Vol. 12 No. 253
2004年12月10日、金曜日 |
第10回国連気候変動枠組条約締約国会議
2004年12月9日
12月9日木曜日、COP-10参加者は、SBSTAプレナリー、コンタクトグループ、SBSTAのセッション中ワークショップで会合した。
SBSTAは、議定書2条3項(政策と措置に関する悪影響)の実施に関する問題、気候変動 (適応)の影響の科学的・技術的・社会経済的影響に関する問題、および脆弱性と適応に関する問題を取り上げた。コンタクトグループでは、CDM理事会(EB)報告書、
UNFCCC 6条 (教育、訓練、啓発)、 適応、 後発開発途上国 (LDC)に関する問題、 第2次(必要な場合は)第3次非附属書I
国別報告書の提出、 決定書5/CP.7 (悪影響)に基づく活動の実施状況、技術移転等について会合した。午後から参加者は、持続可能な開発と技術の革新・展開・普及に寄与する緩和のための実践的機会と解決策に関するセッション中ワークショップで会合した。
SBSTA
その他の問題: 議定書2条3項の実施: Benrageb議長は、締約国に対しこの問題を前進させるよう求めた。サウジアラビアは、2条3項について進展が見られないことに失望感を表明した。COP-8以降、EU、
カナダ、日本は2条3項が決定書5/CP.7に充分反映されていると述べた。Benrageb議長はこの問題の非公式協議を行う。
それ以外の問題: チリは、国際専門家会合で輸送やCDMの問題を取り上げるべきだと述べた。Global Environment Center(地球環境センター)は、地球大気の管理のためのピート地帯の生態系の重要性について発表した。
適応: ジャマイカは、G77/中国を代表し、12月8日に開催されたSBSTAセッション中ワークショップにて、適応に取り組むための行動が喫緊の課題であることが強調されていたと述べた。オーストラリアは、先進国と途上国の双方に適応が必要だと協調した。EUは、気候変動のさまざまな影響レベルや変動の速度を確認し、適応オプションを特定するためにSBSTA-20
と SBSTA-21 ワークショップの成果を見直すよう提案した。米国は、個々の異常気象は気候変動と関連づけて考えることはできないと述べた。アルゼンチンと、アフリカグループを代表したスーダンは、適応が全世界の最優先事項だと述べた。日本は地球レベルで緩和と適応の両方について取り組んでいかねばならないと述べた。カナダは、適応に関する知識基盤の強化を訴えた。適応能力の育成方法については、ニカラグアが、地域社会や技術専門家を取り込む参加プロセスについて言及した。中国は、先進国からの技術移転と資金の呼び込みの必要性を強く求めた。
チュニジアは、その他条約との関係強化と共同研究プロジェクトの展開を支持した。ニュージーランドは、先進国にとって適応が持続可能な開発のサブ要因であると述べた。サウジアラビアは、適応行動が欠如していることに憂慮を表明した。南アフリカは、UNFCCCが適応行動に関してリードしていくべきだと語った。この問題について、Philip
Gwage (ウガンダ)とDavid Warrilow (イギリス)が共同議長を務めるコンタクトグループが発足した。
コンタクトグループ
CDM EB: Raul Estrada-Oyuela (アルゼンチン)が議長を務めるコンタクトグループでは、決定書草案を検討し、包括的な議論を行った。米国はCDM理事会への出席手続きに関して、「出席とはEB会議室への物理的参加を意味する」として、EB規則27の改正を求めた。Estrada-Oyuela議長は、この種の改正には予算的な影響があり、資金メカニズムのコンタクトグループからのガイダンスが必要であると指摘した。日本は、エネルギープロジェクトを優先させる必要性を強調し、EUとともに、より一層の透明性が必要であると述べた。EUとスイスは、他の多国間環境条約の目的達成のため、今後CDM活動をいかに実施していくべきか議論する必要があると言及した。日本は、承認済みの手法ではカバーされていない部門のプロジェクト活動の種類について、新たなベースラインやモニタリング手法を文書で提案すると述べた。
UNFCCC 6条: Crispin d’Auvergne(セントルシア)が議長を務める同コンタクトグループでは、技術情報センターへの資金調達を中心に議論を行った。事務局は、プロジェクト開発段階の初年度で165,000米ドルが必要であると指摘した。米国は、情報センターの年間コスト見積もりを準備すべきだと提案した。地域ワークショップについては、
AOSIS がSIDSワークショップの必要性を強調した。米国と他の国々が、ウルグアイや日本で提唱されているワークショップなどとの違いについて情報を求めた。 d’Auvergne議長は、さらに議論を進めるために結論書草案を作成する。
適応: David Warrilowコンタクトグループ共同議長は、共同議長の結論書草案づくりのため参加者からのインプットを求め、COP-10では決定書をまとめるための時間が不十分であると指摘した。
アルゼンチンは、COP-10の一つの成果として、適応の政治的重要性が認識されるようにすべきだと提言した。多くの参加者が適応に関するSBIとSBSTAの補完的役割とそれぞれの業務の重複防止の必要性について強調した。
アルゼンチンや中国などの国々が、適応技術の移転を要請し、ガーナが現地に根付いた技術開発を、インド固有の事情に対する理解を求めた。
EUとアルゼンチンは、適応が持続可能な開発計画の中に組み込まれるべきだと述べた。日本とEUが適応と緩和の両立を強調する一方で、インドが適応に集中すべきだと述べた。 適応に関して、ロシアは、生物多様性条約、ラムサール条約、砂漠化対処条約との間のさらなる連携を求めた。タンザニアは、緊急に活動が必要な地域を特定する必要があると強く主張した。
LDC: Bubu Jallow (ガンビア)とRicardo Moita (ポルトガル)が共同議長を務めた。 参加者は、LDC基金とLDC専門家グループ(LEG)へのガイダンスについて議論した。カナダはLEGの業務についてコメントした。タンザニアはLDCを代表して、国別適応行動計画
(NAPA)実施支援のためのLEGの役割拡大を提案した。 GEFへのガイダンスについては、 LDC諸国や、サモア、マラウィは、決定書6/CP.9(LDC基金の業務に関するガイダンス)がNAPAに対する完全な資金提供について規定していることに留意し、共同での資金調達に関する懸念を表明した。決定書6/CP.9によりGEFが完全な資金提供のための条件を整備しなければならないため、いくつかの活動は完全な資金調達に適しているが、既存の開発プロジェクトに立脚して、他の財源、もしくは受け入れ国政府からの現物返済という形での共同資金調達が必要となる活動もあるとGEFが述べた。EUは、共同資金調達により出資国がプロジェクトを所有しているという意識が明確になると述べた。
非附属書I 国 国別報告書: 参加者は、非附属書I 国別報告書の作成資金の提供時期と、報告書の完成・提出に関する共同議長の作業草案について検討した。締約国は、プロジェクト資金調達の継続性の問題についての表現や、第2次・第3次国別報告書の資金調達の申請時期などについて詳細に議論した。第1回資金提供後の国別報告書の提出時期については、G-77/中国は、資金拠出後5年以内で良いと主張する一方で、EUは3年を主張した。オーストラリアは妥協案として4年を提案した。G-77/中国は、附属書I締約国の国別報告書提出までの間隔が3年〜5年とされていることを指摘した。ニュージーランドは、資金供与後の提出時期は、提出頻度と同じではないと指摘した。Anders
Turesson共同議長は、共同議長が妥協案について文書を作成すると述べた。
悪影響: Paul Watkinson共同議長とSamuel Adejuwon共同議長は、EU改正案と、G-77/中国が提案した決定書草案文を検討した。米国は、新しい文言を精査する時間が必要であると主張し、いくつかの国がこれを支持した。共同議長が統合文書を作成し、同グループで非公式に再協議する。
技術移転: 共同議長が結論書草案を議題に上げ、マレーシアがG77/中国を代表し、決定書草案とポジションペーパーを配布した。 参加者は、どの文書から議論を始めるか等の会議進行上の問題について討議した。共同議長によるとりまとめ案をパラグラフごとに検討することを提案する附属書I国がいくつか見られたが、この草案はG-77/中国の懸念を反映していないとG-77/中国が主張し、結局、共同議長はG-77/中国の懸念を盛り込んだ決定書草案を作成することとなった。
緩和のための実践的機会と解決策に関するSBSTAセッション中ワークショップ
Benrageb SBSTA議長がセッション中ワークショップの議長を務め、専門家からのプレゼンテーションに関する質疑応答の後、意見や教訓を交換した。
プレゼンテーション: 米国プリンストン大学のRob Socolowは、将来の炭素排出シナリオを検証し、将来の排出削減を説明するための手法として「ウェッジ」(wedge)の利用を提唱した。これは、今後50年間で毎年100億トンの炭素排出回避量が1ウェッジに等しいとカウントするもの。同氏は、ポートフォリオアプローチの必要性について触れ、ウェッジ達成のための様々なアプローチについて言及した。
Australian Greenhouse Office (オーストラリア温室効果局)のJames Shevlinは、オーストラリアの緩和アプローチについて述べ、国に関係なく、いかなる緩和戦略においてもエネルギー効率が中心テーマであると強調し、エネルギー効率の障害や、障害克服のためのオーストラリアの経験について詳しく述べた。
Kenyan Association of Manufacturers(ケニア製造業組合)のPaul Kiraiは、ケニアにおける産業エネルギー効率化プロジェクトについて述べ、民間部門との協調や、政府プログラムへの信頼醸成と柔軟性維持の必要性を強調した。
ブラジル科学技術省のAlfred Szwarcは、ブラジルにおけるバイオマス燃料利用による効果について、バイオマス産業がエネルギー保障と多様性を高め、環境的便益を提供し、国際収支を改善し、100万の雇用を創出したと語った。森林でのプランテーションによるリスクと技術取り込みにおける障害などの問題を中心に議論が繰り広げられた。Szwarc
は、ブラジルがバイオ燃料の分野で世界的優位に立っているが、アマゾン地帯にバイオマスプランテーションを展開する予定はないと述べた。
World Coal Institute (世界石炭協会)のChristine Copley(イギリス)は、持続可能な開発の文脈における石炭の展望について語った。超臨界型プラントやIGCT技術などの先進技術について着目する一方で、炭素貯蔵では最大格納力に限界があるものの、炭素捕捉技術や貯蔵技術も有望であると述べた。
環境と持続可能な開発事務局のHernan Carlino(アルゼンチン)は、アルゼンチンにおける廃棄物部門における温室効果ガス緩和の機会について述べた。通常、埋め立て地やオープンダンプでゴミ処理されているが、ゴミ問題対策として、家庭ゴミの分別と二酸化炭素ガス回収を奨励する新国家戦略を策定中であると述べ、ブエノスアイレス市と地方のゴミ廃棄施設に関する最近承認された2つの国家プロジェクトに焦点を当てた。
この新戦略により、リサイクル率と人口1人あたりのゴミ排出量においてどのような影響がでてくるか議論が行われた。
米国エネルギー省のRobert Dixonは、水素技術と燃料電池技術による環境面、エネルギー保障面でのメリットについて強調するとともに、水素の生産・貯蔵・流通インフラ・安全性における課題について言及した。2050年までに完全な水素社会の実現が可能であろうと指摘した。
議論: オーストラリアと日本は、緩和イニシャティブにおける多国間協力構築の重要性を強調した。カナダは、世界で進展しているさまざまな緩和の取り組みについて触れ、楽観的な見通しを表明した。米国はパートナーシップの重要性を強調し、SBSTAがクリーンコールの生産とエネルギー効率のための政策ツールに取り組むよう提案した。国際エネルギー機関 (IEA)
は、効果的な緩和には技術ポートフォリオと効果的な政策的フレームワークが必要であると指摘し、IEAが技術開発のため40以上の協定を主催していることに言及した。 EUは、クック諸島とともに、小規模再生エネルギー取り込みの障害除去のためにさらに取り組む必要があると述べた。
廊下にて
木曜日は多くの参加者にとって静かな1日であったが、あまりに平穏だったために、環境NGOが主催する大人気の“本日の化石賞”を授与された国がひとつもなかった。木曜日は何と言っても、緩和に関するセッション内のワークショップが注目を集め、多くの締約国がその成功を歓迎した。2013年以降の行動を話し合うべきかどうか、どのように議論していくべきかという大きな山場を控え、これは嵐の前の静けさかと危ぶむ向きもあった。また、会議場の片隅には、LULUCFに関する良好手法ガイダンスについての決定書草案文で非公式に合意に至って意気揚々としている参加者が見受けられた。
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