地球環境
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Vol. 12 No. 267
2005年5月25日、月曜日

国連気候変動枠組条約第22回補助機関会合

2005年5月24日(火)



火曜日朝、附属書I締約国の政策と措置に関するSBSTA円卓会議が開催された。終日コンタクトグループと非公式会合が開催された。SBIのコンタクトグループと非公式会合では、2006−2007年の事業予算や非附属書I締約国の国別報告書、政府間会合の調整、事務局の活動に関する内部審査、及び、後発開発途上国(LDC)について討議された。SBSTAのコンタクトグループと非公式会合では、技術移転、緩和、適応、京都議定書規定の登録簿システム、条約に関する研究ニーズ、他の環境条約と絡むCDMなどを中心に様々な問題が議論された。


SBSTA

火曜日朝、附属書I締約国の政策と措置(P&Ms)に関するSBSTA円卓会議が開催された。SBSTA20で決定された同会議では、政策と措置の実施に関する情報と経験の共有をめざしたプレゼンテーションや議論が、@国内的局面; A国際的局面; B横断的問題(クロスカッティング・イシュー)という3部構成で行われた。: 世界資源研究所(World Resources Institute)の Jonathan Pershingが会議の進行役を務めた。

附属書I締約国の国内的局面: 欧州委員会(EC)のArtur Runge-Metzgerは、京都議定書の目標達成のための費用対効果の高い措置に焦点をあてたEUの気候プログラム及びステークホルダーとの協力について強調した。坂本敏幸(経済産業省)は、省エネ基準を定めた日本のトップランナー計画について関心を呼び起こした。

Franz-Josef Schafhausen(ドイツ連邦 環境・自然保護・原子力安全省)は、ドイツの気候保護政策について報告した。Gregory Picker(オーストラリア温室効果局)は、省エネと温室効果ガスの統合法に関するアプローチ開発におけるオーストラリアの経験について述べて、“一連のアプローチ”と産業界の参画について強調した。

イギリス環境・食糧・農村省(DEFRA)のChris Leighは、温室効果ガスへの課税とイギリスの排出量取引制度に焦点をあてつつ同国の経験について話した。

その後の討議で、ブラジルは、結果やモニタリング、評価プランに注目する必要性を強調した。中国は、日本のプログラムや、税制上の優遇措置、ドイツの雇用創出などに関心を示した。

附属書I締約国の政策と措置に関する国際的局面: プレゼンテーション: David Fuss (カナダ天然資源省)は取引制度の柔軟性と代替可能性について強調しながら、カナダのP&Mについて発表した。Artur Runge-Metzger(EC)はEU排出量取引制度についてその開放性について焦点をあてて紹介した。

坂本敏幸(日本)は、アジアのエネルギー効率の向上やエネルギー関連CDM事業振興策、及び気候にやさしい技術等のための実証予測(demonstration projections)について報告した。Daniela Stoycheva(ブルガリア環境と水省)は、気候変化戦略とグリーン投資制度の計画について述べた。

横断的問題: 出席者は、非附属書I締約国に対する悪影響を最小限に抑えながら、附属書I締約国がP&Mを実施するための取組みについて議論した。この問題に関する進展が乏しいとナイジェリアが言及した。サウジアラビアは財務補償と関税割引を求めた。


コンタクトグループと非公式協議

2006-2007年(2カ年)事業予算: 本議題に関するSBI コンタクトグループで、参加者は Ashe議長によるSB 22 結論書とCOP 11/MOP 1 決定書の改訂草案について討議した。ロシアは、22%の予算増を支持できないと述べた。 EUはユーロ建で予算を修正するべきだと繰り返し、アメリカがこれに反対を唱えた。ナイジェリアは、G-77/中国の立場から、上記文書が4つの各専門家グループの年次総会に対する資金供与について、COPの規定通り言及するべきであると述べた。Ashe議長が代表団と非公式協議を行う。

事務局の活動に関する内部審査: Dovland議長は、事務局の活動に関する内部審査 (FCCC/2005/6)に関するコンタクトグループを招集し、議長の改訂草案を検討した。SBIからCOP 11への勧告案については、先だってEUが提案した関連国際機関との連携や連絡に関するパラグラフに対して、アメリカが反対を唱え、同パラグラフは削除された。インドは、G-77/中国の立場から、2カ年事業予算文書に対する参考資料を紹介した。 (FCCC/SBI/2005/8)

政府間会合のための調整: 同コンタクトグループは、括弧書きにされた数々の問題などを含む議長からの結論書修正案について検討した。サウジアラビアは、G-77/中国の立場から、COP-10議長団に対する要請の中でCOP-11及びCOP/MOP-1のハイレベルセグメントの詳細を確定する際に参加できるようにするためSBIのガイダンスに基づくという部分に反対した。 この参照部分は削除された。今後の会期日程について、サウジアラビアは、COP-13が第4次評価報告書の準備のため3,4週間延期してほしいというIPCCの要請に反対した。 EUは、AOSIS、 ノルウェー、アフリカグループ、日本とともに、IPCCの要請を支持した。

政府間会合の組織とSB 21の会期中に開催されたワークショップに関する勧告について、 G-77/中国は、議題事項のクラスタ化やサイクル長期化についてさらに検討するという具体的な言及について反対した。この言及は削除された。その代わりに、ワークショップ報告書(FCCC/SBI/2005/2)に対する言及が序文のパラグラフ中に挿入された。

非附属書I国の国別報告書: 非附属書I締約国からの国別報告(FCCC/SBI/2004/L.27)について、午前中に非公式協議が行われ、夕方に決定書草案について討議された。EU、アメリカ、 カナダ、 日本、及び、オーストラリアは、「3年の作成期間」にかかる総コストの合意原則に基づき第1回資金供与に関して、非附属書I締約国が4カ年以内に第2回(必要に応じて、第3回)国別報告書提出に向けてあらゆる努力をすると記す文面を提案した。さらに、必要な場合は、非附属書I締約国が1年提出を延期できるようにすることを提案した。G-77/中国は、第2回もしくは第3回国別報告書作成のために3カ年という期間を規定する根拠は無いと主張し、数カ国のGEFの資金拠出国がこれに異議を申し立てた。アメリカは、援助国はこの活動に対する資金増額を望まないと言及した。

提出期間のいかなる延長もGEFからの追加的資金源を暗示するべきではないという提案は、4年毎の提出を規定するよう求めるG-77/中国によって表現が弱められた。しかし、この点に関する合意は得られなかった。SBI議長との話し合いの後、水曜日の午前に再度協議が開催される。

条約に関する研究ニーズ: 本件に関する非公式協議中に、SBSTA 17及び20の結論書に基づく決定書草案に対して参加者が合意した。 共同議長のCigaranとCastellariが水曜日にコンタクトグループにおいて結論書草案に関する協議を開催する。

技術移転: 午前中、午後、夕方に非公式会合が招集され、EGTTに対する委任事項の草案と結論書草案について検討された。EGTTが提案された業務を「要請されるべき」なのか、「検討するべき」なのかという問題を巡って午前中の交渉は膠着状態となった。午後は参加者がEGTTの任務についてパラグラフ単位で検討したが、合意には達しなかった。COP-1からのCOP決定書の評価や、枠組み実施に関する評価、民間部門の参画のために誰が行動を起こすべきかという問題について意見が割れた。

小島嶼開発途上国: SBSTA副議長Amjah Abdullaが火曜日午後の非公式協議の進行役を務めた。議長による改訂文案が検討されたが、いかにCOPがモーリシャス戦略を実施促進できるかという点で2005年8月19日までに文書提出を求める文言の言い回しについて合意に達することが出来なかった。カナダは、このプロセスに終着点が無いという懸念を表明した。ツバルはCOP-11を最終期限と設定するよう提案した。

EUが提案した2つの追加パラグラフも、意見の隔たりを見せた。アメリカ、カナダ、インドなどは、2005年9月に開催予定のミレニアム・レビューに向けて、気候変動と海面上昇を関連づけるEU提案の文面に反対を唱えた。参加者は、エネルギー効率と再生可能エネルギーの優先順位づけと、2006-2007年の持続可能な開発委員会(CSD)第14回・第15回会議とリンクさせること提案したEUの提案テキストについて討議した。水曜日にさらなる協議が行われる予定。

適応: 参加者はコンタクトグループを開催し、気候変動の科学的・技術的・社会経済的影響や、脆弱性、適応などの問題を議論した。Shevlin共同議長が適応に関するSBSTA作業計画のための要素に関する付属文書草案を紹介し、締約国が全般的なコメントを述べた。

サモアは、G-77/中国に代わって、具体的な行動を志向する言い回しにするように求めた。アメリカは単独の目標を特定するよう提案した。南アフリカは、クック諸島とともに、最も脆弱な締約国に対して言及するよう求めた。EUは、カナダやアメリカとともに、決定書1/CP.10からの言い回しを使用するように提案した。セネガルはキャパシティビルディング(能力開発)に対する言及を求め、ミクロネシアがこれを支持した。 南アフリカは、連続的なアプローチよりも同時並行的なアプローチが必要であると強調した。

緩和: Kok Seng Yap と坂本敏幸共同議長によりコンタクトグループが開催され、参加者は “緩和ワークショップで学んだ教訓や、この議題事項に基づくあらゆる今後のステップ”及び成果の報告方法等について重点的に取り組んだ。EUはプレセッション・ワークショップの開催を提案した。中国は、G-77/中国の立場で、 これまでの活動に関する簡潔な報告書作成を事務局に提案することを求めた。アメリカは、ワークショップについては「懐疑的」であるとし、3時間のワークショップの委任事項の合意のために1週間も交渉に費やす価値があるか異議を唱えた。G-77/中国は、前回のワークショップで学んだ教訓や本議題に基づく今後のステップ等の意見交換をするためにワークショップが主催されているのか疑問を投げかけた。共同議長が結論書草案を作成し、非公式に協議する。

CDMとその他の環境条約: Georg Borsting議長が結論書草案を提起した。中国とアメリカは、締約国に対する提出物の要請を制限することを望んだが、EUは、許可されたオブザーバーや関連のある政府間組織からも提出を求める案に賛成した。EUはもっと時間をかけて協議するよう要請した。Borsting議長は、水曜日正午までに何もコメントが寄せられなければ、文言が合意されたと見なすと述べた。

後発開発途上国(LDC)に関する問題:
コンタクトグループの参加者は、LDC基金に対して確実に衡平なアクセスが得られるようにすることが重要であるという点で合意した。全額コスト供与や優先順位の高い活動に対する資金供与の役割などに議論が集中した。EUは、気候の変動性よりもむしろ気候変化の悪影響に対処するために資金調達を行う必要性を言及した。 ウガンダは、LDCグループの立場で、そうした区別の難しさについて述べた。日本は、そうした資金が確実にNAPAs(National Adaptation Plan of Action:国家適応行動計画)の最優先事項のために活用されるようにすることが必要であると強調した。LDC数カ国がNAPAのプロセス自体がそうした優先事項を確認するものであると言及した。最終決議を得ることなく、午後10時に討議終了となった。


廊下にて

火曜日の廊下ではCOP-9 と COP-10本会議で交わされたLDC基金に関する思い出が彷彿とされ、何度も同じ日を繰り返してしまう運命となった登場人物を描いたハリウッド映画の“Groundhog Day”(邦題:「恋はデジャ・ヴ」) のように、またもや結論の出ない交渉に突入してしまったのではないかと見る参加者もあった。LDC基金運営のためのさらなるガイダンスが今後GEF向けに展開されねばならないと決定したCOP-8以来、両陣営の交渉者は毎日各セッションを最初からやり直している気分にとらわれているようだ。COP-9で急いで決定を下し、LDC参加者をなおざりにしてGEF理事会に発議を委ねた経緯をデジャヴュのように思い起こす参加者もあった。

同じように、予算交渉の中でも、議論が繰り返される兆しが見られた。


NEDOからの委託によりGISPRI仮訳