締約国の短期および長期の目的と優先策とを支えるような、形式および条件で、開発され、強化されなければならない。

10. キャパシティ・ビルディングには、「行動学習」が含まれる。キャパシティ・ビルディング活動は、実行可能な形で設計され実施されなければならない。

11. キャパシティ・ビルディングは、既存の努力の協調と効果性を向上させ、政府のあらゆるレベルから国際機関、市民社会、民間部門を含めた広範囲な行動者と構成員の参加を促進し、またこれらの間の協議を促すものでなければならない。

12. キャパシティ・ビルディングは、可能な限り、既存の組織や団体を活用し、既存のプロセスや内的な能力の上に構築しなければならない。

13. 国内の担当窓口および研究センターや大学その他の関連機関といった他の組織は、キャパシティ・ビルディングに向けたサービスを提供し、知識や最善の実践方法そして情報の流れを流れやすくするため、重要な役割を果たす必要がある。

14. キャパシティ・ビルディングは、組織能力や人的資源、知識と情報、手法と実践、そしてEIT締約国の参加とこれら諸国での持続可能な開発を促進するネットワーク化における、開発と強化、促進という結果を生むように設計され、また本枠組の1項に設定した目的のため、設計されなければならない。

15. キャパシティ・ビルディングは、条約の目的の達成を助けるため、条約とそのほかの適切な地球規模環境条約との間の相互作用を最大限にしなければならない。

16. キャパシティ・ビルディングは、附属書I締約国間での協議を通してあらゆるレベルで協調されるなら、また過去のそして既存の努力を考慮に入れるなら、より効果的である。

C. キャパシティ・ビルディングの目的と範囲

目的

17. EIT締約国が、条約の目的を効果的に実施し、また京都議定書発効時にそれに参加する準備を可能にするため、これら諸国の能力を構築する。

範囲

18. キャパシティ・ビルディングの努力が国主導であることを確実にするため、各EIT締約国は、自国で、そして二国間および多国間機関や民間部門との共同で行われた過去のそして現在の活動と既存の能力を考慮し、自国の持続可能な開発戦略に則り、条約を実施する、また京都議定書発効時でのその参加を準備するため、キャパシティ・ビルディングの範囲内において、固有の目的、ニーズ、優先策、オプションを、決定しなければならない。

19. EIT締約国におけるキャパシティ・ビルディングでのニーズは、EIT締約国提出書類[3]を基に事務局が作成した統合・合成文書[4]の中で最初に明らかにされた。下記にキャパシティ・ビルディングでの一般的な分野とニーズを示す。キャパシティ・ビルディングでのこの範囲は、さらなる情報が入手可能となるなら、またニーズや優先策がさらに明確化されるなら、改訂される可能性がある。

20. 条約の実施に関係してEIT締約国が明らかにしたキャパシティ・ビルディングでの一般的な優先分野で、京都議定書への参加準備にも関連する可能性があるものは、これら諸国のキャパシティ・ビルディングのための国内行動計画で明確にされており、次のものを含む。

(a) 国内温室効果ガス(GHG)目録

(b) GHG排出予測

(c) 政策措置およびこれらの影響の推定

(d) 影響の評価と適応

(e) 研究および系統的観測

(f) 教育、訓練、一般の啓発

(g) 環境に十全な技術の移転

(h) 国別報告書および国内気候行動計画;

(i) GHG排出推定に関する国内制度

(j) 目標、時間枠、国内登録簿に関係する計算方法

(k) 報告義務

(l) 共同実施プロジェクトと排出量取引

21. キャパシティ・ビルディングのために利用可能な資源を最大化し、EIT締約国間での交流と協力をやりやすくするため、多国間および二国間機関は、EIT締約国と協議の上、適切ならば、EIT締約国のキャパシティ・ビルディングでのニーズを満たす、国内、地域内、サブリージョナルな、そして部門別の活動を明確化し、開発し、実施するEIT締約国自体の努力に援助を与えなければならない。地球環境ファシリティー(GEF)による能力開発イニシアティブの現段階および次の段階の成果は、これらの活動に貴重なインプットを与えることができる。

D. 実施

実施の責任

22. キャパシティ・ビルディングのための本枠組の中で行われる活動の実施にあたり、EITおよび附属書II締約国は、次の共通の責任を負う。

(a) 既存努力の調和と効果性を向上する

(b) 締約国会議が、キャパシティ・ビルディングのための本枠組実施の進展状況を監視できるようにするため、情報を提供する。

23. キャパシティ・ビルディングのための本枠組実施において、EIT締約国は次の責任を負う。

(a) 条約の最終目的実施に関係するキャパシティ・ビルディング活動の、持続可能性と効果性を向上させうる環境を整える。

(b) 既存の能力と過去および現在の活動を考慮して、国主導ベースのキャパシティ・ビルディングでの自国の固有なニーズと優先策、そしてオプションを明らかにする。

(c) 自国のキャパシティ・ビルディング活動に関する情報を明示し、提供する。

(d) EIT締約国間での協力を促進する、また自国の国別報告書の中でこれらの活動に関し、締約国会議に報告する。

(e) キャパシティ・ビルディング活動での国内での調和と効果性に必要な組織指導者を含め、国内の能力の結集と持続可能性を確保する。

(f) 適当であるなら、政府、市民社会、民間部門を含めた全ての利害関係者による、キャパシティ・ビルディング活動への参加、およびそれへのアクセスを促進する。

24. 附属書II締約国は、キャパシティ・ビルディングのための本枠組の実施を支援するためEIT締約国に協力するにあたり、次の責任を負う。

(a) 条約を効果的に実施し、適切ならば、京都議定書発効時での同議定書へのEIT締約国参加に向け準備することを可能にするニーズの、国レベルでの評価を行うため、資金その他の資源を利用可能にすることを含めて、EIT締約国への支援を行う

(b) EIT締約国の固有の優先策および本枠組に合致するキャパシティ・ビルディングのためのオプションを、資金その他の資源の提供を行うことも含めて、EIT締約国への支援を行う。

資金手当

25. 附属書 II 締約国は、地球環境ファシリティーの権限内で同ファシリティーを通すことも含め、多国間機関を通して、また適当ならば二国間機関および民間部門を通して、 EIT締約国におけるキャパシティ・ビルディングのための本枠組の実施を助けるため、資金および技術的な支援を利用可能にすることが、求められる。

時間枠

26. キャパシティ・ビルディングのための本枠組の中で行われる活動の実施は、可能な限り速やかに開始されなければならない。

進展状況の監視

27. 締約国会議は、補助機関を通して、キャパシティ・ビルディングのための本枠組の実施.の効果性を監視することとする。

28. 締約国会議が本枠組実施の効果性を監視できるようにする情報は、締約国により報告されなければならない。EIT締約国でのキャパシティ・ビルディングに関与する他の機関も、この目的で情報を提供するよう求められる。

事務局の役割

29. キャパシティ・ビルディングのための本枠組により、事務局は、条約8条に則って、次の業務を行うよう求められる。

(a) 本枠組の実施を容易にするため、多国間および二国間機関と協力する。

(b) 締約国会議またはその補助機関が、キャパシティ・ビルディングのための本枠組の実施における進展状況を監視するため必要とする情報を、収集し、処理し、まとめ、広める。



[1] FCCC/SBSTA/2000/10およびFCCC/SBI/2000/10

[2] 締約国会議がその第二回、第四回、第五回セッションで採択した決定書の全文については、それぞれ
FCCC/CP/1996/15/Add.1、FCCC/CP/1998/16/Add.1、FCCC/CP/1999/6/Add.1を参照。

[3] FCCC/SB/2000/INF.7

[4] FCCC/SB/2000/INF.2