地球環境
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Vol. 12 No. 263
2005年5月20日、金曜日

国連気候変動枠組条約第22回補助機関会合

2005年5月19日(木)



国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の補助機関会合第22回会合(SB-22)は、2005年5月19日、ドイツ、ボンのマリティム・ホテルで開催され、科学的・技術的助言のための補助機関(SBSTA)の会合が開会した。午前中、SBSTAは議題と作業組織を採択し、いくつかの手法的問題について取り上げた。午後には参加者は関連国際機関との協力、技術の開発と移転、附属書I締約国間の政策と措置、UNFCCCに関する研究ニーズ、および京都議定書2条3項(政策と措置の悪影響)の実施について議論した。夕方から2つのコンタクトグループが開催された。


SBSTA

セッション開会: ウォーラーハンターUNFCCC 事務局長は参加者を歓迎し、Abdullatif Benrageb SBSTA議長の欠席について遺憾を表すとともに、Amjad Abdulla (モルジブ)が議長を務めることに感謝した。同議長はSBSTAがUNFCCC第11回締約国会議及び第1回京都議定書締約国会議(COP-11/MOP-1)に貢献するような重大な議題を抱えていると述べた。

ルクセンブルグは、EUの立場から、参加者が政府間専門家セミナーの経験を活かし、2013年以降の期間ついて動きをつけるような協議を支持し、SBSTAの議題については緩和に関する議題の重要性を強調し、適応、航空・海上輸送の議論を歓迎した。

ジャマイカは、G-77/中国の立場で、気候変動に関する国際的な行動やミレニアム開発目標 (MDGs)との関連性を強調した。 さらに、適応や緩和、手法問題等について強調した。ケニアは、アフリカグループの立場から、CDM簡素化手続きや技術移転と適応に関して喫緊の行動を強く求めた。ツバルは小島嶼国連合国 (AOSIS)の立場から、適応や小島嶼開発途上国(SIDS)のニーズを強調した。 エジプトは、緩和へのさらなる取組を求めた。 マリは、後発開発途上国 (LDCs)への気候変動の影響を強調した。

組織事項: Amjad Abdulla議長は、議題 (FCCC/SBSTA/2005/1)を紹介した。 サウジアラビアは、適応に関するCOP決議10/CP.9が実施のための補助機関 (SBI)の議題に反映されるべきだと主張し、この件が解決するまでSBSTAの議題採択を延期するよう提案し、カタールがこれを支持した。 EU、G-77/中国、アフリカグループ、 ノルウェー、 日本、 南アフリカ、 ニュージーランド、 ケニア、 タンザニア等の国々がSBSTAの議題採択を支持した。Abdulla議長はサウジアラビアの懸念に留意し、 議題は採択された。また、参加者はAbdulla議長がセッションの作業組織案を更新することに同意した。

手法問題: 国際航空・海上輸送で使用される燃料からの排出: UNFCCC事務局は本件に関して更新された留意事項(FCCC/SBSTA/2005/INF.2)を紹介した。その後、国際民間航空機関(ICAO)がこの分野の作業について総括した。数カ国がこの件の重要性を強調した。非附属書I締約国が燃料用バンカー油について報告義務がないにもかかわらず、UNFCCCの報告書で言及されているとして、サウジアラビアは、UNFCCC報告書がSB-21 の要請と合致しているかどうか疑問視した。Jose Romero (スイス) が本議題に関するコンタクトグループの議長を務める。

CDMプロジェクト活動のその他の環境条約や議定書への影響: 事務局は、認証排出削減量(CERs)獲得のためHFC-23破壊用のHCFC-22施設を新設する問題に伴い、モントリオール議定書を中心とする他の環境条約への影響について、SBSTA及びCDM理事会がCOP/MOP-1への勧告を準備するよう要請したCOP-10決議12/CP.10を想起した。

EUは、事務局が締約国からの貢献を募り、SB-23への文書を作成するよう提案し、アルゼンチン、AOSIS、およびアメリカがこれを支持した。AOSISはクレジットの制限を提案した。アルゼンチンは、先進国から途上国への施設の移転について言及した。Abdulla議長は、Georg Borsting (ノルウェー)にコンタクトグループの招集を募った。

議定書5条2項(LULUCF向け手法問題)に基づく調整手法に関する技術的ガイダンスの完了: EUは、AOSISとともに、事務局文書 (FCCC/SBSTA/2005/2)を議論の叩き台として十分であると歓迎し、本セッションでの作業完了を期待すると述べた。 日本は、土地利用・土地利用変化・森林 (LULUCF)問題の特殊性を勘案しつつ、これまでの決議との整合性を図るべきであり、簡易ガイダンスが必要であると強調した。オーストラリアは、査読チームと締約国間との意見の相違について触れ、試験期間終了後の調整に関するSBSTAの議論を歓迎した。Audun Rosland (ノルウェー) とNewton Paciornik (ブラジル) はコンタクトグループの共同議長となるよう要請された。

登録簿制度: Murray Ward (ニュージーランド) はSBSTA-22に先だって開催された非公式協議の結果(FCCC/SBSTA/2005/Inf.3)を提示し、国際取引ログ (International Transaction Log: ITL) が2006年下半期まで稼働しない見通しだと述べた。また、このITLが稼働するまでCDM事業がEU炭素市場に参画できないことに言及し、ITL完成のためには事務局の資金が必要であることを強調した。Abdulla議長は非公式協議を開催すると述べた。

国際機関との協調:気候変動に関する政府間パネル (IPCC)による、オゾン層と全球気候システムの保護に関する特別報告書?HFCs及びPFCsに関する問題:
IPCCのSusan SolomonとBert Metzは新しい報告書の主要な成果を提示した。 Solomonは、HFCとHCFC 濃度の著しい上昇を報告した。 Metzは、特に回収、リサイクル、及び抑制による排出削減ポテンシャルについて言及し、モントリオール議定書にも京都議定書にも、顕著な排出要因となっているHCFCs やCFCのバンク(貯蔵)について取締まり規制が一切存在しないと強調した。IPCC議長のRajendra Pachauriは、二酸化炭素捕捉と貯蔵に関する特別報告書、国別GHGインベントリ・ガイドライン、及びIPCC第4次評価報告書の進捗などIPCC作業の最新状況を参加者に報告した。ウルグアイは、ケニアや日本とともに、各国事情に配慮しながらモントリオール議定書と UNFCCC との間での連携作業が必要であると要請した。オーストラリアは、SBSTAでさらに検討する必要は無いと述べ、国内活動を奨励した。

グリーンピースは、これまで考えられている以上に大きなバンクが存在すると述べ、これが2016年以降も増加し続けるとして、段階的な削減を進めるよう主張した。将来技術は急速に進歩するとして、the ALLIANCE FOR RESPONSIBLE ATMOSPHERIC POLICY(責任ある大気政策のための連盟)は、コスト効率の良い削減を行う必要性があると述べた。コンタクトグループが一つ結成された。

小島嶼開発途上国の持続可能な開発のための行動計画実施をレビューする国際会議: AOSISは、次の国連総会でモーリシャスの戦略を検討予定であると言及し、SBSTAがSBSTA-23でその戦略を検討するよう提案した。Abdulla議長は結論書草案を作成すると述べた。

技術の開発と移転: Abdulla議長は、技術移転に関する専門家グループ (EGTT)の今後の作業のためにSBSTA-22が明確なガイダンスとの委任事項を提供しなければならないことを締約国に喚起した。EGTT議長のKumar Singh (トリニダード・トバゴ) は、EGTT第7回会合とEGTTの今後の作業内容について報告した。マレーシアは、G-77/中国の立場から、SBSTAは直ちに技術ニーズ評価報告書で特定された国々のニーズを満たす方法を検討すべきであると述べ、技術移転に関するCOP-1以降の決議すべてを完全に精査するよう要請した。

EUは、EGTT 2005年の作業計画を支援するための自主的な資金源に関するEUの誓約について言及し、EGTTが官・民パートナーシップや関連条約との連携、EGTTの中長期計画に関し、今後の道筋を示すよう締約国が要請するよう提案した。オーストラリアは、アンブレラグループの立場から、先日の政府間専門家セミナーで民間部門の資源動員とイネーブリング環境(enabling environment)への支援について注目が寄せられたことに留意した。ガーナは、各国の技術評価について優先順位をつける必要があると主張した。中国は、適応と緩和のための技術開発・移転が商業的に便益をもたらすと述べたが、市場の効果的運用に対して人為的な障害があると言及した。カナダは、技術移転やイネーブリング環境、妥当なキャパシティビルディング(能力向上)のために早期に行動を図ることのメリットについて強調した。日本は、気候関連技術の多くを民間部門が握っていると述べ、官民パートナーシップの重要性を強調した。コンタクトグループが議論継続のために結成された。

条約関連の研究ニーズ: SB-20 (FCCC/SBSTA/2005/3)の研究関連イベントで挙がった問題に関する意見とりまとめを紹介し、事務局は様々な議題事項を見渡して、議題間の関係を見出す努力を引き合いに出した。EUは、政策関連の主要な研究に関する問題について簡単に調査し、研究機関などに伝えることを提案したが、ケニアがこれに異議を唱えた。スイス及びオーストラリアは、IPCCの作業重複を回避すべきであると述べた。世界的な気候変動の取組みに貢献するための途上国の能力を向上する必要があるという点で合意された。セネガル及びガーナは、もっと幅広い研究分野に積極的に関与したい旨を言及した。Maria Paz Cigaran Tolmos (ペルー) とSergio Castelllari (イタリア) が本件のコンタクトグループの議長を務める。

政策と措置:
Abdulla議長は、政策と措置に関する優良事例(グッド・プラクティス)への意見と経験を共有するためにインターネット活用案(FCCC/SBSTA/2004/Inf.10)について事務局が作成した文書に注目を寄せた。

サウジアラビアは2005年5月24日午前に予定されている円卓会議の時間中にインプットを提供すると述べた。EUは、SBSTA-21であまり進捗がなかったことに失望の意を表明し、“スマートでローコストなウェブサイト”の早期開始を歓迎した。 AOSISは、2013年以降の議論に意見交換が役立つと述べた。Tony Surridge (南アフリカ) とNormand Tremblay (カナダ) がコンタクトグループの議長を務める。

その他の事項:京都議定2条3 項の実施に関する問題(政策と措置の悪影響): Abdulla議長は本件を紹介し、これまでの討議でほとんど進捗がなかったことに言及した。EUと日本は、これらの問題が他の議題事項でカバーされていることを強調し、EUがこの条項はCOP/MOP-1に検討されるべきだと付け加えた。Abdulla議長は非公式折衝の招集を伝えた。

全球気候観測システム: Abdulla議長は全球気候観測システム (GCOS)に関する結論書づくりをSBSTAで検討するように要請した。


コンタクトグループ

LULUCF向け調整: 木曜の夕方、京都議定書に基づく調整手法の技術的ガイダンスに関するコンタクトグループが開催された。事務局は、既存の技術ガイダンスに組み込まれていることに留意し、LULUCF推計値の調整のための技術ガイダンス案を提起した。EUは、調整に関する年間計算の希望を表明し、オーストラリア、 ロシア、 及びニュージーランドが試験的レビュー期間を求めた。Audun Rosland (ノルウェー) とNewton Paciornik (ブラジル)共同議長により公式・非公式に協議が継続された。

技術移転: William Kojo Agyemang-Bonsu (ガーナ) とHolger Liptow (ドイツ)がCOP決議6/CP.10に準拠した技術移転実施の枠組み強化についてEGTTへガイダンスを勧告するための委任条件について議論を進めるコンタクトグループを開催した。出席者はSBSTAの権限範囲についての意見を交換し、マレーシアはその不備について説明した。アメリカは、それは世界共通の希望リストをつくることになると釘を刺した。中国は、意味ある活動の構成要件についてコンセンサスを求めた。 Liptow共同議長は、5月19日(金)の非公式協議を正しい方向で進行させるため、幾つかのキーワードについて検討するよう出席者に呼びかけた。


廊下にて

SB-22は木曜日の午前から開始したが、今週初めの政府専門家セミナーで目立った熱意やオープンな姿勢はあまり見受けられなかった。そうした勢いを期待していた参加者もあまりいないだろう。この日のセッションについて、“ビジネス・アズ・ユージュアル” だと描写したとある参加者の言葉の通り、サウジアラビアが最初に反対を唱えたことに始まり、SBSTAの議題採択に長時間が費やされた。 この論争に、“いつもの遅延戦術” だと言った参加者もあったが、G-77/中国が議題支持に回ってことに感謝する参加者もあった。一方で、サウジアラビアの代表は同国の姿勢がれっきとした懸念から生じたとして頑として譲らなかった。

これまでの補助機関会合と比べて、SB-22の参加規模が小さいと指摘する専門家の声もあり、締約国がCOP/MOP-1に向けて「準備万端」の姿勢でいるのかどうか思案していた。


NEDOからの委託によりGISPRI仮訳