土曜日午前中、SBSTAは適応に関する会合期間中ワークショップを開いた。参加者は、気候変動の影響、脆弱性、適応に関するSBSTAの5ヵ年作業計画の策定に関して、プレゼンテーションを聴き、議論を行った。また多数のコンタクトグループ会合および非公式折衝も行われた。SBIの議題では、事務局活動の内部評価、2006-2007年のプログラム予算、政府間会合の調整、特別気候変動基金(SCCF)、後発開発途上国(LDCs)に関して、グループによる会合が行われた。さまざまな問題に関するSBSTAコンタクトグループと非公式会合も開かれており、これには、ハイドロフルオロカーボンとパーフルオロカーボン、技術移転、LULUCFでの調整、条約に関する研究の必要性に関するものが含まれる。
SBSTA
適応ワークショップ: 適応に関するブエノスアイレスプログラム(1/CP.10)で要求されていた、適応に関するSBSTA5ヵ年作業計画の策定を審議する会合期間中ワークショップが、Philip
Gwage (ウガンダ)とDavid Warrilow (英国)を共同議長として行われた。
参加者は、基調講演者であるトロント大学のIan Burtonおよび他の15カ国の代表によるプレゼンテーションを聴いた。多数のプレゼンターは、適応における技術移転、手法の共通化、作業の重複の回避、部門別の注目、地域モニタリングセンター、持続可能な開発と貧困撲滅の統合に焦点を当てた。
Ian Burtonは、適応の目的は、現在の損失と将来の損失を削減することであると指摘した。同氏は、適応の不足を強調し、厳密に経済的な観点からすると、先進国および急激に発展している国がもっとも苦しむことになると指摘した。また、同氏は、明確な目的を持って、適応ベースラインおよび進展状況の計測など、特定の問題を検討する、総合的で、柔軟、段階的な作業プログラムが必要であることを強調した。
日本は、先進国および開発途上国の両方に向けた国際協調行動が必要であることを強調した。中国は、実際的で中身のあるアプローチを呼びかけ、さらに多くのワークショップを開催するよりも、実務専門家による会合をと、提案した。カナダは、リスク評価とリスク管理を強調し、実務者と政策立案者の両方が参加することの重要性を強調した。ニュージーランドは、国別報告書の中に、適応能力に関する自主報告を含めるよう呼びかけることを提案した。EUは、シナジーを最大限にし、緩和との連携を促進するよう提案し、カナダとともに、IPCC第四次評価報告書の発表後、プログラムの再検討を行うことを提案した。米国は、5年後の再検討を提案した。
アルゼンチンは、適応措置および対応措置の集約を提案した。ロシア連邦は、地域的な適応の必要性、地域的な予測、および観測システムの必要性を強調した。小島嶼諸国同盟(AOSIS)は、モーリシャス戦略と一致する小島開発途上国(SIDS)特別プログラムを,呼びかけた。南アフリカは、良好な実践行動の情報を収集するセンター、速やかな脆弱性評価、早期警戒システムを支持した。サウジアラビアは、
UNFCCCと京都議定書での約束に焦点を当て、対応措置の影響を受けやすい締約国、特に石油を輸出する開発途上国への支援を促した。バングラデシュは、LDCsの立場で発言し、LDCsを支援するミクロ保険(micro-insurance)や、ツールおよび方法について、述べた。オーストラリアは、利用可能なツールや方法の分析、および目的を絞ったワークショップを呼びかけた。スイスは、事務局が手法ホームページを維持するよう提案した。
共同議長のWarrilowがコメントを求めたのに対し、出席者からは、特に次の項目に着目する発言があった:付加価値を与えるためのSBSTA作業プログラム、気候変動の影響に関する知識と意識の向上、作業プログラムの資金源、国家および地方の適応組織の強化、適応措置の経済価値評価、適応基金との連携、適応での経験を生かすための他の現象や気候の変動性との連携、適応と防災措置との区別、ボトムアップ・アプローチ、危険領域の速やかな評価と識別。コンタクトグループが設置されることになる。
コンタクトグループおよび非公式会議
事務局活動の内部評価: Harald Dovland (ノルウェー)は、UNFCCC事務局活動の内部評価に関するコンタクトグループの第一回会合を開いた。COP事務局長のRichard
Kinleyは、事務局報告書のサマリー(FCCC/SBI/2005/6)を提出した。Kinleyは、情報システムの運用と維持を目的とする予測可能な資金調達の必要性に関し、補助基金への米国の資金供与に感謝したが、システム開発段階以上の資金調達が必要であると説明した。また、同局長は、資金調達の能率を上げ、ビジネス分野をまたがるコミュニケーションをはかろうとする事務局側の努力についても、説明した。Kinleyは、日本の質問に答えて、事務局による他の組織との調整を認めることには、締約国側に多少の躊躇があることを改めて指摘した。EUは、事務局と他の組織の間では、建設的な関係を築く余地があるという意見を支持した。Dovland議長は、SBIおよびCOP11における結論書の草案を配布し、各締約国に対し、月曜日の朝、再度会合に集まるよう求めた。
特別気候変動基金: SCCFに関するSBIコンタクトグループは、午後、Ojoo-Massawaを共同議長として会合を開き、COP決定書(FCCC/SBI/2004/L.25)に関するSBIの結論書草案の交渉終了が目的であることが指摘された。南アフリカ、カナダ、ポルトガルはEUの立場で発言し、この文書が、議論の有用なたたき台となると述べた。EUは、SCCF援助活動に関する最初の実質条項二項目が、最終合意の鍵であると述べた。また同氏は、経済的多角化に関する文章をより明確なものにする必要があると述べた。月曜日午後、非公式会議が開かれる。
政府間会合の手配: Sach議長は、午後、このコンタクトグループ会議を開いた。Sach議長およびノルウェーは、COP
11およびCOP/MOP 1のハイレベルセグメントに関して、一つの講演者リストを用いたハイレベル・ステートメント発表に関するSB18での合意を改めて指摘した。米国は、相互にやりとりしあう方式をステートメントと組み合わせることを希望した。
将来の会合期間に関して、Sach議長は、COP 13を3-4週間遅らせてほしいとのIPCCからの要請を指摘した。オーストラリア、日本、インド、EU、ニュージーランドは、IPCCの要請を支持した。サウジアラビアと中国は、IPCC報告書については、COP14で取り上げられるのではないかと述べた。COP
11の暫定議題書の中に含まれる可能性がある項目について、サウジアラビアはG-77/中国の立場で発言し、議題書は、UNFCCC
4.8条(悪影響)に関する項目がレビュープロセスの一環として示して、能力開発(キャパシティビルディング)の項目を加えるよう求めた。
交渉プロセスに関し、Sach議長は、SBIプレナリーで提起された見解について述べた、これには議題項目の集約や統合、コンタクトグループの数や会議の回数の削減、そして議題ごとのtime-
cycleの延長に対する一定の支持が、含まれる。サウジアラビアは、さらに議論するよう促した。ノルウェーとカナダは、プロセスの合理化に関する提案の一部は、直ちに実施することができることを指摘した。EUは、SBI
24まで検討を継続するとの提案を指摘した。オブザーバーの参加に関し、Sach議長は、現在のUNFCCCの方法が、現在の国連総会の考えに沿ったものであるとの事務局の意見に対する支持を改めて指摘した。Sach議長は、月曜朝に、結論書草案を作成し、このコンタクトグループは、月曜日午後、再度会議することとなった。
2006-7年度の二ヵ年プロジェクト予算: 参加者は午前中に、予算案に関する実質的な疑問点を質するため会議を行い、午後は非公式に会合して、議長から出されたSBIとCOP/MOP
1の決定書草案について議論した。議論の大半は、為替レートや変動の影響から事務局予算を、どう守るかに集中し、EUおよびその他の国は、予算をユーロで決定することを支持したが、米国はこれに反対した。次の会議は、月曜日に行われる。
条約に関係する研究の必要性: 参加者は、共同議長であるCastellariとCigaranの作成した決定書草案について、意見を交換するため、非公式の会議を行った。参加者は、プロセス、各国および各地域での研究ニーズ、行動を中心とした決定の必要性、研究機関とSBSTAとの連絡改善の必要性、そして科学界からのフィードバック、体系化された観測、能力開発(キャパシティビルディング)、ニーズのリストに焦点を当てた。土曜日の夕方までに、一定の進展がみられたとの報告があった。結論書の草案は、月曜日に配布される。
後発開発途上国に関係する問題: 参加者は、この項目に関し、結論を出す必要があることを強調し、プレ会合での議論および決定書6/CP.9が審議の始点だということで合意した。英国、ツバル、カナダは、COPがGEFに指示を出すのであり、その逆ではないことを指摘し、その指示を実施するのがGEFの責任であると指摘した。
その後、参加者は、COP/MOP 1決定書草案に盛り込まれるべき項目について議論した。EUは、LDC基金を、特に開発計画との統合を支え、各国が主導するものであり、緊急の適応措置の実施を助けるものでなければならないことを指摘した。LDCグループは、LDC基金の一部はLDC作業プログラムの他の要素を支援するべきであると、付け加えた。GEFは、代表を送ることに同意し、同基金に対するGEFの適用可能性を明らかにするため、「追加性」を定義する文書を提供することに合意した。ノルウェーは、COP/MOP
1決定書草案では、GEFへのガイダンスは毎年再考する必要があると規定しなければならないことを指摘した。議長は、このようなインプットを基に、このグループの月曜日午後の会議で配布検討される文書を作成する。
オゾンと気候問題―HFCSとPFCS: Goetze議長が結論書草案を提出した。米国は、この問題で締約国からの提出を求めることに、懸念を表明した。中国は、サウジアラビアおよびジャマイカとともに、将来のSBSTAセッションにおいて、モントリオール議定書側のステートメント提出を求めるとの条項を削除するよう提案したが、EU、ノルウェー、セネガルは、この条項の保持を支持した。米国は、提出の呼びかけが削除されるなら、この条項を受け入れると述べた。非公式折衝が続けられる。
技術移転: 共同議長のLiptowおよびAgyemang-Bonsuは、結論書草案の提出と、EGTTへの委託事項のまとめを提示し、締約国から、交渉のよいたたき台として歓迎された。日本とカナダは、革新的な資金供与およびTT:CLEARが欠けていると指摘した。マレーシアはG-77/中国の立場で発言し、技術のリストアップへの言及がないと指摘した。
その後、参加者は、提案された文章のパラグラフごとの交渉を開始した。議論では、技術的なニーズの評価と公的部門が所有する技術に焦点が当てられた。この議論では、「公的に利用できる」技術と、「民生部門の所有する」技術が具体的には何を意味するか、そして知的所有権との結びつきが中心となった。G-77/中国は、一般に利用可能な技術に関心があると述べ、中国は、公開されている技術に対し所有権を主張することは認められないと発言した(訳注―GISPRI意訳)。両共同議長が改訂文書を作成し、非公式の相談を行う。
LULUCFでの調整: 共同議長のRoslandは、 LULUCFでの調整方法の技術指針に関する
COP 11およびCOP/MOP 1の決定書草案(FCCC/SBSTA/2005/2),附属書の改訂版を提示し、参加者は、パラグラフごとの審議を行った。専門家検討チームの報告書要件に、調整の規模への言及を含めるかどうかは、未解決のまま残された。会議は、非公式に続けられる。
廊下にて
一部の参加者は、セッション間に行われたSBSTAの適応ワークショップで示された、気候変動対自然の気候変動性という問題をめぐってコメントした。あるオブザーバーは、この問題は大気の科学というよりは、責任に関するものではないかと述べた。
一方、コンタクトグループでは、いつもながらの忙しい土曜日が終わり、事務局のスタッフとコンタクトグループ議長は、月曜日までに作成するべき決定書や結論書の草案をたくさん抱えて、事務所を後にした。
しかし、ボンでの「週末がつぶれた」とはいっても、土曜夜のNGOのいつものパーティーで、少し救われた。ある参加者いわく、「COP/MOP
1までエネルギーを温存しようという締約国(パーティー)もあるだろうけど、ここで一番重要なパーティーは、NGOのパーティーだ」と土曜日夜のお楽しみをさして言った。
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