国連気候変動枠組条約第8回締約国会議ハイライト
2002年10月30日水曜日
COP-8締約国は、午前のセッションで国連機関、政府間組織、および非政府組織のステートメントを聞いた。インドのAtal Bihari
Vajpayee(バジパイ)首相による「ランプ点灯」式で、閣僚レベルの会議が開始された。3回の閣僚ラウンドテーブル会議のうちの第一回が、午後に開かれ、「現状分析」に焦点が当てられた。また出席者は、非附属書I諸国問題について、一日中コンタクトグループでの会合を行い、その討議を継続した。
閣僚レベル協議
COP-8議長のBaaluが閣僚レベル協議を開会した。
国連機関の長によるステートメント:STATEMENTS FROM HEADS OF UNITED NATIONS AGENCIES:世界気象機関事務局長のG.
O. P. Obasiは、科学的な不確実性を削減するため、大気やその他の気象活動での体系的観測への支援を継続するよう、締約国に呼びかけた。UNEP専務理事のKlaus
T_pferは、気候変化の悪影響により最も苦しめられるのは、貧困にあるものだと指摘した。同氏は、緩和と同様適応に関しても具体的な行動をと呼びかけた。
政府間組織によるステートメント:: IPCC議長のRajendra Pachauriは、締約国に対し、締約国での議論にIPCC第三次評価報告書(TAR)を最大限活用するよう勧め、また第四次評価報告書は、緩和オプションのコストと便益により注目するものとし、できれば地域的な分析も含めるものにしたいと述べた。また同氏は、IPCCがアウトリーチプログラムを強化していくと、述べた。GEF
CEO補佐のKenneth Kingは、GEFの気候変化関連活動向け資金の増加を可能にする第三次資金補給に関して発言し、GEFは、これからの数週間中にUNFCCC
LDC基金の下での第一回の支払いを行うと述べた。世界銀行環境部ディレクターのKristalina Georgievaは、同銀行が炭素関連金融支援にコミットしていることを述べた。同ディレクターは、再生可能エネルギーへの投資が伸びていることを指摘し、そういった投資が、現在、同銀行のエネルギー関連融資ポートフォリオ中64%を占めていると述べた。
OPEC事務局長のAlvaro Calder_nは、再生可能技術がまだ初期の段階にあり、技術革新によって石油と天然ガスが「よりクリーンな燃料」になってきていると発言した。また同局長は、出席者に対し、気候変化に取り組むための政策措置による悪影響を最小限にする必要性について、想起するよう促し、開発途上国への適切な技術移転提供がなされるべきであると発言した。Asian-African
Legal Consultative Organization(アジア・アフリカ・法的顧問機関)の事務局長であるWafik Kamilは、共通するが違いのある責任という原則がUNFCCプロセスの基本であり続けるべきであることを強調した。Highlighting
various projects, Asian アジア開発銀行の副頭取であるRolf Zeliusは、多様なプロジェクトに注目する一方、同銀行が最小費用での適応や能力向上のため、開発途上国に援助をおこなってきたと述べた。
非政府組織からのステートメント:CLIMATE ACTION NETWORKのNasimul Haqueは、適応を支援するため、また開発を確保する一方で気温の変化を摂氏2度より大きく下回るもので抑える措置のため、先進国から開発途上国への多額の資金移転を呼びかけた。また同氏は、オーストラリア、カナダ、ロシア、米国による議定書の即時批准を要求した。William
Kyteは、BUSINESS AND INDUSTRY NGOs(ビジネスおよび産業関連NGOs)を代表し、持続可能な開発を通しての貧困緩和でビジネスが果たさなければならない役割について発言した。同氏は、特にCDM関連での、明確な役割や手続きを呼びかけた。
COP議長への子供たちの宣言書贈呈:2名の若年出席者が、COP-8議長のBaaluに対し、子供たちの宣言書を贈呈した。同宣言書では、温室効果ガス濃度の増加、海面水位の上昇、そして気候変化が植物相や動物相にもたらす脅威を含め、インドの若者たちの懸念をいくつか示している。同宣言書は、エネルギー効率の向上や、再生可能エネルギーおよび公共交通の利用といった改善活動を呼びかけている。
閣僚レベル会議の開会:インドのAtal Bihari Vajpayee首相は、「ランプ点灯」式で閣僚レベル会議を開会した。COP-8のBaalu議長は、インドが気候変化と持続可能な開発に取り組むことを約束していると述べた。同議長は、
COP-8において、169カ国から4000名を超える出席者が参加したことを指摘した。また同議長は、デリ宣言が、NFCCCプロセスでの歴史的な一歩になることを希望すると表明した。
UNFCCC事務局長のJoke Waller-Hunterは、WSSDでの成果を含めたCOP-7以後の進展達成を指摘した。同事務局長は、最近の数ヶ月に地球全体が経験した極端な天候現象を指摘し貧困や気候変化への取り組みの重要な役割に注目した。同事務局長は、実施の重要性を強調し、適応や脆弱性に取り組む活動や、国別報告書の作成、そしてCDMの利用といった実際的なアプローチを支持した。
国連事務総長の経済社会問題担当補佐であるNitin Desaiは、国連事務総長のKofi Annanに代わってメッセージを述べた。同氏は、WSSDで合意されたアプローチや目標そして方法がどこまで、このフォーラムでの協力のベースとなれるかを検討することが、COPにとっての一つのチャレンジであると述べた。同氏は、結論として、グローバルな責任を共有するという感覚をもっと持つよう呼びかけた。
インドのバジパイ首相は、インドでの再生可能エネルギー部門や京都議定書の批准について発言し、インドが地球の気候変化との戦いに献身していると述べた。同首相は、開発途上国にとって、適応や脆弱性そして能力向上が重要であることを強調し、開発途上国の約束を考えることは、開発途上国と先進国間での一人当たり排出権の不公平性や、一人当たり所得での違いなどから、時期尚早と述べた。
ラウンドテーブル
COP議長のBaaluは、「現状分析」という主題の第一回閣僚ラウンドテーブルへの出席者を歓迎した。共同議長を務めるMargaret
Beckett (英国)大臣は、このセッションが今後のラウンドテーブルのお膳立てをするものであると述べた。同共同議長は、総合的な気候変化緩和枠組がすでに出来上がっていることを指摘する一方、自己満足している余地は無いと述べた。
多くの出席者が、それぞれの国内事情や、活動および経験に焦点を当てた。AOSISを代表して、トンガは、小島嶼開発途上国が、気候変化で最も打撃を受けるものに入っていると指摘した。ニウエは、同国の脆弱性は能力上の限界に関係していると述べた。パナマは、自国の生物多様性が気候変化により影響を受けていると指摘し、ブータンは、自国の山岳生態系の脆弱性を強調した。フィンランドは、有形の結果を得るため、そして2005年までに実証可能な進展を見るためのEUの努力を強調した。
気候システムへの危険な人為的干渉を防ぐ水準で温室効果ガスを安定化するとのUNFCCCの究極目標達成に関して、ニュージーランドは、十分なほどの進展には程遠いと述べた。EUは、危険のない排出濃度レベルを明確にすることを含め、共同の意見交換を呼びかけた。AOSISは、排出をただちに
50-80%削減することを主張した。CLIMATE ACTION NETWORKは、危険な気候変化を防ぐための限度の確立に関して、議論を開始するようCOPに求めた。アイルランドは、排出目標の公平で平等な配分に関する議論を提案した。
ニュージーランドは将来の活動について、各国間にまたがる広範囲なアプローチを呼びかけた。 AOSISと日本は、全ての国が緩和に参加する必要があると述べた。スイスは、緩和に関する各国の負担が異なることを認識した上で、協力とパートナーシップを強調した。ノルウェーは、野心的で長期的なグローバルの気候変化体制を呼びかけ、IPCC
TARへの政治的な対応の必要性を強調した。ポーランドは、気候変化のための適応や資金調達が緩和や長期的な戦略と組み合わせたものでなければならないと述べた。
AOSIS、メキシコ、ウガンダは、附属書I諸国が約束を果たしておらず、排出が増加していると指摘した。この点について、マレーシアは、一部の附属書I
諸国が、どうして開発途上国の排出削減約束を提案できるのか、問いただした。タイ、ベネズエラ、タンザニア、サウジアラビアは、開発途上国での削減約束を議論することに反対した。EUは、この問題での対話の必要性を強調した。
AOSIS、パナマ、サモアは、適応の強化を呼びかけた。ウガンダ、イラン、マレーシアは、技術や資金源、そして能力向上の移転に関して、さらなる努力を呼びかけた。ネパールは、気候変化の影響を緩和するための能力向上とさらなる研究の重要性を強調した。ブラジルは、具体策と適切な技術を呼びかけた。
エチオピアは、気候変化への適応には、経済開発が不可欠であると述べ、資金援助の増加を促した。メキシコは、適応のための資源をと呼びかけた。
イランは、化石燃料に経済を依存している開発途上国での、対応策の影響や悪影響を原因とした損失の最小化を強調した。サウジアラビアは、UNFCCC
4.8条と4.9条 (悪影響)での進展が限られていることに関して懸念を表明した。
フィンランドとデンマークは、LDC基金への支援を約束した。ケニアとウガンダは、LDCs以外の開発途上国へも特別基金をと訴えた。
CDMに関して、コロンビアは、吸収プロジェクトを支持した。メキシコは、複雑な規則では適用が困難であると述べ、INTERNATIONAL
COUNCIL FOR LOCAL ENVIRONMENTAL INITIATIVESは、手続きの簡素化を支持した。ウルグアイは、組織能力や法的な能力の欠如が、CDM
実施の障壁であると述べた。
京都議定書の批准について、大韓民国は、同国の批准を発表した。ニュージーランドは、同国が来月には議定書を批准することが「ほぼ固まった」と述べた。日本、ブルガリア、エチオピア、ケニア、EU、ブラジルは、各国に対し議定書を批准するよう求めた、中国は、先進国には温室効果ガス排出を削減する「拘束された義務」があると述べ、議定書がまだ発効されていないことへの失望感を表明した。
デリ宣言について、日本は、第一約束期間より先の削減を取り上げることを支持した。ウガンダは、同宣言では議定書の批准も呼びかけるべきであると述べた。スイスは、UNFCCCの究極目標と取り組む前向きのアプローチに言及することを支持した。オーストラリアは、同宣言が、将来のグローバルな排出削減への道筋をつけるものでなければならないと述べた。大韓民国は、気候変化に対する人間的な側面を考慮するような宣言を支持した。
共同議長のBeckettは、このセッションの主題をまとめ、同セッションは閉会した。
コンタクトグループ
非附属書I諸国の問題:Jos_ Romero (スイス)を議長とする, このコンタクトグループは、一日を通して会合した。
締約国は、非附属書I 国別報告書向けの改訂ガイドラインの文章について作業し、いくつかの括弧書きを除去した。各パラグラフが、合意された考えを正確に反映するよう、それぞれを組織立てるためにはどうすれば最善となるかに議論が集中した。出席者は、「are
encouraged to(が勧められる)」ではなく.「should(でなければならない)」を用いるのはどういった場合かの問題をいくつか取り上げた。締約国は午後のセッションで、残った括弧書きを取り除く努力の一環として、文書の最初に戻った。締約国は、ガイドラインで、UNFCCC
4条 (約束)と12条 (情報の連絡)の特定パラグラフを、全面的に引用するべきか、それとも特定の条項の引用はしない方が良いかで、合意できなかった。
附属書I 国別報告書のためのガイドラインでの要素を用いるかどうかでは見解が分かれ、また目録の年度について、あるいは締約国がIPCCの目録作成用ガイドライン1996年度版を利用「するべき(should)」か、それとも「するとする(shall)」かについては、合意に達しなかった。さらに出席者は、国別のそして地域での排出要素を「開発利用(develop
and use)」するか、それともただ単に「利用(use)」するとするかも、取り上げたが、合意に至らなかった。その後出席者は、IPCCの良き実践方法(Good
Practice)ガイダンスにあるように、重要な排出源分類「について情報を提供する(provide information on)」のか、それとも「の識別を検討する(consider
identifying)」のかについても、他のオプションとともに議論したが、合意に至らなかった。議論は夜遅くまで続けられた。
廊下にて
出席者は、閣僚が到着し、また非附属書I国別報告書のガイドラインについての議論が長引いていた水曜日の夜遅くには、どこにもその姿が見当たらなかった。一部の出席者は、ゆっくりとではあるが確実な進展を認めたが、他の出席者は、この問題(訳注―非附属書I国別報告書ガイドライン)が、COPの交渉日数を一日追加することとなる可能性に戦慄していた。関係する問題に関して、いく人かのオブザーバーは、将来的な途上国約束の問題を1週間前には交渉担当者のだれも見せなかったような率直さで一部の閣僚たちが取り上げたことに、この問題での興味ある転換が見られると、早速指摘していた。
閣僚ラウンドテーブル:締約国は、「気候変化と持続可能な開発」について議論する第2回ラウンドテーブルを、メインプレナリーホールで午前10時から開く。「ラップアップ.(まとめ)」と題した最後のラウンドテーブルでの議論は、午後3時から開かれる。
SBI:SBIは、メインプレナリーホールでの最終ラウンドテーブル終了後に集まる。
非附属書I問題:このコンタクトグループは、ホール3で午前(?)10時から会合する。 |
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