地球環境
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Vol. 12 No. 250
2004年12月7日、火曜日

第10回国連気候変動枠組条約締約国会議

2004年12月6日



国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の第10回締約国会議(COP-10)、および科学的・技術的助言に関する補助機関(SBSTA-21)と実施に関する補助機関(SBI-21)の第21回セッションは、12月6日月曜日、アルゼンチン、ブエノスアイレスで開会した。COPでは、開会の挨拶があり、議題の議論を行った。SBIとSBSTAの開会セッションは午後に行われた。SBSTAは、土地利用、土地利用の変化、森林(LULUCF)のための優れた実践方法ガイダンス、CDMの規定での小規模新規植林および再植林(A&R)プロジェクト活動、航空輸送および海上輸送での排出量を含めた手法問題を取り上げた。また締約国は、研究と体系的観測(R&SO)も取り上げた。SBIは、決定書5/CP.7(悪影響)規定の活動の実施、最後進国 (LDCs)、クロアチアの基本年度の排出量レベルでの進展について議論した。

COPプレナリー

OPENING 開会セッション:
: COP-9副議長のMamadou Honadia(ブルキナファソ)は、COP-9議長のMiklos Persanyi (ハンガリー)に代わり、アルゼンチン健康と環境大臣のGines Gonzalez Garciaを紹介し、同大臣は、喝采を得てCOP-10の議長に選ばれた。Gonzalez Garcia議長は、COP-10が京都議定書発効前の最後のセッションであると同時に、行動をとることに向かう新しい時代の最初のセッションでもあることを強調した。同議長は、先進的な研究や知識は資源の増加を伴うものでなければならず、また社会の全てのものの献身が必要であると述べた。ブエノスアイレス市長のAnibal Ibarraは、出席者をブエノスアイレスへと歓迎し、気候変化への対応や一般の認識向上において、地方当局が中心的な役割を果たすことに焦点を当てた。

UNFCCC事務局長のJoke Waller-Hunterは、UNFCCCの10周年であることと、議定書の発効が目前であることを強調した。同事務局長は、UNFCCCの最初の10年間の報告書を提出し、2012年以後に待ち受けるチャレンジを強調し、全ての国がUNFCCCの目的達成に公平に貢献することを確保するため、公平で効果的な戦略を考えるよう、締約国に提案した。

多くのスピーカーがロシア連邦による議定書の批准を歓迎し、米国が議定書を批准するようにとの希望を表明した。カタールは、G-77/中国に代わり、途上国での最近の気候関連災害を指摘し、国際社会がそのコミットメントを新たにするよう呼びかけた。同代表は、適応、技術移転、キャパシティビルディング(能力向上)を優先政策議題としておくべきであると述べた。同代表は、適応のための資金資源の動員が附属書I締約国の責任であることを強調し、共通するが差異のある責任の原則を強調した。

オランダは、EU、ブルガリア、ルーマニア、トルコに代わり、気候変化への対応へのコミットメントの継続を表明し、2005年1月からのEU排出量取引スキームの立ち上げに焦点を当てた。同代表は、地球平均気温の上昇を摂氏2度に抑えることを支持し、これ以上の上昇なら不可逆的な被害を生むことを指摘した。ツバルは小島嶼諸国連盟(AOSIS)に代わり、小島嶼開発途上国の持続可能な開発のためのバルバドス行動計画実施の10年後の見直し(BPOA+10)と、世界災害削減会議(WCDR)とで強力な連携を行う必要性を強調し、適応に関する協議の重要性も強調した。

スイスは、環境インテグリティーグループに代わり、第一約束期間がまだ最初のステップでしかないことを指摘し、締約国に対し、22012年以後での気候変化のチャレンジに対応する方法や手段を考えるよう促した。ケニヤはアフリカグループに代わり、決定書5/CP.7の実施での進展の必要性を強調した。タンザニアはLDCsに代わり、国内適応行動計画 (NAPA)を策定するための資金の配分が遅いことへの懸念を表明した。ロシア連邦は、議定書の批准が自国にとり難しい決定であったと説明した。ナイジェリアは、同国の議定書の批准が間近であることを伝えた。COMOROS(コモロ連盟)は、適応が多くの脆弱な国々にとり極めて重要であることを指摘した。サウジアラビアは、第二約束期間の目標を附属書B締約国に限定するべきであり、開発途上締約国を含めるべきでないと述べた。エジプトは、資金、技術移転、 and CDM活動促進の必要性を強調した。

組織上の問題:Gonzalez Garcia議長は、京都議定書が現在129カ国により批准され、2005年2月16日に発効することを、締約国に伝えた。同議長は、セッション間折衝にもかかわらず、手続き規則の42項(投票)が未解決のままであると発言し、同議長が、非公式折衝を行うと述べた。

その後、Gonzalez Garcia議長は、暫定議題案を採択のため提出した。カナダは、議論を進めようとの精神で、クリーンなエネルギーの輸出に関する同国の提案を取り下げた。 EUは、議定書2.3条(政策措置の悪影響)に関係する問題についての議題項目を削除するよう提案し、サウジアラビアはこれに反対した。

米国は、COPからBPOA+10とWCDRへのインプットに関する議論に異論を唱え、サウジアラビアはこれを支持したが、アルゼンチン、AOSIS、EU、モーリシャスはこれに反対した。非公式な議論の後、締約国は、「他の政府間会合に関連するUNFCCCの活動についての意見交換」を考えることで合意したが、意見交換はCOP-10の報告書に反映され、これらの会議での事務局長による報告を助けることになるとの注釈を議題書につけることとなった。締約国は、2.3条と4.2条(a)と(b)(附属書Iコミットメント) を保留にした上で、議題書を採択た。

議長以外の役員の選挙は立候補が最終的なものとなるまで延期された。COPは、オブザーバーとしての組織の入場を承認した。COP-11の日程と場所についておよび事務局長任命手続きについて、締約国は、さらなる折衝が必要ということで合意した。Gonzalez Garcia議長は、ハイレベルパネルディスカッションの非交渉サマリーを作成すると述べた。

SBSTA

開会:SBSTA議長のAbdullatif Benrageb (リビア)が、 SBSTA-21を開会し、Arther Rolle (バハマ)が引き続き SBSTA副議長を務め、Ibrahim Al-Ajmi (オマーン)がRapporteur(報告者)となることを指摘した。参加者は、議題書(FCCC/SBSTA/2004/7)を採択した。

手法問題:LULUCFの優れた実践方法ガイダンス:
オーストラリアは、伐採木材製品(HWP)に関する継続審議を待望するとし、EU、米国、日本、カナダもこれを支持した。AOSISは、HWPの報告や計算は、健全な科学の下で行われるべきで、市場インセンティブで行われるべきでないと述べた。オーストラリアは、LULUCFに関するオープンエンドな政策協議について書面での提案を提出し、カナダと日本がこれを支持した。EUは、SBSTAが2005年にLULUCFのワークショップを開くよう提案した。カナダは、COP-10での優れた実践方法ガイダンスの採択を促し、日本、EU、ノルウェーがこれを支持した。William Kojo Agyemang-Bonsu (ガーナ)とAudun Rosland (ノルウェー) が、この問題に関するコンタクトグループの共同議長となる。

小規模A&R CDM:
事務局は、小規模A&R CDMの規則と手続きに関する決定書案、およびその実施を容易にするための施策に関する決定書案を提出した。セネガルは、低所得者社会への便益を保証する必要性を強調した。日本は、取引コストを削減するためには、簡素化した規則や手続きが必要であると述べ、カナダがこれを支持した。EUは、簡素化した規則や手続きでは、炭素クレジットの過剰評価や、議定書の環境上の完全性を損なうことは避けるべきであると述べた。ウルグアイは、他の条約とのシナジーが重要であることを強調した。コンタクトグループは、Thelma Krug(ブラジル)とJim Penman(UK)が共同議長となる。

航空輸送と海上輸送からの排出:
Benrageb議長は、SBSTA-20ではこの問題での合意に至らなかったことを指摘した。いく人かの出席者が、航空輸送部門での排出量の急速な増加に懸念を表明した。AOSISは、第二約束期間では、航空輸送や海上輸送に帰するそして計算する手法で大きな進展があるよう促した。スイスは、国際航空輸送および海上輸送からの排出量の割当に関する議論を歓迎したが、米国はこれに反対した。米国とカナダは、SB-22でインベントリーの問題を取り上げるべきであると述べた。インドは、割当が、国際航空機関や国際海事機関ではなくUNFCCCやIPCCが取り上げるべき、政治的な問題であると述べた。非公式折衝は、Eduardo Calvo(ペルー)が進行役となり、この問題をさらに討議する。

R&SO:
事務局は、「UNFCCCを支援する気候の地球規模観測システムについての実施計画」を提出し、地球規模気候観測システムは、その活動報告書を提出した。スイスは、IPCCがこれらの問題に関するSBSTA結論書に留意し、第四次評価報告書の中でこれらの問題を検討することを提案した。Stefan Rosner(ドイツ)とSoobaraj Nayroo Sok Appadu(モーリシャス)がこの問題のコンタクトグループの共同議長となる。

SBI

開会:
SBI議長のDaniela Stoycheva (ブルガリア)がSBI-21を開会した。参加者は議題書(FCCC/SBI/2004/11)を修正なしで採択した。役員の選出について、Emilio Sempris(パナマ)が、Gonzalo Menendez(パナマ)に代わりSBI Rapporteur(報告者)となり、Fadhel Lari(クウェート)が、引き続き、SBI副議長を引き続き務める。

UNFCCC 4.8条と4.9条の実施:決定書5/CP.7規定の活動実施での進展:
事務局は、SBI-19とSBI-20で議論された決定書案の全体が括弧付けされているままであることを指摘した。国連の貿易と開発に関する会議は、その業務が、LDCs、キャパシティビルディング(能力向上)、貿易と開発を含め、決定書5/CP.7に関係していることを指摘した。アルゼンチンは、決定書5/CP.7に関する議論が適応を進める絶好の機会を与えると述べた。同代表は、議題項目に関するSBIの決定書案が括弧付けされている欠点に対し懸念を表明し、SBSTAの適応のためのボトムアップアプローチが、決定書草案に反映されていない点を例として指摘した。バングラデシュは、途上国の気候変化対応能力を議論する地域ワークショップを提案した。AOSISは、SIDSの保険オプションに関するワークショップを呼びかけた。

サウジアラビアとナイジェリアは、気候変化の影響と対応措置の両方を取り上げる必要性を強調した。オーストラリアは、地域レベル、地方レベルでの気候変化の影響に関する情報を普及させる必要性を強調した。EUは、気候変化が千年紀開発目標の達成に影響を与える可能性を指摘した上で、脆弱な国による悪影響への対処を支援する決定が必要であることを強調した。マリは、Sahelでのイナゴの問題について説明し、早期警報システムの強化が必要であることを強調した。Stoycheva議長は、この問題に関するコンタクトグループが設置され、その共同議長は12月7日に発表されると述べた。

LDCs関連問題:
事務局は、LDC専門家グループ(LEG)の作業について最新の情報を提出した。同氏は、モーリタニアが、NAPAを提出する最初のLDCであり、多くの国がそれぞれのNAPAsを最終決定しようとしていると発表した。LEG議長のLa’avasa Malua (サモア)は、LEGの会議報告書を提出し、LDCキャパシティビルディング(能力向上)の必要性に関する提案書案が完成したことを強調した。タンザニアはLDCsに代わり、各国国内窓口を強化する必要性と、NAPA実施中にLEGがガイダンスの提供を継続することを確保する必要性を強調した。モーリシャスは、2005年でのLEG活動への適切な支援を呼びかけた。

EUは、LDCsに関する議論では、重複を避けるため、決定書5/CP.7に関する審議を考えに入れるべきであることを提案した。スイスは、第一回のNAPAsのまとめと統括を行うよう提案し、ウガンダはこれに反対した。AOSISは、NAPAsが完成したところですぐに実施するよう促した。Bubu Jallow (ガンビア)とRicardo Moita (ポルトガル)がこの問題のコンタクトグループの共同議長を務める。

そのほかの問題:クロアチアの基本年度の排出レベル:
事務局は、クロアチアの温室効果ガス・インベントリーが2004年9月に再検討されたと説明した。クロアチアは、クロアチアの1990年排出量のレベルの問題がCOP-10で解決されることへの希望を表明し、EUがこれを支持した。ボスニア・ヘルチェゴビナは、レビューでの発見事項を受け入れたことを指摘した。セルビア・モンテネグロは、報告書に関して留保を表明し、この問題をCOP-10でさらに議論するよう求めた。Jim Penmanがこの問題での非公式折衝の進行役となる。

廊下にて


ロシア連邦の批准と長く待たれていた京都議定書の発効が見えてきたことから、参加者は、月曜日の朝、明るい気持ちでプレナリーの場に入場した。いく人かの出席者は、カナダがそのクリーンなエネルギー輸出に関する多年の対立議題を取り下げて協力的な姿勢を見せたことを、歓迎した。BPOA+10 とWCDRへのインプットに関する議題項目では、1,2カ国が不満をあらわにし、これが、こういったプロセスでの将来的な議論の予兆でないかとの懸念を表明し、気候変化と災害の間のつながりを軽視しようとの試みを恐れる国もあった。

これからの2週間に期待を持つとともに、適応がホットな対立を持つ問題であることを指摘するものもいた。

NEDOからの委託によりGISPRI仮訳