月曜日朝、参加者は、緩和に関するSBSTA会合期間中ワークショップで会合した。午後、SBSTAは、適応および緩和の両方の科学的、技術的、社会経済的側面に関する議題項目を議論するため、再度会合した。夕方、SBIは、議題書の採択を議論するため会合した。これに加えて、コンタクトグループおよび非公式会議が、一日を通して開かれた。SBIコンタクトグループは、事務局活動の内部評価、2006-2007年プログラム予算、政府間会合の手配、非附属書I国国別報告書、LDCsを議論するため、会合した。SBSTAコンタクトグループおよび非公式会議が多様な問題に関して開かれ、これには次のものが含まれた:LULUCFでの調整方法、京都議定書規定の登録簿システム、適応、条約に関係する研究上のニーズ、航空輸送および海上輸送からの排出量、適応に関する作業プログラム。
SBSTA
緩和ワークショップ: このSBSTA会合期間中ワークショップは、技術革新、技術展開・普及に影響をおよぼす要素、そして貧困削減や経済的影響を含めた緩和の社会経済的側面に影響をおよぼす要素に焦点を当てるもので、Kok
Seng Yap (マレーシア)と坂本敏幸(日本)が、進行役を努めた。
国際エネルギー機関のRichard Bradleyは、電力不足に対応しつつ排出量を安定化するには、資本構造の変革と、あらゆる利用可能なエネルギー技術の展開が必要であると指摘した。同氏は、「グリーン化投資」および協力的なR&D協定に注目した。
チャルマーズ大学のChristian Azarは、効率化基準、特にエネルギー価格が安価な場合の効率化基準の重要性に焦点を当てた。同氏は、1936年製の車の燃料効率が6リットル/100kmであり、これは現在の実績に肩を並べると指摘し、公的なエネルギー研究開発投資が過少であり、市場の展開には公共投資が必要であることを、強調した。
スリランカのPublic Utilities Commission(公共ユーティリティー委員会)のPriyantha Wijayatungaは、開発途上国での緩和技術障壁について説明した。同氏は、ガス化複合発電など、先進国で展開されていない技術を開発途上国が利用するべきかどうかに疑問を呈し、資金メカニズムとしてのCDMの適切性にも疑問を呈した。
帝京大学の山口光恒は、日本の鉄鋼部門における効率向上について報告し、中国やロシアの鉄鋼部門が、同じエネルギー原単位を実現するなら、世界の排出量が1%減少すると付け加えた。同氏は、コークス乾式消火設備(CDQ)技術の普及を支持した。
チリ・カトリック大学のLuis Cifuentesは、米国環境保護庁の統合環境戦略(Integrated Environment
Strategy:IES)に関するプレゼンテーションを行った。IESは、温室効果ガスの緩和と地域大気汚染の緩和に関する統合戦略と措置を明らかにしようというものである。同氏は、温室効果ガスと地域大気汚染の削減は、正の相関関係であるのが大半だと指摘し、通常は、緩和による健康上の利益がコストを上回ると述べた。
Charles River AssociatesのDavid Montgomeryは、附属書B諸国の緩和措置のスピルオーバー効果に焦点を当てた。Montgomeryは、政策がどの燃料および部門を対象とするかによって、スピルオーバーのパターンが決まることを説明した。サウジアラビアは、エネルギー税は、炭素含有量を反映するよう、構造改革されるべきであると述べた。
SouthSouthNorth ProjectのSteve Thorneは、南アフリカの緩和プロジェクトで得られた教訓について、プレゼンテーションを行い、CDMプロジェクトにおける持続可能な開発の必要条件追及が「ビリへの競争」となっていると指摘した。同氏は、持続可能な開発に何らかの価値を与えない限り、持続可能な開発は、いつまでたっても偶然に得られる利益でしかないだろうと、警告した。
適応: 月曜日午後、SBSTAは、適応の科学的、技術的、社会経済的側面に関する議題項目を議論するため再度会合し、Abdulla議長が、ワークショップの概要を説明した。EUは、既存の情報を統合し普及する上での、SBSTAの役割を強調し、適応は緩和を補足するものであることを明らかにした。
G-77/中国は、目的を行動中心のものにするよう提案し、純粋に部門別な方法よりも、いろいろな方法の集大成とするよう呼びかけた。同氏は、さらなる評価の提案で、迅速な措置の必要性に歯止めがかかることがあってはならないと述べた。米国は、優先度の高い部門に焦点を当て、措置を長期計画に結び付ける必要があることを、強調した。
ツバルは、AOSIS(小島嶼諸国同盟)の立場で発言し、SIDS(小島開発途上国)の緊急なニーズに対応するための特別な道筋を提案し、このプログラムには、緩和に関係する問題も含めるべきであると述べた。スイスは、利用可能な方法を識別する上でのSBSTAの役割を強調した。日本は、時間のかかる部門別の方法よりも、主題別の方法のほうが望ましいことを指摘した。スーダンは、アフリカグループの立場で発言し、部門別の方法は、現地の知識を軽くみる可能性があると警告し、主題別および生活様式別の方法を呼びかけた。Marjorie
Pyoos(南アフリカ)とJames Shevlin(オーストラリア)が、会議を召集する。
緩和: 参加者は、緩和の科学的、技術的、社会経済的側面について議論した。Kok Seng
Yapと坂本敏幸が、この日の午前中に開催されたワークショップについて報告を行った。多くの参加者が、CDMエネルギー効率、技術移転および技術展開に対する障壁、そして再生可能エネルギー源に焦点を当てた。
日本は、部門ベースでの効率水準ベンチマーク方式、およびCDMの組織改革を提案した。ノルウェーは、運輸部門での課題を強調し、EUとともに、緩和措置の共同便益に注目した。EUは、多年度作業プログラムの詳細策定を支持すると述べた。カナダは、炭素回収と貯留、そしてこの点に関する次のIPCC報告書に言及した。米国は能力開発(キャパシティビルディング)、および政府と民生部門の協力に焦点を当てた。ケニアは、再生可能エネルギー技術は現地で製造されなければならないと述べた。オーストラリアは、国際協力を支援するイニシアティブを紹介したが、これには炭素隔離リーダーシップ・フォーラム、再生可能エネルギーおよびエネルギー効率化パートナーシップ(REEEP)が含まれた。SBSTAの結論書草案を策定する非公式折衝が。火曜日午後3時から始まる。
SBI
組織上の問題: UNFCCC4.8条と4.9条の実施 (FCCC/SBI/2005/1/Add.2)に関する議題項目を追加するとのサウジアラビアの提案の審議が重ねられ、その後Becker議長から、これらの項目、および能力開発(キャパシティビルディング)に関するG-77/中国の提案項目を、「その他の事項」の中に含めることが提案された。参加者は、非公式折衝の後、議長案を受け入れ、議題書(FCCC/SBI/2005/1
and Add.1)を採択した。
そのほかの問題: タンザニアがG-77/中国の立場で、能力開発(キャパシティビルディング)に関する決定書2/CP.7および2/CP.10に言及するステートメントを発表した後、議長は、能力開発(キャパシティビルディング)の枠組を再検討し、次の会合までにGEFの報告書を受け取るという約束が重要であると発言した。同議長が、SBIの結論書草案を準備する。
サウジアラビアは、決定書5/CP.7および1/CP.10での約束、およびこれら決定書の重要性に関するステートメントを読んだ。議長は、締約国に対しSBI結論書を作成する前に、コメントを出すよう求めた。また同議長は、サウジアラビアのステートメントを添付することに合意した。
コンタクトグループおよび非公式折衝
事務局活動の評価: 事務局活動の内部評価に関するコンタクトグループは、月曜日の朝に再度会合した。このグループのCOP結論書草案に関し、Dovland議長は、評価のその後の動きについて最新情報を締約国に提供し続けるよう事務局に求めるパラグラフを、追加した。EUは、他の国際機関との作業に関するパラグラフを修正し、協力とコミュニケーションは焦点を絞り、価値を高めるものであるべきだと規定した。米国はこれを支持した。日本とスイスは、資源が利用可能な範囲で努力をするべきであると付け加えた。文書化について、EUは、締約国が事務局への報告書作成要求を自制する方が望ましいとする文章を入れた。このコンタクトグループは、火曜日午後4時半から最終会議を開く予定である。
2006-2007の2年間に関するプログラム予算: 参加者は、新しく議長から提出された提案書草案と事務局の予算案について議論した。ナイジェリアは、G-77/中国の立場で発言し、基幹予算から資金援助を受ける専門家グループ会合の頻度が、COP決定書4/CP.7と合致する必要があることを指摘した。EU、カナダ、南アフリカ、その他は、京都議定書の発効により予算要求額が増加したとして、予算案を支持したが、ロシア連邦はこれに反対した。米国は、予算規模よりも、京都議定書と条約との歳出の分離について、懸念していることを強調した。議長は、非公式に折衝を行い、火曜日のこのグループの最終会議で修正された提案書を提示する。
後発開発途上国:参加者は、LDCsに関するSBI結論書草案および、COP11決定書草案について議論した。共同議長のMoitaは、締約国がこれらの文章を、前進するための妥協と考えるよう求めた。EU、ノルウェー、カナダ、日本、そしてLDCグループの立場からはバングラデシュなど、多くの締約国が、提案された文章にはプラスの面が数多くあると述べた。数カ国は、さらに修正しなければ、この提案文書に合意するわけにはいかないと述べた。締約国は、共同議長の要請で、非公式に折衝を続けることとなった。このコンタクトグループは、火曜日に再開される。
京都議定書規定の登録簿システム: 月曜日、Murray Ward (ニュージーランド)が非公式折衝の議長を務めるグループの参加者は、短い結論書草案を検討した。議論は、国際取引簿(ITL)作成の仮日程のプロセスとタイミングに焦点が当てられた。月曜日夕方、より長文の訂正文書が、配布された。
条約に関係する研究上のニーズ: これに関する協議は、月曜日に再開され、参加者は結論書草案について議論した。確実な進展があったとの報告があり、技術移転に関する文章が追加された。非公式折衝は、火曜日にも続けられる。
政府間会議の手配: このコンタクトグループは、月曜日午後に再度会合した。サウジアラビアは、G-77/中国の立場で発言し、ホスト国が、COP
11およびCOP/MOP 1に関する査証の発行を容易にするよう、求めた。同氏は、COP 10議長団が事務局および COP 11議長代行とともにハイレベルセグメントの詳細と方式を検討するとする要請の削除を提案し、効果的な参加ができるよう、締約国の貢献強化を招請するとの追加事項を提案した。ノルウェーとEUは、上記の削除に反対した。G-77/中国は、COP前のハイレベル政府間協議に向けた14万米ドルの予算割当(FCCC/SBI/2005/Add.2)について質問した。事務局は、これが、補助基金からの要請であった可能性があると説明した。ハイレベルセグメントに関する提案書草案について、米国は、パネルまたはラウンドテーブルを含めることを支持した。締約国は、非公式に協議し、このコンタクトグループは、火曜日の午後に再開する。
非附属書I国別報告書: 共同議長のSok AppaduとTuressonが、第二回国別報告書および、当てはまる場合には第三回国別報告書の、提出時機に関する非公式折衝の進行役を努めた。4.5年間隔が検討されている。締約国は、G-77/中国の提案を検討中であり、火曜日朝11時に再度会合する。
適応: 共同議長のShevlinは、SBSTA議長が報告したワークショップの概要を基に意見交換を始めることを提案した。作業プログラムの目的に関し、G-77/中国は、AOSISとともに、行動を中心とし、短期の措置および長期の措置とし、最も影響を受けやすいものに着目するよう呼びかけた。EU、米国、ニュージーランドは、理解や協力の改善を願望した。作業プログラムの構成に関し、EU、米国、カナダは、部門別の方法をとるよう提案し、G-77/中国、AOSIS、ロシア連邦、アフリカグループ、日本は、生活様式方式を含める、より広範な方法を希望した。方法について、G-77/中国とAOSISは、作業を進め、確実にフォローアップするための作業部会を、と提案した。
このコンタクトグループでの議論は、火曜日午後まで続けられる。
LULUCFのための調整: このコンタクトグループでの夕方の会議では、共同議長のPaciornikから、改訂文書草案が提出された。参加者は、情報を提出しなかった場合の基準に関して、文章の提出を求めることで合意し、月曜日遅くまで作業し、保留事項での合意をはかると決定した。
: 航空輸送および海上輸送からの排出量: 非公式の会議は午後10時まで続いたが、強力な対立点は融けないままであり、文書草案は、括弧書きが残ったままである。非公式の議論は、火曜日にも継続される。
廊下にて
SB 22の出席者の多くが、中国の気候変動プロセス参加に対する姿勢が変化したように見えるとコメントした。一部のオブザーバーは、G-77はこれまでと立場を変えていないとして、中国が主要な経済大国の地位に上がるについて、その役割が増大し、一部の問題で、その立場を変化させている可能性があると、論じている。中国の急速な工業化から環境問題が生じていることが、中国のアプローチを変化させる原動力になっていると、見るものもいる。中国は、将来、問題が出てくることを見越し、気候体制の構造設計を手伝うことで、先々での衝撃をやわらげようと決定したとの見方がある。一部の専門家によると、中国がWTO体制での義務を負っていることも原動力の一つである。また中国と日本が、気候体制では、日中両国を利する環境や経済での利益を得る機会があるとみて、両国の協力を密にしていると指摘するオブザーバーもいる。
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