国連気候変動枠組条約第9回締約国会議
2003年12月9日
火曜日、COP-9の参加者は、SBIおよびSBSTAの結論書を採択し、COP決定書案を承認するために会合を持った。午前中と午後は、コンタクトグループが会合を持ち、非附属書T締約国の国別報告書、決定書5/CP.7の実施 (悪影響に関する条約第4.8条および第4.9の実施)、手法作業、CDMにおける吸収源について話し合った。午後と夜、締約国は、結論書草案採択のためにSBSTAおよびSBIはプレナリーで会合をし、SBSTAの方は作業が完了した。非公式折衝も一日がかりで行われた。
コンタクトグループ
非附属書T締約国の国別報告書: 締約国は、一日中結論書案およびCOP決定書案の検討を続けた。国別報告書の提出に関する決定書案について、G77/中国は、提出は資金の入手によって決められるとする文章を示唆した。EU、米国、豪州は、第二次国別報告書が資金入手後3年以内に提出されることを求める文書に賛成した。G77/中国は、提出の頻度について話し合うつもりはないことを強調した。米国は、非附属書T締約国が国別目録を2年おきに提出することを求める文章を提案したが、これにはG-77/中国が反対した。非公式折衝は一日中続いた。
手法問題: 共同議長Jim Penman氏(英国)は改定版結論書草案を提出した。排出予測に関するワークショップを開催することに関して、米国は、ワークショップが完了するまでフォローアップ活動を決定するべきではないと強調した。同国は、第4次国別報告書のみに焦点を当てなければならないと述べたが、これには日本が反対した。サウジアラビアは、ワークショップは附属書T締約国の予測のみに焦点を当てるべきだと主張したが、日本は反対した。カナダは、事務局にSBSTA21での検討のためにワークショップの報告書を作成するよう求める文章を提案した。
国別温室効果ガス目録の作成に関して、米国は、議定書第5条(手法問題)、第7条(情報伝達)、第8条(情報のレビュー)に関する言及を含めるべきだと要請したが、これにはノルウェーが反対した。サウジアラビアは新たな約束を生む可能性に対し懸念を示した。カナダは、議定書第5.1条(国内システム)に関する追加的言及を示唆した。締約国は、現存の潜在的作業に留意しているパラグラフを削除することに合意した。参加者は、結論書草案をSBSTAに提出することに合意した。
決定書5/CP.7の実施: 朝の非公式折衝に続き、午後、締約国は、改訂版共同議長決定書案について検討した。本文の最初の有効なパラグラフを取り上げ、参加者は保険に関するいくつかの見解にどう対応するか審議した。中国は、「保険に関する作業プログラムの可能な要素」について、米国は、保険とリスク評価について議論をしたいと述べた。また締約国は、決定書5/CP.7の規定を支持する活動に関する提出を含む文書の性質について議論を交わした。非公式の話し合いが一日中続いた。
CDMにおける吸収源:
CDMにおける吸収源に関する最終コンタクトグループにおいて、Thelma Krug共同議長(ブラジル)は、12月8日(月)から9日(火)の朝にかけて行われた非公式折衝の成果を盛り込んだ改訂版COP決定書草案を提出した。同共同議長は技術的修正案を歓迎したが、一部の国とともに議論を再燃させ、やっとのことで達成できた「微妙なバランス」を危険にさらすことのないよう参加者に要請した。カナダは、同改訂版決定書における国際的
"environmental"(「環境」)合意の認識への言及を削除し、"international agreements"(「国際的合意」)のみを残すよう提案した。スイスは、EUと共に同提案に反対したが、妥協の精神のもと、それを受け入れた。南アフリカは、より厳しい利害者の関与を望んでいたが、バランスを評価した。一部の国は、妥協を歓迎し、共同議長を祝福した。決定書草案は合意に達し、承認のためにSBSTAに提出された。
SBSTAプレナリー
Thorgeirsson SBSTA議長は、Margaret Martin氏(カナダ)とKishan Kumarsingh氏(トリニダード・トバゴ)が2004年のEGTT議長および副議長に選出されたことを発表した。チュニジアは、IPCCに第4次評価報告書に観光を含めるよう求める観光と気候変動に関するDjerba宣言を提出した。
組織的事項: 議長以外の役員選出: SBSTAは、Arthur Rolle氏(バハマ)をSBSTA副議長に、Ibrahim
Bin Ahmed Al-Ajami氏(オマーン)をSBSTA報告者として選出した。
手法問題: LULUCFに関するグッドプラクティスガイダンス: Margaret Mukahanana-Sangarwe氏(ジンバブエ)は、コンタクトグループが上手く達成した結論書に関する報告を行った。これには条約において共通の報告形式および温室効果ガス目録報告のための表に関する提案が含まれる。SBSTAは、結論書(FCCC/SBSTA/2003/L.22)を採択し、決定書草案をCOPに提出することに同意した(FCCC/SBSTA/2003/L.22/Add.1)。
収穫された林産品: SBSTAは、修正なしで結論書を採択した(FCCC/SBSTA/2003/L.21)。
議定書第7.4条における登録システムに関する問題:Murray Ward氏(ニュージーランド)は、議定書第7.4条(登録)に関する非公式折衝に関して報告した。同氏は、結論書草案の概要を説明し、事務局が取引ログを開発することを重点的に取り上げる必要性を強調し、附属書U締約国にUNFCCC補助的信託基金に貢献するための「例外的」努力をするよう要請し、附属書T締約国に登録管理者を指名するよう促した。SBSTAは同結論書を採択した(FCCC/SBSTA/2003/L.20)。
UNFCCCおよび議定書における手法作業のレビュー:Jim Penman氏はコンタクトグループの作業について報告し、締約国は結論書を採択した(FCCC/SBSTA/2003/L.25)。
温室効果ガス目録: Helen Plume氏(ニュージーランド)は、非公式折衝に関する報告を行った。同氏は、締約国は国際航空および船舶輸送に使われる燃料の排出に関する結論書草案から括弧をすべて取り除くことは出来なかったと述べた。プレナリーでの協議後、締約国は括弧を取り除くことに合意した。それからSBSTAは修正通り結論書を採択した(FCCC/SBSTA/2003/L.28)。
CDMにおける吸収源: Thelma Krug氏は、COP決定書草案に関して合意に達したと報告した。締約国は、同草案をCOPに提出することに合意した(FCCC/SBSTA/2003/L.27)。豪州は、遺伝子組み替え生物
(GMO)および外国侵入生物種(IAS)を特定することに関して懸念を示し、一方、ノルウェーは、GMOとIASを除外することに関してより力強い文章を望んだ。カナダは、炭素吸収源における自信を確立し、民間部門の参加を高める必要性を強調した。ニュージーランドは、クレジット期間は持続可能な森林管理を促進しないとの懸念を示し、2012年後に同問題を再検討するよう要請した。EUは、文章はバランスがとれていて、議定書実施に向けての進捗を反映していると強調した。
政策措置(P&M): Greg Terrill氏(豪州)は、非公式折衝について報告し、結論書草案を提出し、折衝では合意を円滑にすることは出来なかったことを指摘した。SBSTAは、これを反映する結論書を採択した(FCCC/SBSTA/2003/L.29)。
技術移転: Terry Carrington氏(英国)は、コンタクトグループの作業について報告し、結論書草案を提出した。SBSTAはこれを採択した(FCCC/SBSTA/2003/L.18)。
R&SO: Sue Barrell氏(豪州)は、コンタクトグループで話し合った結論書草案とCOP決定書草案を提出した。SBSTAは、結論書(FCCC/SBSTA/2003/L.17)を採択し、小さい文章修正を加え定書草案をCOPに提出することに合意した(FCCC/SBSTA/2003/L.17/Add.1)。
関係機関との協力: Outi Berghall(フィンランド)は、非公式折衝の報告をした。EUは、森林と森林エコシステムを通しシナジーを確認し促進することに関するCCDとCBDの共催であるワークショップが2004年3月にイタリアのViterboで開催されると述べた。SBSTAは結論書を採択した(FCCC/SBSTA/2003/L.19)。
IPCC TAR: Thorgeirsson議長は、この問題に関する作業を完了することは2つの新たな議題項目の作業に移行することを意味すると述べた。SBSTAは結論書を採択し(FCCC/SBSTA/2003/L.26)、決定書草案をCOPに提出することを決定した(FCCC/SBSTA/2003/L.26/Add.1)。ロシア連邦は、TARは全ての締約国に適用できる「地球の自然の科学的根拠」を与えると強調した。
他の事項: よりクリーンもしくは温暖化効果ガス排出の少ないエネルギーに関する問題: Thorgeirsson議長は、よりクリーンもしくは温暖化効果ガス排出の少ないエネルギーに関する問題でコンセンサスが取れていないことに留意した。カナダは、今後進捗が見られることを望んだ。SBSTAは、進捗が見られなかったことに留意する結論書を採択した(FCCC/SBSTA/2003/L.23)。
議定書第2.3条実施に関する問題: 議定書第2.3条(P&Mの悪影響)の実施に関して、Thorgeirsson議長は、合意は見られなかったと述べた。SBSTAは、結論書を採択し合意できなかったことに留意した(FCCC/SBSTA/2003/L.24)。
その他: Thorgeirsson議長は、共同実施の活動に関する議論に留意し、第7次統合報告書に含めるための報告の提出期限を2004年6月1日とし、ブラジル提案のもと2003年9月に開催されたワークショップの結果に関する議論をレビューした。
会合報告: SBSTA19の報告者Tatyana Ososkova氏(ウズベキスタン)は、SBSTA19の報告書を提出し、採択された。(FCCC/SBSTA/2003/L.16) 参加者はThorgeirsson議長に「卓越した貢献度」、透明性を重要視したこと、SBSTA議長として任期中指導力を発揮したことに感謝した。
同議長は、SBSTA19を午後10時36分に閉会した。
SBIプレナリー
キャパシティービルディング: Dechen Tsering氏(ブータン)は、コンタクトグループの作業の報告書を提出し、SBIは決定書草案をCOPに提出することに合意した(FCCC/SBI/2003/L.19)。日本は、同決定に関するキャパシティービルディング・プログラムの概要を説明した。
UNFCCC第6条: Fatou Ndeye Gaye氏(ガンビア)は、非公式折衝について報告を行い、SBIは結論書草案を採択した(FCCC/SBI/2003/L.3)。
管理・資金的事項: 2002〜2003年中間財務実績: Soycheva議長は、決定書草案(FCCC/SBI/2003/L.16)を提出した。SBIは、それをCOPに提出することに合意した。
2004〜2005年プログラム予算: John Ashe氏(アンチグアバーブーダ)は、COP決定書草案を提出した。同氏は、プログラムに関するライン・アイテムと運用資金準備金を含めるために議定書に関する準備活動用として2004〜2005年の見積りコストの表が修正されたことに留意した。アルゼンチンは、同2年間のプログラム予算および議定書のための中間配分のために評価の指示的尺度を適応するパーセンテージに関して不安を示した。SBIは、修正通り決定書をCOPに提出することに合意した(FCCC/SBI/2003/L.22)。
事務局とEUが明確化した後、Stoycheva議長は、アルゼンチンの不安はSBI19の報告書上で留意されると述べた。アルゼンチンとブラジルは、3年以上滞納している締約国によるUNFCCC関連会議に参加するための資金援助を保留する事務局のやり方に反対し、これを正すための結論書をSBIに求めた。同問題の重要性に留意し、米国はSBIがこの問題を今後の会合で取り上げるよう示唆したが、これにはアルゼンチンは反対した。Stoycheva議長は、この件に関して非公式折衝を行い、12月10日水曜日にSBIに報告すると述べた。
他事項: LULUCFに関するクロアチア提案: Jim Penman氏は、非公式折衝について報告し、結論書草案とCOP決定書草案を提出した。アルゼンチンは森林管理値を決定するために利用されるデータの明確化を求め、同決定の最終化には2年間かかったという懸念を指摘した。SBIは、結論書(FCCC/SBI/2003/L.17)を採択し、決定書草案をCOPに提出することに合意した(FCCC/SBI/2003/L.17/Add.1)。
4.6条におけるクロアチアの特殊な状況: Stoycheva議長は、結論書草案(FCCC/SBI/2003/L.18)を提出し、SBIは採択した。
他事項: Stoycheva議長は、条約の下でベラルーシが1990年を基準年とする意図のある事に関する結論書草案を提出した。アルゼンチンは、ベラルーシが条約4.6条を適用していたかどうか明確化するよう求め(EITのための柔軟性)、同議長はそうではなかったと述べた。SBIは結論書を採択した。(FCCC/SBI/2003/L.21)
サウジアラビアは、G-77/中国に変わり、手順ルールのルール10に従って、SBI-20および今後の会合の暫定議題は「事務局の機能と運営の継続的レビュー」に関する項目を含むべきであると要請し、同提案はSBI―19の報告書で公式に留意されるよう求めた。SBIはこの要請を受け止めた。
廊下で
水曜日、閣僚が到着する前に作業を完了しようと各国は集まり、非公式折衝やコンタクトグループは火曜日の夜遅くまで続いた。真剣な取り組みが継続する中、多くの参加者が夕刻、気候シンボルファッションショーに駆けつけることができた。
もう一つ注目すべきことは、骨の折れる交渉がここ数年間続いていたが、夜から朝方にかけて最後の激しい議論が行われ、ついに締約国はCDMにおける吸収源の詳細に関する合意にたどり着いた。これによってBAPAに関する最後の未解決問題の一つに終止符が打てたことになる。
ハイレベル会合: ハイレベル会合がプレナリーTで午前10時に始まる。国連機関、専門機関、政府間組織、NGOの発言を聞く。
ハイレベル円卓会議: 気候変動、適応、緩和、持続可能な開発に関するハイレベル円卓会議がプレナリーTにて午後3時始まる。
コンタクトグループ: コンタクトグループは決定書5/CP.7の実施に関してフローレンスで午前10時から、特別気候変動基金に関してはヴェニスで12時から会合を行う。 |
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