国連気候変動枠組条約は '92年5月に採択され '94年3月に発効した。この条約は気候系に対して危険な影響を及ぼさない水準で大気中の温室効果
ガス(GHG)の濃度を安定化させることを究極の目的としてしている。
この条約では地球温暖化の責任の多くは先進工業国にあるとの立場に立ち、大気中のGHG濃度の安定化のために先進国がやらねばならない責務を気候変動枠組条約第4条約束(Commitments)に整理している。
(気候変動枠組条約における先進国の約束)
- 「温室効果ガスの排出と吸収源の・目録・」の作成( 1は全締約国共通
)
- 「排出抑制のための・政策・・削減・措置・の立案(ナショナル・プログラム)」
- 「人為的な排出および吸収源による除去に関する詳細情報」の定期的な・通
報。
・(ナショナル・コミュニケーションとして締約国会議(COP)事務局に定期的に通
報する。)
- 90年代末までに温室効果ガス排出量を従前のレベル(90年レベル)に戻すこと。
- 「共同実施」
- 「途上国への資金・技術の支援」・などが定められている。
これらの項目の中で具体的な削減措置の一つとして、「付属書Iの締結国(先進締結国)が温暖化防止のための政策および措置を他の締結国と共同して実施(共同実施)することもありうる。」と規定しており、他国と共同で温室効果
ガス排出削減または吸収源拡大に関する施策を採るという「共同実施(Joint
Implementation) 」の概念があり、 '93年8月の政府間交渉会議(INC)において、その内容についての討議が本格的に開始された。
この「共同実施」は、先進締結国が有する温暖化防止に関する技術、ノウハウおよび資金などを組み合わせることによって、世界全体として地球温暖化対策を費用に対して効果
の高いものとして行おうとするものである。すなわち、共同実施とは気候変動枠組み条約に定められた温室効果
ガス排出抑制のための手法であり、他の締約国と共同で温室効果ガス排出抑制策を実施した場合、その成果
(削減した温室効果ガスの量)の当該国間での配分を可能とするものである。(この配分をクレジットと呼ぶ)
ところで、この「共同実施」の基準等具体的な進め方については、気候変動枠組条約第1回締結国会議(COP1、
'95年3月28日〜4月7日ベルリンで開催)において、議論がなされているが、共同実施による温室効果
ガス排出削減量をどう配分(クレジット)するか等について、先進国と途上国との間の議論が収束せず、決定に至らなかった。
しかし、妥協案としてCOP1で下記のことが決定した。すなわち、 1共同実施の国際ルールが確立するまでの試験期間(パイロット・フェーズとして2000年まで)において、途上国のボランタリーベースでの参加を認めた「共同実施活動」(AIJ:
Activities Implemeted Jointly )を行うこと。 2AIJは具体的な知見や経験を積むことに主眼があるため、クレジットは付かない。
3資金は従来のODAに対し付加的であること。 4相手国政府の承認が必要。
5そのAIJの進捗について国際的な検討作業を行い、2000年以降の「共同実施」に関する基準・枠組みについて包括的な検討を締約国会議*1で行うこと等を決定した。
このCOP1での決定を受け、各国がAIJに積極的に取り組んだ結果
、’97年3月末現在で投資国6か国(米国、ドイツ、オランダ、ノルウェー、オーストラリア、日本)、ホスト国24か国、総計で53件(うち日本は11件)のプロジェクトがAIJとして認定され活動するに至っている。