地球環境
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Vol. 12 No. 269
2005年5月27日、金曜日

国連気候変動枠組条約第22回補助機関会合

2005年5月26日(木)



木曜日、コンタクトグループや非公式会合で合意された結論書や決定書草案の採択を行うため、SBI本会議が招集された。懸案事項となっていた大半のSBI議題に関する作業は終了した。さらに、終日SBSTAとSBIのコンタクトグループや非公式会合が数多く開催された。また、技術移転、緩和、適応、小島嶼開発途上国(SIDS)、航空・海上輸送からの排出、及び、オゾン層保護と全球気候システムに関するIPCC特別報告書に関して、SBSTAのコンタクトグループと非公式会合が行われた。SBIコンタクトグループと非公式会合は後発開発途上国(LDCs)と2006-2007年度事業予算に関して開催された。


SBI

SBI議長のThomas Becker (デンマーク)が木曜日夕方の会議を開会し、すべての懸案事項の決着を求めると述べた。

非附属書I国別報告書: 非附属書I締約国からの第2回(必要に応じて第3回)国別報告書の提出(FCCC/SBI/2005/L.9)について、非公式会合で、共同議長のSoobaraj Nayroo Sok Appadu (モーリシャス) とAnders Turesson (スウェーデン)が合意を報告した。 SBIは結論書を採択し、COP -11へ決定書草案を付託した。非附属書I締約国の国別報告書に関する専門家諮問グループ(CGE)の作業 (FCCC/SBI/2005/L.11)や、第1回国別報告書の編纂と統合(FCCC/SBI/2005/L.8)、及び資金的・技術的支援(FCCC/SBI/2005/L.7)について、SBIは結論書を採択した。

政府間会合の調整: Karsten Sach (ドイツ)は、コンタクトグループの討議について報告し、COP -11及びCOP/MOP -1や、今後の会期日程、政府間プロセスの組織、条約プロセスにおけるオブザーバー組織等の調整について取り上げた結論書草案(FCCC/SBI/2005/L.4)を紹介した。今後の会期日程については、4週間のCOP-13開催日程延期を求めるIPCCの要請を受け入れる文面について言及し、「締約国は今やこの件を受け入れられると信じる」と述べた。政府間プロセスに関しては、“改善のために可能なオプションをさらに模索する”ための合意について言及した。複数のコンタクトグループや大量の議題に対する不満の声については、「このまま大変な思いを続けるのも酷である」として、COP -11 /MOP -1の前に可能な解決策について考慮するよう締約国に要請した。SBI は結論書を採択した。

特別気候変動基金(SCCF): コンタクトグループ共同議長のEmily Ojoo-Massawa (ケニア)とJozef Buys (ベルギー)は、ある程度の進捗も見られたものの合意には至らなかったことを報告した。SBIは括弧書き入りで提案された結論書(FCCC/SBI/2005/L.13)を付託した。 SBI議長Beckerは、合意に達することができるような、より柔軟性のある使命を携えてCOP -11に臨むよう参加者に求めた。EU は3500万ドルの拠出を既に明言しているとし、SCCFの支援という言葉を繰り返した。また、SCCFが適切に実施されるように地球環境ファシリティ(GEF)と連携して取り組むと述べた。

その他の問題: クロアチアの基準年のための排出水準: Jim Penman (イギリス)は、非公式折衝によりこの件(FCCC/SBI/2005/L.3)の合意に至ったことを報告した。Becker議長は、永年未解決となっていた問題解決に対するJim Penmanの功績について感謝した。SBI は決定書草案をCOPへ付託することで合意した。

気候に中立的なUNFCCC会議: Becker議長は、非公式折衝の上、結論書草案を作成したと説明した。(FCCC/SBI/2005/L.12). 上記の短い本文は注釈なしでSBIに採択された。

決定書 1/CP.10の履行に関する問題: Becker議長は、決定書1/CP.10 (適応策と対応措置に関するブエノスアイレス作業計画)についてSB 22で3つの提案があったと言及した。これは文書FCCC/SBI/2005/Misc.2に記載され、SBI 22最終報告書の「その他の問題」(Any Other Matters)の項目で言及された。

事務・資金事項: 2004-2005年度(2カ年)予算収支:このサブ議題についてSBIは結論(FCC/SBI/2005/L.5)を採択した。

UNFCCCプロセス参加のための財政支援に関わる条約の財務手続きに関する7項(c)の履行:
オーストラリアの文面修正案を受け、SBIは本サブ議題(FCCC/SBI/2005/L.10)の結論書を採択した。

本部協定の実施: SBI は注釈なしで本件に関する結論書(FCCC/SBI/2005/L.2)を採択した。

事務局の活動に関する内部審査(レビュー): Becker議長は、コンタクトグループによって結論書草案(FCCC/SBI/2005/L.6 and L.6/Add.1)が作成されたことを報告し、SBIはこれを結論書として採択した。

さらに、Becker議長はSB両議長や共同活動に関するUNFCCC専門家グループ議長が参加した会合について報告し、適応に関する共同会議について検討されたと言及した。

後発開発途上国に関する問題: 終日行われた長時間の交渉(下記の“コンタクトグループと非公式会合”欄参照)の後、 SBIは、結論書(FCCC/SBI/2005/L.14)を採択し、決定書草案(FCCC/SBI/2005/L.14/Add.1)をCOP -11に勧告することで合意した。バングラデシュは、後発開発途上国(LDC)の立場から、最終文書はLDCsが望んだ結果ではなく、妥協の賜物であると述べた。また、国内適応行動計画(NAPAs)実施のためのニーズに真に即した方法でガイダンスを実行できるかどうかは、今やGEFの行動にかかっていると述べた。

2006-2007年度(2カ年)事業予算: 金曜日午前0時35分に、2006-2007年度事業予算は依然として合意に達していないとBecker議長が発表した。したがって、本件の会合を一時中断し、10時30分に再開することとなった。


コンタクトグループと非公式会合

オゾン層保護と全球気候システムに関するIPCC特別報告書:
午前中にSBSTAコンタクトグループが開催され、Goetze議長が提案した結論書草案について参加者の合意に至り、採択に向けてSBSTAに送られることとなった。最終文書には、2006年2月13日を提出期限として、測定と系統的観測および本件を検討するためのプロセスづくりを目指す2つのパラグラフが記載される。この文書もSB24で本議題の検討を完了するよう提案している。

適応: 木曜日午前には気候変動の影響、脆弱性および適応に関するSBSTAの作業計画について、午後と夕方にはSBSTAの結論書草案とCOP決定書草案を検討するための協議が開催された。作業計画の目的に関して、サモアは、G-77/中国の立場から、最も脆弱な地域に関する言及や決定書1/CP.10に対する言及を含めた文面を提案し、日本がこれを支持したが、アメリカが反対を唱えた。スイスは、その代案として、ノルウェーとともに、決定書1/CP.10に基づくSBSTAの作業に対する具体的な言及を求めた。アメリカは、気候変動ではなく、気候に対するリスクや影響、脆弱性について言及するよう提案したが、EUがこれに反対した。サウジアラビアは対応策について言及するよう求めた。 SBSTA議長Benragebは作業計画の作成を促すためにSB23の前に非公式なワークショップ開催を申し入れた。参加者はこの提案を受け入れ、結論書草案に合意した。 この結論書草案はSBSTAに付託される。

技術移転: 午前から夕方まで行われた長時間の交渉の末、参加者はEGTTの委任事項と結論書草案について合意に至った。長期戦略や進捗状況に関するレビューに対する意見の相違をクリアして、正午にEGTTの委任事項に関する合意に達した。結論書草案を巡り、パラグラフ単位の討議が終日継続され、適応技術やEGTTが取り組む技術や技術ニーズ・アセスメント、共同研究やパブリックドメイン及び公共技術などについて言及したパラグラフについて議論された。合意成立を阻む最後の障害となっていた決定書4/CP.4 7項(b) (環境に健全な公共技術)がようやく夕方に解決した。 コンタクトグループが招集されて合意が正式承認され、SBSTAの検討に付託された。

緩和: 参加者は非公式会合やコンタクトグループにおいて、緩和ワークショップで学んだ教訓やこの議題事項における将来のステップについて締約国が意見交換を行う適切なフォーラムについて討議を継続した。EUとカナダがフォーラム開催を提案したが、G-77/中国やアメリカ、オーストラリアが反対を唱え、議論の進展は見られなかった。 長丁場の議論の末、参加者はサウジアラビア提案を受け入れ、アメリカがこれを支持して、フォーラムに関する言及を削除することとなった。3つのパラグラフを含むSBSTA結論書草案が合意され、SBSTAの検討のために付託された。この草案には、締約国からの提出文書の確認、会合中ワークショップ開催歓迎、議長総括に対する言及、事務局に対する会合中ワークショップで提起されたテーマに関する簡潔な報告書作成要請などが盛り込まれた。

国際航空・海上輸送からの排出: 本件の非公式折衝では、プロセス設定に関して議論が集中した。EUなどが支持したが、多くの途上国が反対を唱えた。

小島嶼開発途上国(SIDS): 朝方に開催された会合で本件に関する文書について参加者の合意を得られなかった。モーリシャス戦略に関するUNFCCCフォローアップ会合を求める小島嶼国連合(AOSIS)などの意見調整を狙った妥協文書が出された。草案作成の小グループの討議の中で、アメリカは、現在進行中のプロセスに関して提案された言い回しについて反対し、モーリシャス戦略について短く言及する方が良いと主張した。AOSISとEUは短い方の文面に反対した。木曜日夕方までに報告された決定事項は何もなかった。

2006-2007年(2カ年)事業予算: 長時間に及んだ非公式会合の後、John Asheコンタクトグループ 議長は、2006-2007年度の国連気候変動枠組条約(UNFCCC)及び京都議定書の予算について、COP -11の決定書草案を記載したSBI結論書草案をコンタクトグループに紹介した。 EUとG-77/中国は予算案を支持した。一方、アメリカはUNFCCC予算の200万ドル削減を提案し、日本は全体の予算を300万ドル削減するよう提案した。UNFCCC事務局長のJoke Waller-Hunterは200万ドルの削減幅は“事務局の運営に深刻な影響を与えることになる”と述べた。 この点でコンセンサスが得られなかったことに触れ、Ashe議長は文書をSB 23に付託することを提案して、閉会となった。

非公式の多国間および二国間会合が程なく再開されたが、金曜日午前0時30分の段階で、参加者は最終合意に到達できなかった。

後発開発途上国に関する問題: Becker SBI議長がこのコンタクトグループ会合の議長を務め、SBI結論書草案及びCOP -11/MOP -1決定書を紹介し、「@LDC基金からの全額コスト拠出についてはNAPAsで優先事項として確認された気候変動の悪影響に適応するための活動として“合意された”コスト分を充足するためのものとすること、Aそうした資金援助は“たった一つ”の理由(the sole reason)ではなく、気候変動の適応こそが根拠となる」という2箇所の修正を提案した。ウガンダは、LDCsの立場から、“合意された”コストでは“追加の”コストに賛成すると述べ、そうした財政支援の根拠に「適応」と言及する部分を削除するよう提案した。EUやカナダなどは議長提案を支持した。合意には至らず、議長はコンタクトグループを休会としたが、非公式協議により“追加コスト” を定義した脚注を入れ、気候変動への適応をそうした資金拠出の根拠とする言及を削除するという妥協案を導いた。


廊下にて

参加者は木曜日深夜にSBIの作業が終了したことに安堵していたが、全員がお祝いムードに浸った訳ではない。金曜日午前0時半の段階で2006-2007年度事業予算の合意成立が危ぶまれ、参加者は苛立ちを見せたまま会場を後にした。一方、LDCsに関する決定で最終合意が得られたことに対する祝賀気分は本物であったが、「期待するほどの強力な結果ではなかった」とするコメントに盛り上がりが抑えられた。もう一点、永年持ち越しとなっていたクロアチアの基準年の排出量に絡む懸案事項が妥結成立に向けて大きな一歩を踏み出したことに参加者は心から満足していたようだ。しかし、緩和や気候中立的なUNFCCC会合等に関する短い文面を巡って各方面で焦燥感が見られた。


NEDOからの委託によりGISPRI仮訳