国連気候変動枠組条約第8回締約国会議ハイライト
2002年10月31日木曜日
COP-8締約国は、二つの最終閣僚級円卓会議に参加し、「気候変動及び持続可能な開発」と「総括」について閣僚及び代表団代表らによるステートメントに耳を傾けた。午前中、代表団らは非附属書I国問題に関するコンタクト・グループ会合を行い、午後は閣僚級コンタクト・グループを行って、非附属書I国の国別報告作成に関する改定版ガイドラインについて話し合った。夕刻には、締約国は短時間のSBI会合行って組織上の問題を検討し、非附属書I国の国別報告に関する検討を開始したが、作業を終えぬまま閉会となった。デリー宣言に関する非公式協議も行われ、夜遅くまで話し合いが続けられた。
円卓会議
円卓会議II「気候変動及び持続可能な開発」:Baalu COP-8議長が本会合を開会し、Valli Moosa共同議長(南アフリカ)が「デリー宣言はCOP-7、WSSD、COP-8を結ぶものとなるべきである」と語った。同共同議長は消費と、そして気候変動及び持続可能な開発が共存する問題としてエネルギー供給及び入手について焦点を当てた。同共同議長は、適応と、CDMの運用化、新基金について支持した。
ウガンダはミレニアム開発目標を想起し、気候変化は開発途上国経済を「骨抜き」にするものであり、持続可能な開発をくじくものであると述べた。スロバキアは政治化された交渉を脱して実際の行動へと進む必要を強調した。コロンビアは、気候変化は開発と環境双方の問題であると語った。
ナミビアは同国の議定書批准を発表し、多くの国々が発効を促した。
ギリシャ、ベルギー、スペイン、スロヴェニアは、再生可能エネルギーとエネルギー効率について支持した。ドイツは、EUが再生可能エネルギー使用の増大をめざすタイムテーブルと目標を掲げていこうという同じ意志を持つ国々の連合を作ると述べた。クウェートは、貧困対策が合意された優先課題であると主張して、再生可能エネルギー関係の問題は現時点で議題とするべきではないと語った。
ポルトガルは、COP-8にける進展は、特に議定書5条(方法論上の問題)、7条(情報の連絡)、8条(情報のレビュー)にもとづく報告及びレビューに関するガイドラインの完成に関して建設的なものであったと述べた。フランスは、IPCC第三次報告書(TAR)の作業をUNFCCCプロセスにおいてきわめて重要であるとして評価した。
ナイジェリアは、社会発展と貧困削減について強調した。ペルー、ルワンダ、ガンビアは脆弱な国々において能力を支援・強化する具体的措置を求め、モーリシャスは締約国に対し技術移転に実際的な意味を与えるよう求めた。モザンビークはNAPAの実施と既存の国別フォーカル・ポイントの強化に対する資金援助を訴えた。ナミビアは、開発途上国は自国の一人当たりエネルギー消費量の拡大を認められるべきだと述べた。ガイアナは、新基金は運用可能なものとされるべきであると述べ、キリバスは気候変化を考慮に入れた開発プロジェクトの必要性を強調した。イスラエルは、同国が温室効果ガス排出削減政策を展開していると語った。
CDMについては、その多くがアフリカに位置する最も貧しく脆弱な国々が利益主導のCDMプロジェクトを呼び込むことができないかもしれないとウガンダが語った。国際商工会議所は、CDMの方法が複雑になりすぎつつあると警告を発し、企業の投資に対し規制面での確実性が必要であると主張した。バングラデシュは、LDCに対する多国間CDMプログラムを支持した。
アメリカは、同国の気候問題に対するアプローチは健全な経済政策に根ざしたものであると述べ、その経済における温室効果ガス集約度を10年間で18%削減するという同国のコミットメントについて語った。アメリカは、経済成長が環境問題の進展に対するカギであると訴えた。ドイツはこれに対し、「絶対値」の排出削減を訴え、気候変動対策の失敗は経済的損害につながると述べた。
今後の行動について、ドイツは、全先進国がさらに削減を行うことを誓うのであれば、2020年までに温室効果ガス排出量を1990年比40%削減することを約束すると述べ、EUは約30%の排出削減を約束した。スウェーデンは、開発途上国のコミットメントに関する対話を求めてロシア、ベルギーの支持を得、オマーンとナイジェリアから反対された。アルゼンチンは、附属書I国がまだ気候変化に対して主導的立場を取っていないと語った。Moosa共同議長は話し合いを総括し、会合を終了した。
円卓会議III「総括」:午後、Baalu COP議長は3回目、そして最後の円卓会議を開催した。デリー宣言についての話し合いが行われる中で、同宣言では2012年以降の行動について考慮に入れるべきであるとイタリアが述べた。ノルウェイは、より広範な気候変動体制を求めた。カナダは、同宣言では議定書批准、IPCC
TARの推薦、温室効果ガス排出削減の取り組み、UNFCCCの究極目標について検討すべきであると述べた。クック諸島は世界気候デーの設置を求めた。サウジアラビアは、UNFCCCはエネルギー条約ではないと訴え、同宣言は気候的影響と附属書I国の対応措置の影響に対する適応を優先課題とした合意文書であるべきであると語った。
非附属書I国のコミットメントについては、新たなコミットメントが憶測されるあらゆるテキストにG-77/中国が反対した。ベネズエラは、附属書I国による技術移転及び融資に関する措置は十分なものではなかったとし、COPに対しUNFCCCとマラケシュ・アコードにおける遵守について取り上げるよう求めた。キューバは開発の権利を主張し、開発途上国に対する新たなコミットメントに反対した。EUは技術改革と経済発展にとって緩和は強力であることが判明していると強調した。アイスランドは、炭素集約度と、無駄な排出を避ける技術開発を促進する必要性について訴えた。インドは、開発途上国が発展する十分な環境的「余地」が与えられるよう求めた。タイは、締約国に対し贅沢による排出と生活に必要な排出を区別するよう求めた。
リビアは全ての締約国に対し、UNFCCCにおける自分たちのコミットメントを尊重するように求めた。パラオは、生物多様性、珊瑚礁、一部の既存文化が温暖化によって危機にさらされていることに触れ、全ての締約国による温室効果ガス排出量即時削減を求めた。
カタール、エジプト、アルジェリアは新規コミットメントに反対し、締約国に対しUNFCCC4条8及び4条9(悪影響)の運用化を促した。
持続可能な開発に対処する必要性については、マレーシアが食料保障、水資源、沿岸地域及び海洋、再生可能エネルギーに対する気候的影響に対処する作業プログラムの開発をCOPに対し求めた。ブラジルは、政策措置は再生可能エネルギー、技術移転、キャパシティ・ビルディングを促進する行動と連携していなくてはならないと述べた。EUは、再生可能エネルギーは持続可能な開発と気候変化の相乗作用の良い例であると強調した。
オーストリアは気候変化、エネルギー消費パターン、再生可能エネルギー、天然資源を結びつけた。チリは、持続可能な開発のための国家戦略では適応・緩和政策が扱われなくてはならないと強調した。チャドは、温室効果ガス削減を目指す唯一の法的に有効な手段は議定書であると強調し、タンザニア、セネガル、オーストリア、マラウィ、ノルウェイと共に全ての国々の批准を求めた。
CDMについては、パプアニューギニアが森林・生物多様性に対するインセンティブの増大を求めた。ブラジルは、大都市におけるプロジェクトを支持した。エジプトは、CDMに対するその国家戦略には環境的十全性、持続可能な経済発展、天然資源の保全に関する規定が含まれることになると述べた。タンザニアは、プロジェクト配分における公平性を主張した。
キャパシティ・ビルディングについては、ネパールがLDCを代表し、制度的キャパシティ・ビルディングが優先的なニーズであると主張し、UNFCCC6条(教育・訓練・啓蒙)にもとづく作業プログラムの即時実施を求めた。
Baalu COP議長は、地域グループのスポークスパーソンに対し、デリー宣言に関する自由形式の非公式協議に参加するよう呼びかけ、閣僚級会合を閉会した。
コンタクト・グループ
非附属書I国問題:Jose Romero議長(スイス)による本コンタクト・グループは丸一日の会合を行った。午前中、代表者らは改訂版ガイドラインの構造について話し合った。午後はEstrada
SBI議長が閣僚級コンタクト・グループを招集し、同ガイドラインに対する新しい草案を提議した。ブラジルはG-77/中国を代表して、このテキストを話し合いのたたき台として承認した。EUはオーストラリアと共に、同テキストを検討するために追加の時間が欲しいと要求した。Estrada議長は非公式協議を行うために、同会合を中断した。再開後、各締約国はいくつかの懸念を口にしたが、Estrada議長はそれをガイドラインに盛り込むことはできないがCOPに対する口頭報告で言及することはできると述べた。アメリカは、非附属書I締約国は附属書I国の国別報告に関するガイドラインにある項目を自主ベースで使用することができるというパラグラフを決定テキストに移すことを提案した。
改訂版ガイドラインを採択する決定テキストについて、EUが同ガイドラインに対するレビューの必要性をうたったテキストを求め、アメリカの支持を得たが、G-77/中国に反対された。日本は、国別報告の比較可能性を保証するために同ガイドラインを「使用するべきこと(should
be used)」ではなく「使用するとすること(shall be used)」とする文言の方をよしとし、G-77/中国の反対を受けた。オーストラリアは、行うべき作業をリストアップした手続き関係のパラグラフを加えることを提案し、G-77/中国から反対された。Estrada議長は、これらの提案に対しては何一つ合意が達せられないと述べた。G-77/中国は、国別報告の完成は資金提供を受けてから3年以内という期限に反対を唱えた。開発途上国は「資金と能力の許す範囲で」同ガイドラインを用いるべきかどうかなどについて、締約国の間で意見が分かれた。
非附属書I国国別報告に関する専門家諮問グループ(CGE)の新しい委託事項に関する決定テキストについては、EUが国別報告の自主レビューに関するプロセスの開始を求めた。Estrada議長は、国別報告のレビューは附属書I国と非附属書I国の国別報告プロセスにおける重要な違いであると述べた。CGE会合に対する資金供与についての日本からの質問に対し、アメリカは資金が中心的予算から出るとは驚きであると述べ、さらに協議を行わなければ同テキストには合意できないと述べた。Estrada議長は、同テキストをそのままの状態でプレナリーに持ち込み、承認・却下を締約国にゆだねると述べた。
SBI
Estrada議長は夕刻、遅い時間にSBI会合を招集した。
組織上の問題:議長以外の役員の選出に関して、Estrada議長は、結論は金曜日午前中までにできあがり、Baalu
COP-8議長により発表されると述べた。
非附属書I国の国別報告:初回国別報告に対する第4回編纂統合に関する検討:締約国は、同決定草案をCOPによる検討に供すことで合意した(FCCC/SBI/2002/L.23)。
非附属書I国の国別報告作成に関するガイドライン改定:Estrada議長は、決定草案がまだできあがっていないと語った。代表団から同文書に対して多くの提言・追加・提案があったと述べて、同議長は締約国は「妥協の精神」で同ガイドラインの採択に合意したと語った。EUは、同決定を見たいという要望を出した。Estrada議長は30分間会合を中断したが、再開するや否やEUがテキストを見たいという要望を繰り返した。カナダは、採択前に文書に目を通すという国連の「通常」手順を主張した。Estrada議長は、同テキストは金曜日の検討までにはできあがるだろうと述べて会合を終了した。
会場の外では
木曜日夜のSBIの突然の散会で、最終テキスト無しで非附属書I国問題の決定を採択するというEstrada議長の提案は多くのオブザーバーを愕然とさせた。一部のオブザーバーは、COP-8議長のリーダーシップの「弱さ」に対してさらに懸念を強め、最終的にデリー宣言を生み出すことができるのかと疑問視している。
一方、リサーチNGOから成る新しい利害グループ「RINGO」が金曜日、正式に発表されるというニュースがあった。
COPプレナリー:COPプレナリーは午前10時からと午後3時から、決定採択のためにメイン・プレナリー・ホールで会合を行う予定。
SBI:SBIは、非附属書I国国別報告に関する作業と資金メカニズムに関する結論に合意すべく会合を行うが、時間は後ほど発表される。詳しくはモニターを参照のこと。
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