地球環境
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CDM理事会 第21回会合
2005年9月28日−30日 ドイツ・ボン
結果概要
(”Meeting Report” 要約)

(原文は http://cdm.unfccc.int/EB/Meetings/021/eb21rep.pdf


2005年10月14日
文責:信岡洋子

 
 
概要
@ 2つの機関が特定の審査対象範囲の有効化審査(validation)について信任されたほか、今回初めて検証(verification)・認証(certification)での信任が2つの機関に承認された。これを受けてCERs発行の申請が可能となった。
A 方法論では、新たにNM0090(埋立地の有機廃棄物をたい肥化するプロジェクト)とNM0079-rev(セメント工場の廃熱回収・有効利用)が承認された。統合方法論についてはMethパネルがまとめていた、バイオマス残滓発電関連とセメント製造関連の2つの統合方法論が承認された。炭層・炭鉱メタン回収関連の統合方法論は、更に詰める必要があるとし、今回は承認が見送られた。また、今回初めての炭素回収・貯留の方法論が提出されたことが明らかとなったが、CDM理事会は炭素回収・貯留がCDMプロジェクトして適合するかどうか指針を出すまでMethパネルの検討は保留にするとした。
B 吸収源CDMの方法論は承認しないこととなったが、小規模吸収源CDMの方法論については、A/R WGの案をもとに承認し、この案をCOP/MOPに提案することとなった。
C CDMプロジェクトの登録申請後レビューリクエストがあった「Nubarashen Landfill Gas Capture and Power Generation Project in Yerevan (0069)」について、レビューチームを結成してレビューを実施することが決まった。


1. 運営機関(OE)の信任
  CDM-APの第8回進捗報告書における提案をもとに、CDM理事会は以下の決定をした。 有効化審査・登録のほか、今回初めて検証・認証のための指定運営機関(DOE)が信任された。これでCERs発行の申請ができるようになった。
1-1.2件のOE候補(applicant entity:AE)の有効化審査(validation)の信任に関する提案
    →2件のAEが以下のスコープで信任・暫定指定された。
(i) RWTUV Systems GmbH
スコープ:
1.Energy industries(renewable-/non-renewable sources)
2.Energy distribution
3.Energy demand
(今回の信任が初めて)

(ii) SGS United Kingdom Ltd
スコープ:
15.Agriculture
(既に信任を受けているスコープ:有効化審査・登録について1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、検証・認証についてはなし)
1-2.3件のAEの検証(verification)・認証(certification)の信任に関する提案
    →このうち2件のAEが以下のスコープで信任・暫定指定された。
(i) TUV Industrie Service GmbH TUV SUD Gruppe
スコープ:
1.Energy industries(renewable-/non-renewable sources)
2.Energy distribution
3.Energy demand
(既に信任を受けているスコープ:有効化審査・登録について1、2、3、13、15、検証・認証は今回が初めて)

(ii) Det Norske Veritas Certification Ltd.
スコープ:
1.Energy industries(renewable-/non-renewable sources)
2.Energy distribution
3.Energy demand
4.Manufacturing industries
5.Chemical industries
6.Construction
7.Transport
10.Fugitive emissions from fuels(solid, oil and gas)
11.Fugitive emissions from production and consumption of halocarbons and
   sulphur hexafluoride
12.Solvent use
13.Waste handling and disposal
15.Agriculture
(既に信任を受けているスコープ:有効化審査・登録について1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、15、検証・認証は今回が初めて)
DOEのリストは http://cdm.unfccc.int/DOE/list から見ることができる。


2. ベースライン及びモニタリング計画の方法論
  Methパネル第17回会合での検討をもとに、CDM理事会は以下のように合意した。
  2-1.個別案件について
(a) 承認:
NM0079-rev “Taishan Huafeng Cement Works Waste Heat Recovery and Utilisation for Power Generation Project”→ AM0024
(セメント工場の廃熱回収・有効利用、スコープ1、4)、
NM0090 “Organic Waste Composting at the Matuail landfill site Dhaka, Bangladesh”→ AM0025
(埋立地の有機廃棄物をたい肥化、スコープ13)
(b) 見直し(B判定):
NM0107NM0108NM0110NM0112
理事会の指摘する点やMethパネルの勧告をもとに改訂し、再提出する。その後Methパネルで再検討し理事会に何らかの提案をする。
(c) 不承認:
NM0092-revNM0113NM0116NM0119NM0120NM0122NM0125
なお、初めて炭素回収・貯留の方法論が提出されていた。CDMプロジェクトとして適合性があるかどうかについての指針を理事会が出すまでこの方法論の検討は保留とする。
  2-2.方法論の統合について
  Methパネル提出の統合方法論案を検討した。今回は2件の統合方法論が承認された。
(a) AM0004AM0015NM0081NM0050-revNM0098を統合する方法論案 “Consolidated methodology for grid-connected electricity from biomass residues” に合意した。ACM0006となった。また、理事会は、Methパネルにこの方法論の適用を背圧タービンの他に、抽気復水タービンを用いた他のコジェネにも広げられるかどうか検討することを要請した。この統合方法論はCDM理事会第22回会合後、AM0004AM0015を置き換えることとなる。スコープ1
(b) NM0045-revNM0047-revNM0095NM0106を統合する方法論案 “Consolidated baseline methodology for increasing the blend in cement production” に合意した。ACM0005となった。スコープ4
(c) NM0066NM0075NM0093NM0094NM0102を統合する方法論案 “Consolidated baseline methodology for coal bed methane and coal mine methane capture and use for power (electrical or motive) and heat and/or destruction by flaring” については、理事会はMethパネルに更に検討し詳細に詰めていくよう要請した。
  2-4.プロセスに関する事項
(i) 新方法論の検討・承認プロセスの改善に関して、前回の理事会会合に引き続き検討した。
“Revised procedures for submission and consideration of a proposed new methodology (version 8)” (annex2 http://cdm.unfccc.int/EB/Meetings/021/eb21repan2.pdf )に合意したほか、以下を決めた。
(a) B判定の新方法論については、理事会の当該判定の後5ヶ月以内に再提出がない場合は申請取下げと見なす。
(b) B判定となった新方法論の再提出は1度のみ
(c) 大規模CDMプロジェクトのために新たに方法論を提出する際、プロジェクト参加者にUS$1,000の手数料を徴収する。方法論が承認された場合、当該プロジェクトの登録料はUS$1,000引いたものとする。
(d) 指定運営機関は新たに提出される方法論について自主的に事前評価を行うことができる。事前評価が行われたものはMethパネルの事前評価は行わないものとする。
(e) 「事前評価フォーム (“F-CDM-NMas” 」にある改訂版評価基準を採択した。(annex3 http://cdm.unfccc.int/EB/Meetings/021/eb21repan3.pdf
(f) 新たに提出された方法論を事前評価するパネルメンバーは半日分の手数料を報酬として受け取る。
(g) Mr Sethi(CDM理事会メンバー)とMs Moskalenko(CDM理事会代理メンバー)をMethパネルに出席し同パネルの議長と副議長をサポートするよう任命
(ii) 承認済み方法論の見直しについては、 “Procedures for the revision of an approved baseline or monitoring methodology by the Executive Board”に合意した。
(annex6 http://cdm.unfccc.int/EB/Meetings/021/eb21repan6.pdf
  2-5.その他の説明・指針
(i) CDM理事会は、承認済み方法論内での「追加性立証評価ツール」の言及は、このツールが当該方法論の一部となっていて、従ってこのツールが利用されるべきであると強調した。
(ii) MethパネルがCDM理事会に指針を出すよう提案していたマイナスの排出削減*の件では、CDM理事会はプロジェクトによる排出量削減によってマイナス削減量の埋め合わせがなされた後CERsが発行される旨、新たに方法論を提出する際規定するべきだとした。
*パフォーマンスが悪かったりリーケージが削減量を上回ったりして一時的に排出量削減がマイナス(ベースライン排出量−プロジェクト排出量−リーケージ<0)となってしまった場合
(iii) 国の政策がCDMの方法論となるかに関しては、次回のCDM理事会でMethパネルへの指針を決めるということで合意した。
(iv) 異なるCDMプロジェクトの組み合わせを新方法論として提案する方法論については、次回CDM理事会会合で引き続き議論していく。
第13ラウンドの新方法論の提出期限は2005年10月5日。


3.吸収源CDM関連事項(afforestation and reforestation project activities)
  A/R WG (Afforestation and Reforestation Working Group) の第5回会合の報告内容を検討した。
  3-1.吸収源CDM方法論の個別案件
ARNM0006ARNM0008ARNM0009ARNM0011を、A/R WGの提案通り不承認とした。
  3-2.小規模吸収源CDM方法論
(i) 小規模吸収源CDMプロジェクトのための簡素化された方法論について、CDM理事会はA/R WGの同方法論案を検討し、理事会メンバーからの技術的コメントを組み入れれば承認し、COP/MOPに提案するとした。コメントが組み入れられた後、2005年11月半ばまでにUNFCCCのホームページで好評される。
(ii) 吸収源CDMプロジェクトの追加性立証ツール案の修正版について(注:小規模吸収源プロジェクトには必要ない)CDM理事会は検討し、合意した。
(annex16 http://cdm.unfccc.int/EB/Meetings/021/eb21repan16.pdf )
第7回ラウンドの吸収源CDM方法論の提出締め切りは2005年10月14日。

4. 小規模CDM関連事項
SSC-WG(Small-Scale Working Group)の第3回会合でまとめられた提案をCDM理事会で検討した。
  4-1.小規模CDM方法論の改訂について
小規模CDM方法論の改訂について合意した。改訂版は2005年10月12日から適用される。
(annex22 http://cdm.unfccc.int/EB/Meetings/021/eb21repan22.pdf
  4-2.バンドリングについて
小規模CDMプロジェクトのバンドリングについてのSSC-WGの提案を検討し、バンドリングの原則が合意された。今後もバンドリングの技術的側面について検討を続けていく。
(バンドリングの種類:1.同一タイプ・カテゴリー・技術/手法のプロジェクトのバンドリング及び、2.(a)同タイプ・カテゴリーで異なる技術/手法のプロジェクトバンドル、(b)同タイプで異なるカテゴリー・技術/手法のプロジェクトバンドル、(c)異なるタイプ・カテゴリー・技術/手法のプロジェクトバンドル)
(annex21 http://cdm.unfccc.int/EB/Meetings/021/eb21repan21.pdf
  次回のSSC−WG会合は2006年1月26、27日に開催されることが暫定的に決まったことを確認した。


5. CDMプロジェクト活動の登録
CDM理事会は登録済みプロジェクト活動を確認した。登録済みプロジェクトの詳細はUNFCCCのホームページでも見ることができる。
http://cdm.unfccc.int/Projects/registered.html
  5-1.登録手続きについて
以前のCDM理事会での議論をもとに事務局が用意した、登録手続きの効率化に関するドラフトペーパー検討した。更に議論することに合意し、インターネット上での意思決定に向け、案が用意される。過去に遡ってクレジットを求めるプロジェクトに関する議論を行う。
  5-2.登録申請のタイミングについての確認と指針
以下を明確にした:
(i) CDM理事会の指針に規定されているように、CDMプロジェクトの開始日は必ずしもクレジット期間の開始日と同一である必要はない。従って、2000年1月1日以降に開始したプロジェクトは(クレジット期間の遡及はできないが)2005年12月31日後もCDMプロジェクトとして有効化及び登録をすることができる;
(ii) 決定書17/CP.7のパラ12と13*の条項は吸収源CDMプロジェクトには適用されない。2000年1月1日以降に始まった吸収源CDMプロジェクトは、最初の検証がプロジェクト登録日以降に行われるということであれば、2005年12月31日後も有効化・登録できる。クレジット期間の開始日がプロジェクトの開始日と同じとすると(登録日に関わらず)、2000年以降のプロジェクトは開始時点からのtCERs/lCERsが発生する。
*決定書17/CP.7パラ12.CDMプロジェクトの登録日以降に始まるクレジット期間のみCERsが発行される、パラ13.2000年時点で開始している、及び同決定書が採択される前に開始していたプロジェクトは、2005年12月31日までに登録申請されれば、CDMプロジェクトとして有効化・登録申請ができる。登録後、クレジット期間は2000年1月1日以降であれば登録日より前に遡ってもよい。)
  5-3.「Nubarashen Landfill Gas Capture and Power Generation Project in Yerevan (0069)」につ
    いて
レビューリクエストが申請された当該プロジェクトを検討し、レビューチームを結成しレビューを実施することで合意した。


6. CDM 登録簿
  CDM理事会のCDM登録簿の第2バージョンの完成版のデモンストレーションが行われた。必要な国別登録簿とインターナショナル・トランスアクション・ログができれば、この第2バージョンの登録簿によって、CERs、tCERs、lCERsを付属書I国の国別登録簿に移転させることができる。


7. その他
  HFC23の破壊によって得られるCERsについて各国政府からの意見をまとめたペーパー(このトピックはSBSTA22に引き続きSBSTA23でも話し合われる)、CDM関連の作業のための予算、COP/MOPへのCDM理事会の年次報告書、DOEやAE・各国政府から受領したコメント等について議論が行われた。




以上