地球環境
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決定書4/CP.7

技術の開発と移転(決定書4/CP.4および9/CP.5)


締約国会議は、

アジェンダ21の34章、ならびに国連総会がその第19回特別セッションで採択した環境上十全な技術移転に関するアジェンダ21のさらなる実施のためのプログラム関連条項を想起し、 [1]

条約の関連条項、特にその4.1条、4.3条、4.5条、4.7条、4.8条、4.9条、ならびに9.2(c)条、11.1条、11.5条、12.3条、12.4条にしたがい、

その決定書11/CP.1、13/CP.1、7/CP.2、9/CP.3、4/CP.4、9/CP.5、およびブエノスアイレス行動計画に関するその決定書1/CP.4を想起し、

さらにブエノスアイレス行動計画実施に関するボン合意を含めたその決定書5/CP.6を想起し、

1. 技術移転に関する諮問プロセス(決定書4/CP.4)とブエノスアイレス行動計画(決定書1/CP.4)の結果の一部である本決定書の附属書に含まれる、意味のあるそして効果的な条約4条5項の実施促進行動についての枠組を採択すると決定し、

2. 特に技術移転活動を容易かつ進展させる方法を分析かつ識別することにより条約4条5項の実施促進をはかるため、また科学的・技術的助言のための補助機関に提案を行うため、締約国により指名される技術移転専門家グループを設置すると決定する。締約国会議は、その第12回会合で、適切ならば専門家グループの状況と継続を含めて、その作業の進展と委託事項を検討する。

3. 条約の資金メカニズム運営機関としての地球環境ファシリティーに対し、その気候変化担当分野、そして決定書7/CP.7の下で設立された気候変化特別基金を通して、附属枠組の実施に資金支援を提供するよう求め、

4. 附属枠組で明確にされるプログラムおよび措置の実施における締約国の努力を支援し、条約4条5項の実施を促すため、先進締約国に対し、適切ならば、既存の二国間および多国間協力プログラムを通して、技術的、資金的援助を行うよう、促し、

5. 条約事務局に下記を要請する。

(a) 関連国際機関と協議し、本決定書の附属書に含まれる意味のあるかつ効果的な行動のための枠組で明らかにされる特定活動を支援する上での、これら国際機関の能力、可能性について情報を要求し、その結果を科学的・技術的助言のための補助機関に対し、その第17回会合で報告する。

(b) 締約国、地球環境ファシリティー、そしてその他の関連国際機関と協力し、附属枠組の実施を容易にする。

附属書

条約4条5項実施を促す意味のあるかつ効果的な行動のための枠組

A. 目的

1. 本枠組の目的は、環境上十全な技術(ESTs)およびノウハウの移転とそれへのアクセスを、増大、改善し、条約4条5項の実施を促進する意味のあるかつ効果的な行動を開発することである。

B. 全体手法

2. ESTsおよびノウハウの開発と移転を成功させるには、国家および部門レベルでの国家主導の統合的な手法が要求される。これには、多様な利害関係者(民間部門、政府、寄贈公共団体、二国間および多国間組織、非政府組織、学術および研究機関)の間の協力が含まれ、この中には技術ニーズ評価、技術情報、可能にする環境、キャパシティ・ビルディング、技術移転メカニズムでの活動が含まれる。

C.  意味のある効果的な行動のための主題と主要分野

1. 技術のニーズとニーズの評価

定義

3. 技術のニーズとニーズの評価は、先進締約国以外の締約国や、付属書IIに含まれない先進締約国、特に開発途上締約国での緩和・適応技術の優先性を明らかにし、決定する国家主導の一連の活動である。これら活動には、技術移転の障壁を識別し、部門別分析によりこれらの障壁に対処する措置を明らかにするため、さまざまな利害関係者が、その諮問プロセスにおいて、関わる。これらの活動は、緩和および適応技術といったソフトおよびハードの技術を考察し、規制オプションを明らかにし、また予算および資金上のインセンティブとキャパシティ・ビルディングを開発する可能性がある。

目的

4. 技術のニーズ評価の目的は、優先的な技術ニーズを明らかにし、分析するのを助けることであり、これらの優先技術ニーズは、条約4条5項の実施におけるESTsおよびノウハウの移転とそれらへのアクセスを容易にするEST プロジェクトおよびプログラムのポートフォリオの基礎を形成することができる。

実施

5. 先進締約国以外の締約国、付属書IIに含まれない先進締約国、特に開発途上締約国は、国別の状況に合わせて先進締約国およびその他の付属書IIに含まれる先進締約国から資源が与えられることを条件に、国別の技術ニーズ評価を行うことが奨励される。これを行う立場にあるそのほかの機関も、技術ニーズの評価プロセスを容易にすることを助ける可能性がある。締約国は、自国の国別報告書、その他の関係する国別報告書およびチャンネル(例、技術情報の交換センター)に、自国のニーズ評価に関する情報を公開し、科学的・技術的助言のための補助機関(SBSTA)での定期的な考察に供することが、奨励される。

6. 先進締約国およびその他条約付属書IIに含まれる先進締約国は、後進開発途上国の特別な事情を認識した上で、ニーズの評価プロセスを容易にし、支援することが求められる。

7. SBSTAの議長は、事務局の助力を得て、技術移転に関する専門家グループと協議の上、技術面でのニーズ評価を行うために必要な手法を明らかにし、その結果をSBSTAの第16回会合に報告するため、政府代表、UNFCCC専門家リストから選ばれた専門家、関連国際機関代表との会議を企画することが求められる。

2. 技術情報

定義

8. 本枠組の技術情報の構成要素は、ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク化を含め、環境上十全な技術の開発と移転を促進するため多様な利害関係者間で情報が流通しやすくする手段を定義づける。本枠組の技術情報の構成要素は、技術パラメターの情報、環境上十全な技術の経済的および環境上の側面、付属書IIに含まれない締約国、特に開発途上締約国で、明らかにされている技術ニーズ、そして先進国からの環境上十全な技術の提供可能性に関する情報や、技術移転の機会についての情報を提供することができる。

目的

9. 技術情報構成要素は、技術移転を支援する効率的な情報システムを確立し、また条約の下でのESTsの開発および移転に関係する、技術、経済、環境、規制の情報の発生、流通、アクセス、質を改善する。

実施

10. 条約事務局は下記を要求される。

(a) 事務局が行っている、および事務局が気候変動技術計画(Climate Technology Initiative)その他の関連機関と協力して行っている現行作業、特に、気候変化への緩和や適応に適合しやすいものを含め、環境上十全で、経済的に実行可能な技術およびノウハウの既存目録への早期アクセスを可能にする、インターネット上の新しい検索エンジンの開発などの作業にのっとり、その上に構築する。

(b) 地域センターや他の組織と協調して、既存のEST目録でのギャップを明らかにし、必要ならば目録を最新のものにするか作成する。

(c) 情報交換所を設立し、情報センターやネットワーク強化のオプションも含め、技術情報に関する専門家のワークショップを企画し、利用者のニーズや、品質管理基準、技術規格、そして締約国の役割と貢献について、さらなる定義づけを行う。

(d) 締約国や関連国連機関ならびに他の国際機関や組織と協調するほか、実施のためのオプションを開発し、特に条約の下での国際的な技術情報交換所をネットワーク化することにより、技術移転情報交換所の設立に向けた作業を加速化し、また技術情報センターとそのネットワーク強化のための作業を加速化する。オプションや提案に関する報告書は、SBSTAの第16回会合でSBSTAに提出しなければならない。

11. 技術情報センターのネットワークを含めた情報交換所は、SBSTAの第16回会合での上記報告書についての結論を考慮した上、COP 8までに、事務局よりの支援の下で設立されなければならない。

3. 可能にする環境

定義

12. 本枠組での可能にする環境という構成要素は、公平な貿易政策や、技術移転に対する技術的、法的、行政上の障壁除去、健全な経済政策、規制枠組と透明性など、全て、民間部門および公共部門において技術移転にやさしい環境を作り上げる政府の行動に焦点を当てている。

目的

13. 本枠組を可能にする環境での構成要素の目的は、プロセスの各段階での障壁の識別、除去を含め、環境上十全な技術の移転を容易にする方法を明らかにし、分析することにより、環境上十全な技術の移転の効果性を高めることである。

実施

14. 下記は、技術移転を可能にする環境構築の方法である。

(a) 全ての締約国、中でも先進締約国は、途上国への商業的および公的技術移転を拡大するため、特に、環境規制枠組の強化、法体制強化、公平な貿易政策の確保、税優遇措置の活用、知的所有権の保護、公共資金供与の技術その他のプログラムへのアクセス改善を含めた、障壁の識別と除去を通して、環境上十全な技術の移転を可能にする環境を、適切ならば改善することが、求められる。

(b) 全ての締約国は、政府調達での優遇策や、環境上十全な技術の開発と普及を支援する技術移転プロジェクトでの透明性があり効果的な承認手続きを含め、前向きのインセンティブを提供する機会を、適切ならば、探求することが求められる。

(c) 全ての締約国は、適切ならば、二国間および多国間での共同研究開発プログラムを促進することが求められる。

(d) 先進締約国は、環境上十全な技術の移転を促進するため、たとえば輸出クレジットプログラムや税優遇策のような促進化措置、および適切ならば規制策を、さらに促進および実施することが奨励される。

(e) 全ての締約国、特に先進締約国は、適切ならば、途上国への技術移転目的を、環境と研究、開発の政策およびプログラムを含めた国家政策に統合することが、奨励される。

(f) 先進国は、適切なら、公的所有の技術を促進し、移転することが奨励される。

4. キャパシティ・ビルディング

定義

15. 条約の4条5項の実施強化という意味で、キャパシティ・ビルディングとは、先進締約国以外の締約国、および付属書IIに含まれないその他の先進締約国、特に開発途上締約国が、環境上十全な技術を評価、適用、管理、開発可能とするため、その既存の科学技術面での技能、能力、組織の構築、開発、強化、向上、改善を追及するプロセスである。

16. キャパシティ・ビルディングは、途上国の固有のニーズや状況を考慮し、その持続可能な開発の国家戦略、優先策およびイニシアティブを反映する、国家主導のものでなければならない。キャパシティ・ビルディングは、条約の規定に従い、主に途上国により途上国内で行われる。

目的

17. 本枠組に基づくキャパシティ・ビルディングの目的は、先進締約国以外の締約国、および付属書IIに含まれないその他の先進締約国、特に開発途上締約国が、条約の規定実施を可能にするため、環境上十全な技術およびノウハウの広範囲な普及と適用および開発を促進する能力を強化することである。本枠組に基づくキャパシティ・ビルディングは、キャパシティ・ビルディングに関係する決定書(決定書 -/CP.7および-/CP.7)に定める原則に則るものとする。

範囲

18. 下記は、先進締約国以外の締約国、および付属書IIに含まれないその他の先進締約国、特に開発途上締約国での、環境上十全な技術とノウハウの移転およびそれらへのアクセスに関するキャパシティ・ビルディングでのニーズや分野の初期範囲を設定する。

(a) 技術移転および開発に関係する地域、サブリージョナル、そして/または国のキャパシティ・ビルディング活動の実施

(b) 公的、民間、国際の金融機関において、環境上十全な技術を他の技術オプションと同等として評価する必要性の認識を強化

(c) 実証プロジェクトを通した、環境上十全な技術の利用に関する訓練の機会提供

(d) 特定の環境上十全な技術を適用、適応、導入、運用および維持する技能の向上と、多様な技術オプションの評価手法への理解拡大

(e) 南―南協力や援助を含め、国別および部門別状況を考慮した既存の技術移転関連国内および地域内組織の能力強化

(f) プロジェクト開発および気候技術の管理と運用での訓練

(g) 国別の政策、プログラム、状況を認識した上で、ESTs の利用、移転、アクセスを促進する基準や規制の開
発と実施

(h) 技術ニーズ評価の技能およびノウハウの開発

(i) エネルギー効率の知識と再生可能エネルギー技術の利用の向上

19. 下記は、途上国での内的な能力および技術の開発と強化に関するキャパシティ・ビルディングの必要性と分野の初期範囲を設定する。これらは、先進締約国の支援を受ける国家主導プロセスである。

(a) 適切ならば、途上国の関連組織および機関を設立そして/または強化

(b) 環境上十全な技術の移転、運用、維持、適応、普及、および開発のため、途上国での国内および地域の関連機関での訓練、専門家交流、奨学金、協同研究プログラムを可能な限り確立そして/または強化

(c) 気候変化の悪影響に適応する能力の構築

(d) 気候変化およびそれに伴う悪影響に関連する系統的な観測において、研究、開発、技術発明、適用と適応、そして技術での内的可能性および能力を強化

(e) エネルギー効率と再生可能エネルギー技術利用分野での知識向上

実施

20. 先進締約国およびその他の付属書IIに含まれる締約国は、次の実践上の段階全てを遂行する。

(a) 上記18項と19項に含まれるリストを考慮した上で、4条5項の実施を強化するため、途上国でのキャパシティ・ビルディング実施を補助する資源を利用可能にする。これらの資源には、途上国が国レベルでのニーズ評価を行い、4条5項の実施強化と合致する特定のキャパシティ・ビルディング活動を開発できるようにする適切な資金および技術資源を含む必要がある。

(b) 途上国でのキャパシティ・ビルディングのニーズと優先策に、協調し時宜を得た形で対応するほか、国レベルでまた適切であればサブリージョナルまたは地域レベルで実施する活動を支援する。

(c) 後進開発国および小島嶼開発途上国のニーズに特に注意を向ける。

21. 全ての締約国は、技術の開発および移転に関わるキャパシティ・ビルディング活動での協調および効果性を改善しなければならない。全ての締約国は、これらキャパシティ・ビルディング活動の持続可能性および効果性を発揮しやすい状況を促進しなければならない。

5. 技術移転メカニズム

定義

22. 本セクションで明示される技術移転のメカニズムは、下記の資金調達、組織、手法での活動を容易にする。(i) 異なる国と地域の利害関係者全体での協調を増大する、(ii) 技術協力やパートナーシップ(公・公、民・公、民・民)を通して先進締約国以外の締約国および他の付属書IIに含まれない先進締約国、特に開発途上締約国に対して、またこれら諸国間で、環境上十全な技術やノウハウおよび実践方法の開発や、移転を含めた普及を加速化するため、協調努力を約束する、(iii) そのような最終目的を支援するプロジェクトやプログラムの開発を容易にする。

目的

23. 提案されるメカニズムの目的は、環境上十全な技術やノウハウの移転やアクセスを増大させることであり、また条約4条5項の実施を強化する意味のあるかつ効果的な行動を開発することである。

実施

技術移転のための組織調整

24. 機能:条約4条5項の実施強化に向けた行動計画の策定を含め、条約の下での環境上十全な技術およびノウハウの開発と移転を進める科学的、技術的助言を提供する。

25. 技術移転に関する専門家グループの委託事項は下記付録書に示す。

26. 技術移転に関する専門家グループは、次の20名の専門家で構成される。

(a) 各地域、具体的にはアフリカ、アジア太平洋、中南米・カリブ海の各地域の付属書Iに含まれない締約国から各1名、合計3名

(b) 小島嶼開発途上国から1名

(c) 付属書Iに含まれる締約国から7名

(d) 関連国際機関から3名.

27. 事務局は、グループ会合の企画を容易にし、今後の会合に提出するSBSTA向け報告書および締約国会議向け報告書を作成する。

28. 技術移転に関する専門家グループは、補助機関の会合に合わせて、年2回会合する。

付録

技術移転に関する専門家グループの委託事項

1. 技術移転に関する専門家グループは、条約4条5項の実施を進め、また条約の下での技術移転活動を推進するという目的を有する。

2. 技術移転に関する専門家グループは、決定書 -/CP.7(技術の開発と移転)附属書で明示されるものを含め、技術移転活動の推進を容易にする方法を解析し、明らかにするとともに、科学的・技術的助言のための補助機関 (SBSTA)へ提案を提示するものとする。

3. 技術移転に関する専門家グループは、SBSTAでの決定を受けるため、各年度にその作業に関する報告を行い、また次年度の作業プログラムを提案することとする。

4. 技術移転に関する専門家グループのメンバーは、2年の任期をもって、締約国が指名し、また2期連続して務めることが可能とする。SBSTAは、グループ全体のバランスを維持する必要性を考慮し、当初指名された専門家グループメンバーの半分は3年間務めることを確実にする。以後毎年、メンバーの半分を次の2年任期で指名する。5項に基づく任命は、1期分として数える。メンバーは、その後継者が指名されるまで、その職に残ることとする。3つの関連国際機関からのメンバーは、課題別で務めることとする。

5. 技術移転に関する専門家グループのメンバーが辞任した場合、またはその職の任期を全とうするまたはその職の機能を遂行することができない場合、専門家グループは、締約国会議の次回会合がどれだけ近いかを念頭に、そのメンバーを指名したグループに対して、当該メンバーの残余任期期間中の交代メンバーを指名するよう求める。この場合、専門家グループは、メンバーを指名したグループの表明するいかなる見解も考慮に入れることとする。

6. 技術移転に関する専門家グループは、毎年そのメンバーの中から議長と副議長を選出し、そのうちの1名は付属書Iに含まれる締約国、そしてもう1名は付属書Iに含まれない締約国からのメンバーとする。議長および副議長職は、付属書Iに含まれる締約国からのメンバーと、付属書Iに含まれない締約国からのメンバーで一年ごと交互に就くものとする。

7. 技術移転に関する専門家グループのメンバーは、それぞれ個人の資格で務めることとし、次の分野のいずれかで専門知識を有するものとする:特に、温室効果ガス緩和と適応、技術、技術評価、情報技術、資源経済、または社会の発展。



[1]A/RES/S-19/2.