国連気候変動枠組条約第9回締約国会議
2003年12月1日月曜日
UNFCCCの第9回締約国会議(COP-9)および実施に関する補助機関(SBI-19)と科学的・技術的助言に関する補助機関(SBSTA-19)の第19回セッションは、12月1日月曜日、イタリアのミラノで開催された。午前中、参加者は開会挨拶を聞き、COPプレナリーでの組織上の問題を議論した。午後には、SBIとSBSTAのオープンセッションが開催された。出席者は、組織上の問題、IPCC第三次評価報告書(TAR)、手法問題と非付属書I国別報告書の件を議論した。夕方には、締約国が、IPCC
TARと非付属書I国別報告書に関するコンタクトグループの会合を行った。
COPプレナリー
セッションの開会:COP-8 副議長のEnele Sopoaga(ツバル)が、セッションの開会を宣言した。
COP-8議長のT.R. Baaluに代わり、インドの環境と森林に関する共同長官のC. Viswanathは、付属書I諸国に対し、気候変化の影響への対処で先頭に立ち、途上国に資金および技術的な援助を提供するよう呼びかけ、途上国への約束導入を拒否した。
その後、副議長のSopoagaが、ハンガリーの環境と水の大臣であるMiklos Persanyiを紹介し、同氏は、拍手によりCOP-9議長に選出された。
Persanyi議長は、途上国による気候にやさしい生産パターン実施の努力に注目した。同議長は、議定書はまだ発効されていないが、多数の締約国が批准したことは、その重要性を実証するものだと述べた。
イタリアの環境とテリトリー担当大臣であるAltero Matteoliは、COP-9が気候変化との戦いで新しいそしてより強力なイニシアティブを明らかにする機会を提供すると主張した。
ロンバルディ地方の長官であるRoberto Formigoniは、気候変化に関する地域的な行動の重要性を強調した。
ミラノ市長のGabriel Albertiniは、気候変化やその影響、そして将来の世代にとっての福利について、長期的な見方をするべきであると述べた。
ミラノ州の長官であるLuigi Cocchiaroは、輸送や再生可能エネルギー分野での実施強化を呼びかけた。
UNFCCCエグゼキュティブディレクターのJoke Waller-Hunterは、議定書の発効日はまだ確定されないままだが、それで行動に向けたモーメンタムが遅れていないことは、心強いと述べた。同ディレクターは、プログラム実行とCOP決定の実施のため、適切な資源の提供を確保する必要があることを強調し、予算の議論が需要と供給の現実的な適合を生むことが重要であると述べた。
組織上の問題:手続き規則の採択:COPは、規則42(投票)を除いた、手続き規則案の適用で合意した。Persanyi議長は、手続き規則全体の採択に関し、締約国と協議し、COP-10で報告することを指摘した。
議題書の採択:Persanyi議長は、議題書(FCCC/CP/2003/1 and Add.1)を採択のため提出し、COP-8の議長団が、UNFCCC4.2条(a)と(b)に規定する約束の適切性に関する第二回レビューについての項目を、一時保留するよう提案したことを指摘した。サウジアラビアは、クリーンなエネルギーの輸出についての割当量計算規則に関するカナダ提案を排除するよう求め、オマーンとEUはこれを支持したが、カナダは反対した。
締約国は、約束の適切性の第二回レビュー、クリーンなエネルギー輸出に関するカナダ案、議定書2.3条(政策措置の悪影響)に関係する問題を、議題項目として一時保留した上で、議題書を採択した。Persanyi議長は、これらの項目について、締約国と協議することに合意した。
開会ステートメント:モロッコはG-77/中国に代わり、ロシア連邦に対して議定書を批准するよう呼びかけ、また米国に対し「戻るよう」呼びかけ、事務局に対する資金提供が低調であることへの懸念を表明した。
ジンバブエは、アフリカグループに代わり、付属書I諸国が温室効果ガス排出で指導的役割を果たしておらず、またそうする政治的意志にも欠けていると述べた。
イタリアは、EUに代わり、米国に対し、議定書規定で米国に期待されているのと比較可能な行動をとるよう促した。
ツバルは、AOSISに代わり、CDM規定新規植林と再植林に関する議論では、メカニズムの社会的、環境的、経済的完全性を維持するべきであると述べた。
パキスタンは、COP-9での作業は、キャパシティビルディング(能力向上)、技術移転そしてSCCFに焦点を当てるべきだと述べた。
タンザニアは、LDCsに代わり、LDCsの脆弱性に焦点を当てた上で、議定書発効の必要性と、技術移転、キャパシティビルディング(能力向上)、LDCsに関係する問題で建設的な作業を行う必要性を強調した。
SBI
組織上の問題:議題書の採択:SBI議長のDaniela Stoycheva(ブルガリア)は、セッション開会を宣言し、議題書(FCCC/SBI/2003/
9 and Corr.1)を採択のため提出した。第二回および第三回の国別報告書提出に関する小項目について、G-77/中国は、提出の「頻度」に関する言及に反対し、サウジアラビアとともに、提出のタイミングの問題を取り上げる以前に、国別報告書作成への資金的・技術的支援が重要であることを強調した。EUは、オーストラリアとともに、頻度への言及を含めることを支持して、決定書17/CP.8(非付属書I国別報告書作成ガイドライン)が提出の「頻度」に言及していることを指摘した。
第一回国別報告書の統合と5回目の編集の考察を取り扱う小項目に関し、G-77/中国は、非付属書I諸国が排出を削減するためにとるステップに関する事務局のまとめた文書に反対し、米国はこのG-77/中国の議論に反対した。
この2つの小項目に関する非公式折衝のための休憩を経て、プレナリーでの議論は継続され、参加者は、提出の頻度に関する小項目を一時保留し、文書での言及を削除することで合意した。
その後、参加者は、UNFCCC4.8条と4.9条(悪影響)の実施を扱う議題項目について議論した。EUは米国とともに、決定書5/CP.7の実施を小項目として議論する必要性を強調した。G-77/中国および他の諸国は、議題書小項目を決定書5/CP.7に限定するのではなく、4.8条に関係するすべての問題を扱うよう提案した。議論の後、この小項目は同じく一時保留とし、議題書は修正されたとおりに採択された。
非付属書I国別報告書:第一回国別報告書の統合と第5次の編集に関する考察:EUは日本の支持を得て、これまでのすべての国別報告書に関して、詳細な編集と統合を求めた。
CGEの作業:EUは、ワークショップへの最大限の参加を得ることの重要性を強調した。米国は、透明性のある情報、明確で現実的な目的、効率的で柔軟性のあるプログラムの必要性を強調した。
資金的・技術的支援の提供:EUは、国別報告書を作り始めていない締約国に対し、GEF支援策の活用を奨励した。
SBIは、S.N. Sok Appadu (モーリシャス)を議長とする国別報告書コンタクトグループの召集で合意した。
SBSTA
セッションの開会: SBSTA議長のHalldor Thorgeirsson(アイスランド)がセッションの開会を宣言し、参加者は、議題書(FCCC/SBSTA/2003/11)を採択した。議長以外のオフィサー選出に関し、Thorgeirsson議長は、COP-9議長団メンバーの選出と合わせて検討されると述べた。
IPCC TAR:Thorgeirsson議長は、セッション前の折衝のまとめを提出し、新しい議題項目を考えるアプローチには、情報および経験での交換強化、データと情報の間のギャップ明示、政策関連分析の提供が含まれると述べた。同議長は、適応と緩和が、持続可能な開発に貢献できる機会や解決策を紹介した。マレーシアは、G-77/中国に代わり、新しい議題項目が途上国締約国に新しい約束を導入するものではないことへの希望を表明し、適応ニーズの緊急性からして、SBSTAが適応と緩和の長期的な計画策定に重点を置くべきではないことを強調した。EUは、SBSTAが、事例研究やテクニカルペーパー、ワークショップなど広範囲のアプローチや手法を利用するべきであり、利害関係者の策定する活動を促進するべきであると述べた。日本は、段階的で実際的なアプローチに基づくプロセスとするべきだと述べた。ノルウェーは、セッション前の折衝での歩みよりの程度や楽観的な見方を指摘し、ニュージーランドとともに、ボトムアップアプローチとトップダウンアプローチとのバランスをとることの重要性を強調した。
サウジアラビアは、SBSTAがその委託権限を超えず、UNFCCC4条(約束)の概念の中にとどまることを主張した。米国は、適応と緩和の考えを、持続可能な開発に貢献する機会と解決策、そして長期的な計画に、分けることへの懸念を表明した。サウジアラビアは、この問題を広範囲な観点で扱うことに、懸念を表明した。SBSTAはこの問題のコンタクトグループを召集することで合意した。
手法問題:手法での作業のレビュー:オーストラリアは、手法での作業に関する将来の作業プログラムについて、見解をまとめることの価値を指摘し、EUとともに、データインテーフェスの必要性を強調した。米国は、重要問題に優先度をつけ、キャパシティや専門性、そして資金的な配慮を取り上げる必要性に注目した。SBSTAは、これらの問題を討議するコンタクトグループの召集で合意した。
温室効果ガス目録:IPCCは、1996年改訂、国別温室効果ガス目録のためのガイドラインの改訂作業の進行状況を紹介し、国際民間航空機関(ICAO)は、航空輸送排出量に関するICAOでの作業に関し、SBSTAに現況報告を行った。アルゼンチンは、民間航空輸送から排出される温室効果ガス排出量削減のためのオプションを明らかにするよう呼びかけた。
EUは、国際的な航空輸送および海上輸送からの排出量が過去10年間で48%増加したことを指摘し、SBSTAがICAOと協力して、この分野でのさらなる作業の進展を達成するよう提案した。ツバルは、航空輸送および海上輸送からの排出量に関して、情報収集よりももっと積極的な行動を促し、議長に対して、この部門での排出量緩和に向けたプロセスを開始するよう要請した。日本は、改訂された手法をすべての締約国が用いるべきであると述べ、この点での公平性の重要なことを強調した。オーストラリアは、SBSTAに対し、海上および航空での排出量推定を改良するためのプログラム支援が重要であることを強調し、ICAOモデルで、航空燃料と排出量データとの比較を行うことを支持した。
Thorgeirsson議長は、Helen Plume (ニュージーランド)に対して、この問題での非公式折衝を行うよう要請し、この問題は、12月9日火曜日のSBSTAで取り上げられることになると述べた。
コンタクトグループ
IPCC TAR:SBSTA議長のThorgeirssonを議長とするこのコンタクトグループは夕方会合し、SBSTA-20のための次の特定のステップおよびCOP決定書草案という二つの議題項目での全体的な課題について議論した。EUは、実際的で長期の作業プログラム策定を提案したが、サウジアラビアはこれに反対した。中国とオーストラリアは、実際的なステップに注目することを呼びかけ、オーストラリアはノルウェーとともに、SBSTA-20での円卓会議の招集を提案した。カナダ、米国、日本は、情報交換の重要性を強調した。ニュージーランドは、クリアリングハウスの設置を提案し、G-77/中国は、これを支持した。カナダは、セッション前折衝での議長のまとめをベースにしたCOP決定書作成を提案した。Thorgeirsson議長は、SBSTA結論書とCOP決定書を締約国の提案に基づき作成すると述べた。
国別報告書:このグループは、CGE議長に対し、12月3日水曜日の次回コンタクトグループ会議に、CGE作業プログラムを提出するよう要請することを決定した。
廊下にて
第二約束期間期間の問題が底流としてある中、開会されたCOPおよびSBIプレナリーは、これからの2週間にわたりCOPの議題を独占する可能性が高い問題についての長時間の議論でうまった。これまでと同様、約束の適切性に関する第二回レビューを含めることでは、意見の対立が残り、この問題は、5年間続けて保留事項となった。SBIでの議題書採択も時間がかかり、途上国による緩和措置を強調した事務局の文書に議論が集中した。ある参加者は、途上国がこの文書を認めることへの反対を主張したのは皮肉である、というのは、この文書は、米国が議定書を拒否した理由の一つに疑問を投げかけるものだからであると述べた。また事務局の文書は、途上国への資金的・技術的支援を増加するための「武器」を提供する可能性がある一方、共通するが差異のある責任の原則をいっそう強固にし、米国が戻ってくる機会を提供すると、示唆するものもいた。
SBSTA:SBSTAはプレナリーIIで午前10時からそしてプレナリーIで午後3時から会合する。
SBI:SBIは、プレナリー Iで午前10時からそしてプレナリー IIで午後3時から会合する。
コンタクトグループ:手法問題に関するコンタクトグループは午後6時から8時、ナポリ・ルームで会合する。 |
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