地球環境
メニューに戻る

Vol. 12 No. 282
2005年11月30日

COP 11 及びCOP/MOP 1 ハイライト

2005年11月29日 火曜日



 11月29日(火曜日)はSBIとSBSTAのプレナリー会合とコンタクトグループが開催された。SBIでは、資金メカニズムやその他の事務的・制度的な問題、ならびに、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)及び京都議定書に基づくキャパシティビルディング、UNFCCC4条8項・9項(悪影響)の実施について検討した。SBSTAでは、研究及び系統的観測や、国際機関との協力、京都議定書に基づく方法論に関する問題、及び技術移転に関する議論を行った。コンタクトグループでも、夕方から資金メカニズムや緩和、適応、及び附属書I国の国別報告書に関する会合を行い、作業開始となった。


SBI

 資金メカニズム(UNFCCC): 特別気候変動基金(SCCF): 火曜日午前、事務局のPhilip Weechは、SCCFの運用についてはSBI 22報告書の附属書I国の草案テキスト(FCCC/SBI/2005/10)をベースに議論を開始すると述べた。

 COPに対するGEF報告書: GEF(地球環境ファシリティー)のRichard Hosierは、COP に対するGEF報告書(FCCC/SBI/2005/3)の概要について報告した。資金メカニズムについては、フィリピンがG-77/中国の立場から、「世銀が適応基金の受託者(trustee)となるのか、それとも世銀が最終的に資金拠出のために多国間信託基金を創設する権限を有するのか」という問題についてGEF評議会が決定権を持つのかどうか疑問を投げかけ、資金メカニズム問題に対する「重大な懸念」を表明した。さらに、新たに設立されたGEF資金割当枠組み(GEF Resource Allocation Framework:略称RAF) が透明性を向上させるものではなく、適応基金の運用を困難にする可能性があるとの懸念を示し、後発発展途上国(LDCs)や小島嶼後発途上国(SIDS)にとっては共同出資という要件が基金活用を妨げるハードルとなっていると指摘した。小島嶼国連合(AOSIS)などは、GEFや世銀よりもCOPが適応基金を管理するべきではないかと補足した。バングラデシュは、GEF理事会だけではなく、COPがLDC基金の割当を決定するべきだと述べた。日本は、GEF報告書に関するキャパシティビルディングの議論はすべてUNFCCCのキャパシティビルディングに関する議題ではなく資金メカニズムに関する議題の中に盛り込むべきだと述べたが、タンザニアとウルグアイなどがこれに反対した。

 決定書5/CP.8の実施: 決定書5/CP.8 (途上国の投資ニーズ)の実施について、事務局は、UNFCCC のコミットメントを実現するための途上国の投資ニーズに関する情報をとりまとめた文書(FCCC/SBI/2005/INF.7)を紹介した。G-77/中国は、こうした情報をUNFCCCの資金メカニズムに対して公正でバランスのとれたレビュー(見直し)を実施するために活用すべきだと述べた。資金メカニズムに関するコンタクトグループが設置された。

 UNFCCCに基づくキャパシティビルディング: UNFCCCに基づくキャパシティビルディングの問題は、コンタクトグループに付託された。

 UNFCCC 4条8項及び9項(悪影響):適応と対応措置に関するブエノスアイレス作業計画: 政府代表 はUNFCCC 4条8項及び4条9項について議論し、サウジアラビアなどが対応措置や経済の多角化に関するワークショップや専門家会合の有用性について強調した。ツバルは「適応問題と対応措置に関する議論は別にすべきである」と主張したが、米国が反対を唱えた。締約国は、決定書 1/CP.10が規定した専門家会合と報告に関するタイムテーブルに従うと決定した。

 後発発展途上国(LDCs): Paul Desanker (マラウィ)は、LDCs専門家グループと国別適応行動計画(NAPAs)の作業の進捗状況に関して、政府代表に概要報告を行った。コンタクトグループが設置された。

 事務管理、資金、組織・制度に関する問題: 予算問題:関係のある締約国と協議の上、2004-2005年度の2カ年予算収支に関する結論書は事務局が作成することで決定した。2006-2007年度の事業予算については、事務局の事業計画に対する修正事項について留意するという決定が行われた。 (FCCC/SBI/2005/INF.6).


 組織・制度面の連携: Masao Nakayama (ミクロネシア) がコンタクトグループの議長を務め、事務局と国連の間の組織・制度的な連携の継続について決定書草案を作成する。

 特権と免責: Nakayama議長のコンタクトグループは、京都議定書の下で設立された機関に携わる人の特権と免責事項に関する決定書を作成する。

 事務局レビュー: 事務局のためのガイダンスに関する結論書は、関係ある締約国との協議の上、事務局が作成すると決定した。

 資金メカニズム (京都議定書): 適応基金: G-77/中国は、途上国にとってはGEFと世銀が「受託者」として機能することが基金運営の最善策だと主張した。ツバルとバングラデシュは、基金が具体的なプロジェクトに集中するよう求め、COP/MOPが基金運営にあたり権限を行使するべきだと主張した。これに対して、カナダは「基金がその他の資金源を活用するためのきっかけとして機能すべき」と述べた。

 GEFに対するガイダンス: 事務局からの説明を受けて、政府代表は、GEFに対するガイダンスと適応基金について、COP/MOP決定書を作成するコンタクトグループを発足させることで合意した。この件については資金メカニズムに関するコンタクトグループが対応する。

 京都議定書に基づくキャパシティビルディング: SBIの調整担当者のJanos Pasztor がFCCC/SBI/2005/Misc.3 and Add.1について紹介した。日本は、JIとCDMが活用できるような環境づくりのためのツールとしてキャパシティビルディングを促進すべきだと主張した。


SBSTA

 Benrageb議長は小島嶼後発途上国(SIDS)に関する議題について合意されていないと指摘し、この件の協議内容をSBSTAに差し戻した。さらに、「関連諸機関との連携」という議題項目の下でIPCCの二酸化炭素回収・貯留に関する報告書が検討される予定であることを補足した。

 研究及び系統的観測: 全球気候観測システム (GCOS)や、全球陸上観測システム (GTOS)、地球観測衛星委員会(CEOS)、及びCEOS、GCOS、全地球観測システム (GEOSS)との間の連携に関する報告があり、多くの政府代表がこれらの報告を歓迎するとともにGCOSとGEOSSの連携の必要性を強調した。バングラデシュ、日本、及び中国は、データ交換と活用について強調。ウガンダは、特にアフリカでのデータ格差に対応する必要があると強調した。中国とパナマは、地域のキャパシティについて強く主張した。Stefan Rosner (ドイツ)とPhilip Gwage (ウガンダ)がコンタクトグループの議長を務める。

 その他の機関との連携: SBSTA調整官のHalldor Thorgeirssonは共同連絡会(Joint Liaison Group)について報告し、リオ条約(気候変動・生物多様性・砂漠化)間の連携強化に関する文書についての検討内容を伝えた。また、これに関連して、2006−2007年のエネルギーや大気、気候変動に関する重点事項の他、持続可能な開発委員会(CSD)の活動内容について説明した。その後、関連する国際機関の代表による連携や協力について簡単な説明があった。湿地に関するラムサール条約のPeter Bridgewaterは、湿地管理が気候変動に与える影響について述べた。IPCCからはRenate ChristがIPCCの現在の作業について説明し、影響・脆弱生・適応・緩和の評価に適した新たな排出シナリオの必要性を強調した。

 国連食糧農業機関(FAO)のDieter Schoeneは、気候変動が食糧の安全保障と人々の生活に及ぼす影響について強い懸念を表明した。国連国際防災戦略(ISDR)のJohn Hardingは、気候変動の適応策を防災戦略の中に盛り込む必要があると述べた。小島嶼国連合(AOSIS)は、重要なプロジェクトが除外されるリスクがあるとして、そうした相乗効果をGEFの資金拠出の前提条件にしてはならないと警告した。

 二酸化炭素回収・貯留に関する特別報告書: IPCCの緩和に関するWGIII (第3作業部会)のBert Metz共同議長は、二酸化炭素回収・貯留に関するIPCC特別報告書について報告し、追加的なエネルギー要件や、リスク、リーケージ、法規制に関する問題に触れた。政府代表の多くは、二酸化炭素の回収・貯留は緩和のためのツールとして重要だと主張した。EUは、SBSTAに対して同報告書に関するワークショップついて検討するよう求めた。コンタクトグループ発足が発表された。

 京都議定書に基づく方法論に関する問題: SBSTA副議長のAmjad Abdullaがこの会合の議長を務めた。

 排出量と吸収量の推計に関する情報提出の不履行にあたる基準: この件関して、締約国は一貫性と明瞭性を求めた。Audun Rosland (ノルウェー) とNewton Paciornik (ブラジル)がコンタクトグループの共同議長を務める。

 その他の環境条約の目的達成のためのCDMのプロジェクト活動実施の影響: HFC-23破壊CDMでクレジット獲得するために、HCFC-22生産設備を新設することの影響について(FCCC/SBSTA/2005/INF.8 and /MISC.10 and /MISC. 11)、締約国は歪んだインセンティブを回避する必要があると主張した。Georg Borsting (ノルウェー)がコンタクトグループの議長を務める。

 京都議定書に基づく国際取引ログ: この件(FCCC/KP/CMP/2005/5)について概要説明があり、 Murray Ward (ニュージーランド)が同コンタクトグループの共同議長を務める。

 その他の問題:京都議定書2条3項に関する問題: この件について、サウジアラビアはコンタクトグループの発足を呼びかけた。賛成する締約国もあったが、EUなどが反対した。 非公式会合の後で、Abdulla議長はこの件について締約国はさらに議論する必要があると述べた。

 進捗状況報告書: 国別温室効果ガスインベントリ作成のための各国のシステムに関するワークショップ(FCCC/SBSTA/2005/6 and Corr. 1 and 2)と、附属書I国の温室効果ガスインベントリの技術審査に関する年次報告書(FCCC/SBSTA/2005/9)、及び政策措置の実施における附属書I国の経験に関するラウンドテーブルディスカッション(FCCC/SBSTA/2005/INF.6)について、Halldor Thorgeirssonが報告を行った。 米国はSBSTA24で京都議定書に基づく政策措置を検討するよう提案した。Abdulla議長は、同報告書について留意しつつ、SBSTA24でさらに本件を検討することを提案し、結論書草案を作成する。

 技術移転: 技術移転に関する専門家グループ (EGTT)のKishan Kumarsingh議長は、2005年度EGTT 年次報告書について紹介し、2006年の作業プログラムの提案を行った。(FCCC/SBSTA/2005/INF.10) また、提案されたプログラムでは、特に技術移転に関する報告の改善や、技術情報、公開技術の移転、革新的な資金調達、適応技術等を重点項目とすると説明し、これを実施するためには資金援助を増額させる必要があると述べた。

 マレーシアは、G-77/中国の立場から、COP決定書がEGTTレビューに関するガイダンスを供するべきだと述べ、技術移転のための新たなアプローチはUNFCCCの目的との整合性が図られるべきだと強調するとともに、技術協力とパートナーシップに関する閣僚級円卓会合の実施を提起して、EGTTのための追加的財源を求めた。日本と米国は、官民パートナーシップの役割が重要だと強調し、多くの締約国がその他の技術関連のイニシアティブについて述べた。中国は、税制、知的財産、その他の障害を克服する必要があることを強調した。EUは、EGTTが長期計画とEGTT権限内で技術移転計画を策定するべきだと主張した。コンタクトグループについて発表があった。


コンタクトグループ

 資金メカニズム: GEF のRichard Hosierは、LDC基金や特別気候変動基金(SCCF)、適応基金に対する資金拠出がRAFの対象外となると説明した。世銀を受託者として活用する内容を含む、GEFの活動報告がCOP 8 (FCCC/SBI/2002/4)に提出されており、多国間信託基金は附属書I国やCDM収益から直接資金調達できる点が良いと述べた。

 緩和: Kok Seng Yap・坂本敏幸共同議長は、議論の出発点として、締約国からの提案と要望(submissions and interventions)を叩き台として、様々な教訓や将来のステップ、具体的な取組み等についてアイディアを提起した。

 適応: Plume共同議長は、2005年10月にボンで開催された影響・脆弱性・適応に関するSBSTA作業プログラムについて行った非公式ワークショップの概要を含むワーキングペーパー(Working paper No. 2 and Add. 1) について紹介した。共同議長が決定書草案を作成する。

 附属書I国の国別報告書: 同コンタクトグループでは、2006-2007年に京都議定書締約国が提出する報告書のレビュー簡素化を検討した。 米国は、UNFCCCと京都議定書の問題を切り離して検討する必要があることを強調した。政府代表は、UNFCCCが規定する国別報告書と、京都議定書が義務づけている報告とを切り離して議論し、この問題について個別に二つの決定書を作成することで合意した。


廊下にて

火曜日は会場の廊下では、SBIプレナリーで提起されたGEFとCOPの関係に関する議論があちこちで話題となっていたが、こうした議論はGEF拠出国間の第4次追加資金拠出額の違いと関連があるのではないかと指摘する政府代表の声がいくつか聞かれた。一方、今後、拠出額カットされればさらにGEFの魅力が薄れるとして、GEFの運営方法に対する不満も上がっていた。途上国の資金調達が困難になるだけだとして、RAFの導入についても一部から批判の声が上がっていたが、今後RAFがもたらす効果については楽観的な意見も見られた。


NEDOからの委託によりGISPRI仮訳