地球環境
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Vol. 12 No. 270

国連気候変動枠組条約第22回補助機関会合サマリー

2005年5月19-27日




国連気候変動枠組条約 (UNFCCC) 第22回補助機関会合(SB 22) は、2005年5月19-27日、ドイツ、ボンのマリティムホテルで開催された。この会合には、156の条約締約国、一つのオブザーバー国、および多数の国連機関、政府間組織、非政府組織(NGOs)から1600名ほどの参加者が出席した。

SB 22は、2005年2月に京都議定書が発効して以後、初めての補助機関会合である。また、2005年11月28日から12月9日にカナダ、モントリオールで行われる第一回京都議定書の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議 (COP/MOP 1)の事前準備会合として最後の会合である。

SB 22で、科学的・技術的助言のための補助機関 (SBSTA) は、適応、緩和、技術開発と技術移転、附属書 I 締約国間での政策措置に関係する問題を取り上げた。また他の広範な問題での作業を終了しており、これには次のものが含まれる:UNFCCC関係での研究上のニーズ、関連する国際機関との協力、議定書2.3条(政策措置の悪影響) の実施、方法論。

実施のための補助機関(SBI)は、COP/MOP 1とUNFCCC第11回締約国会議(COP 11)に向けての準備を検討した。またSBIは、さまざまな運営上および資金上の問題を取り上げ、2006-2007年プログラム予算に関しては、結局、提案されていた金額よりも175万米ドル削減したレベルで合意した。また出席者は、広範な議論の後、後発開発途上国および非附属書 I 締約国による国別報告書(National Communications)という、SBIの議題の中でも長期間議論されてきた二つの問題を解決した。しかし、特別気候変動基金に関する作業は終了できず、この問題は、SB 23で再度取り上げることとなった。

SB 22は、今年初めの京都議定書発効がもたらしたモーメンタムで議論に弾みがつき、このことは、プレセッション政府専門家セミナー(SOGE)でも明らかであった。しかし、交渉プロセスが、新しい、海図にもない航路に進もうとしていることから、モントリオールでのCOP 11およびCOP/MOP1に向けていろいろな動きが見られた。

UNFCCCと京都議定書の概略史
気候変動は、持続可能な開発に対する最も深刻な脅威の一つであり、環境や、人の健康、食料の安全保障、経済活動、天然資源、物理的な社会構造基盤に、悪影響を及ぼすと考えられている。地球の気候は、自然にも変動するが、科学者の間では、人為的に発生する温室効果ガスの地球大気中の濃度上昇が気候の変動に結びつくことで、意見が一致している。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、気候変動の影響は既に観測されており、科学的な知見からも、速やかな予防行動の必要性が示されている。

気候変動に対する国際政治の対応は、1992年、UNFCCCの採択から始まる。UNFCCCは、気候系への「危険な人為的干渉」を避けるため、温室効果ガス大気濃度の安定化を図る行動枠組を策定した。制御の対象となるガスには、メタン、亜酸化窒素、そして特に二酸化炭素が含まれる。UNFCCCは、1994年3月21日に発効し、現在189の締約国を有する。UNFCCCの締約国は、通常、一年に一回の締約国会議(COP)で会合し、また一年に二回、UNFCCC補助機関の会合を開く。

京都議定書: 1997年12月、日本の京都でのCOP-3の出席者は、UNFCCCの議定書で合意し、この議定書において、先進国および市場経済への移行国(EITs)は排出削減の数量目標達成を約束した。UNFCCCでは附属書I締約国と呼ばれるこれら先進国および経済移行国は、6つの温室効果ガスの総排出量を、2008-2012年(第一約束期間)に1990年比で平均5.2%削減し、各国がそれぞれ異なる削減目標をもつことで合意した。またこの議定書では、附属書I締約国が国別目標を費用効果の高い形で達成できるよう、3つの柔軟性メカニズムが設定された:排出量取引システム、附属書I締約国間での排出削減プロジェクトの共同実施(JI)、そして非附属書I締約国でのプロジェクト実施を認めるクリーン開発メカニズム(CDM)である。COP-3の後、締約国は、各国が排出量をどう削減するか、また排出削減量をどう計測し、評価するかを定める規則や運用規則の大半に関し、交渉を開始した。これまでのところ、京都議定書は、150の締約国が批准し、この中には、1990年の附属書I温室効果ガス排出量の61.6%に相当する37の附属書I締約国が含まれていることから、同議定書の発効要件が満たされ、同議定書は2005年2月16日に発効した。

ブエノスアイレス行動計画: ブエノスアイレス行動計画(BAPA)は、1998年、COP4で交渉されたもので、議定書の各条項の遂行プロセスを設定した。BAPAでは、議定書の運用規則およびUNFCCCの実施強化に関する合意に達する最終期限を、COP-6とした。特に取り上げるべき議定書上の問題としては、柔軟性メカニズム関連の規則、締約国の遵守評価体制、国別の排出量および排出削減量の計算方法、そして各国の炭素吸収量に対するクレジット発行規則が含まれる。UNFCCCの問題で、解決が求められるものには、キャパシティビルディング(能力開発)の問題、技術の開発と移転、気候変動の悪影響または先進工業国が気候変動に対抗してとる行動による悪影響を特に受けやすい開発途上国への援助が、含まれる。

COP-4でのBAPA合意に続く会合では、作業計画の多様な要素に関して合意に達する努力がなされた。2000年11月、締約国は、オランダ、ハーグのCOP-6で会合し、交渉を完結するべく努力したが、成功しなかった。COP-6は、2001年7月まで中断され、同月、ドイツのボンで再度会合した。出席者は、持ち越された議論を再開し、結局、ボン合意と呼ばれる政治的決断を採択することで合意した。しかし、この政治的決断は、柔軟性メカニズムや遵守、土地利用・土地利用の変化および森林(LULUCF)など特定の問題に関するCOP決定書のパッケージの一部としてしか、運用にまではいたらなかった。出席者は、全ての決定書の文章に関して最終決定できず、決定書草案を全て、COP-7での最終決定にまわすことで合意した。

マラケシュ・アコード: 出席者は、2001年10月/11月のCOP-7でも、ボン合意に関する議論を継続した。広範な交渉が続けられた後、マラケシュ・アコードが採択され、これが以後の交渉で土台の役割を果たすこととなった。マラケシュ・アコードは、議定書およびUNFCCCに関する決定の基本要素を設定するものであり、これらの要素には次のものが含まれる:柔軟性メカニズム、LULUCF、遵守規則、温室効果ガスの排出および除去に関する情報の連絡と検討、さらには開発途上国への支援に関する問題。このうち後者の問題には、キャパシティビルディング(能力開発)、技術移転、気候変動への悪影響に対する対応、および後発開発途上国(LDC)基金、特別気候変動基金(SCCF)、適応基金という、3つの基金設立の問題が含まれる。

COP 8およびCOP 9: 出席者は、2002年10月/11月にCOP-8で、2003年12月にはCOP-9で再度会合し、マラケシュ・アコード実施のための決定書について交渉を行った。締約国は、他の問題とともに、次の項目に関して合意した:CDM理事会(EB)の規則および手順、CDMを監督するための指定機関、CDM規定の新規植林および再植林(A&R)活動の方法と手順。また締約国は、IPCCの第三次評価報告書での発見事項をUNFCCCでの作業にどう統合していくかを議論し、適応と緩和という二つの議題項目について合意した。

SB 20: 2004年6月、出席者は、ボンで、SBIおよびSBSTAの第20回会合を行った。さまざまな議論項目の中、SBSTA-20では、小規模A&R CDMプロジェクト活動およびLULUCFに関する良好な実践行動ガイダンス(グッド・プラクティス・ガイダンス)を検討し、適応に関する会合期間中ワークショップ、および緩和に関する会合期間中ワークショップを、開催した。SBI-20は、UNFCCCの資金供与制度および政府間会合に関する調整を議論した。

COP 10: COP-10は、2004年12月6-18日、アルゼンチンのブエノスアイレスで開催された。この会合では、2013年以降の期間における気候変動との闘いの約束をどう結ぶか、長時間の交渉が行われた。京都議定書は、締約国が2005年までに2013年以降について検討を始めるよう求めている。出席者は、結局、2005年5月、SB-22の前に政府専門家セミナーを開催することで合意した。しかし、この会合の委託事項は、2013年以降とか新しい約束には言及していない。むしろ、セミナーの目的は、「(a) 締約国が、有効かつ適切な気候変動への対応措置の策定を継続できるよう締約国を支援する、緩和関係行動および適応関係行動、および(b) 国連気候変動枠組条約および京都議定書に規定する各国の既存の約束実行を支援するため、該当する各国政府が行う政策措置について、非公式な情報交換を」促進することとしている。

また出席者は、適応に関するパッケージ、すなわち適応と対応措置に関するブエノスアイレス行動計画でも合意した。このパッケージは、気候変動の悪影響に適応するための措置の実施推進を支援するとともに、国際社会の気候変動対応措置により影響を受ける各国の経済を多角化する提案も扱う。

締約国は、これに加えて、技術移転、LULUCF、UNFCCCの資金供与制度、および教育・訓練・啓発などの問題に関する多数の決定書および結論書を取り上げ、採択した。一部の問題は未解決のままである。これら未解決の問題には次の項目に関する交渉が含まれる:LDC基金、SCCF、非附属書I締約国の国別報告書提出、および議定書2.3条(政策措置の悪影響)。

UNFCCC政府専門家セミナー:
この政府専門家セミナー(SOGE)は、2005年5月16-17日、ボンで開催された。この会合からは公式の成果は出されなかったが、出席者は気候変動プロセスが直面する広範な問題の一部について議論した。これらの問題の中で、一部の締約国がもっとも優先した問題は、2013年以降の将来枠組および約束の問題であった。また、気候変動の強力な証拠が増加していることへの対応方法や、京都議定書に関する意見の相違への対応、そして緩和および適応措置を行動に移すことの推進方法について、情報や経験および意見の交換が行われた。詳しい情報については、 Earth Negotiations Bulletinのこの会合に関するサマリーを参照。
http://www.iisd.ca/vol12/enb12261e.html

SB 22報告書
SB 22の期間中、科学的・技術的助言のための補助機関(SBSTA)じは、5回のプレナリーを行い、多数のコンタクトグループおよび非公式折衝の会合を行って、SBSTAの各議題項目での進展を図った。これらの会合の結果、いくつかの項目に関する結論書草案が採択され、また決定書草案がCOP 11またはCOP/MOP 1での検討のため、送られた。これらの決定書および結論書草案で取り上げられた項目は、気候変動の科学的、技術的、社会経済的影響、気候変動に対する脆弱性および適応、そして気候変動の緩和、技術の開発と移転、および附属書 I 締約国の政策措置(P&Ms)における「グッドプラクティス(良好な実践行動)」であった。結論書および決定書草案では、条約に関係する研究上のニーズ、関連する国際機関との協力、方法論、その他さまざまな問題が扱われている。方法論には、京都議定書規定の調整方法に関する技術ガイダンス、議定書規定の登録簿システム、そしてCDMに基づくプロジェクト活動の実施が他の環境条約の目的達成に与える影響が、含まれる。SBSTAは、国際航空輸送および海上輸送で使用される燃料からの排出量に関する作業を終了できなかった。また締約国は、モーリシャスのPort Louisで2005年1月10-14日に開催された小島嶼開発途上国(SIDS)での行動プログラム実施を評価する国際会議について、結論書を採択することができなかった。

実施のための補助機関(SBI)は、COP/MOP 1およびCOP 11を含めた政府間会合のアレンジ、および将来の会合と会合の間隔、そして政府間プロセスの組織化について検討した。またSBIは、さまざまな運営上および資金上の問題、後発開発途上国(LDCs)問題、そして非附属書 I 締約国からの国別報告書の問題を取り上げた。SBIは、SCCFに関する作業を終了することができず、この項目は、SB 23で再度取り上げることとなる。

公式の補助機関会合や折衝のほか、40以上のサイドイベントが行われた。サイドイベントの詳しい情報については、下記を参照:
http://www.iisd.ca/climate/sb22/enbots

このSB 22報告書は、本会合の議題書に基づくものであり、SBSTAおよびSBIで取り上げられた問題をそれぞれ取り上げている。

科学的・技術的助言のための補助機関
SBSTA 22は、2005年5月19日木曜日朝、開会された。UNFCCC事務局長のJoke Waller-Hunterは出席者の参会を歓迎し、この会合の開会に出席できないで残念であるとのSBSTA議長Abdullatif Salem Benrageb (リビア)のメッセージを伝えた。同局長は、Benrageb議長がこの会合期間の後半に到着するまで、議長の役目を務めるSBSTA副議長のAmjad Abdulla (モルディブ)に、謝意を表した。同局長は、SBSTAには、COP 11およびCOP/MOP 1に貢献することになる重い議題があるとの観測を述べた。

ルクセンブルグは、欧州連合(EU)を代表して発言し、出席者がSOGEでのポジティブな経験にならうよう促し、2013年以降の期間に関する手続きの開始を支持した。同氏は、SBSTAの議題項目に関して、緩和に関する議題を強調し、適応および航空輸送と海上輸送に関する議論を歓迎した。

ジャマイカは、77カ国と中国グループ(G-77/中国) を代表して発言し、気候変動に関する国際行動および、これら国際行動と千年紀開発目標との結びつきを強調した。同氏は、適応問題、緩和問題、そして方法論を強調した。ケニアはアフリカグループの立場で発言し、CDM簡素化方法と、技術移転および適応での迅速な行動を主張した。ツバルは、小島嶼諸国同盟(AOSIS)を代表して発言し、適応とSIDSのニーズを強調した。エジプトは、緩和でのいっそうの努力を提案した。マリは、LDCsでの気候変動の影響を強調した。

SBSTA副議長のAbdullaが議題書を提出した(FCCC/SBSTA/2005/1)。サウジアラビアは、適応に関するCOP決定書10/CP.9はSBIの議題書にも入れるべきであると述べ、SBIでの問題が解決されるまでSBSTAの議題書採択を延期するべきだと提案し、カタールもこれを支持した。EU、G-77/中国、アフリカグループ、ノルウェー、日本、南アフリカ、ニュージーランド、ケニア、タンザニア、その他は、SBSTA議題書の採択を支持した。副議長のAbdullaが、サウジアラビアの懸念を書きとめた上で、議題書は採択された。またSBSTAは、本会合での作業構成に関するAbdulla副議長の最新の提案を承認した。

適応

気候変動の影響の科学的、技術的、社会経済的側面および気候変動に対する脆弱性と適応は、5月19日木曜日のSBSTA 22で初めて取り上げられた。この項目の議論の目的は、決定書1/CP.10 (適応と対応措置に関するブエノスアイレス作業プログラム)で規定されている、適応に関するSBSTAの5ヵ年作業プログラムを策定することである。会合期間中ワークショップや、多数の非公式折衝、そして6回のコンタクトグループ会議が開かれた後、出席者は、SBSTAプログラムに関するCOP決定書草案および附属書草案を含めたSBSTA結論書について、合意した。しかし、作業プログラムが正式に議論されたのは今回の会合が初めてであることから、SBSTAは、プログラムを最終案とせず、決定書草案および附属書草案には括弧つきの文章が残された。しかし、締約国は、このプロセスの最初の一歩が、総合的な知識収集活動を行うことだという点で意見が一致した。

SBSTAは、この作業プログラムの策定を容易にするため、会合期間中ワークショップを企画し、このワークショップは、5月21日土曜日に開催された。このワークショップは、Philip Gwage (ウガンダ)、David Warrilow (英国)を共同議長とし、トロント大学のIan Burtonによる基調講演、そして15カ国の代表によるプレゼンテーションで構成された。プレゼンターに共通する主題には、情報の共有と国際協力、ボトムアップ手法、実務者と政策立案者の両方の参加、そして持続可能な開発への統合の必要性が含まれた。これらの議論のまとめは、次のサイトで入手可能である:
http://www.iisd.ca/vol12/enb12265e.html

その後、SBSTAは、5月23日月曜日に再度会合し、ワークショップの概要を聞き、本項目の議論を行った。協議を続けるため、Marjorie Pyoos (南アフリカ)とJames Shevlin (オーストラリア)を共同議長とするコンタクトグループが設置された。

コンタクトグループでは、作業プログラムで可能性のある要素を含めたSBSTA副議長によるワークショップ概括についての議論に基づいた、このプログラムの目的と可能なアプローチ方法の討議が、中心となった。出席者は、最初の意見交換を行い、この中で、G-77/中国とAOSISは、行動本位の措置をとの提案を再度主張、これらの迅速な実施を図る必要性が、さらなる評価を求める提案によって制約されることがあってはならないと、述べた。EU、米国、ニュージーランドは、理解や協力の改善を望んだ。また、G-77/中国とAOSISは、もっとも影響を受けやすいものに配慮することを提案し、またAOSISは、SIDSの緊急なニーズに対処する特別な道筋を主張した。サウジアラビアは対応措置への適応を強調した。

作業プログラムの構成について、米国は、優先する部門に注目した構成にする必要があることを強調した。G-77/中国は、そうではなく、多様な総合的なアプローチを、順々ではなく、平行して進める形とするよう提案した。このアプローチには、部門別のアプローチが全体に注目するのとは逆に、現地の資産(「資本」)に目を向ける、地域固有の生活様式が含まれる。アフリカグループは、部門別の方法では、現地の事情や情報が軽視される可能性があると警告した。また日本は、優先する部門について時間のかかる議論をするのではなく、広範な主題を扱う方法をとることを希望した。G-77/中国とAOSISは、作業を推進し、フォローアップを確実にするため、専門家による作業部会の設置を提案した。

結論書草案および決定書草案に関する討議の焦点は、G-77/中国の提案するとおり、決定書1/CP.10に言及するかどうか、それとも特にSBSTAそして作業プログラムに言及する決定書1/CP.10のサブセクションに言及するかどうかであった。サウジアラビアは、決定書全体に言及することが、全ての締約国を利すると述べ、EU、スイス、ノルウェー、その他がこれに反対した。5月26日木曜日、SBSTA議長のBenragebは、作業プログラムの策定を容易にするため、SB23の前に非公式なワークショップを行うことを申し出た、そして出席者は、多少、編集上の修正を加えた上で、結論書草案に合意し、この結論書は、5月27日のSBSTAプレナリーで採択された。

SBSTA結論書およびCOP決定書草案: 結論書(FCCC/SBSTA/2005/L.14)において、SBSTAは、締約国からの提出書類に注目し、会合期間中ワークショップでの意見交換を歓迎した。またSBSTAは、附属書草案およびCOP決定書草案をSB 23においてさらに検討し、文章を練り上げることで合意し、さらに事務局に対し、SBSTA議長のガイダンスの下、作業プログラムの策定を容易にするための非公式ワークショップをSB 23の前に企画するよう求める。COP決定書草案は、括弧書きの表現が残されたままである。

緩和

気候変動の緩和の科学的、技術的、社会経済的側面に関する議題項目は、5月23日月曜日、午前中の会合期間中SBSTAワークショップで最初に取り上げられ、同日午後のSBSTA プレナリーでも議論された。Kok Seng Yap(マレーシア)と坂本敏幸(日本)を共同議長とするコンタクトグループが招集された。このコンタクトグループは公式には2回、そして非公式には数回の会合を行った。その後SBSTAは、この問題に関する結論書(FCCC/SBSTA/2005/L.10)を採択した。

会合期間中ワークショップで、出席者は、緩和技術の革新的な開発、展開、普及、そして貧困の削減や経済的な影響を含めた緩和の社会経済的側面に影響を与える要素に注目する国際的な専門家のプレゼンテーションを聴いた。専門家は、特にエネルギー部門の資本構造、グリーンな投資、エネルギー効率、研究開発への公的投資、市場障壁、各地の汚染軽減と緩和とのつながり、スピルオーバー効果、CDMについて議論した。これら議論の概要は、次のサイトで入手可能である:
http://www.iisd.ca/vol12/enb12266e.html

その後のコンタクトグループでは、コンタクトグループ共同議長の作成した結論書草案に基づき、議論が行われた。議論の焦点となったのは二つの主要分野、以前の緩和ワークショップで得られた教訓に関する事務局の報告、およびSBSTA 23で緩和に関するプレセッション・ワークショップを開催する件であった。

事務局の報告に関しては、報告の様式と範囲、そして予定が議論の中心であり、5月25日水曜日には早々と合意に達した。締約国は、報告書の日程に関して、および報告書が、「簡潔なもの」であるべきことで、合意した。

プレセッション・ワークショップに関し、EUとカナダは、締約国が、緩和ワークショップで学んだ教訓や、この議題項目に関してこれからとるべきステップについて、意見を交換できるフォーラムの開催を希望した。G-77/中国、米国、日本、オーストラリアは、そのようなフォーラムの価値を疑問とし、資金の必要性と、他の議題項目を検討するために使える時間への影響に、懸念を表明した。EUは、カナダとともに、プレセッション・ワークショップの方が、費用効果が高く、他の議題項目に干渉しないとして、この方式を提案した。米国は、プレセッション・ワークショップが、単なる交渉の延長となることへの懸念を示した。3日間の討議の末、そのようなフォーラムを開催することについて意見が一致せず、結論書草案での言及は削除された。

このコンタクトグループで提起されたもう一つの問題は、炭素の回収と貯留であった。カナダは、この問題でIPCC特別報告書が近く作成されることを指摘し、炭素の回収と貯留をCOP/MOP 2前に検討するよう提案した。米国は、この問題に関するIPCC報告書が、議題項目に属するものかどうか明確でないと述べた。

SBSTA結論書: 結論書(FCCC/SBSTA/2005/L.10)において、SBSTAは、文書FCCC/SBSTA/2005/MISC.2および付録1-2に含まれる締約国の提出書類に注意を促す。また、SBSTA 22で開催された会合期間中ワークショップで意見交換が行われたこと、そして、このワークショップに関するSBSTA議長のまとめを歓迎する。さらに、SBSTAは、事務局が、2005年7月15日までに、これまでに開催された会合期間中ワークショップで提起された主題についての簡潔な報告を作成し、その報告では、温室効果ガス、部門、技術、地域、社会経済面を網羅し、その他の関係する要素を扱うよう、求める。

方法論

SBSTA 22は、広範な方法論を取り上げ、この中には、国際航空輸送および海上輸送で使用される燃料からの排出量、議定書規定の調整方法に関する技術ガイダンス、議定書規定の登録簿システムが含まれた。また、SBSTAは、CDM規定のプロジェクト活動を実施することが他の環境条約の目的達成に与える影響を取り上げた。締約国は、航空輸送および海上輸送からの排出量に関する小項目を除く、これら全ての問題に関する結論書を採択することができた。

国際航空輸送および海上輸送で使用する燃料からの排出:
この問題は、5月19日木曜日のSBSTA 22プレナリーで取り上げられ、UNFCCC事務局から、この主題に関する最新の文書 (FCCC/SBSTA/2005/INF.2)が提出された。国際民間航空機関(ICAO)からは、この分野での作業について概要が紹介され、いくつかの締約国が、この問題の重要性を強調した。その後、この問題は、非公式折衝に移り、締約国は、結論書草案での作業を続けた。この折衝は、Jose Romero (スイス)が進行役となった。

コンタクトグループでは、すぐに締約国間の違いが明らかとなり、特に、フォローアッププロセスの可能性について意見の違いがあった。EUは、ワークショップや他の専門家によるイベントを含めるプロセスの設定を求めたが、米国を含めた他の締約国はワークショップの必要性に疑問を呈した。長時間の交渉の後、ICAOの提供する情報を念頭に置き、国際海事機関(IMO) に対し、2006年5月のSBSTA 24で、海上運送からの排出量に関するIMOの現在の活動と計画されている活動に関する情報を提供するよう求める文書が、作成された。また、この文書には、国内および国際的な燃料消費を区別する方法の難しさとデータの利用可能性が限られていることを認識するという、EU、米国、その他の折衷案も含まれている。この折衷案には、資源の利用可能性にもよるが、2007年早期でのセッションーセッション間のワークショップが含まれ、このワークショップでは、航空輸送および海上輸送からの推定排出量報告の質を改善することを含めた、目録問題を議論することになる。文書は、SBSTAが、2007年5月までは、この問題を再度取り上げないことで合意している。

折衷案の文書は、大半の締約国が合意できるものであったが、サウジアラビア、クウェート、その他いくつかの石油輸出途上国は、そのようなフォローアッププロセスを紹介する文書に異議を唱えた。これら諸国は、航空輸送および海上輸送からの排出量を議論することは、SBSTAの限られた時間や注意を、途上国にとってより重要である他の問題からそらせるものであると論じた。

5月27日金曜日のSBSTA 閉会プレナリーでは、EU、米国、カナダ、オーストラリア、ロシア連邦、アルゼンチン、ブルガリア、ニュージーランド、ウクライナ、日本、ノルウェー、AOSIS、環境十全性グループ(スイス、韓国、メキシコ) が折衷案文書を支持した。しかし、サウジアラビア、クウェート、アラブ首長国連邦、オマーン、イラン、リビアは、文書を支持しなかった。またインドは、ワークショップ開催のパラグラフに反対し、UNFCCCの予算削減と、ICAOでこの問題に関する作業が進行中であることを、強調した。

SBSTA結論書: SBSTAは、合意に達せなかったことから、短い改定結論書(FCCC/SBSTA/2005/L.11/Rev.1)を採択し、SBSTA 22が、この問題の検討を終了しておらず、SBSTA 23で議論が再開されるとした。

他の環境条約の目的達成を目的とするCDM規定プロジェクト活動の影響: この問題は、5月19日木曜日のSBSTA プレナリー で初めて取り上げられ、5月20日金曜日および5月24日火曜日の二回のコンタクトグループでも議論された。この議題項目は、ハイドロクロロフルオロカーボン-22 (HCFC-22)施設を新規に設置することで、ハイドロフルオロカーボン-23 (HFC-23)の破壊によるCDM規定クレジットを獲得する案件が生じたことから、COPが、他の環境問題方法論、特にモントリオール議定書への影響に関するCOP/MOP 1への提案書を作成するよう要請した結果、出てきた議題項目である。

Georg Borsting (ノルウェー)を議長とするコンタクトグループの議論で、締約国は、COP/MOP 1でこの問題に関する決定を行うため、締約国からの提出書類およびCDM EBからのインプットを基にオプションペーパーを作成するよう、事務局に要請することで、合意した。その後の議論は、関連する政府間組織の意見や締約国の意見を求めるかどうか、そして、締約国からの提出文書をオプションペーパーにどのように組み入れるかが中心となった。締約国は結局、オプションペーパーは、特に、HFC-23の破壊によりCDM規定クレジットを獲得する目的でHCFC-22施設を建設することによる、モントリオール議定書への影響と、そしてそのような影響への対処方法に基づくものとするべきだという点で、意見が一致した。

SBSTA結論書: 結論書(FCCC/SBSTA/2005/L.3)において、SBSTAは、事務局がこの問題に関して作成したテクニカルペーパーに含まれる情報に、注意を喚起する。また SBSTAは、締約国、認可されたオブザーバー、および関連する政府間組織に対し、次の件に関するそれぞれのインプットを2005年8月までに提出するよう求める、すなわち、HFC-23の燃焼でクレジットを獲得するべく新規のHCFC-22施設を建設することがモントリオール議定書の目的達成に与える影響、そしてそのような影響に対処する方法についてのインプットである。SBSTAは、さらに事務局に対して、これら提出文書をまとめ、この問題に関するSB 23での検討と、COP/MOP 1での決定書草案作成を念頭に、締約国からの提出文書およびCDM EBからのインプットに基づくオプションペーパーを作成するよう、要請する。

京都議定書に規定する調整方法についてのテクニカルガイダンス: この問題は5月19日木曜日のSBSTAプレナリーで最初に取り上げられ、その後4回のコンタクトグループ会議および非公式折衝でも議論された。これらの会議において、締約国は、事務局が準備した文書で、LULUCF活動での調整方法に関するテクニカルガイダンスの提案を含めるもの(FCCC/SBSTA/2005/2)について、検討した。この提案は、COP9ですでに承認されているLULUCF以外の活動に関するテクニカルガイダンスに則り、作成されたものである。Newton Paciornik (ブラジル)およびAudun Rosland (ノルウェー)を共同議長とする議論では、対立点が見られず、専門家検討チームが調整分を計算するのに用いた手順や方法についての技術的な検討があり、これには「保守的補正係数(conservativeness factors)」の表も含まれた。出席者は、表やテクニカルガイダンスに多少の修正を加えた上で合意した。例外は、これら活動に関する情報を提出しなかった場合の基準であった。これら基準について、出席者は、SB 24で検討を続けることを念頭に、締約国に提出を求めることで合意した。

SBSTA結論書およびCOP、COP/MOP決定書草案: 結論書(FCCC/SBSTA/2005/L.2)で、SBSTAは、事務局が作成したテクニカルペーパーを検討したとし、COP決定書草案(FCCC/SBSTA/2005/L.2/Add.1)を提案した、この草案には、COP/MOP決定書草案および LULUCF規定調整方法に関するテクニカルガイダンスを含む附属書が含まれる。この草案において、事務局は、専門家検討チームが2007-2008年の目録検討プロセスで、締約国から自主的に提出される実際の目録データを用いてLULUCF調整の経験を得られるようにするプロセスを設置し、筆頭レビュワー、他のレビュー専門家そして締約国が、経験を共有できるような情報イベントを、SB24で企画するよう、要請される。類似するイベントは、SB 28でも行われ、吸収量での調整に関する経験を扱うことになる。さらにSBSTAは、吸収源での排出量と除去量の推定値に関係する情報を締約国が提出しなかった場合の基準を策定するための提案を、2005年8月19日までに提出するよう、求める。この後者の問題は、COP/MOP 1で採択される決定書を提案する目的で、SBSTA 23において議論されることになる。

京都議定書規定の登録簿システム: この項目は、5月19日木曜日、SBSTAの開会プレナリーで最初に取り上げられ、Murray Ward (ニュージーランド)から、SB 22の前に行われた非公式折衝の結果が披露された。同氏は、国際トランズアクション・ログ(ITL)が2006年後半までは運用可能でないことを発表し、CDMプロジェクトは、ITLが運用可能となるまでは、EU炭素市場に参加できないことを指摘し、事務局での資金の必要性を強調した。

非公式折衝は、成功し、また5月27日金曜日のSBSTA閉会プレナリーも成功であった。5月27日金曜日、Murray Wardは、事務局によるITLテスト用の詳細が準備されており、このため、2006年の第三四半期には稼動可能と見込まれると発表した。

SBSTA結論書: 結論書(FCCC/SBSTA/2005/L.7)で、SBSTAは、セッションとセッションの間で行われた登録簿システムに関する協議の報告に注意を求めた。またSBSTAは、文書FCCC/SBSTA/2005/INF.3に示されるとおり、ITLが実行する点検を明らかにした事務局の作業を賞賛し、こういった点検が、ITLの開発継続に優れた基礎を提供するとし、締約国がこの文書を最大限に活用するよう、提案する。これに加えて、SBSTAは、最近締約国が行った補助的活動の信託基金への資金供与により、事務局がITLの開発を進められるようになったとの情報を歓迎し、事務局ではITLが2006年第三四半期で他の登録簿システムとの連携準備を整えることを期待しているとし、ITL管理者が共通運用手順を作成するとする。

技術の開発と移転

技術の開発と移転の問題は、5月19日木曜日のSBSTA 22プレナリーで、初めて取り上げられた。William Kojo Agyemang-Bonsu (ガーナ)とHolger Liptow (ドイツ)を共同議長とするコンタクトグループが招集された。このグループは公式には二回、非公式には多数回会合し、技術移転に関する専門家グループ(EGTT) の委託事項を含める結論書草案で合意した。これらの結論書は、その後. SBSTA 22での採択に送られた。

SBSTAプレナリーにおいて、EGTT議長のKishan Kummarsingh (トリニダードトバゴ)は、EGTTの最新の報告書に関するプレゼンテーションを行った。マレーシアは、G-77/中国の立場で発言し、技術的なニーズ評価(TNAs)で明らかにされたニーズに応えることの重要性を強調し、COP 1以後の技術移転に関係するCOP決定書の実施を全面的に見直すよう求めた。アンブレラグループ(先進国のグループで、米国、カナダ、日本、オーストラリア、ニュージーランド、ノルウェー、アイスランドを含む)は、民間部門の参加と、それを可能にする環境の整備を強調した。

コンタクトグループでの会議および非公式な議論において、出席者は、共同議長の作成した文書案について審議した。議論は全体として先進国ー途上国で分かれ、締約国は次を含めた広範な問題に焦点を当てた、すなわち、1)SBSTAが、EGTTに対し、その委託事項に基づく業務を「要請する」のか、それとも「提案する」のかどうか、2)COP1以来のCOP決定書の見直し、3)実施枠組の評価、4)民間部門の参加、5)長期戦略、6)特定技術の検討。

COP決定書の見直しについて、G-77/中国は、全てのCOP決定書の見直しを支持し、EU、米国、日本、その他は、実施枠組がすでにこれまでの決定書を検討していることから、これが起点であると述べた。

民間部門の参加に関する議論は、だれが民間部門の参加を容易にし、可能にする環境を整備するのかが中心であった。

また議論では、技術移転の長期戦略、または特にEGTTの作業プログラムの長期戦略を策定するべきかどうかにも焦点が当てられた。

特定技術の検討について、G-77/中国は、EGTTが検討するべき特定技術のリストを要請したが、米国、EU、日本、その他は、SBSTAが「勝利者を選ぶ」べきではないと述べた。全ての問題について、折衷案の文書で意見が一致した。

SBSTA結論書: 結論書(FCCC/SBSTA/2005/L.13)で、SBSTAは、EGTTがUNFCCC4.5条(技術移転)の実施を強化することを目的とする有意で効果的な行動枠組の実施強化案を作成する際に、指針を提供することに合意する。SBSTAは、EGTT議長の報告およびTNAsの分析に関するUNEPとUNDPの協力を歓迎する。SBSTAは、2005年10月に予定される技術の開発と移転の革新的な資金調達に関するワークショップに注目し、EGTTが、公的分野にある技術と民間が所有する技術の問題について、さらに検討することにも目を向ける。また2005年6月14-16日にトリニダード・トバゴで開催される適応技術セミナーにも注目する。さらにSBSTAは、EGTTおよび事務局の負荷が極めて大きいと述べ、締約国による財政支援を求め、EGTTには、TNAsの成果を踏まえて、先進的でクリーン、より効率的で入手可能であり、費用対効果も大きなエネルギー技術の普及と移転に関係する問題を引き続き検討するよう勧める。

EGTTの委託事項によると、EGTTは特に次のことを行うよう求められている:

枠組の各主要テーマで明らかにされている活動の実施の進展状況と効果を検討する;
枠組の実施を進める方法や手段を提案する;
民間部門の参加を促す実際的な行動や具体的なステップを明らかにする;
関連する条約や政府間プロセスとの協力を強化する方法を検討し、中長期的な戦略や作業計画を考える;
共同研究の促進方法を考える;
既存の枠組の中で、主要な題目を変更する可能性について提案する

政策措置

附属書I締約国での政策措置における「グッドプラクティス」に関する議題項目は、5月19日木曜日のSBSTAプレナリーで初めて取り上げられた。Tony Surridge (南アフリカ)とNormand Tremblay (カナダ)を進行役とする非公式折衝が行われた。SBSTA20で決められたこの問題に関するラウンドテーブルは、5月24日火曜日に開催された。このイベントでは、政策措置実施に関する情報を交換し、経験を共有することを目的としたプレゼンテーションや議論が行われ、次の3部構成に分けられた:国内問題、国際問題、クロスカッティングイシュー。これら議論の概要は次のサイトで入手可能である:
http://www.iisd.ca/vol12/enb12266e.html

非公式折衝で、出席者は、ラウンドテーブルに前向きな反応を示し、結論書草案の概要を示す短い文章について合意に達することができた。この結論書は、合意され、SBSTAに送られて、SBSTAで採択された。

SBSTA結論書:
結論書(FCCC/SBSTA/2005/L.4)で、SBSTAは、附属書I締約国間で「グッドプラクティス」に関する情報や経験を共有するため、インターネットベースの方法を用いるとのオプションを含める文書FCCC/SBSTA/2004/INF.10を検討するとする。またSBSTAは、ラウンドテーブルでの議論を歓迎し、事務局から「グッドプラクティス」に関する報告書が近く出される予定であるとし、 SBSTA 24で次のステップを検討することに合意する。

条約関係での研究上のニーズ

この問題は、5月19日木曜日のSBSTAプレナリーで初めて取り上げられ、その後Maria Paz Cigaran (ペルー)とSergio Castellari (イタリア)を共同議長とするコンタクトグループの2回の会合でも議論された。この問題の結論書は、SBSTAと、国内、地域、および国際的レベルでの各研究プログラムおよび研究機関との協議の場を設置することを目指す。

プレナリーでの議論は、二つの主要テーマが中心であった、すなわち、開発途上国の専門家の参加を強化することなど、気候変動への努力に貢献するための開発途上国の能力を向上させる必要性、そしてSBSTAが、研究に関してIPCCに指針を提供するべきかどうかの二つである。スイスとオーストラリアは、IPCCでの努力との重複は避ける必要があると述べた。EUは、研究者のグループに連絡するための政策関連性のある主要研究課題を特定する研究報告案を提案し、ケニアはこれに反対した。

SBSTA結論書とCOP決定書草案: 結論書(FCCC/SBSTA/2005/L.6)で、SBSTAは、国内、地域、国際的な地球規模変動研究プログラムの努力を歓迎し、さらに第三回地球観測サミットにおいて、地球観測系システムを設置する10ヵ年実施計画が承認されたことを歓迎する。またSBSTAは、研究でのニーズや優先度に関する文書を提出するよう締約国に要請し、事務局に対しては、SB24までに、研究のニーズに関する統合報告書を作成し、締約国および関連する地域のそして国際的な気候変動研究プログラムで利用可能とするよう要請し、またSB24で、気候変動研究機関とSBSTAとの連絡を強化するサイドイベントを企画するよう、事務局に求め、開発途上国の研究能力を強化する必要があることを強調し、気候変動に関する理解を高めることにより、緩和や適応の技術開発に情報を提供できる可能性があることを示す。

COP決定書草案(FCCC/SBSTA/2005/L.6/Add.1)では、COPが、特にIPCCの重要かつ明らかな役割を認識し、国の、地域のそして国際的な気候変動研究プログラム相互の結びつきを強める必要があることを認め、附属書I締約国に対し、開発途上国の研究機関の参加をさらに強化するよう促す。

関連する国際機関との協力

オゾン層保護と全球気候システムに関するIPCC特別報告書:ハイドロフルオロカーボンとパーフルオロカーボン:
この問題は、5月19日木曜日のSBSTAで初めて取り上げられ、気候変動に関する政府間パネル (IPCC)のSusan SolomonおよびBert Metzが、地球の気候形に影響を与えるオゾン層破壊物質の代替物質について調査した新しいIPCC特別報告書での主要な結論について、プレゼンテーションを行った。ウルグアイ、ケニア、日本は、この問題に関し、モントリオール議定書とUNFCCCが協力して作業するよう提案した。またオーストラリアは、SBSTAでさらに検討する必要があると論じ、国内行動を推奨した。この問題は、Darren Goetze (カナダ)を議長とするコンタクトグループに送られた。

このコンタクトグループは3回会合したが、SBSTAのフォローアッププロセスについて、意見の食い違いが見られた。英国はEUの立場で発言し、報告書をフォローするSBSTAのプロセスを作るよう求め、専門家セミナーまたはワークショップを提案した。米国とその他は、ワークショップの提案を拒否し、報告書が、各国の行動をとるに十分な基礎を提供すると主張した。また米国は、この問題に関して締約国からの文書提出を求めることに疑念を呈した。

これに加えて、SBSTAの将来のセッションでステートメントを披露するよう、モントリオール議定書側に求めるという文章でも意見の対立があった。中国、サウジアラビア、ジャマイカは、この文章を削除するよう提案し、EU、ノルウェー、セネガルは、これの保持を望んだ。出席者は、結局、モントリオール議定書事務局からの情報を歓迎し、UNFCCC締約国から文書の提出を求めるという、グループ内での折衷案で合意し、同時に、この問題は、SBSTA 24で、最終的な検討を行うべきであるという点でも合意した。この決定書では、ワークショップまたは他の会議には言及していない。

5月27日金曜日、SBSTAは結論書草案を検討した。サウジアラビアは、IPCC報告書について締約国の意見提出を求める文章を変更し、それによって、提出文書の中に、この報告書がUNFCCCの「目的」ではなく「実施」にどれだけ関連性を持つものか、その側面を取り上げることを提案した。EU、G-77/中国、その他の締約国が、変更しないままの文章を支持したところで、サウジアラビアは提案を撤回し、この結論書は変更されることなく採択された。

SBSTA結論書: 結論書(FCCC/SBSTA/2005/L.8)において、SBSTAは、IPCCおよびモントリオール議定書の技術および経済評価パネルに対し、オゾン層保護と全球気候システムの保護に関する特別報告書:ハイドロフルオロカーボンおよびパーフルオロカーボンに関係する問題を完成させたことへの謝意を表する。またSBSTAは、締約国に対し、国内の気候変動戦略を策定し、実施する際に、この報告書にある情報を用いるよう勧める。SBSTAは、オゾン層、地球の気候系、および可能性ある相互作用に関連する研究、計測、体系的観測の必要性が現在も存在することに注意するよう求める。SBSTAは、モントリオール議定書事務局が、モントリオール議定書のMOP報告書の検討に関し、SBSTA 24までに、情報を提供することを歓迎する。最後に、SBSTAは、締約国に対し、UNFCCCの目的に関連する本報告書の側面について、自国の意見を、2006年2月13日までにUNFCCC事務局に提出するよう求める。SBSTAは、事務局に対して、この議題項目についてSBSTA24で検討し、それを終了することを念頭に、これらの意見を取りまとめるよう求める。

SIDSのための行動プログラム実施を評価する国際会議: この問題は、5月19日木曜日にSBSTAで取り上げられ、ツバルは、AOSISの立場で発言し、国連総会がこの次のセッションで、モーリシャス戦略を検討すると述べ、SBSTAがSBSTA 23でこの戦略を検討するよう提案した。SBSTA副議長のAbdullaは、この問題に関して非公式折衝を行うと述べた。

翌週に開催された非公式折衝で、どうすればUNFCCCがモーリシャス戦略のさらなる実施を支援できるかについてフォローアッププロセスを設けるべきか、そしてそのプロセスにはどういうものを含めるべきかについて、意見の食い違いが表面化した。AOSIS、EU、G-77/中国は、文書提出を求めるプロセスを要求し、この問題をCOP 11で議論することを望んだが、米国は、この問題でUNFCCCがさらなる作業をする必要性はないと述べ、モーリシャス戦略に留意するとする短い文章を希望した。

またEUが提案した二つの追加パラグラフも意見の不一致を呼んだ。米国、カナダ、インド、その他は、2005年9月の千年紀(目標―訳注)再検討の中で、気候変動と海面上昇を取り上げるとするEU提案の文章に反対した。また出席者は、モーリシャス戦略におけるエネルギー効率と再生可能エネルギーの優先と、2006-2007年の持続可能な開発委員会の第14回会合および第15回会合とを結び付けるとするEU提案の文章についても議論した。この委員会は、これらの会合においてエネルギー問題に焦点を当てる。

5月25日水曜日、オーストラリアは、このプロセスでの妥協を試みる提案を提出し、締約国に対し「適切な場合、SBIおよびSBSTAで行われている作業を通して、モーリシャス宣言および戦略の関連する側面の実施を進めることに関する意見」を提出するよう求めるという文章が提案された。しかし、オーストラリアは、その後この提案を撤回し、締約国に対し、適切な場合、SBSTAで行われている作業において、この問題に注意を払うことを続けるよう求めるとする、別な方式を提案した。

5月27日金曜日SBSTA プレナリーで、カナダ、米国、ニュージーランド、日本は、オーストラリアの2番目の提案を支持した。しかし、AOSIS、EUは、これに賛成できないとし、AOSISの立場で発言するツバルとともに、「締約国によっては、柔軟性を持つだけの余裕もない」と述べた。モーリシャスは、オーストラリアの最初の提案なら支持できるが、二番目の提案は支持できないと述べた。SBSTAプレナリーは、締約国がオーストラリア提案を検討できるよう中断された。さらなる折衝後、SBSTA議長のBenragebは、合意に達することができず、この問題は、会議の報告書に記録されると報告した。

その後、締約国は、この議題項目を、結論書草案(FCCC/SBSTA/2005/L.12)の最新版に示すとおり、SBSTA 23の議題に再度載せるべきかどうかを、議論した。米国は、結論での合意には至っていないが、COP 10のもともとの要請は、事務局がSIDS国際会議についてSBSTA 22で報告することだったので、この項目は処理済みであると論じた。また米国は、SIDSの懸念は、適応や、技術移転、キャパシティビルディング(能力開発)に関する議題など別な議題項目で取り上げられているとも主張した。

AOSIS、EU、G-77/中国、アンティグア・バーブーダは、米国の意見に反対し、この項目の検討は結論に至っておらず、手順規則からいっても、次のSBSTA会合で取り上げることになると述べた。この問題では結論について意見が一致しなかった。

全球気候観測システム: SBSTAは、この問題を5月19日木曜日に短時間、議論し、副議長のAbdullaは、全球気候観測システム(GCOS)に関する結論書草案を作成すると述べ、領海問題と浮標の漂流に関してアルゼンチンが表明した懸念にも言及した。この問題に関する結論書は、5月27日金曜日、採択された。

SBSTA結論書: 結論書(FCCC/SBSTA/2005/L.9)で、SBSTAは、GCOS事務局の作成した初期海洋気候観測システムに向けた進展についての報告書(FCCC/SBSTA/2005/MISC/5)を歓迎する。またSBSTAは、地球大気および水系ネットワークでのデータ交換問題の分析に関する報告書(WMO/DT 1255 GCOS96)も歓迎し、これらの報告書を、SBSTA 23における、UNFCCCの支援する気候の地球観測システム実施計画の検討の中で、考慮することに合意する。また締約国は、これらの報告書に関する意見を2005年9月15日までに提出するよう求められる。

その他の問題

京都議定書2.3条の実施: 議定書2.3条の実施(政策措置の悪影響)に関係する問題は、5月19日木曜日のSBSTAプレナリーで最初に取り上げられた。SBSTA議長のBenragebは、この問題に関する非公式折衝を招集する権限を与えられた。非公式な交渉で、一部の締約国は、この議題項目がこれまでのようにSBSTA会合で検討するのではなく、COP/MOPで検討するべきだとの見解を表明した。5月27日金曜日のSBSTAプレナリーで、Benrageb議長は、締約国が、SBSTA会合3回連続で、合意に達することができなかったと報告した。これまでの会合と同じく、SBSTA 22でも簡単な結論書(FCCC/SBSTA/2005/L.5) が採択された。

SBSTA結論書: 結論書(FCCC/SBSTA/2005/L.5)で、SBSTAは、議定書2.3条に関係する問題の議論を終了しなかったことを記録し、SBSTA 23で引き続きこの問題を検討することで合意する。

閉会プレナリー

5月27日金曜日、SBSTA 22は閉会プレナリー会議を開催した。SBSTA議長のBenragebは、この会合の初めのほうに出席していなかったのは残念だと述べ、副議長Abdullaに対し、議長不在時にSBSTAの議長を務めたことに感謝した。

事務局長のJoke Waller-Hunterは、Benrageb議長とAbdulla副議長の努力に感謝の言葉を述べ、それによって、この会合は成功裡に終わり、多くの問題で進展が見られたと述べた。その後、同局長は、この会合で合意されたSBSTA結論書の暫定評価から、US$130,000ほどの追加資金が得られることが示されているとし、どのような追加支援であっても大変ありがたいと述べた。同局長は、モントリオールでのCOP 11 とCOP/MOP 1は「画期的な」出来事になると付け加えた。

その後、SBSTAは、本会合の報告書(FCCC/SBSTA/2005/L.1)を採択した。Benrageb議長は、コンタクトグループ議長、出席者、通訳、そして全ての関係者に感謝し、午後4時過ぎに、この会合の閉会を宣言した。

実施のための補助機関
SBI議長のThomas Becker (デンマーク)は、5月20日金曜日の朝、この会合を開会した。事務局長のJoke Waller-Hunterは、SBI 22 が、COP 10で解決されないまま残されたさまざまな問題に関する作業を終了し、政府間プロセスの改善や、COP 11およびCOP/MOP 1に向けての調整、資金問題など他の問題を議論する機会であると述べた。

5月20日金曜日、出席者は、暫定議題書(FCCC/SBI/2005/1 and Add.1)の詳細について議論し、特にUNFCCC4.8条(悪影響)および4.9条(LDCs)の実施に関するサウジアラビアの追加提案 (FCCC/SBI/2005/1/Add.2)、およびG-77/中国のキャパシティビルディング(能力開発)に関する提案を議論した。EUと環境十全性グループ(Environmental Integrity Group)は、修正なしの議題書を支持したが、アフリカグループとAOSISは、キャパシティビルディング(能力開発)に関する項目の追加を支持した。アンブレラ・グループ(Umbrella Group)は、サウジアラビアの提案に反対し、キャパシティビルディング(能力開発)提案に関して、より多くの情報を求めた。サウジアラビア、ナイジェリア、オマーン、エジプト、アルジェリア、カタール、パキスタン、クウェート、アラブ首長国連合は、この項目の追加を支持した。

出席者は、暫定議題書原案に基づいて作業を開始することで合意し、その一方で折衝を行った。SBIは、5月23日月曜日にこの問題に戻り、Becker議長は、これらの項目を、議題項目中のその他の事項に含めることを提案した。非公式折衝の後、出席者は議長案を受け入れ、議題書(FCCC/SBI/2005/1 and Add.1)を採択した。

非附属書 I締約国の国別報告書

非附属書I締約国の国別報告書: COP 9以来、未解決のまま残されてきた、非附属書I締約国による第二回国別報告書提出の期限、および当てはまる場合には第三回の国別報告書提出の期限、そしてそれに関連する事項は、5月23-25日に行われた一連の非公式折衝の末、SBI 22で最終的に解決した。この折衝では、Soobaraj Nayroo Sok Appadu (モーリシャス)およびAnders Turesson (スウェーデン)が進行役を務めた。

SB 22におけるこの問題の議論では、オーストラリアから出されていた提案に示された延長可能な期間と提出期限との組み合わせに注目が集まった。GEF資金供与国からの出席者は、どのような延長であっても、非附属書I国別報告書向けの資金供与に関する現行のGEFガイダンスに何ら影響しないことを、確実にしようと試みた。G-77/中国は、GEF資金供与国に対し、提出期限が問題なのであり、追加の資金供与が問題なのではないことを保証しようとした。EU、日本、オーストラリア、米国、カナダは、3年間というプロジェクト準備期間への言及を撤回し、どのような延長もGEFの追加資金供与を意味することはないとする追加の文章を提案した。G-77/中国は、この問題をCOP 15でもさらに検討するとの合意と、LDCsがそれぞれの裁量により第二回報告書を提出することの承認を含めた、一連のパッケージの中で、上記の提案を受け入れた。この合意書は、5月26日木曜日のSBIで採択された。

SBI結論書とCOP決定書草案: 結論書(FCCC/SBI/2005/L.9)で、SBIは、「非附属書I締約国が、国別報告書の実際の作成準備を目的とするコスト総額支給合意に基づき、最初の支払いを受けてから4年以内に、第二回の国別報告書を、そしてあてはまる場合には、第三回の国別報告書を提出するべくあらゆる努力を払う」との記述を、COP11での採択のため提案される決定書草案に含めることで、合意する。

COP決定書草案において、COPは、締約国が、必要であれば、そしてそれぞれの国情に基づき、事務局に通知した上で、提出を一年まで延長することができることとし、どのような延長であっても、GEFからの資金源の追加を意味することはないこととする。LDCsは、その第二回国別報告書を、それぞれの裁量で提出することができるものとし、12.5条(国別報告書)の実施促進に関する議論は、2009年のCOP 15で行うこととする。

第一回国別報告書の編纂と統合: 国別報告書の編纂と統合に関する結論書草案は、SBI議長のBeckerが作成し、5月26日木曜日夕方のSBIで採択された。

SBI結論書: 結論書(FCCC/SBI/2005/L.8)で、SBIは、UNFCCC12.4条(開発途上国の提案するプロジェクト)に基づき非附属書 I 締約国が提出したプロジェクトのリストを含む文書FCCC/SBI/2005/INF.2を検討したことを記す。COP 11への提案書は、締約国において気候変動問題に対応する国内プログラムを策定する場合、GEFは、12.4条および決定書11/CP.1(適応への資金供与)に則り、非附属書I締約国がその国別報告書で明らかにしたプロジェクト提案の作成と開発を、求められれば、支援するよう、要請する。二国間援助プログラムおよび多国間援助プログラムに対しても、同様な援助を提供することが求められる。

非附属書I締約国の国別報告書に関する専門家諮問グループの作業: この問題は、5月20日金曜日のSBIプレナリーセッションで、初めて提起され、非附属書I国別報告書に関する専門家諮問グループ(CGE)の議長であるEmily Ojoo-Massawa (ケニア)は、CGEの業務に関する進展報告書(FCCC/SBI/2005/7)に基づく口頭でのプレゼンテーションを行い、この中には、モザンビークでの会議、およびアジアおよびアフリカ地域に関するCGEの実践訓練ワークショップが含まれた。米国は、CGEの作業に対する謝意を表明、他の国も米国にならい、CGEの作業への財政支援を行うよう求めた。スイスは、UNFCCC事務局やUNDPおよびUNEPの国別報告書支援プログラム(NCSP)からの支援の重要性を強調した。

その後、SBI議長のBeckerは、事務局および関心を持つ締約国と協議の上、専門家諮問グループ (CGE)の作業に関する結論書草案を作成した。この結論書草案は、5月26日木曜日、SBIにより採択された。

SBI結論書: 結論書(FCCC/SBI/2005/L.11)で、SBIは、CGE議長の口頭による報告およびCGEの実践訓練ワークショップの成果を記録する。SBIは、訓練材料の改善と将来の訓練ワークショップに関するCGE報告書(FCCC/SBI/2005/7)に示す提案にも、注意を求める。またSBSTA(SBI?−訳注)は、一年に2回以下のCGEの会議が重要であること、さらにGEFの資金を受けたNCSPとの協力が進展していることも記録する。緩和に関するCGEワークショップは、2005年9月26-30日に韓国で開催されることが暫定的に予定されているが、資金供与の一部がまだ支払われていない。SBIは、CGEが、2006-2007年の作業プログラムの中で、他の専門家グループとの合同会議を行う可能性を引き続き探求するよう求める。

資金供与と技術援助の提供: 第一回およびその後の国別報告書作成に関しGEFが提供する資金援助および技術援助についての結論書草案は、5月20日金曜日のプレナリーで簡単に議論された後、SBI議長のBeckerが作成した。SBIは、この項目に関する結論書を5月26日木曜日に採択した。

SBI結論書: 結論書(FCCC/SBI/2005/L.7)で、SBIは、第一回国別報告書およびその後の国別報告書作成のため用いられる財政支援に関しGEF事務局が提供した情報 (FCCC/SBI/2005/INF.1)を歓迎する。SBIは、第一回国別報告書そして/またはその後の国別報告書の提出を行っていない非附属書I締約国に関する情報をGEFが引き続き提供することとし、UNFCCC事務局に対し、SBI 24で報告することを要請する。またSBIは、第一回国別報告書を提出していない締約国に関する文書(FCCC/SBI/2005/INF.3)にも注意を求め、これら締約国に対し、できるだけ早く提出するよう要請する。さらにSBIは、LDCsがそれぞれの裁量で国別報告書の提出が行えることも記録する。

資金供与制度

特別気候変動基金: この問題は、5月20日金曜日、SBIで初めて取り上げられた。いくつかの締約国は、この問題がCOP10で解決されなかったことへの失望を表明した。EUは、適応と技術に関するSCCFにEUが資金提供を約束していることに言及した。バングラデシュは、LDCsの立場で発言し、LDCsは、適応のニーズに関して、SCCFを利用できるようにするべきだと述べた。

その後この問題は、非公式折衝およびコンタクトグループで取り上げられ、コンタクトグループはJozef Buys(ベルギー)およびEmily Ojoo-Massawa(ケニア)を共同議長として2回会合した。論議の中心となったのは、この基金での優先分野と注目分野であった。G-77/中国は、この資金供与は、「技術援助を支援する」ものとするべきだというEUの提案に、反対した。EUは、そのような文章とすることで、この基金は、すでに行っているところに付加価値をもたらすことができると論じ、一方、G-77/中国は、その文章では、決定書 5/CP.7(UNFCCC 4.8条および4.9条の実施)との一貫性にかけると述べた。このことは、経済多角化および化石燃料のエネルギー以外の利用への資金供与に言及する文章をめぐっての意見の不一致とも結びつくものであった。EUは、経済多角化の目的は、一つの商品への依存度を減らすことであると主張し、G-77/中国は、多くの国では一つのエネルギー資源に頼るしかないことから、その資源を汚染の少ないものにすることが、基金の目的であるべきだと述べた。

5月26日木曜日、コンタクトグループの共同議長は、コンタクトグループでは合意に達することができなかったと締約国に告げ、COP決定書草案(FCCC/SBI/2005/L.13)は、さらなる検討のため、SB 23に回された。文章の多くに括弧書きが残されており、特に基金の優先分野を明示するパラグラフではそうである。SBI議長のBeckerは、出席者が、合意できるような柔軟性のある権限を持ってCOP 11に出席するよう、求めた。EUは、COP 11で合意に達するには、さらなる努力が必要であるとし、それまでの間、EUとしては、GEFへの既存の資金供与約束が適切に実施されるのを確実にするため、GEFと協力すると述べた。

UNFCCC 4.8条および4.9条の実施

後発開発途上国に関係する問題: この問題は、5月20日金曜日、SBIで初めて取り上げられ、その席で出席者は、LDC専門家グループ(LEG)議長のPaul Desanker (マラウィ) から2005年4月のLEG会議の概要について説明を受け、またいくつかの附属書II締約国、LDCs、GEF、そして実施機関の代表が参加するセッション前の活動について、Ricardo Moita (ポルトガル)およびRichard Muyungi (タンザニア)から概要の説明を聞いた。多くの締約国が、セッション前の活動が前向きな雰囲気であっことを述べ、またLDC基金の運用について合意し、その実施に向け前進する必要性があることを指摘した。Ricardo MoitaとBubu Pateh Jallow(ガンビア)が、コンタクトグループの共同議長を務めることに同意した。

コンタクトグループは、5月23-26日で5回会合し、また非公式には多数回会合した。非公式折衝が行われ、SBI結論書草案およびCOP 11決定書草案が作成されたところで、SBI議長のBeckerが最後のコンタクトグループ会議の議長を務めた。

議論のほとんどは、EU提案に集中した。このEU提案は、LDC基金からの資金供与が、気候の変動性に対応して行われる活動に「追加的な」活動で、国別適応行動プログラム(NAPAs)で明らかにされた適応活動を優先的に支援するべきだとするもので、他のいくつかの国が支持した。LDCsは、気候の変動性と気候変動とを区別することの難しさについて述べた。また出席者は、全コスト分の資金供与を受けない活動のために作られる共同資金供与額についての詳細を議論した。LDCsは、この額を決定する際には、LDCs「固有の状況」を考慮する必要があることを強調した。

5月26日木曜日のSBI プレナリー会合の直前になって、COP11決定書草案についての最終的な合意に達した。

SB I結論書およびCOP決定書草案: SBI結論書(FCCC/SBI/2005/L.14/Add.1)には、COP決定書草案が含まれ、この中で、COPは、LDC基金の運用が、次の原則と合致するものであるべきだとしている:
国が中心となるアプローチや、適応能力を強化する方法として、NAPAsで明らかにされた緊急かつ直接の活動の実施を支援する;
気候変動の悪影響への対応能力を向上させる観点から、国内の開発および貧困削減の戦略、計画、または政策に適応措置を統合させることを促進するため、NAPAsで明らかにされた活動、および決定書5/CP.7で明らかにされたLDC作業プログラムの他の要素の実施を、支援する;
実地学習アプローチを支援する

このほか、決定書草案には次のものが含まれる:
NAPAsで明らかにされ、優先度が高いとされた気候変動の悪影響に適応するための活動に関する追加コストで、「影響を受けやすい国の直接的な適応ニーズを満たすためにかかるコスト」と定義されるものに対し、LDC基金から、全コスト分の資金供与を行うとする決定;
GEFが、LDCsの状況を考慮に入れ、NAPAsで明らかにされた支援活動に対する共同資金供与額を増額するようにとの要請;
NAPAsで明らかにされた活動で、上記に示す全コスト分資金供与による援助を受けない活動に対し、共同資金供与額分から共同資金供与の支援を受けるとの決定;
NAPAs実施で得られた経験を検討するとの要請、これには、LDC基金からの資金へのアクセスに関する経験も含める;
COP 14では、適切な場合、進展状況を評価し、さらなるガイダンスの採択を考慮するとの決定。

政府間会合に向けての調整

政府間会合に向けての調整という議題項目は、5月20日金曜日、SBIプレナリーで初めて取り上げられ、COP事務局長のSecretary Richard Kinleyが、この議題項目の中の小項目について、出席者に簡単な説明を行った、具体的には、モントリオールでのCOP 11とCOP/MOP 1に向けての準備(FCCC/SBI/2005/4 and Corr.1)、将来のセッションとセッションの間隔、政府間プロセスの組織、UNFCCCプロセスでのオブザーバー組織である。

将来のセッションとセッションの間隔について、Richard Kinleyは、COP 13を3-4週間延期し、IPCCの第四次評価報告書の統合報告書が完成した直後に開かれるのを避けて欲しいとのIPCCからの要請について述べた。まだ同氏は、政府間プロセスの組織を改善する方法についての最近のワークショップ(FCCC/SBI/2005/2)について述べ、市民社会の参加に関して国連で行われている作業について説明した。Karsten Sach (ドイツ)が、この議題項目に関するコンタクトグループの議長を務めることに同意した。

このコンタクトグループは、3回会合し、小項目のすべてについて検討を行った。将来のセッションとセッションの間隔について、最初は、COP 13の延期を求めるIPCCの要請に関する意見が、分かれていた。オーストラリア、日本、インド、EU、ニュージーランド、その他は、IPCCの要請を支持したが、サウジアラビアと中国は、IPCC報告書をCOP 14で取り上げることができると提案した。最終的に、締約国は要請に同意した。

出席者は、将来の交渉プロセスを改善する可能性について、多少突っ込んだ議論を行った。プロセスを改善し、議題項目や作業負担が大きいという問題に対処する方法を見つける必要がある点では、総体的な合意があったが、それをどうすれば達成できるかについては広範な意見が見られた。たとえばノルウェーやカナダなど、一部の締約国は、提案によっては、直ちに実施できるものがあると述べたが、サウジアラビアは、議論を重ねるよう求めた。結局、締約国は、この問題に関する作業をSBI 24で続けることで合意した。

5月27日金曜日、Karsten Sachは、コンタクトグループでの議論をプレナリーに報告し、結論書草案を提出した。政府間プロセスに関し、同氏は、「改善可能なオプションの探求を続ける」ことで合意したと述べた。しかし、同氏は、複数のコンタクトグループがあること、議題項目が多いことについて不服があると述べた上で、「教訓を学ぶために苦しのはいやだ」として、COP 11およびCOP /MOP 1の前に、可能な解決法を考えるよう、締約国に求めた。

SBI結論書: 結論書(FCCC/SBI/2005/L.4)は、COP 11およびCOP/MOP 1、将来のセッション間隔、政府間プロセスの組織、条約プロセスでのオブザーバー組織に関係する調整を取り上げている。

COP 11とCOP/MOP 1に関して、SBIは、このイベントの主催を申し出たカナダ政府に感謝し、締約国が効果的に参加できるよう、査証発行を容易にすることを、主催国に求めた。SBIは、COP 11およびCOP/MOP 1でのハイレベルセグメントを2005年12月7-9日に行うとの日程を確認し、事務局長に対し、暫定議題書に含める可能性のある項目に関して、締約国の意見に注目するよう求め、締約国に対しては、UNFCCCプロセス参加のための信託基金への資金供与を強化するよう促す。

将来のセッション間隔に関し、SBIは、COP 12とCOP/MOP 2の日付(2006年11月6-17日)を告げ、締約国に対し、この会議の主催を申し出て欲しいと述べ、COP 12の議長国は、アフリカ・グループ諸国の中からになるとする。またSBIは、2010年のセッション期間を5月30日から6月11日、および11月8-19日とするよう提案し、COP 13の日程を2007年11月から2007年12月3-14日に変更することを提案する。

政府間プロセスの組織に関し、SBIは、SBI 21で行われたワークショップに注目し、議題の多さや他の問題により政府間プロセスは多くの困難に直面しているとし、2005年11月15日までに改善オプションについての意見を提出するよう、締約国に求めた。またSBIは、この問題の討議をSBI 24でも続けることで合意し、締約国の意見やCOP/MOP 1での経験に考慮して、オプションを示すよう事務局に要請する。

オブザーバー組織に関し、SBIは、国連で現在行われている作業と、オブザーバーの参加に関する事務総長の報告書に注目する。SBIは、事務総長の提案するステップの多くがすでに確立されているUNFCCCでの実践事項の一部になっているとし、より広範な国連プロセスの成果にならい、オブザーバー組織の参加を促進する方法を明らかにするよう、事務局に求める。SBIは、この問題を、2007年5月のSBI 26で取り上げることになる。

運営上および資金上の問題

2004-2005年の二年間予算の実績: この問題は、5月20日金曜日のSBIプレナリーで最初に取り上げられた。事務局は開会の言葉の中で、締約国からの資金供与未払いによる資金不足に焦点を当てた。SBI議長のBeckerは、締約国と非公式に協議し、結論書草案を作成すると述べた。5月26日木曜日のSBI プレナリーで、締約国は結論書を、コメントすることなく、採択した。

SBI結論書: 結論書(FCCC/SBI/2005/L.5)で、SBIは、中間決算書ステートメント (FCCC/SBI/2005/INF.4)に注目し、資金供与未払い分の額が相当額に上っていることへの懸念を表明し、まだ供与分を支払っていない締約国に対し、できるだけ早く支払うよう求める。SBIは、補足資金も必要額と比較して不足しており、このため重要な活動の実施が遅れていることに対し懸念を表明し、この問題をSB 23でさらに議論すると決定する。

2006-2007年の二年間プログラム予算: この問題は、5月20日金曜日のSBIで最初に取り上げられた。事務局は、ユーロで実質0.5%増額され、米ドルでは22%の増額に相当する予算案の概要を示した。事務局は、議定書の発効により活動は増したが、事務局の費用の大半がユーロ建てであることから、対ユーロの米ドル安により、事務局の資金が削減されているとした。米国は、予算の増額にも、予算を米ドルではなくユーロで設定するとの提案にも賛成できないと述べた。EUは、提案されたとおりの予算案を支持した。John Ashe (アンティグア・バーブーダ)が、コンタクトグループの議長を務めることに同意した。

このコンタクトグループは、5月21日から26日で3回会合し、この週を通して、非公式折衝も行った。予算案の総額レベルと予算をユーロ建てにするとの提案が、引き続き二つの主な対立点であったが、G-77/中国は、3つの専門家グループで4回の年次会合という約束が確実に果たされることを求めた。

5月26日木曜日のコンタクトグループ会議で、Ashe議長は、歳入総額US$55,251,583という改訂予算案を提出し、EUとG-77/中国はこれを支持した。米国は、UNFCCC予算を200万米ドル削減するよう提案し、日本は総額を300万米ドル削減するよう提案した。事務局長のJoke Waller-Hunter は、200万米ドルの削減が「事務局の運営に深刻な影響を与える」と述べた。合意にいたらなかったことから、Ashe議長は、この会議を閉会とし、SB 23に文書を送るよう提案した。

SBI議長のBeckerが参加する非公式折衝が、当日の午後と夕方を通して続けられた。SBIプレナリーは、さらに協議できるよう、5月27日金曜日まで中断された。

SBIは、金曜日の朝、予算案での合意に達した。最終合意では、基幹プログラム予算総額を US$53,501,583とし、これには、主催国からのUS$2,037,020の供与とUS$2,000,000の繰越額が含まれるとした。この予算案は、原案より175万米ドル削減したことになる。

最後のプレナリーで、ジャマイカはG-77/中国の立場で発言し、同グループは、強い圧力を受けて、この合意に同意したものであり、気候変動プロセスに対する締約国の約束について、国際社会に間違ったシグナルを送るような決定に参加したことで、「困惑している」と述べた。またジャマイカは、予算の中に、UNFCCCの審議で前面にでてきたはずのキャパシティビルディング(能力開発)に関する特別な活動が何もないことを指摘した。

事務局長のJoke Waller-Hunterは、最終合意が、適応、非附属書I締約国、および議定書の基盤構造という3つの重要な作業分野のどれにも影響を与えないし、3つの専門家グループでの作業にも、またCDMやJI、そして実施に伴う活動にも影響を与えないと述べた。しかし、スタッフの旅費、訓練、諮問、附属書I締約国提出の国別報告書の詳細な検討の企画、情報の普及、新しいUNFCCCホームページの作成といった項目では、削減の影響を感じることになる。

SBI結論書: 結論書(FCCC/SBI/2005/L.15/Rev.1)で、SBIは、次のことを決定する:1)COP 11が2006-2007年の2年間基幹プログラム予算を承認するよう、提案し、2)US$7,828, 611の会議サービス予備費を提案し、3)2006年度の資金供与額について、締約国に通知する権限を事務局長に与え、4)文書FCCC/SBI/2005/8/Add.1の改訂版を作成し、それにはその文書に示された活動の義務も含めるよう、事務局長に要請する。

UNFCCCプロセスへの参加を支援する資金要求手順: UNFCCCの資金要求手順(参加のための財政支援)のパラグラフ7(c)の実施は、5月20日金曜日のSBIプレナリーで最初に取り上げられた。事務局は、SB19の要請に則り、締約国が基幹予算への資金供与の未払いがある場合、UNFCCCプロセスへの参加に対する資金提供は行わないという、これまでの慣習を中断することとしたと、述べた。アルゼンチンは、会議参加への資金援助を求めるのは開発途上国だけであることから、このインセンティブは、開発途上国にだけあてはまると述べた。資金供与分の不足は、COP 11およびCOP/MOP 1の出席者が必要としている援助額の半分しか利用できないことを意味する。SBI議長のBeckerは、締約国と非公式に協議し、結論書草案を作成すると述べた。5月26日木曜日のプレナリー会議で、SBIは、オーストラリアの提案した多少の修正を加えた上で、この小項目に関する結論書を採択した。

SBI結論書: 結論書(FCCC/SBI/2005/L.10)で、SBIは、この慣習中断に関する文書FCCC/SBI/2005/3に注目し、中断が資金に与える影響を見極めるには時間が必要であると決定し、2007年12月31日までは、現状を維持すると決定する。事務局は、この問題に関し、SB 26で報告することが求められる。またSBIは、UNFCCCプロセスへの参加のための信託基金への資金供与が引き続き不足していることについて、懸念を表明し、これにより、条約の資金手続き7(c)項を十分遂行し、実施することが困難になるとした。

本部契約(UNFCCC事務局の設置に関するドイツ政府との契約―訳注)の実施: この問題は、5月20日金曜日のSBIプレナリーで簡単に取り上げられ、ドイツと事務局長のJoke Waller-Hunterは、本部契約と議定書期間分の延長に関して報告した。短い結論書草案が作成され、5月27日金曜日にコメントなしで採択された。

SBI結論書: 結論書(FCCC/SBI/2005/L.2)で、SBIは、SBI 22でのホスト国政府と事務局長のステートメントに注目し、事務局長に対し、新しい動きがあれば、SBIに連絡することを求め、ホスト国政府には、SBI 24で本部契約実施のその後の進展状況に関して報告するよう求める。

事務局活動の内部審査: 事務局活動の内部審査は、5月20日金曜日のSBIプレナリーで取り上げられ、Joke Waller-Hunterは、内部審査(FCCC/SBI/2005/6)について報告し、需要を満たすだけの資源がないと述べ、締約国からのガイダンスを求めた。Harald Dovland(ノルウェー)がコンタクトグループの議長を務めることに同意し、5月21日土曜日のコンタクトグループで、結論書草案を配布した。このグループは二回、会合した。このグループの議論で、EUは、他の国際機関との作業について、協力や連絡の対象を絞り、付加価値のあるものにすることを規定するパラグラフを要求した。しかし、米国からの反対を受け、このパラグラフは削除された。日本とスイスは、利用可能な資源の範囲内で努力をするべきであると付け加えた。結論書は、6月27日金曜日、SBIにより採択された。

SBI結論書: この問題に関する結論書(FCCC/SBI/2005/L.6)で、SBIは、事務局の活動の量と範囲に注目し、事務局長が、直面する課題に対処し、その報告書(FCCC/SBI/2005/6, 附属書 I)において設定するイニシアティブを実施するよう提案する。またSBIは、COP決定書案 (FCCC/SBI/2005/L.6/Add.1)を提案し、これには、COPが、その専門家グループの権限に関する決定書を想起し、専門家グループの議長に対し、事務局への要求事項がそれぞれの権限の範囲内であり、そのような活動に利用できる資源の範囲内であることを確かめなければならないことが、含まれる。またCOPへの提案では、タイムリーな提出と文書化の質を強調し、COPが、「事務局への文書作成要請を抑制する締約国は有利である」ことを認めているとした。また提案では、事務局が、利用可能な情報システムについて、締約国への連絡を続けるよう求める。

その他の事項

クロアチアの基本年度排出量レベル: SBI議長のBeckerは、この問題を5月20日金曜日に提起し、これは数年間議題に上っていた項目であるとし、今回の会議でこれを解決できることを望むと述べた。EUは、クロアチアが自国の排出ベースラインを1990年とするとの提案を支持したが、ボスニア・ヘルツェゴビナとセルビア・モンテネグロは疑念を表明した。Jim Penman (英国)を議長とする非公式折衝でこの問題は解決され、SBIは、COPでの検討に向け、COP決定書草案を含める結論書をCOPに送ることで合意した。

SBI結論書とCOP決定書草案: UNFCCC4.6条(EIT附属書I締約国のための柔軟性措置)に基づく、クロアチアへの柔軟措置に関するSBI結論書(FCCC/SBI/2005/L.3)は、COP11の決定書草案を含む。この決定書草案において、COP は、クロアチアのこれまでの温室効果ガス排出量レベルを考えると、クロアチアには相当な柔軟性措置を認めるべきであることを確認し、SBIが、将来の会合において、クロアチアの基本年度の排出レベルを検討すると決定する。

気候ニュートラルなUNFCCC会合: この項目は、5月20日金曜日に初めて取り上げられ、SBI は、UNFCCCの会合を「気候にニュートラル」にする事に関する報告書(FCCC/SBI/2005/9)を、検討した。米国とサウジアラビアは、UNFCCC会合を気候にニュートラルなものにするとの提案に反対し、他にも眼前の問題に関する議題が数多くあると述べ、この問題について決定するのは、UNFCCCの会議を主催する各国の権利だと論じた。ミクロネシアやトリニダード・トバゴがこの提案を支持したにもかかわらず、結論書草案の最終版では、全てのUNFCCC会議を気候上ニュートラルなものにするとの提案が含まれず、代わりに、COP 11とCOP/MOP 1を気候上ニュートラルなものにするつもりだとのカナダのステートメントにのみ言及している。

SBI結論書: この結論書(FCCC/SBI/2005/L.12)で、SBIは、COP 11とCOP/MOP 1を気候問題上ニュートラルなものにするつもりであるとの、カナダのステートメントを歓迎する。

決定書1/CP.10実施に関係する問題:
5月27日金曜日、SBI議長のBeckerは、決定書1/CP.10 (ブエノスアイレス適応と対応措置に関する作業プログラム)に関し、SB22で3つの文書が提出されたと述べた。同議長は、これらの書類は、文書 (FCCC/SBI/2005/Misc.2) に含まれており、これらは、SBI 22の最終報告書における、「その他の問題」という項目で言及されると説明した。

閉会プレナリー

5月27日金曜日、事務局長のJoke Waller-Hunterは、ステートメントを発表し、その中で、SBIは長く保留となっていた問題の一部で作業を終了したとし、これは、「大きな成功」であるとした。また同局長は、この会合で得られた結論書は、予算に大きな影響を与えるものではないとした。しかし、同局長は、 予算財源の不足は「深刻」であり、参加基金は、かなり枯渇していると付け加えた。また同局長は、COP 11とCOP/MOP 1での暫定議題が極めて多いことに注目するよう求めた。その後SBIは、本会合の報告書(FCCC/SBI/2005/L.1)を採択した。

SBI議長のThomas Beckerは、参加者、通訳、警備員、そして「すばらしい事務局」への感謝を表明した。ジャマイカは、G-77/中国の立場で発言し、非附属書I国別報告書などの項目が解決したことについて、出席者に祝意を述べたが、SCCFで進展がなかったことに、「極めて大きな失望」を表明した。ルクセンブルグは、EUの立場で発言し、SBIで十分な進展があったと述べた。会合は、午前11時15分に閉会した。

SB 22の簡単な分析
嵐の前の静けさ?

「気候変動に対するパニックに襲われてから、このことに関わるようになった」

Thom Yorke、Radioheadのリードシンガー
UNFCCC補助機関会合(SB 22)が行われた1週間半の間、ボンのマリティムホテルの廊下にはパニックの兆しもなかった。出席者も事務局のスタッフも、この第一回の京都議定書の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議に向けた歴史的な準備作業に、冷静に対処していたようだ。しかし、COP/MOPに関するいくつかの主な疑問点が示されたときには、断絶の可能性がちらつくこともあり、これには、モントリオールで、京都議定書の遵守メカニズムや遵守機関に関する修正論議を進めようという動きや、さらに2013年以降の議論の「引き金」に関する、サイドラインに出ての議論も含まれる。

何にしても、SB 22でのビジネスライクな受け止め方が、非附属書I国別報告書やLDC基金など、長く持ち越されてきた問題の解決につながった。

SB 22では、今年初めの京都議定書発効がもたらしたモーメンタムで活性化される場面も見られ、この雰囲気は、セッション前の政府専門家セミナー (SOGE)にも反映していた。

ここでの分析は、SB 22でのいくつかの問題の処理方法を検討し、COP/MOPへの期待感の中、交渉場面をうかがい知ろうとするものである。この分析では、気候交渉プロセスが、海図にない海に乗り出したことから、信頼構築というレンズを通して問題を検証し、COP/MOPで注意するべき問題を調べる。

カーボンCOP:成長の痛みと新しい炭素市場:

現在の2013年以降のシナリオに関する議論から考えると、COP/MOPは、少なくとも、将来を見据えた自信や耐久力についての大きなシグナルを、世界に、各国政府に、そして、必ずしも小さくない存在である市場に、送るものとなるはずだと、広く信じられている。ここで市場というのは、気候変動体制により炭素が有効な商品として確立され始めている炭素市場のことである。炭素市場は、EU排出量取引スキームや他のイニシアティブのおかげで、すでに構築されており、機能し始めたばかりである。SB22と同時期に、欧州の市場で、二酸化炭素1トンを排出することを認めるアローワンスの価格が、?19という最高値をつけたとのニュースが重なったのは、気候体制の成功をはやばやと示すものである。

CDMは「もっとやれるはず」

一部の専門家は、(炭素―訳注)価格が、エネルギー市場のプレーヤーや電力会社をして、よりクリーンな形の発電に切り替えさせるレベルに近づいているとし、これにより技術への投資や展開に関する長期の決定についてのSOGEやG-8での議論の重要性が高まると、述べた。

交渉の部屋でも廊下でも、CDMの将来の運営についての議論が盛んであった。これは企業においても各国でも、国内レベルや国際レベルでのCDM関係組織が設立され、最初のプロジェクトが承認されるまで3年もかかったことに、待ちくたびれたためである。京都議定書の発効で、こういった企業や国は、約束達成の展望について、神経質になっており、さらにCDMプロジェクトへの投資で発生するはずの認証排出削減量(CERs)を利用できるかどうか、確信を得る必要性にも敏感になっている。CDMは、開発途上国にとり、信頼性を築く手段である。しかし、目前の懸念は、市場やビジネスの信頼を得ることであり、このことが、CDMプロジェクトの追加性要求に疑問を呈する合同キャンペーンを呼んでいる。

CERsへのアクセスを容易にし、(CDMのー訳注)「効率化」に向け強力なロビー活動を行っているものに対抗して、CDMの環境十全性を唱えるものの議論の影で、緊張感が高まっている。CDMの理事会は、圧力を受けているとも報じられた。CDMの管理者は、ビジネスや投資家社会の抜け目のない政治力学にさらされることが多く、たとえば、マリティムホテルのあるコーナーでは、法訴訟の話とか、理事会メンバーを法的に保護する方法といった話で、もちきりであった。

SB 22の前の週にドイツのケルンで開催されたカーボン・エキスポで、UNFCCC事務局長のWaller-Hunterは別な懸念を提起した。同局長は、CDMに関する各国政府の熱意に対して、約束された資金の現実の支払額とは、開きがありすぎることに、失望感を表明した。このことは、CDM理事会やパネルへの技術支援を強化したい事務局だけでなく、全ての面で不満を呼んでいる。CDMの資金調達問題は、京都議定書に米国が参加していないこと、そのため、UNFCCCと議定書の予算に一線を画し、補助信託基金に依存する必要があり、予算が複雑になったことに、その一因をたどることができる。

COP/MOPの議題項目の一つが、CDM理事会の報告であることから、この議論はCOP/MOPでも注目される。当然ながら、COP/MOPの議長国であるカナダは、この問題に関心を寄せており、CDMのスムーズな機能のために貢献するつもりである。カナダは、クレジットにも強い関心を示しているが、クレジットは、現在のCDMプロセスの複雑さからすると、入手し難いことが明らかとなっている。COP/MOPでは、CDMのプロジェクト件数が、近いうちに、これまでの10件単位から100件単位になると見られる中、CDMのインフラが、新しい一連のプロジェクトの流れが生みだす需要に対応できるかどうかが議論されるであろう。CDM理事会は、10名のメンバーから15名に拡大することが見込まれるMethパネルの改善を含め、CDMの運営管理計画を完成させるため、7月にもボンで再度会合する予定である。

CDMの責任を事務局の手の中から移し、CDMというゲーム全体を持ち上げる必要があるとキャンペーンを始めたものもいる。CDMを利用する可能性があるものに対しては、短期のうちにマラケシュ・アコードの議論を再開させようと試みるなら、第一約束期間で使えるCDMのクレジットがなくなる事態になりかねないとして、自滅行為だとする警告が出されている。

良いCOP、悪いMOP?(良い警官(COP)、悪い警官をもじってー訳注) COP 11とCOP/MOP 1で注目される問題

COP/MOPで、締約国が2013年以降の枠組を現実に設定する「モントリオール・マンデート」(SOGEで南アフリカが議題にのせた)を手土産に持ち帰ると期待するものはあまりいない。しかし、少なくとも、どのオプションもないわけではないと見込まれている。EUとAOSISは、SB 22の一方で、カナダの議長と会合し、2013年以降の議論の引き金となる、いわゆる「エストラーダ構想」を再提出する可能性について議論した。このことから、議長は、この問題を議題項目に入れることになろう。

COP/MOPでの成果の質を形作り、プロセスの未来に対する信頼度を決定付ける重要問題が、遵守委員会の設置と適応に関する作業の向上である。

遵守メカニズム

法的拘束力のある遵守メカニズムは、国内法体制に不可欠な要素であると認識されているが、京都議定書の遵守メカニズムは、その対象範囲と複雑性において、新しい境地を開くものである。COP/MOPでこの問題をどう扱うかについてはまだ議論がある。オプションとしては、決定書を採択するか、京都議定書を修正するかである。

SB 22の最終日、出席者は、文書カウンターで、サウジアラビアの文章が配られるのを見た。 この14頁の文書(FCCC/KP/CMP/2005/2)は、遵守の運用化のため、議定書を修正するという形をとるとのサウジ提案を示している。サウジ案は、たとえば、遵守委員会や、促進部と執行部、上訴と影響結果など、京都議定書に規定する遵守の手順やメカニズムを取り上げている。議定書を擁護するものは、議定書の修正には全締約国の批准が必要なことから、議定書の18条および20.1条を用いる修正のアプローチは、COP決定書採択のアプローチとは逆に、遵守手順を大幅に遅らせるのではないかと恐れている。さらに、議定書を修正にさらすことは、前例を作り、それによって、プロセスは予期しない道に陥ることになりかねない。

遵守委員会は、COP/MOPでの設立が期待されており、そのメンバーの選出も見込まれている。遵守メカニズムは、議定書の完全性を守る組織の一つであり、実施の調査と詳細な検討の責任を負う。報告書について設定された基準を守らない場合は、その締約国は、柔軟性メカニズムを利用する資格を失うことになる。SB 22での議論で遵守問題に触れられたのは、EITsでのLULUCF問題の処理を支援するためなら、促進部がすぐにも業務が始められることが明らかになったときであった。

適応と義務

適応は、SOGEでの審議項目が、SB 22での審議にもまわってきたもう一つの問題であり、重要なCOP 10決定書に応える5ヵ年作業プログラム「骨子」の策定が、議論の中心であった。しかし、適応に関する議論からは、COP/MOPに向ける交渉での新たな意見の食い違いが浮き彫りとなった。適応に関する方法論の作業は、緩和方法での作業レベルに近くなると見られ、これが効果的かどうか質問する方が公平だと見られる、つまるところ緩和は、議定書の全ての礎石であり、気候変動が人間社会に与える影響全体を削減する上で、最も重要な活動である。費用対効果の高さや衡平性の懸念に新たな焦点が当てられることも注目される。

5ヵ年プログラムの質に関する表向きの議論とは別に、さほどかけ離れていないところで、大規模汚染を行っている側が適応コストの責任を取らされる可能性について、神経が尖らされていることに気づいた参加者もいた。この汚染者と適応コスト責任の結びつき(これを訴訟の根拠にされる可能性があると考えるものもいる)は、UNFCCC4.4条において確立されている。この4.4条は、先進国締約国が、特に影響を受けやすい途上国締約国による適応コスト分の調達を支援しなければならないと規定する。米国や他のものでは、神経質になっている証拠が見られたが、これは、最近の異常気象と気候変動との結びつきや、モーリシャス戦略に関する議論を、先にたたいておこうとするものであろう。このことは、これら諸国が COP 10やそれに続く世界防災会議、そしてSIDS国際会議でとった立場とも一致する。

結論、嵐はこれからー長期天気予報

気候交渉プロセスは、いよいよ海図にない新しい航海に乗り出そうとしていることから、モントリオールでおこるとみられるさまざまな動きが見られ始めた。異なる締約国や交渉グループが、条約や議定書に関して相互に競合する権限を持ちつつ、新しい段階に移ろうとしている。

米国は、UNFCCCでの約束を続け、京都は批准せず、この二つのプロセスの相互関係を注意深く見守る覚悟のようである。このことは、 SB 22での米国の慎重に考え尽くされたステートメントや、他のプロセスとのリンクに関してとった立場、そしてUNFCCC−京都の境界線の予算への影響に関してとった態度でも自明である。サウジアラビアとそのOPECの仲間は、海上輸送および国際航空輸送からの排出量に関する議論の船出をとめるのに成功し、遵守メカニズム問題をどう取り扱うかがCOP/MOPでの議論の中心となると見込んでいる。SOGEでのEUの立場は、2013年以降の「公式プロセス」促進の扉は開けておこうとする、その意思に基づくものであった。EUは、米国やG-77/中国の敏感になっている点を、そして競争力を心配するヨーロッパ自体のビジネスや産業界の声やロビー活動をも、これまで以上に意識していたようである。中国が、プロセスに対する約束で、一歩踏み出したと見るものもいた。一方、カナダの議長は、セッションとセッションの間の期間において、二国間、および多国間の議論により、2013年以降の議論に向けた引き金戦略の可能性を流し、自国と米国およびEUとの関係のバランスをとろうとすると見られる。今の段階では、カナダの提唱する議題項目が議論以上のところ、たとえばハイレベルセグメントまで行くことはあまり期待できない。

上記のような問題そしてそのほかの問題が、モントリオールで本番を迎える。長期の天気予報は、依然として極端な現象となることを指している。

今後の会議予定
気候変動への適応を目的とした環境上適正な技術の開発と移転に関するUNFCCCセミナー: この会議は、2005年6月14-16日、トリニダードトバゴのトバゴで開催が予定される。
詳しい情報は、次に連絡:
UNFCCC事務局:電話: +49-228-815-1000;ファクシミリ:+49-228-815-1999;
電子メール: secretariat@unfccc.int; インターネット:http://www.unfccc.int

GEF協議および委員会会合:
これらの会議は、2005年6月6-10日、米国ワシントンで予定されている。詳しい情報は、次に連絡:
GEF事務局;電話:+1-202-473-0508;ファクシミリ:+1-202-522-3240;
電子メール: secretariat@thegef.org
インターネット: http://www.gefweb.org/Outreach/Meetings_Events/meetings_events.html

再生可能エネルギー資金調達アジアフォーラム: This このフォーラムは、2005年6月15-16日、中国の香港で予定されている。詳しい情報は、次に連絡:
Sarah Ellis, Green Power Conferences; 電話:+44-870-758-7808;
電子メール: sarah.ellis@greenpowerconferences.com
インターネット: http://www.greenpowerconferences.com/events/RenewableFinanceAsia.htm

モントリオール議定書の臨時締約国会議 / 自由作業部会第25回会議: これらの会議は、2005年6月27日から7月1日に、カナダのモントリオールで予定されている。臨時締約国会議は、2006年での臭化メチルの除外に関する意見の不一致を解消することを目指す。詳しい情報は、次に連絡:
オゾン事務局;電話:+254-2-62-3850;ファクシミリ:+254-2-62-3601;
電子メール: ozoneinfo@unep.org
インターネット: http://www.unep.org/ozone

2005年国際エネルギーワークショップ年次会合: このワークショップは2005年7月5-7日、日本の京都で予定されている。主題には次のものが含まれる;不確実かつ突然の気候変動の管理、UNFCCC/ポスト京都体制と気候変動への技術的な対応。詳しい情報は、次に連絡:
Leo Schrattenholzer;電話:+43-2236-807-225;ファクシミリ:+43-2236-807-488;
電子メール: leo@iiasa.ac.at
インターネット: http://www.iiasa.ac.at/Research/ECS/IEW2005/index.html

G8グレネーグル2005年サミット: この会議は、2005年7月6-8日、スコットランド、パースシャーのグレネーグルで招集される。詳しい情報は、次に連絡:
英国首相官邸;ファクシミリ: +4420-7925-0918;
インターネット: http://www.g8.gov.uk/

2005年太陽光世界総会: この会議は、2005年8月6-12日、米国フロリダ州オーランドで行われる。詳しい情報は、次に連絡:
Becky Campbell-Howe, American Solar Energy Society;電話:+1-303-443-3130;ファクシミリ:+1-303-443-3212;
電子メール: bchowe@ases.org
インターネット: http://www.swc2005.org

モントリオール議定書締約国第17回会議: MOP-17は、2005年11月にセネガルのダカールで、暫定的に予定されている。詳しい情報は、次に連絡:
オゾン事務局;電話:+254-2-62-3850;ファクシミリ:+254-2-62-3601;
電子メール: ozoneinfo@unep.org
インターネット: http://www.unep.org/ozone

京都議定書の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議第一回締約国会合および第11回UNFCCC締約国会議: 2005年11月28日から12月9日にカナダのモントリオールで予定されている、京都議定書都議定書の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議 (MOP-1)の第一回締約国会合は、国連気候変動枠組条約の締約国会議(COP 11)と合わせて行われる。詳しい情報は、次に連絡:
UNFCCC事務局;電話:+49-228-815-1000;ファクシミリ:+49-228-815-1999;
電子メール: secretariat@unfccc.int
インターネット: http://unfccc.int/meetings/unfccc_calendar/items/2655.php


NEDOからの委託によりGISPRI仮訳