Vol. 12 No. 259
2004年12月17日、金曜日 |
第10回国連気候変動枠組条約締約国会議
2004年12月16日 木曜日
12月16日木曜日は、COP10ハイレベルセグメントが継続し、“気候変動の影響、適応措置、および持続可能な開発、” “技術と気候変動、”
および “気候変動の緩和: 政策とその影響”の3つのパネルディスカッションが開催された。政府間会合に関するUNFCCC活動についての意見交換を行うコンタクトグループも行われた。未決の括弧書きつきの決定書草案をはじめとする様々な問題に関して終日閣僚級非公式協議が行われていた。
ハイレベルセグメント
ハイレベルのパネルディスカッションでは、3つのテーマに関する各パネリストの発言の後、締約国がコメントした。
パネル2 - “気候変動の影響、 適応措置と持続可能な開発”: この会合の進行役を務めたEnele
Sopoaga大使(ツバル)は、「対応措置に関する行動との絡みにより、適応が行き詰まっている」 と述べた。
会合 声明: オーストラリアのIan Campbell環境相は、「適応への取り組みが緩和回避の口実のように見なされるべきではない」と強調し、地域レベル、現地レベルの知識格差の解消や、現地の社会経済状況に配慮した行動に取り組む必要性があると述べた。
バングラデシュのJafrul Islam Chowdhury環境森林相は、気候変動の影響に対するバングラデシュの脆弱性の高さを強調し、適応問題の前進を目指した
COP-10の取り組みを歓迎した。また、リスクと小規模保険に関するワークショップを主催すると申し出た。
ハンガリーのMiklos Persanyi環境と水相は、さらに緩和を実施すれば適応の必要性は低減すると述べた。
メキシコのAlberto Cardenas Jimenez環境と天然資源省長官は、適応プログラムの欠如が持続可能な開発の達成をめざす途上国の経済力を限定していると述べた。 気候プロセスでは適応への取り組みにばらつきがあるとし、適応作業プログラムを求めるアルゼンチン提案を支持した。
セネガルのModou Fada Diagne環境相は、西アフリカがすでに気候変動の影響に苦しんでいると述べ、地域モデルが依然として不明確であり、途上国の専門家が途上国の気候モデルに関与する必要があると指摘した。また、先進国からの技術支援を要請した。
イギリスのMargaret Beckett環境・食糧・農村地域省長官(DEFRA)は、気候変動の北極圏への影響に関する最近の知見や2003年のヨーロッパの熱波が、気候変動が途上国と先進国の両方に影響を与えているという指標になると指摘した。
議論: ウクライナとオマーンは、先ごろの両国の京都議定書批准に言及した。エジプトは、さらに適応と技術移転について取り組む必要があると強調した。オマーンは、同国の議定書批准に言及した。ノルウェーは、COP-10の成果として強く政治的な対応を行う必要性を強調した。ルーマニアは、適応と緩和策の統合を支持した。日本は、
日本での昨今の異常気象に伴い、市民の意識にパラダイムシフトが起こっていると指摘し、日本は適応に向けて“先見的”なアプローチ を講じていると述べた。タンザニアは、気候変動の後発開発途上国(LDCs)への不均衡な影響について留意し、気候変動への適応は公平性の問題であると述べた。
南アフリカは、途上国が適応策を実施するための持続的資金援助を求め、インドネシアとともに、これを開発計画の中に組む込むべきだと主張した。アイスランド、
ノルウェー 、フィンランドは、北極圏での気候変動の影響評価について北極圏で急速な温暖化が示されたと言及した。フィンランドは、気候変動の結果に備えるためには、あらゆる主体が気候リスクについて認識しなければならないと強調した。ミクロネシアは、適応基金の資格基準を簡素化するべきだと述べた。ブラジルは、途上国における科学・技術協力の整備と適応に関する研究センター網の構築の必要性を強調した。
インドネシアは、適応基金に研究を含めるべきだと述べた。
カナダは、気候変動への適応は国際社会の断固たる取り組みを要する国際問題であると述べた。アメリカは、米国国家研究プログラムが脆弱性について最初に評価を行ったと述べ、フランスは同国沿岸部の脆弱性評価の実施に関する取り組みについて言及した。スリランカは、貧困撲滅が主要な課題であり、適応基金の公平なる分配を求めた。
バルバドスは小島嶼国連盟(AOSIS)の立場からバルバドス行動計画のさらなる実施を求めた。
オマーンとカタールは、対応策の点でUNFCCC 4.8条(悪影響) を実施することが重要であると強調した。キリバスとフィジーは、適応措置が緩和措置の影響による悪影響ではなく気候変動の悪影響だけについて対応すべきであると強く主張した。フィジーは国際社会が小島嶼開発途上国(SIDS)のニーズにもっと温かい目を向けてほしいと述べた。ガボンは、地球規模の炭素隔離において中央アフリカの森林地帯が重要であると強調し、資金供与プロセスの効率化を求めた。カザフスタンは、同国が温室効果ガス排出削減に向けて自主的なコミットメントに取り組む用意ができていると述べた。マルタは、気候変動の影響に関するコストが広く認知され、自由対話が支持されるべきだと述べた。
パネル3 - “技術と気候変動” : ブラジルのEduardo Campos科学技術相が進行役を務め、温暖化防止のための行動は持続可能な開発と貧困撲滅を促進すべきであると言及した。
パネル 声明: スイスのMoritz Leuenberger州議員・連邦環境局長は、持続可能な開発が持続的な気候政策の屋台骨であり、スイスが「厳しい」輸送時の排出問題に欧州のパートナーとともに取り組んでいると述べた。また、途上国で再生可能エネルギーを展開するために協調努力を行っていることに言及した。
ノルウェーのKnut Arild Hareide環境相は、技術の重要性を強調しながらも、技術が議定書のような条約に取って代わることはできないと述べ、各国が2013年以降の期間に対応していくことを要請した。
欧州委員会のStavros Dimas環境担当委員は、気候にやさしい技術の研究開発、利用、および世界規模の普及を促進するための奨励金制度の施行が必要であると述べた。
マレーシアのS. Sothinathan、天然資源と環境副相は、議定書のメカニズムを歓迎したが、公的奨励金なくしては技術移転が機能しないと述べ、附属書I締約国に対して利用可能な気候関連技術目録の提供を求めた。
モザンビークのFrancisco Taula Constancio Mabjaia環境副相は、アフリカでCDMプロジェクトが進展していないことに失望感を表明した。また、途上国が緩和技術と適応技術の両方が必要とあるとして、アフリカでの適応と技術市場(バザール)を提言した。
南アフリカのRejoice Mabudafhasi環境問題と観光副相は、気候変動対策には政治史的意志を要すると述べ、専門知識に関する地域センターでの資金とキャパシティ両面の振興を求めた。
議論: 日本は、CDMが技術移転を促進するとし、さらにCDMを展開するためには制度的調整が必要であると述べた。カタールは、途上国向けの環境的に健全な技術を求めた。バングラデシュとチュニジアは、炭素集約的な開発方針からの脱却努力について言及した。オーストリアは、多くの気候にやさしい技術は競争力がないと述べた。コンゴは、同国の森林を締約国がグローバルカーボンシンク(国際的な炭素吸収源)として検討するよう求めた。ネパールは、キャパシティビルディング(能力向上)が長期的な優先事項であると述べた。アイスランドは、クリーン技術の普及に国際協調を拡大する必要があると強調した。デンマークは、クリーン技術の促進における同国の役割を強調した。エジプトは、技術移転が合弁事業によって推進されるべきだと述べた。
ペルーは、アンデス共同体を代表して、ラテンアメリカネットワーク整備における共同体の参画とCDMポートフォリオの開発について言及した。アメリカは、長期的な気候変動に対処するために強力な市場主導型の制度を支持した。サウジアラビアとドミニカ共和国は、技術変革には政治的な意志をもって新技術の利用と普及を妨げている障害を除去しなければならないと述べた。カナダは“技術革命”が必要だと述べた。
エルサルバドルは、同国が開発、もしくは国際協力によって獲得したクリーンなエネルギー技術について説明した。スウェーデンは、急速な経済成長を遂げている途上国が将来の排出削減の可能性を決定づけるような技術変化を経験していると述べた。モルジブは、すべての締約国にLDC基金への合意を求め、これを運用していくよう要請した。タンザニアとマリは、適応関連技術の移転を優先課題とした。グアテマラは資金・実行・普及面の問題を含む技術移転の障害を特定した。スリナムは、クリーン技術促進のためのパートナーシップが必要であると述べた。
パネル4 - “気候変動の緩和: 政策とその影響” : スペインのCristina Narbona環境相が進行役を務め、現在のエネルギーモデルを持続可能型に変化させるための取り組みの公平性という局面が必要であると強調した。
会合 声明: コロンビアのSandra del Rosario Suarez Perez環境相は、同国が質の高いCDMプロジェクトを数多く提供していると述べ、同国が気候変動とその対応措置の影響の両方に脆弱であるとして、最高の科学とUNFCCCの究極の目標と両立するような意欲的な排出削減コミットメントを求めた。
フランスのSerge Lepeltier環境と開発相は、気候変動の取り組みが経済機会を提供すると強調し、何も行動を起こさないでいる方が防止対策費用以上にコストがかかると主張した。
ケニヤのStephen Kolonzo Musyoka環境と自然資源相は、アフリカにとって “適応がただ一つの道” であるとし、技術移転が非常に重要であると強調した。
ニュージーランドのPete Hodgsonエネルギー・運輸・研究・科学技術相は、緩和について現在までのところ多くを達成していないことを認識し、排出量が今なお増大していることに留意した。
また、単一の技術では問題は解決しないだろうと述べた。
ポーランドのTomasz Podgajniak国務次官は、同国が経済を改善する中でよりクリーンな技術に移行しつつあることを強調し、緩和政策が成長の障害となるというよりも、成長の起爆剤であると述べた。
サウジアラビアのAli al-Naimi石油と天然資源相は、産油国に課される対応措置のコストについて参加者の注意を促した。
議論: ペルーは、アンデス共同体の立場から、気候変動、生物多様性、災害防止、砂漠化の各問題のためのアクションの間のシナジー効果について強調した。日本は、日本のハイブリッド車の成功について言及し、これは緩和が新ビジネスの原動力となる可能性を示しているものだと述べた。韓国は、緩和を開発計画に盛り込む必要性があると強調した。カタールは、G-77/中国の立場から、排出削減の責任は先進国側にあることを強調した。ブルガリアは、同国の“グリーン投資スキーム”が排出クレジットの剰余分による歳入が環境投資へ充当されるよう確保する手段であると述べて関心を集めた。
ネパールは、低コストで身近な技術の必要性を強調した。チェコ共和国は、2020年までに25% の排出削減を目指す同国の気候変動戦略を紹介した。トルコは、同国の排出削減対策と気候変動への意識向上を目指した行動の概略を述べた。
ボリビアは低所得社会に関わるCDM森林プロジェクトを求めた。クウェートとエジプトは、早期に議定書を批准すると表明した。
クウェートは、第2約束期間に関する議論を歓迎し、議定書2.3条 (政策と措置の悪影響) および3.14 条(悪影響の最小化)を指針として議論を展開するべきだと述べた。ポルトガルは、炭素税などすでに意欲的な政策を施行していると述べた。 カナダは、
“1トン・チャレンジ” と名付けられた排出量削減に関する市民向けの温暖化防止キャンペーンを発表した。アルジェリアは、温室効果ガス排出と経済成長の問題を切り離して考えながら、第1約束期間以降を見据えるべきだと強調した。
チュニジアとアメリカは、気候変動に対する政府の施策について概略を述べた。
COPコンタクトグループ
その他の政府間会合に関するUNFCCC活動に対する意見交換: バルバドス行動計画(BPOA+10)の実施10年後の見直しに関する活動報告とUNFCCCに対する国連防災世界会議(WCDR)および持続可能な開発に関する委員会(CSD)のプロセスについて、アメリカは、報告の範囲とする活動をCSDに限定し、SBSTA-23に限定して報告することを提案した。サウジアラビアは、UNFCCCに対して一切報告する必要はないと述べた。AOSISとEUは、COP-11に向けて関連プロセスの報告に関する規定を維持することを主張し、雑則文書(misc.)に記載されたプロセス関連の活動に関する締約国の提案について言及した。午後と夕方にかけて行われた議論の後、締約国は雑則について言及した部分を削除し、CSDとBPOA+10の活動のSBSTAに対する報告について含めることで本文の合意に至った。
廊下にて
技術移転と緩和に関するハイレベル会合に各国閣僚が参加する一方で、 “議長国の友” が懸案事項の解決に向けて終日グループ会合を行った。会議場を後にした参加者は2013年以降の枠組に関する交渉が遅々として進まなかったことで極度の疲労の色を見せており、産油国と一部の締約国が明らかに自国の産業保護のために議定書による将来の取り組みと適応措置を無にするように働きかけていたことに懸念を表明していた。後発開発途上国と小島嶼国からの参加者は、今回のCOPは期待はずれだったと最も失望感を露わにしていた。
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