地球環境
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国連気候変動枠組条約第9回締約国会議

2003年12月10日水曜日




水曜日、COP-9ハイレベルセグメントが開会した。出席者は、国連機関、専門機関、政府間組織、NGOsの代表によるステートメントを聞いた。午後、第一回ハイレベルラウンドテーブルが行われ、「気候変化、適応、緩和、持続可能な開発」に焦点が当てられた。夕方、SBIが、結論書の採択と、COP決定書案での合意、そしてSBIの作業完了のため会合した。決定書5/CP.7(悪影響に関するUNFCCC4.8条と4.9条の実施)に基づく活動の実施に関するコンタクトグループおよび特別気候変動基金(SCCF)に関するコンタクトグループの会合が行われた。

ハイレベルセグメント


本セグメント開会にあたり、COP-9議長のPersanyiは、出席者の行動とリーダーシップへの献身を賞賛した。同議長は、UNFCCCとその議定書こそ、地球気候に対する危険な干渉を防止する唯一の有効なオプションであると指摘した。イタリアのSilvio Berlusconi首相の代理として、イタリア環境とテリトリー省大臣のAltero Matteoliは、欧州憲法制定に向けた条約案で、EU加盟国は、温室効果ガス排出削減への義務達成を規定されていると述べた。Kofi Annan国連事務総長の代理として経済社会問題担当国連事務次長のJose Antonio Ocampoは、議定書をまだ批准していない附属書I締約国に対し、できるだけ早期の批准を勧め、ミレニアム発展目標の重要性を強調した。UNFCCCエグゼキュティブセクレタリーのJoke Waller-Hunterは、COP-9が約束と政治的意志の存在の下、行動に向けた健全な組織枠組の確立が可能であることを実証したと述べた。

国連機関代表のステートメント:
UNEPエグゼキュティブディレクターのKlaus Topferは、主に開発途上国の貧困層に影響するような「倫理的チャレンジ」に対処するための資金的、技術的支援を呼びかけた。Jose Antonio Ocampoは、経済多角化での資金メカニズムと貿易の役割を強調した。GEFのCEOおよび会長であるLen Goodは、適応計画および措置に関するパイロットプロジェクトが、GEFの新しい戦略的優先度を持つものであると宣言し、SCCFの資源運用を開始するため、明確なガイダンスを呼びかけた。

世界銀行副総裁のIan Johnsonは、気候変化に対応するには、公共資金と民間金融の両方が必要であることを指摘した。IPCC議長のRajendra Pachauriは、参加者がIPCC TARをUNFCCCに関する作業に有用と考えることへの希望を表明した。CCDエグゼキュティブセクレタリーのHama Arba Dialloは、UNFCCCの効果的な実施と、CCDが地方レベルでの作業の重複を避け、資源を最大限活用することの重要性を強調した。OPECエグゼキュティブセクレタリーのAlvaro Silva Calderonは、悪影響についてのOPEC諸国の懸念が十分取り上げられないままであると述べた。OECD事務次長のKiyotaka Akasakaは、OECDが、その加盟国とともに、気候変化を制限するため市場本位メカニズムの利用を強化し、持続可能な経済発展に貢献するよう、努力していると述べた。

政府間組織およびNGOSのステートメント:
INTERNATIONAL ENERGY AGENCY(国際エネルギー機関)は、エネルギー効率化政策措置の重要性を強調した。INTERNATIONAL INSTITUTE OF REFRIGERATION(国際冷蔵機関)は、2020年までにフルオロカーボンの排出を半減するとの目標を提示した。CLIMATE ACTION NETWORK(気候行動ネットワーク)は、ロシア連邦に対し議定書を批准するよう呼びかけた。BUSINESS COUNCIL FOR SUSTAINABLE ENERGY(持続可能なエネルギーのためのビジネスカウンシル)は、CDM EBに対し、エネルギー効率化プロジェクトおよび再生可能エネルギープロジェクトでの標準ベースライン策定を求めた。第6回INTERNATIONAL INDIGENOUS FORUM ON CLIMATE CHANGE(気候変化に関する国際先住民族フォーラム)の代表は、CDMプロジェクトにおける先住民族の事前のインフォームドコンセントおよび参加拡大の必要性を強調した。CLIMATE ALLIANCE(気候連盟)は、COP-9に対し、地方の、地域のそして国の気候政策の範囲、役割、補足性、一貫性を考えるよう呼びかけた。

WWF SOUTH PACIFIC(WWF南太平洋)は、気候変化によるSIDSへの「破壊的な」影響を強調した。INTERNATIONAL CHAMBER OF COMMERCE(国際商工会議所)は、発明を促進し、ビジネス界の参加を刺激するための規則を呼びかけた。GLOBAL UNIONS AND INTERNATIONAL CONFEDERATION OF FREE TRADE UNIONS(グローバル連合および自由貿易のための国際同盟)は、IPCC報告書の中に雇用への配慮を含めるよう求めた。LOMBARDY FOUNDATION FOR THE ENVIRONMENT(環境のためのロンバルディ基金)は、政府は、具体的な行動を行うため、地方のグループや協会にもっと依存するべきだと述べた。RESEARCH AND INDEPENDENT NGOs(研究と自立NGOs)は、グローバルな協調と政治的な意志、創造性のある発想、政治的な修辞の排除を呼びかけた。WORLD COUNCIL OF CHURCHES(世界教会カウンシル)は、環境の劣化が、正義と霊性の問題であると述べ、排出削減は、モラル上の目標であるべきことを強調した。

ラウンドテーブルI―「気候変化、適応、緩和、持続可能な開発」:
このラウンドテーブルは、日本の環境省大臣である小池百合子、およびマーシャル諸島の健康と環境大臣であるTadashi Lometoを共同議長とした。小池共同議長は、現在の進展状況分析の必要性を強調し、さらなる行動を明示した。Lometo共同議長は、SIDSの脆弱性を強調した。

ラウンドテーブルの第一部で、締約国は貧困撲滅、経済成長、食糧安全保障を議論した。いくつかの締約国は、議定書の発効、および開発途上国の気候変化対応への十分な資金支援を、呼びかけた。G-77/中国に代わり、モロッコは、先進国が、脆弱な国家の懸念や状況を無視するなら、適応も緩和措置も成功しないと述べた。ベニンは、貧困削減と適応措置を統合することの重要性を強調した。イタリアはEUに代わり、温室効果ガス排出削減に関し、先進国はより努力するべきであり、開発途上国も、その目標に向けたステップを踏むべきであると述べた。ニュージーランドは、SIDSの脆弱性を強調し、島の文化に対する脅威を指摘した。スロベニアは、他の諸国とともに、議定書の発効がなくても議定書の約束を守ると述べた。モザンビークは、ベルギーとともに、「議論は少なく、行動を多く」と呼びかけた。ミクロネシアは、先進国に対し、SIDSでの適応プロジェクトへの資金支援に関するそれぞれのUNFCCCの約束を達成するよう呼びかけた。パナマは、適応にも緩和と同じUNFCCCでの立場を与えるべきであると述べた。

ラウンドテーブルの第二部で、締約国は、脆弱性、気候関連災害、影響と適応を取り上げた。アルゼンチンは、適応プロジェクトを容易にするメカニズムをと呼びかけた。サモアは、SCCFがコミュニティーに根ざした適応プロジェクトに資金を供与することへの希望を表明した。ロシア連邦は、緩和努力が気候変化を削減する効力を持つかどうかで残されている不確実性が、適応の追及を正当化するものであると述べた。ブルキナファソは、NAPAs実施のためのメカニズムがない場合のNAPAsの目的に疑問を呈した。中国は、先進国が排出緩和で先頭にたつなら、開発途上国も貢献が行えると述べた。オーストリアは、原子力は気候変化と戦うためのオプションの一つではないことを指摘した。ネパールは、同国が気候変化には目立った貢献をしていないにもかかわらず、排出緩和努力を遂行中であると述べた。

ラウンドテーブルの第三部で、出席者は、国の発展のための適応と緩和について議論した。フランスは、今世紀が気候変化に苦しむ集団による無責任の世紀として記録されるか、気候の制御と人類の成熟の世紀として記録されるかであることを強調した。デンマークは、再生可能エネルギー増加を強調した。サウジアラビアは、緩和と適応措置が開発途上国による新たな約束に結びつくものであってはならないと述べた。

閉会にあたり、アルゼンチンは、ブエノスアイレスでのCOP-10開催の申し出を発表した。

コンタクトグループ

決定書5/CP.7の実施:
出席者は、火曜日夜遅くの結論書草案に関する非公式折衝の後、締約国および関連国際機関に、気候変化の悪影響から生じる開発途上国のニーズを満たすための活動について報告するよう求めることで合意した。サウジアラビアは、同国の以前の賛意を翻し、対応措置の悪影響に対する行動についての報告に関して、括弧書きの文章追加を提案し、G-77/中国、ミクロネシア、米国、EU、ニュージーランド、オーストラリア、日本、カナダはこれに反対した。非公式折衝の後、このグループは、改訂することなく結論書草案に合意し、結論書草案の附属書の中にある交渉文章草案に、サウジアラビアの提案を含めることとした。

SCCF:一日を通しての非公式折衝と二国間会合の後、Rawleston Moore共同議長は、共同議長による決定書草案を提出し、「そのまま受けるかやめるか」式文章であることを指摘した。EU、カナダ、日本は、共同議長の文章を受け入れることができると述べたが、G-77/中国は反対した。G-77/中国は、「そのまま受けるかやめるか」というオプションに反対し、経済多角化活動の優先性およびそのための資金に関する別な文章を提案した。非公式折衝のための休憩後、Moore共同議長は、共同議長がこれ以上折衝を行えないと報告し、決定書草案は括弧書き文章つきでSBIに送られると述べた。

SBIプレナリー

組織上の問題:議長以外の役員選挙:
SBIはFadhel Lari (クウェート)を二期目のSBI副議長として選任した。SBIラポーターは、SBI-20で選任される。

非附属書I国別報告書:第一回国別報告書の第5回編集および統合への配慮:
SBIは、COPに対し決定書草案 (FCCC/SBI/2003/L.23)を提出することで合意した。

CGEの作業:
SBIは、非附属書I国別報告書に関する専門家諮問グループの作業における結論書(FCCC/SBI/2003/L.24)を採択した。

資金的および技術的支援供与:
SBIは、この項目に関する結論書(FCCC/SBI/2003/L.25)を採択した。

第二回、および適当な場合には第三回の国別報告書提出:
Stoycheva議長は、実体的な結論には至っていないとのべ、SBIは、この項目をSBI-20でも引き続き検討することで合意した結論書(FCCC/ SBI/2003/L.30)を採択した。

資金メカニズム:SCCF:
Rawleston MooreとFrode Neergaardは、コンタクトグループについて報告した。SBIは、さらなる行動のため、決定書草案(FCCC/SBI/2003/L.31)をCOP議長に提出することで合意した。G-77/中国は、アルゼンチン、中国、サウジアラビアとともに、この問題での進展がないことへの懸念を表明し、先進国は、 COP-7での義務の達成を怠っていると述べた。EUは、COP-9でSCCFに関する作業をまとめるとの約束を表明した。

GEFへの報告:
SBIは、決定書草案(FCCC/SBI/2003/L.27)をCOPへ送ることで合意した。

GEFへの追加ガイダンス:
SBIは、決定書草案(FCCC/SBI/2003/L.28)をCOPに送ることで合意した。

UNFCCC4.8条と4.9条の実施:
決定書5/CP.7規定の活動実施に関する進展:Rob Mason (英国)はコンタクトグループの議論に関し報告した。SBIは結論書(FCCC/SBI/2003/L.26)を採択した。

LDCsに関係する問題:
Jose Romero (スイス)は、非公式折衝について報告した。SBIは、決定書草案(FCCC/SBI/2003/L.29/Add.1-2)をCOPへ送ることで合意した。4.9条(LDCs)の実施状況評価に関する結論書草案について、タンザニアはLDCsに代わり、LDC作業プログラムの実施でこれまでに達成した進展にSBIが、満足の意を表明した箇所に反対した。プレナリーでの審議に続いて、SBIは、4.9条の実施進展をCOP-10で評価するとの改正を行い、結論書草案(FCCC/SBI/2003/L.29/Add.3)をCOPに送ることで合意した。LDC基金の運用に対するさらなるガイダンス提供に関し、タンザニアはLDCsに代わり、この問題についてCOP-9で合意に達する必要性を強調した。SBIは、結論書草案(FCCC/SBI/2003/L.29)をCOP議長に送ることで合意した。

CACAMの要求:
Stoycheva議長は、結論に達しなかったと述べた。

セッションに関する報告書:
SBIラポーターのEmily Ojoo-Massawaは、セッション報告書を提出し、SBIはこれ(FCCC/SBI/2003/L.15)を採択した。

閉会に当たり、Stoycheva議長は、滞納締約国の参加に対し資金供与を保留するという事務局の行為について、締約国と非公式に折衝したと述べ、SBIが、この懸念に注目し、この行為をCOP-10中停止するよう提案した。また同議長は、SBIが、開発途上国およびEITs諸国のとってのこの行為の意味合いを調査するよう事務局に要請し、この問題についてSBI-20 で報告すると述べた。

Stoycheva議長は、午前1時16分、SBI-19を閉会した。

廊下にて

京都議定書採択の6周年を迎え、進展の欠如に対する焦燥感は明らかであった。締約国は、SBI結論書採択のための深夜のプレナリーで集まる中、意見が一致していない問題の審議を、コンタクトグループおよび非公式折衝で続けた。オブザーバーは、COP-9で最大の問題となるものと一般に見られていたCDMでの吸収量問題で解決が図られた一方、途上国問題での意見の不一致が過小評価されていたことを指摘した。この点は、ある出席者が「パンドラの箱を開けたもの」と形容したSCCFについての熱の入った議論でも、また非附属書I国別報告書の考察でも明らかであった。 第二回および適当な場合には第三回の国別報告書提出の考察をSB-20まで延期することにEUが抵抗しなかったことは、EUの交渉義務から全く外れたものだと、幾人かの動揺した出席者は述べた。この驚きは、一部の開発途上国出席者の間でも同じように明らかで、EUの取引材料放棄を、信じられないとのひそかな笑みで迎えた。

今日の予定

ハイレベルセグメント:
第二回ラウンドテーブルの議論は、午前10時に、第三回ラウンドテーブルの議論は、午後三時に、プレナリーIで開催される。