Vol. 12 No. 257
2004年12月15日、水曜日 |
第10回国連気候変動枠組条約締約国会議
2004年12月14日 火曜日
COP-10参加者は火曜日の午前と午後でコンタクトグループの最終会合を行い、SBSTAとSBIでは作業完了の上、結論書の採択と決定書草案の承認を行い、COPの審議に回すべく夜通し会合した。多くの決定書草案には括弧書きが含まれており、さらに協議を行うためCOP全体会合(COP
Presidency)に送られた。コンタクトグループでは、緩和の科学的・技術的・社会経済的側面(緩和)、キャパシティビルディング(能力向上)、技術移転、後発開発途上国(LDC)関係の問題、決定書5/CP.7(悪影響)の実施における進展、UNFCCCの資金メカニズム等の題目を取り上げた。
コンタクトグループ
緩和: EUは、事務局に対し、これまでに開催された緩和ワークショップで学んだ教訓や将来の方策に関して締約国からの提案をまとめ、この題目および“将来の作業プログラムの構成要素”についてSBSTA-23でさらなる検討を求める要請案を繰り返した。
G-77/中国は、アメリカなどの国々とともに、将来の作業プログラムへの言及に反対した。参加者は、括弧書きの文章をSBSTAに付託することで合意した。
技術移転: 参加者は結論書相案と決定書草案を取り上げた。 UNFCCC4.5条 (技術移転)の実施拡大をめざした効果的かつ意義ある行動のための枠組み問題について議論を再会した。参加者はCOP-8の気候変動と持続可能な開発に関するデリー宣言について決定書草案の前書きに含めるべきか否かという点で合意に至らなかった。結論書草案と括弧書き付きの決定書草案はSBSTAに付託された。
LDC: Bubu Jallow共同議長と Ricardo Moita共同議長が、決定書草案と結論書草案を紹介した。LDC基金が行動に関する国別適応プログラム(NAPA)の優先項目から資金提供を開始すべきかどうかという問題を中心に、LDC基金の追加的なリソース活用、共同資金調達、現行の計画やプログラムを基礎とすべきかどうかという問題について議論が行われた。すべての問題について合意に達することが出来ず、参加者は結論書草案と括弧書き付きの決定書草案をSBIに付託することで合意した。
キャパシティビルディング(能力向上): Jukka Uosukainen (フィンランド)共同議長は、決定書草案のパラグラフの多くに括弧がついたままであると述べた。計画プロセスにおける文章の統合と本文への組み込みについては、G-77/中国は、本文に組み込むより括弧書きで言及する方が良いと発言した。締約国は、経済移行国のキャパシティビルディング(能力向上)に関する決定書草案と途上国のキャパシティビルディング(能力向上)に関する括弧書き付きの決定書草をSBIに付託することで合意した。
SBSTA
組織事項: 議長以外のオフィサー選出: Amjad Abdulla (モルジブ) がSBSTA副議長を務め、Ibrahim Al-Ajmi (オマーン)が報告者として留任となる。
適応: David Warrilow (イギリス)は、コンタクトグループで懸案事項について決着をつけることができなかったと述べた。サウジアラビアとロシアは、提案された決論書草案にコンタクトグループに対する個別提案が反映されていないとして反対した。 議論と非公式折衝を経て、締約国は決論書草案に括弧書きを追加し、締約国の懸念が検討されなかった旨を記すという修正を行うことで合意した。 SBSTAはCOP全体会合に決論書草案を付託する。(FCCC/SBSTA/2004/L.31)
緩和: 坂本敏幸(日本) は決論書草案を紹介し、SBSTAがこれを採択した。(FCCC/SBSTA/2004/L.27)
手法問題: LULUCF活動向けのグッド・プラクティス・ガイダンス(GPG)、伐採木材製品(HWP)、その他のLULUCF 関連問題: Audun Rosland
(ノルウェー) は、コンタクトグループの状況を報告した。 SBSTAはGPG、 HWP、その他のLULUCF問題に関する結論書(FCCC/SBSTA/2004/L.26)
を採択し、COP/MOP決定書草案を含む GPGに関する決定書草案(FCCC/SBSTA/2004/L.26/Add.1)をCOPに付託した。
CDMで定められた小規模新規植林・再植林プロジェクト活動: Thelma Krug (ブラジル)は、決論書草案と決定書草案に関する合意について報告した。 SBSTAは結論書(FCCC/SBSTA/2004/L.20)を採択し、決定書草案をCOPに付託することで合意した。(FCCC/SBSTA/2004/L.20/Add.1)
国際航空で利用される燃料からの排出: ペルーは、決論書草案が全体として括弧書きのままであると述べた。アルゼンチンは、この項目について具体的なデータや情報が不足していることを強調した。締約国は、括弧書きを外すことで合意し、SBSTA
が修正された結論書を採択した。 (FCCC/SBSTA/2004/L.18)
温室効果ガス目録に関する問題: Helen Plume (ニュージーランド)は非公式折衝について報告した。SBSTAは結論書を修正なしで採択した。(FCCC/SBSTA/2004/L.17)
議定書7条 (情報の連絡)および 8条 (情報の検討)に関する問題: Murray Ward (ニュージーランド) は非公式折衝について報告した。SBSTAは結論書(FCCC/SBSTA/2004/L.30)を採択し、決定書草案(FCCC/SBSTA/2004/L.30/Add.1)をCOPに付託した。
議定書7.4条が規定する登録簿システムに関する問題: Murray Ward (ニュージーランド) は決論書草案と決定書草案を紹介した。 SBSTAは結論書(FCCC/SBSTA/2004/L.29)を採択し、登録簿に関する決定書草案(FCCC/SBSTA/2004/L.29/Add.1)をCOPに付託することで合意した。
附属書I締約国の排出量見通し: Benrageb SBSTA議長は決論書草案(FCCC/SBSTA/2004/L.23)を紹介し、 SBSTAがこれを採択した。
技術移転: Kishan Kumarsingh (トリニダード・トバゴ)は決論書草案(FCCC/SBSTA/2004/L.28/Add.1)と括弧付きの決定書草案(FCCC/SBSTA/2004/L.28)を紹介した。
SBSTA は議論なしで決論書草案を採択した。G-77/中国は、決定書草案に含まれる括弧書きの文章を取り除くよう提案し、締約国はこれを修正案として承認し、COPに付託することとなった。
附属書I締約国の政策措置における“グッド・プラクティス”: Tony Surridge (南アフリカ) は、締約国が合意に達することができなかったことについて留意しつつ、非公式折衝についての報告を行い、決論書草案を紹介した。 南アフリカは、いくつかの締約国とともに、文章を支持すると表明したが、サウジアラビア、クウェート、アラブ首長国連邦(UAE)がこれに反対した。何も合意がなかったことを留意し、締約国はこの項目のSBSTA-22
への付託を決定した。 (FCCC/SBSTA/2004/L.25)
研究と体系的観測: Stefan Rosner (ドイツ) はコンタクトグループでの議論を強調した。Benrageb議長は、いかに地球気候観測システム計画を実行させるのがベストかというテーマに関する決論書草案
(FCCC/SBSTA/2004/L.24) と決定書草案 (FCCC/SBSTA/2004/L.24/Add.1) を紹介した。締約国は結論書を採択し、若干の修正事項などさらに検討するため、決定書草案をCOPへ付託した。
国際機関との連携: Marcela Main (チリ)は、決論書草案 (FCCC/SBSTA/2004/L.22)を紹介し、 SBSTAが議論なしでこれを採択した。
その他の問題:議定書2.3条の実施に関する問題: Benrageb議長は、SBSTA-20以降、進展が無かったことに留意しつつ、決論書草案 (FCCC/SBSTA/2004/L.19)を紹介した。 SBSTA
が議論なしで結論書を採択した。
それ以外の問題: Benrageb議長は、試験段階での共同実施活動(JI)に関する決定書草案を含むCOP決定書(FCCC/SBSTA/2004/L.21
and Add.1)について紹介した。結論書は修正なしで採択され、締約国は決定書草案 をCOPに付託した。
セッションに関する報告: Benrageb議長は、セッションに関する報告書 (FCCC/SBSTA/2004/L.16)を紹介し、締約国はこれを採択した。SBSTA-21は午前1時43分に閉会した。
SBI
組織事項:議長以外のオフィサー選出: Heorhiy Veremiychyk (ウクライナ) はSBI 副議長に選出され、Emilio Sempris
(パナマ)が報告者を留任する。
事務・財務事項: 2002-3 年度(2カ年)の監査済み財務諸表と2004-5年度(2カ年)予算収支: Harald Dovland (ノルウェー)
は、金利変動の影響を中心とした議論について触れながら、非公式折衝に関する報告を行った。Stoycheva議長は、結論書草案と決定書草案を紹介した。(FCCC/SBI/2004/L.15
and Add.1) 締約国は、結論書を採択し、決定書草案をCOPに付託することで合意した。
事務局の機能と業務に関する継続レビュー: Harald Dovlandは、ワークショップの資金調達と事務局上級スタッフの地理的バランス改善に関する非公式折衝について報告した。Stoycheva議長は、結論書草案について紹介し、
(FCCC/SBI/2004/L.14)、締約国がこれを修正なしで採択した。
附属書I締約国 国別報告書: 詳細レビューに関する総括報告(サマリーレポート)、第4次国別報告書作成に関するワークショップ報告書、第3次国別報告書レビューに関する進捗状況報告書(ステータスレポート): Stoycheva議長は結論書草案を紹介し(FCCC/SBI/2004/L.17)、締約国はこれを修正なしで採択した。
UNFCCC 6条: Crispin d’Auvergne (セントルシア) はグループの議論について報告し、情報センターとワークショップの整備について焦点をあてた。Stoycheva議長は結論書草案と決定書草案を紹介した。
(FCCC/SBI/2004/L.16 and Add.1) 締約国は、結論書草案を採択し、COPに決定書草案を付託した。
非附属書I 国別報告書:非附属書I 国別報告書に関する専門家諮問グループの作業: Stoycheva議長は、結論書草案を紹介し(FCCC/SBI/2004/L.18)、締約国はこれに若干の修正を加えた上で、採択した。
資金的・技術的支援の供与: Stoycheva議長は結論書草案を紹介し(FCCC/SBI/2004/L.19)、締約国がこれを修正なしで採択した。
第2次、必要に応じて、第3次国別報告書: Stoycheva議長は、締約国が何らの合意に至らなかったことを留意しつつ、結論書草案を紹介した。(FCCC/SBI/2004/L.27)締約国は、さらにこれを検討するため、COP全体会合に文書を付託すると決定した。
第1次国別報告書の編集と統合: Stoycheva議長は、締約国が何も合意に至らなかったことに留意しつつ、結論書草案を紹介した。(FCCC/SBI/2004/L.23) 締約国は、結論書草案の中で合意されたパラグラフについて採択し、その他のパラグラフについてはCOP全体会合への付託が決定した。
その他の問題:クロアチア基準年のための排出レベル: Jim Penman (イギリス)は非公式折衝について報告し、文書の合意が得られなかったことに留意した。アメリカとクロアチアは、さらに折衝を続けることを提案し、サウジアラビアとセルビア・モンテネグロはこれに反対した。締約国は、SBIが次回のSBIでこの問題について討議継続すると修正を加えた結論書草案を採択した。(FCCC/SBI/2004/L.21)
UNFCCC 資金メカニズム: COP に対するGEF報告書: Stoycheva 議長は結論書草案を紹介した。(FCCC/SBI/2004/L.20) 資金配分に関する条項については、アルゼンチンが関連手法、指標、およびデータについての修正文書を提案し、G-77/中国などの国々の支持を得たが、アメリカと日本がこれに反対した。締約国は、手法、指標、およびデータについて言及した部分を削除することで合意し、修正された結論書草案を採択した。
気候変動特別基金 (SCCF)、決定書5/CP.8 (資金メカニズムのレビュー)実施に関する問題、GEFに対する追加ガイダンス: Joseph Buys
(ベルギー) と Rawleston Moore (バルバドス)は、これらの問題について進展が見られたことに留意したが、SCCFやGEFへの追加ガイダンスについて合意に至るには時間不足であったと述べた。締約国は、決定書5/CP.8実施に関する問題について結論書草案を採択し(FCCC/SBI/2004/L.24)、SCCFに関する決定書草案をCOP全体会合に付託することで合意した。
(FCCC/SBI/2004/L.25).コミットメント達成をめざした途上国支援に対する資金供与についてのアセスメントに関する決定書草案 (FCCC/SBI/2004/L.26)
も、若干修正された上でCOP全体会合に付託された。
キャパシティビルディング(能力向上): Shirley Moroka (南アフリカ)は、経済移行国向けのキャパシティビルディング(能力向上)についてのみ、コンタクトグループは決定書の合意を得たと述べた。
SBI は決定書草案をCOPに付託することで合意した(FCCC/SBI/2004/L.22/Add.1)。 途上国キャパシティビルディングの問題については、締約国は何らの合意を見なかったと述べた。SBIは、括弧書きつきの決定書草案(FCCC/SBI/2004/L.22/Add.2)をCOP全体会合に付託した。
UNFCCC 4.8 条および4.9条の実施: 決定書 5/CP.7規定の活動の実施状況: Paul Watkinson (フランス) は、ある程度進展があったとした上で、COP期間中にさらなる協議をすすめ、合意が得られることを希望すると述べた。Stoycheva議長は、この問題に関するコンファレンスルームペーパーを紹介し(FCCC/SBI/2004/CRP.3)、締約国がCOP全体会合にこれを付託することで合意した。
LDCに関する問題: Bubu Jallow (ガンビア)は、グループの合意に至らなかったことを述べた。SBIは、括弧書きつきの決定書草案と結論書をCOP全体会合に付託すると決定した。
(FCCC/SBI/2004/L.28/Add.1, Add.2 and Add.3)
セッションの報告: Emilio Sempris はセッションレポート(FCCC/SBI/2004/L.13)を紹介し、SBIがこれを採択した。SBI-21は午前1時14分に閉会した。
廊下にて
あるオブザーバーの言葉どおり、火曜日は明らかに“括弧つきの1日”であった。多くの括弧書きつきの決定書草案が未決のまま残り、SBSTAおよびSBIから直接COP全体会合へと付託されることとなった。COP全体会合では、すでに非公式上級会合を開始している。妥結に近い問題に限定して議論の時間を与えるような、このSBIとSBSTAの異例の措置について、会議で疲れ切った参加者は廊下で所感を述べていた。特に、資金メカニズムとLDCの問題は、あと3日もあれば妥結できたのではないかと指摘するオブザーバーもあった。
適応のための資金調達に関してCOPで見られた進展は本質的に無に等しいと、参加者はLDC基金の条件の再交渉について失望感を表明した。その一方で、適応に関する提案が結論書草案に反映されるべきだと粘ったロシアとサウジアラビアにより、SBSTAの閉会が何時間も議論は長引いたが、ロシアの反対の動機について憶測を生んだ。
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