地球環境
メニューに戻る

Vol. 12 No. 255
2004年12月13日、月曜日

第10回国連気候変動枠組条約締約国会議

2004年12月11日



土曜日、COP-10参加者は、一日中、多くのコンタクトグループでの会合に集まり、午後には、政府間プロセスの組織に関するセッション中ワークショップで会合した。COPコンタクトグループは、CDM理事会(EB)の報告書を取り上げた。SBSTAコンタクトグループは、CDMで定められた小規模新規植林および再植林(A&R)プロジェクト活動、研究と体系的観測(R&SO)、議定書7.4条規定の登録簿に関係する問題、技術移転、LULUCF活動でのグッド・プラクティス・ガイダンス (GPG)、伐採木材製品(HWP)、そのほかのLULUCF関係問題を取り上げた。夕方、SBI コンタクトグループは、第二回、そして当てはまる場合には、第三回国別報告書の非附属書I締約国からの提出を議論した。午後の政府間プロセスの組織に関するセッション中ワークショップでは、UNFCCCプロセスの効率を最大限にし、より効果的な成果に結びつくようにするための、将来のセッション期間の計画を改善する可能なオプションについて議論した。

コンタクトグループ

小規模A&R CDM:
共同議長のThelma Krugは、小規模A&R CDM活動の規則や手続きに関する決定書と付属書の草案での進展について報告し、結論書草案を提出した。同議長は、新しい決定書草案と結論書での改正点についてパラグラフごとに説明し、締約国が、特にバンドリング(収束)、リーケッジ、モニタリングで保留となっていた問題について非公式ながら解決したと、述べた。参加者は、これらの草案書をSBSTAへ送ることで合意した。

R&SO:
このコンタクトグループは、共同議長の提出した決定書草案と結論書草案について議論した。参加者は、文章について意見の一致を見、これらをSBSTAへ送ることで合意した。

CDM EB:
このコンタクトグループは、決定書草案の文章を検討した。インドとそのほかの国は、仲裁条項での文章や、EBメンバーそのほかの補償責任の保護に関する文章のニーズを表明した。議長のRaul Estrada-Oyuelaは、EBがその会議の一部を非公開にすると決定する場合を除き、EBが会議への出席を制限すると決定した場合には、議定書の非締約国や、他の者がその議事進行を観ることができるよう手配するべきであると説明する文章を提案した。米国は、議定書の非締約国による会議への物理的な出席を認めるとする、より強い表現が必要であることを強調し、新しい文章はEBの手続き規則27項(出席)を置き換えるべきであることを強調した。ブラジルは、EBの会議を、機密の決定が行われない場合を除き、非公開とするべきだと述べ、日本はこれに反対した。このグループは、特に追加性に関する序文と透明性に関し運用されている文章を承認した。

議定書7.4条:
議長のMurray Wardは、登録簿システムに関する決定書草案を提出した。参加者は、国際的な取引簿(ITL)管理者の役割と業務に関する技術的な詳細について議論した。EUは、CDMの即時開始のためには、登録簿システムの時機を得た実施と試験が求められることを強調する文章の追加を提案した。ITLと補足取引簿(STLs)の関係に関し、ブラジルは、ITLの規則によってSTLsに関連する追加規則が損なわれることがあってはならないと述べた。中国は、ITLの実績に関し懸念を表明した上で、ITLの実績に関する試験と独立評価を行うようITL管理者に求めることを提案し、附属書I締約国と非附属書I締約国の両方の参加を呼びかけた。締約国は、非公式での検討を継続することで合意した。

技術移転:
非公式折衝の後、共同議長のHolger LiptowとKishan Kumarsinghは、改定された結論書草案を提出し、参加者はこれをパラグラフごとに議論した。化石燃料技術に関するパラグラフは、UNFCCC4.5条(技術移転)以外の条項についてのものであることから、これを除いた全ての文章で意見の一致をみた。サウジアラビアは、このパラグラフが解決されるまでは、結論書草案全体を括弧書きにするよう提案した。共同議長は、このパラグラフを折衝のためCOP議長のGonzalez Garciaに送った。また、共同議長は、G-77/中国が提出した文章に基づいた決定書草案を提示した。EU、オーストラリア、そのほかの締約国は、結論書草案での意見の一致を見るまでは、決定書草案の議論は行えないと発言した。米国は、一部の締約国がプロセスを「人質」にとっていると述べた。どう進めるべきかについての非公式折衝が行われる。

LULUCF:
共同議長の Audun Roslandは、LULUCFに関係する問題についての新しい結論書草案を提出した。オーストラリアは、EUやニュージーランド、ノルウェー、日本、スイスとともに、この文章を支持したが、AOSISや他の締約国は、提案されているオープンエンドな協議を含めたいくつかの問題で意見を留保すると表明した。共同議長のRoslandは、この文章は、締約国間での妥協を目指したものであると述べた。HWPに関し、締約国は、IPCCが、2006年度温室効果ガスインベントリーガイドラインの中で、HWPを推定し、計測し、報告する手法を、どう策定するべきか、未解決である。カナダは、IPCCはHWPでの可能な計算手法に関係しては、「中立」的な形で手法を策定するべきであると発言した。オーストラリアは、IPCCでのHWP関係作業をUNFCCCでの定義と一致させるべきであると提案した。AOSISは、締約国は、IPCCがその作業において何を意図するか仮定するのを避けるべきであると述べた。他の保留事項は非公式の草案作成グループで取り上げられる。

非附属書I 国別報告書:
米国とカナダは、共同議長の文章草案を承認するとの意思を表明したが、G-77/中国はこれに反対した。G-77/中国はこの文章に反対し、特に温室効果ガス・インベントリーや国別報告書関連情報の更新に関する文章を含めることは、議題項目の規定の外であると発言した。また同代表は、国別報告書作成に対する資金源からの第一回支払いから4年以内に第二回、そして当てはまる場合には第三回の国別報告書を提出することに反対した。この文章をSBI-21に送るか別なものを送るかに関する議論は夜まで続いた。

政府間プロセスの組織に関するセッション中ワークショップ


このセッション中ワークショップは、Karsten Sach (ドイツ)を議長とする。出席者は、COPBSTAとSBIでの議題の内容、タイミング、採用、そしてCOPやSBのセッション、ワークショップそして構成する組織を含めたプロセスの「ビルディングブロック(構成要素)」について考察した。パネリストがこのテーマについてのコメントを発表し、その後出席者間での議論となった。

開会挨拶:
SBI議長のStoychevaは、議定書の発効により追加作業が出てくることを指摘し、このワークショップは、政府間プロセスの組織をどう改善するかについて非公式な見解を交換するタイムリーな機会を提供すると述べた。UNFCCC事務局長のJoke Waller-Hunterは、政府間プロセスはプロセスと中身の間の「危険な干渉」というところに近づいている可能性があることを強調した。同局長は、締約国本位な変化と議題の簡素化を支持した。

第一部:議題―内容、タイミング、採用:
Chair Sach議長は、次の問題に関する疑問について議論することを指摘した:議題の管理を改善するかどうか、どう改善するか;現在の議題は締約国にとり重要な問題を適切にカバーしているかどうか;多年度作業プログラムとするかどうか;議題項目検討の頻度;中断されている(保留)議題項目をどう取り扱うか。

コメンテーターの意見:
フィンランドのOuti Berghallは、政府間プロセスの再考が必要であることを強調した。同代表は、議題項目を4つの分類に分ける、つまり「必須」、「有用」、「わかれば良い」、「無駄」に分けるよう提案した。同代表は、必須項目は、それぞれの議題に含められるべきであるが、無駄な項目は捨てるべきであると述べた。

中国のGao Fengは、少数の代表団しかない途上国がUNFCCC議題の拡大で苦労していることを述べた。同代表は、他のプロセスでの例を挙げて、多年度作業プログラムなどにより、それぞれの項目の頻度を減らすことを検討するオプションを強調した。同代表は、どの項目をどのくらいの期間保留とできるかを限定することは「政治的なリスク」があると警告した。

サセックス大学のFarhana Yaminは、議題は、問題に基づくもので、条項に基づくものではないことを示唆した。同代表は、プロセスに投入された資源の効率を強化するため、公式なUNFCCCプロセスを、サイドイベントを含めた非公式なプロセスと統合する必要性を強調した。

議論:
ノルウェーはデンマークとともに、セッションごとでの行動を必要としない議題項目の頻度減少を検討することを支持した。中国は、議題項目の優先度付けは、政治的な基準ではなく技術的な基準に基づくものとするべきであると述べた。インドは、セッション間の期間をもっと効果的に使えると述べ、セッションでの文書を事務局のホームページでもっと早く入手できるようにするよう提案した。オランダは、特に次のものの必要性を強調した:COPやCOP/MOPでの作業に関する固定基準と時間枠;多年度作業プログラム;問題の集約(クラスタリング)。サウジアラビアは、現在のCOPの頻度は維持されるべきであり、保留事項では時限を設けるべきでないと述べた。デンマークは、コンタクトグループの権限が特定の点に注目しすぎている場合が多く、議長が課題のトレードオフやバランスをとるのをやりにくくしていると指摘した。南アフリカは、交渉担当者が特定の点に注目しすぎて、UNFCCCが何であるかを忘れており、小さな技術的な問題を大きなものにしていると述べた。米国は多年度作業プログラム、クラスタリングイシューの新しいメカニズム、SBSTAが科学的な問題に焦点を当てることを、支持した。日本は、保留項目に期限を設けることを提案し、COPは一般の関心を引いておくため毎年開催されるべきであると発言した。

第二部:ビルディングブロックーCOPやSB セッション、ワークショップ、そして構成組織:
議長のSachは、考察すべき課題を紹介した、これには次のものが含まれる:プロセスでの「ビルディングブロック」が十分かどうか、COPやSBセッションの頻度、COP-10以後のハイレベルセグメントの構成、セッション中のアレンジ、プロセスの機能化、プロセスがコストに見合った成果を挙げているかどうか。

コメンテーターの意見:
モロッコのTaha Balafrejは、毎年一回のCOP/MOPと2年に一回のCOPというサイクルを提案した。同代表は、SBは1週間とするべきであると述べ、内閣レベルとすることの利点に疑問を投げ、構成組織には、決定を行い採択できるよう、より多くの権限を与えるよう提案した。

オーストラリアのHoward Bamseyは、サイドイベントに対応し、ワークショップや他の非公式な活動を行うため、強力な事務局を有することの価値を強調した。同氏は、持続可能な開発委員会による代替評価と政策に焦点を当てた会議のモデルを用いるよう提案した。Bamseyは、SB会合を廃止し、外交団同士のセッション間での協議拡大を奨励するため、事務局をニューヨークやジュネーブに移すよう提案した。

International Climate Change Partnership(国際気候変動パートナーシップ)のTom Jacobは、UNFCCCプロセス参加者が、進行役を果たすのに最善のものかどうか疑問を投げた。同代表は、政府や他の利害関係者で構成される非公式グループが事務局と協力して、地球規模での気候変動というチャレンジに対応するだけの余地を作るよう提案した。

議論:
米国は、COP議長の任期の長さを延長できるようにすることを提案した。同代表は、ハイレベルセグメントにおいては、UNFCCCについてあまり知識のない閣僚と、問題を十分に認識している高官との両方のバランスがとれていないと指摘した。インドは、定期的なハイレベルセグメントを持つことは、政治的な約束を実証するためには重要であると述べたが、最近のハイレベルパネルやラウンドテーブルでの議論の効果性を再検討するよう提案した。ノルウェーは、閣僚の存在は、気候変動問題への一般の認識を高める上で役にたつと述べた。オランダは、毎年のCOPと閣僚会議を支持し、ワークショップは有用であるが、改善も可能であることを指摘した。中国は、一部の代表が閣僚がいなくても決定を行えるだけの独立した権限を持っていると述べた。

ラップアップ:
結論として議長のSachが議論をとりまとめ、これが決定的であると考えるべきではないとも述べて、事務局がSBI-22の報告書を作成することを指摘した。同議長は、議論では「革命精神」が欠けていたが、コメントには、政府間プロセスをいくつかのレベルで調整する必要があるという点での広範な意見の一致が反映されていたと述べた。

廊下にて


ブエノスアイレスでは、土曜日、太陽がさんさんと輝く中でも、多くの参加者は、La Ruralでのサイドイベントに引き寄せられ、コンタクトグループに取り巻かれていた。多くの参加者がSBI問題での進展について、前年度のよりもさらに悪い可能性があると嘆いた。一部の参加者は、少数の国のグループが、問題の進展を妨げようとしていることは、京都議定書が近く発効することと直接に関係する可能性があると指摘した。一方、SBSTAの問題では一部に進展が見られ、参加者は、CDMで定められた小規模新規植林および再植林活動での規則について合意に達せたことを賞賛した。


NEDOからの委託によりGISPRI仮訳