国連気候変動枠組条約第9回締約国会議
2003年12月5日金曜日
金曜日、COP-9参加者は、いくつかのコンタクトグループで会合し、結論書草案とCOP決定書を審議した。SBIコンタクトグループは、非付属書I国別報告書、キャパシティビルディング(能力向上)、気候変動特別基金(SCCF)、および決定書5/CP.7
(悪影響に関するUNFCCC4.8条と4.9条の実施)の実施についての進展を議論した。SBSTAコンタクトグループは、研究と体系的観測(R&SO)、IPCC第三次評価報告書(TAR)、LULUCFに関する優れた実践方法ガイダンス、そしてCDM規定吸収量について議論した。COPが召集する付属書I国別報告書に関するコンタクトグループも会合した。
COPコンタクトグループ
付属書I国別報告書:このコンタクトグループは、Jose Ovalle (チリ)およびMichael Zammit-Cutajar
(マルタ)を共同議長としており、COP決定書案を討議した。アルゼンチンは、課題の範囲、文書提出遅れの許容範囲、P&Ms実施上の問題、そして排出レベルの上昇に関し、決定書草案では省略があると指摘した。同代表は、予測実施方法での矛盾の問題、正味排出量と総排出量が一緒にまとめられている問題を紹介した。米国は、議定書規定の約束に言及することは、時期尚早であると述べ、4.2条(a)と(b)
(先進締約国による約束の達成)の解釈に疑問を呈し、国際航空輸送に注目することに反対して、この問題の議論は、SBSTAの議論の結果を待つべきであると指摘した。
また、締約国は、第4回国別報告書の提出が期限どおりに行われやすくするためのワークショップの開催についても取り上げた。G-77/中国は、決定書案全体を通して4.2条への言及を省くことを提案し、これは判断の問題であると指摘したが、EUはこれに反対した。米国は、これによってグループで表明された懸念の多くに対処できると、示唆した。締約国は、12月8日月曜日に非公式折衝での審議を継続することになる。
SBIコンタクトグループ
非付属書I国別報告書:このコンタクトグループは、第一回国別報告書の第5回の編集およびまとめの検討に関する、およびCGE(専門家諮問グループ)での作業に関する共同議長の結論書草案改訂版について議論した。
締約国は、資金のためにプロジェクトを提出した非付属書I諸国のうちいくつの国が資格を有していたかどうかを議論し、G-77/中国は、「多くの」非付属書I諸国とする表現を削除するよう提案した。EUは、すべての非付属書I諸国が国別報告書を提出したわけではないことから、資格の有無は、誤解を招くと述べた。第一回国別報告書提出の緊急性を考え、参加者は、提出を「招請する」「促す」「奨励する」のどの表現にするべきか議論した。
締約国は、国別報告書の作成が、「キャパシティビルディング(能力向上)」への「貴重な機会」を提供するかどうか審議し、G-77/中国は、この表現の削除を求めた。日本は、各国の能力強化のため「さらなる」資金および技術的な支援をとの表現削除を良しとし、G-77/中国はこれに反対した。適応と緩和に注目した小島嶼途上国(SIDS)からの国別報告書での情報編集およびまとめに関し、ニウエとアンティグアバービューダは、これを別な統合文書としておくことを求め、米国、オーストラリア、EUはこれを支持した。
CGEでの作業に移って、締約国は、ワークショップをどう企画するべきかを取り上げた。EUは、ワークショップでは、一つの主題だけを取り上げるよりも、組み合わせアプローチですべての主題分野を取り上げることができると提案したが、G-77/中国はこれに反対した。タイは、そのようなアプローチが、必ずしもワークショップの「効果性と効率」を強化するものではないことを強調した。
キャパシティビルディング(能力向上):参加者は、議長による結論書草案を議論した。この草案は、ワークショップの必要性とタイミング、そして締約国から提出が求められる日付と内容を中心としたものである。締約国は、これらの提出分を、SBSTA-20に合わせて事務局が作成するはずの、途上国でのキャパシティビルディング(能力向上)の効果に関する文章に組み入れることを決定した。締約国は、キャパシティビルディング(能力向上)に関する決定と、キャパシティビルディング(能力向上)に関係する技術移転に関する決定とのすり合わせの必要性で意見が一致した。
GEF(地球環境ファシリティー)へのガイダンスに関し、クロアチアは、キャパシティビルディング(能力向上)強化のためのGEFのアプローチを、EITs(市場経済移行国)でのキャパシティビルディング(能力向上)の枠組に対応するものとするべきだと、GEFに要請することを提案した。スイス、オーストラリア、米国は、GEFに向けたさらなるガイダンスの文章を、関連議題項目での検討に先送りするよう提案した。G-77/中国とEUはこれに反対し、まず、キャパシティビルディング(能力向上)専門家が文章での意見を一致させることが重要であると指摘した。締約国は、時間がないことから、GEFに向けたさらなるガイダンスに関する議題項目で検討するべく、括弧内の文章を先送りすることで合意した。
SCCF:G-77/中国は、共同議長の決定書草案に関する同グループの見解を紹介し、特にSCCFが新規の追加的な資金の提供を受けるべきであること、SCCFの資金レベルは、GEFの気候変化注目分野でのそれに一致させるべきであると指摘した。その後、参加者は、文章の節ごとの読解を行った。EUは、SCCFの目的を、途上国が自国の持続可能な開発および貧困削減戦略とその実施に気候変化の要素を組み入れるのを助けるためであると述べ、G-77/中国はこれに反対した。同代表は、SCCFの機能を、国内および地方レベルでの開発活動の中で気候変化要素を主流のものとすることへの支援とするよう促し、G-77/中国は、これに反対した。G-77/中国は、予測可能で適切な資金レベルの必要性を強調し、EUとノルウェーはこれに反対した。決定書7/CP.7
(UNFCCC規定の資金供与)に活動、特に経済多角化を含めることに関し、EUはノルウェーとともに、言及の削除を呼びかけ、G-77/中国はこれに反対した。カナダは、同じ懸念を共有し、SCCFの運用開始に続いてこの問題をさらに審議するプロセスを議論するよう提案した。
決定書5/ CP.7の実施での進展:Rob Mason (英国)とAl Waleed Al-Malik (アラブ首長国連邦)を共同議長とするこのコンタクトグループの参加者は、決定書5/CP.7規定の活動実施での進展について、各締約国の予想を検討した。EUは、適応と他の問題とのつながりを強調し、決定書5/CP.7は、さらに開発されるべき重要な活動を可能にすると述べた。G-77/中国は、決定書の実施に関して、既存の作業に則った本質的な審議の必要があると述べた。ミクロネシアは、AOSISに代わり、UNFCCCでは、適応が優先することを指摘し、SIDSの脆弱性を強調し、特に保険上のチャレンジに対処し、資金へのアクセスを改善するための能力向上の必要性を主張した。サウジアラビアは、直近に行動を起こし、化石燃料の非エネルギー利用での技術開発や、温室効果ガス排出を削減し途上国への悪影響を最小限とする両者勝ちのP&Msの情報交換で、途上国を支援することの必要性を強調した。
SBSTAコンタクトグループ
R&SO:締約国は、改訂されたCOP決定書案と結論書草案を検討した。チリ、EU、米国は、自由で制約のない情報交換という原則堅持の重要性に言及することに反対し、そのような原則は存在しないことを指摘した。G-77/中国は、同グループが、この問題について内部審議を行うと述べた。G-77/中国は、地域行動計画への資金維持の重要性を強調し、この問題に関するガイダンスをGEFに提供すべきと提案した。共同議長のSue
Barrellは、この問題の規定を盛り込んだSBSTA-17の結論書に触れ、G-77/中国に対し、結論書の中に、この問題に関するGEFへの追加ガイダンスを検討するようSBIへの要請を含める必要があるかどうか質問した。G-77/中国は、この問題に関して内部折衝を行うと述べた。
IPCC TAR:Halldor Thorgeirsson議長は、非公式折衝について報告し、締約国が、既存の合意の上に構築し、制約をつけることなく作業を進め、専門家を含めた広範囲な参加を奨励する一方で、プロセス自体は締約国の管理下においておくこと、そしてすべての締約国の参加を確保することの必要性を強調した。同議長は、すべての締約国の参加を確保するような「セッション内での」ワークショップ開催を提案した。サウジアラビアは、作業ではワークショップでの用語決定に焦点を当てたものとしなければならないと述べた。G-77/中国、ニュージーランド、タイは、ワークショップの範囲決定の必要性を強調した。中国、インド、スーダン、サウジアラビアは、ワークショップで考察する優先課題に関して、組織立てた提出を行うよう提案した。EUとノルウェーは、さらなる提出の必要性はないと述べた。
G-77/中国、サウジアラビア、オマーンは、COP決定書に反対し、EU、ノルウェー、ニュージーランド、ロシア連邦、カナダは、支持を表明した。
Thorgeirsson議長は、COP決定書草案改訂版と結論書草案を提出し、締約国に対し、12月6日土曜日の非公式折衝での会合を呼びかけた。
手法問題:参加者は共同議長の結論書草案を検討した。サウジアラビアは、結論書付属書での将来の手法上の作業に関する要素に言及したパラグラフについて、これら要素での意見が一致するまで、括弧書きとすることを求めた。米国は、コストへの影響も考えるべきだと述べた。オーストラリアは、「権限のある情報源」と表現されるべきは、データベースよりも締約国が報告したデータであるべきだと述べ、ウガンダはこれに反対した。オーストラリアは、データインターフェースのスコーピングフェーズの役割を明確化する新しい文章を紹介し、締約国が、意見交換を行い、広範なオプションを検討するべきであることを強調した。ニュージーランドは、この結論書が議題副項目での作業を完了するものとする文章を提案し、カナダはこれを支持したが、EUと日本は反対した。カナダは、キャパシティビルディング(能力向上)と協調努力に関する文章を手法上の作業要素に結びつけるよう提案した。サウジアラビアは、定期的な概観に関する文章を削除するよう提案し、実施に焦点を当てる必要性を強調した。議論は、12月6日土曜日の非公式折衝でも続けられる。
LULUCFに関する優れた実践方法ガイダンス:参加者は、特にUNFCCCの下でのIPCC優れた実践方法ガイダンス(GPG)の利用を提唱し、この議定書の下での利用を提案する前にSBSTA-20でさらに検討することを提案する、結論書草案について議論した。ツバルはAOSISに代わり、十分な検討の時間もなしでのGPG採択、そしてUNFCCCと議定書でGPGを別々に扱うことの実用性について、懸念を表明した。IPCC
は、GPGがこれをどう扱っているか説明した。EU、日本、ニュージーランド、カナダは、議定書の発効に間に合うよう国別目録を作成するには、UNFCCCと議定書の両方でのこのガイドラインの採択を提唱した。ニュージーランドは、オーストラリアとロシア連邦の支持を得て、UNFCCCの実施を進めるためGPGを採択することの重要性を強調し、EUは、GPG採択の遅れが、2006年を期限とする目録提出の準備を妨げることになると指摘した。EUは、結論書草案を改訂するよりも、この会議の議事録にツバルの懸念を記録するよう提案し、ツバルはこれに反対した。
森林の劣化と他の植生タイプの後退に関し、締約国は、SBSTAから締約国に対して、定義や手法の可能性に関する締約国の見解を事務局へ提出するよう、呼びかけるべきであるかどうかで議論した。ツバルは、決定書11/CP.7
(LULUCF)への言及を提案した。
CDM規定での吸収量:共同議長のKarsten Sachは、CDM規定吸収量について保留となっている事項の概要を説明し、12月6日のコンタクトグループ会議で共同議長文書が提出されることになると発表した。INDIGENOUS
PEOPLES' ORGANIZATIONS(先住民族組織)の代表は、参加者に対し、CDM.規定LULUCFプロジェクト活動での社会経済的および環境上の基準について、国際標準を採択するよう求めた。会合はその後閉会となった。
廊下にて
金曜日には、付属書I 国別報告書の統合に関する議論で、これからの10年間での気候に関するチャレンジの大きさが示されたことから、迫りつつある第二次約束期間の問題、そして途上国による約束の問題が、表面化してきた。この議論の結果は、ミラノでの成功の礎となる可能性がある一方、こういった排出削減へのチャレンジをCOP決定書の中で認めることは、すべての締約国がグローバルな気候変化対応に参加することを意味するのではとの途上国の恐れから、かなりの曲折が予想される。より前向きな点としては、前UNFCCCエグゼキュティブセクレタリーが、こういった交渉の共同議長を務めるという事実があり、「気候のベテラン」に言わせると、これによって、同氏の「優れた外交能力」そして過去10年間の気候交渉での「アップ」と「ダウン」に関する歴史的な知識から、議論が画期的な結論に導かれる可能性がある。
さらに一点付け加えると、RINGOs (研究および独立したNGOs)が、UNFCCCの下でグループとして正式に発足した。
SBIコンタクトグループ:コンタクトグループは、次のグループが一日を通して会合する:キャパシティビルディング(能力向上)、2004-5年度プログラム予算、非付属書I国別報告書、SCCF。
SBSTAコンタクトグループ:コンタクトグループは、次のグループが会合する:技術移転、LULUCFでの優れた実践方法ガイダンス、R&SO、IPCC
TAR、CDM規定吸収量。 |
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