地球環境
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Vol. 12 No. 283
2005年12月1日

COP11及びCOP/MOP1ハイライト

2005年11月30日 火曜日



水曜日, 各国政府代表は、COP及びCOP/MOPプレナリー会議とコンタクトグループの会議を開催した。COPは、途上国での森林減少及び事務局長任命手順を議論した。COP/MOPは、COPから送られてきた京都議定書の運用に関する21の決定書パッケージを、マラケシュ合意で合意されたとおりに採択した。また、COP/MOPは、クリーン開発メカニズム(CDM)理事会報告書、共同実施(JI)、遵守、議定書3条9項(将来約束)、その他さまざまな問題を検討した。コンタクトグループは、資金供与制度、LULUCF、教育・訓練・啓発、技術移転、遵守、適応、LDCsに関する会合を開催した。


COP


途上国での森林減少:パプア・ニューギニアは、途上国での森林減少回避に関する提案書(FCCC/CP/2005/MISC.1)を提出した。締約国はこの提案を歓迎したが、数人の代表は、この問題は複雑で十分な協議が必要であると指摘した。ツバルは、誤ったインセンティブが提供される可能性や、気候変動体制と森林減少との関連性に注目するよう促し、議定書3条9項(将来約束)に規定する2013年以降での行動可能性については、革新的な考えが必要であることを強調した。ブラジルは、持続可能な開発に向けたインセンティブの探求を支持し、ツバル及びその他の国とともに、マラケシュ合意の議論再開に反対した。米国は、本提案書は主に議定書に関係するものだと述べた。ジャマイカは、G-77/中国の立場で発言し、気候変動と持続可能な開発の対処における共通だが差異ある責任を強調した。Hernan Carlino(アルゼンチン)がコンタクトグループの議長を務める。

事務管理、資金、組織・制度に関する問題:
事務局長任命手順:Dion議長は、国連事務総長オフィスからの最近の連絡文書で設定された新しいUNFCCC事務局長選出手順の概要を紹介した。同議長は、この手順が全ての国連高官の任命に用いられることを指摘し、COP 議長団は、この任命に関する事務総長からの相談を期待していると述べた。COPは、このアレンジに留意した。


COP/MOP


COPから送付された決定書の採択:Dion議長は、マラケシュ合意の一部としてCOPからCOP/MOPに送られた21の決定書からなるパッケージを提出した。各国政府代表は、このパッケージを採択した、これには次の項目に関する決定書(FCCC/KP/CMP/2005/3 and Adds.1-4) が含まれる:LULUCF及び3条14項(悪影響)に関係する問題、5条(方法論問題)・7条(情報の伝達)・8条(情報のレビュー )、柔軟性メカニズム、7条4項規定の割当量算定。同議長は、この採択を、7年間の努力が実を結んだもので「画期的な成果」だとし、議定書の「明確なルールブック」を承認した各国政府代表に感謝した。

カナダは、これらの決定書は議定書に「命を吹き込み」、実施の基礎を築くものであると述べた。同代表は、次のステップは改善、特にCDMの運用での改善と技術移転による改善とするべきだと提案した。

その他の問題:EUは、森林管理の割当量を再検討してほしいとのイタリアからの要請(FCCC/KP/CMP/2005/MISC.2)を提出した。これについての協議が行われる。

CDM理事会の報告:CDM理事会議長のSushma Geraは、同理事会の2004-2005年度報告書(FCCC/KP/CMP/2005/4 and Add.1)を提出した。同議長は、過去1年間に「大きなモーメンタム」が得られたと指摘し、39件のCDMプロジェクトが登録され、登録審査中のものも多数あると報告した。同議長は、作業の能率化を図るステップを紹介し、運営管理計画について報告し、CDMの迅速な立ち上げという目標が実現したとの結論を述べた。

多数の締約国がCDMの重要性を強調し、そのプロセスを促進するための効率化を支持した。大半の締約国が、理事会や関連組織に適切な資金を提供する必要があることを強調し、数カ国は、市場に対して、CDMが2013年以降も継続するとのサインを提供する必要があることを強調した。

インドは、G-77/中国の立場で発言し、初めての認証排出削減量(CERs)が提供されたことなど、最近の成果に焦点を当てた。日本は、地域暖房、エネルギー効率化、運輸部門のプロジェクトを促進するべきだと述べた。コロンビアとガーナは、運輸部門におけるCDMのポテンシャルに注目を促した。EUは、EU排出量取引スキームと京都メカニズムとのリンクを指摘し、締約国の望むような規模でのプロジェクトやCERsを実現するには、CDMプロセスをさらに改善する必要があるとの懸念を表明した。

カナダは、「戦略的な監視」という理事会の役割を強調し、一連のCDM強化措置が緊急に必要であることを強調した。ネパールとカンボジアは、再生可能でないバイオマスの問題を提起し、ブラジルとAOSISは、CDMの環境上の十全性を保持する必要があることを強調した。

パナマは、CDMの収益で理事会の資金を調達するとの提案に懸念を表明し、セクターCDMという考えを支持した。タンザニアは、アフリカグループの立場で発言し、アフリカのCDM参加を促進する措置を要求し、たとえばCDMの収益をこの地域のキャパシティビルディングに当てるよう求めた。チリは、早期実施(prompt start)CDMプロジェクトの登録に関するマラケシュ合意規定の期限を延長するよう提案し、他の数カ国の支持を得た。

IETA (THE International Emissions Trading Association)は、ビジネスと産業グループの立場で発言し、追加性について新たなガイダンスを設けるなど、大幅な改革パッケージを要求した。David Brackett(カナダ)とAndre Correa do Lago(ブラジル)が、コンタクトグループの共同議長を務める。

共同実施(JI):議定書6条(JI)の実施に関し、EUは、JI運用のための実際的措置について速やかに合意するよう促し、コストの適切かつ速やかな支払いを確保するとのEUの約束を強調した。数カ国の締約国は、CDMから得られる知識の有用性を強調した。ロシア連邦は、JI監督委員会の資金源は、附属書I締約国からの資金供与とJIプロジェクトの登録料にするべきだと述べた。同代表は、小規模JIプロジェクトを定義づける必要があるとし、COP/MOP1の決定を求めた。中国は、G-77/中国の立場で発言し、「実際の、測定可能な」削減についての明確なガイドラインを強調した。Daniela Stoytcheva(ブルガリア)がJIに関するコンタクトグループの議長を務め、Marcia Levaggi(アルゼンチン)が監督委員会のメンバーに関する協議を行う。

遵守:議定書の遵守メカニズムに関し、サウジアラビアは、同国が議定書改正案を提出したことを指摘し、独立性を持ち法的拘束力のある手法を求めた。EUは、遵守手順はCOP/MOP1の決定書で採択されるもので、遅滞なく運用を開始されるべきであり、改正案はその後で検討できると述べ、他国の支持を得た。G-77/中国は、改正プロセスはCOP/MOP1で開始できると述べた。カナダは、そのようなプロセスは予測不可能なものとなる可能性があると警告した。ロシア連邦は、COP/MOP1決定書による遵守メカニズムの採択は、法的に拘束力のあるシステムというよりも、提案を意味するのではないかと述べた。日本は、改正に反対を表明した。Harald Dovland(ノルウェー)とMamadou Honadia(ブルキナファソ)が、コンタクトグループの共同議長を務める。

3条9項(将来約束):締約国は、この問題に関するプロセスを開始することの重要性を強調した。カナダ、スイス、その他の締約国は、広範な参加を求め、ジンバブエやその他の国は、3条9項は特に附属書I諸国に関連していると指摘した。中国は、アドホックワーキンググループを作るよう提案し、ツバルは、気候変動に関する世界サミットを提案した。グリーンピースは、環境NGOsの立場で発言し、「強力な対応措置」を求めた。G-77/中国は、附属書Bの改正に関する議論を開始するとの決定書草案を提出した。David Drake(カナダ)とAlf Wills(南アフリカ)がコンタクトグループの共同議長を務める。

ベラルーシの排出削減数量約束:ベラルーシは、同国の排出削減数量約束を1990比95%と定めるよう求めていると述べ、これに関する京都議定書附属書Bの改正案を提案した。Dion議長は Andrej Kranjc(スロベニア)の助力を得て非公式協議を行う。


コンタクトグループ


UNFCCC6条:本コンタクトグループ議長のCrispin D’Auvergne(セントルシア)は、6条(教育・訓練・啓発)の実施に関する意見を募った。米国は、最近のワークショップの成果をまとめるよう提案した。新しいCC:iNetオンライン情報センターと資金問題に関し、EUは、CC:iNetには常時資金が必要であると述べ、CC:iNetを含めた全ての6条問題に関し、2006年での意見提出が必要であろうと述べた。The David Suzuki Foundationは、CLIMATE ACTION NETWORKの立場で発言し、NGOsは費用効果の高い形で6条の実施に役割を果たせると述べた。D’Auvergne議長は、木曜日朝までにテキスト草案を提出すると述べた。

資金メカニズム:各国政府代表は、午前中のコンタクトグループで会議をし、さらに午後には非公式に会合して、特別気候変動基金(SCCF)に関するCOP決定書草案について合意を得ようと努力した。議論の大半は、SCCFの資金供与優先分野の中に、運輸部門及びエネルギー部門での研究開発も含めるとするG-77/中国の提案に集中した。このグループは、この決定書草案で残されている問題を解決するため、非公式会合を継続し、その後、他の問題の議論に移る。

技術移転:共同議長のHolger Liptow(ドイツ)とCarlos Fuller(ベリーズ)は、最初に、参加者に対し、この問題に関する意見を述べるよう求めた。米国、EU、日本は、技術移転に関する専門家グループ(EGTT)の2006年作業計画を提案どおり採択することに賛成したが、マレーシアとガーナは、両国ともG-77/中国の立場で発言し、いくつかの追加事項を提案した。議論は、公開されている技術と民間部門に属する技術に関するEGTTの報告書と、閣僚級のラウンドテーブルを開くかどうかに集中した。共同議長がテキスト草案を作成する。

遵守:本コンタクトグループは、アフリカグループの提案する決定書草案を検討するため、非公式協議を行うこととした。このアフリカグループの提案には、決定書24/CP.7の遵守手順採択に関する運用パラグラフ1項目と、改正プロセスの開始に関するパラグラフが含まれる。サウジアラビアは、両方の問題を関連付けるよう主張したが、EUは、遵守メカニズムの速やかな運用開始が議定書やCDMの実施にとり重要である今の段階で改正を検討することの合理性に疑問を呈し、日本は改正に反対を表明した。

適応:共同議長のKumarsinghは、 影響、脆弱性、適応に関するSBSTA作業計画について、COP決定書草案を提出した。この草案には、その目的や、期待される成果、作業範囲、プロセスと方法、そして特定の活動を規定する附属書が含まれる。各国政府代表は、特に、最も脆弱な締約国への言及をどう組み入れるか、持続可能な開発への統合についてどう言及するかを議論した。G-77/中国、AOSIS、その他の国は、評価作業の継続よりも、行動本位な作業計画を求めた。

LULUCFに関する共通報告様式(CRF):米国は、全ての排出源と吸収源を含める正味の国内総量を報告するよう提案した。英国、カナダ、オーストラリアは、これに反対し、報告書での透明性と比較可能性を確保するため、吸収量を区別する必要があることを強調した。オーストラリアは、ツバルと共に、貯留量の変化ではなく、排出量と除去量に注目するよう求めた。管理されていない土地の扱いに関し、ツバルは、管理された土地と管理されていない土地との区別が、UNFCCCと一致していないことを警告し、全ての排出源を計算に入れる必要があることを強調した。Maria Jose Sanz(スペイン)が、非公式議論の進行役を務める。

議定書の規定に基づく、LULUCFの情報提供不履行の基準:共同議長のRoslandは、さまざまな問題を取り上げる必要があると指摘し、これには次のものが含まれるとした:適正な算定基準の定義、閾値の決定、情報脱落分を別な基準とするかどうか。日本は、LULUCFに関する報告書ですでに適用されている「保守性要素」や調整を計算に入れるよう提案し、EU、ニュージーランド、カナダと共に、簡単で、効果的、比較可能な方法を求めた。非公式協議が開催される。

LDCSに関係する問題:各国政府代表は、LDC専門家グループ(LEG)の新しいマンデートと委託条件について議論し、特にLEGがLDCsのNAPAs実施をどう支援するかを明らかにすること、そしてLEGの新しいマンデートの範囲をどう定めるかに焦点を当てた。サモアは、LDCsの立場で発言し、LEGのマンデートは3年間とするべきだと述べたが、EU、米国、日本、その他の国は、2年間を希望した。共同議長が決定書草案を作成し、金曜日のコンタクトグループでの検討の前に、非公式協議を行う。


廊下にて
水曜日の廊下の話題は、来週、ビル・クリントンとアル・ゴアが、出席してこの問題を後押しする可能性があるとのうわさから始まった。昼食時には、多くの各国政府代表が、マラケシュ合意の採択に注目を移し、一部には採択は難しいとひそかに懸念されていたマラケシュ合意がCOP/MOPで採択されたことで、安堵感と喜びにひたった。しかし、この日の終わりには、今回のCOP/MOPで京都議定書を改正するとのサウジアラビアの主張により、雰囲気は再度逆転した。多くのものは、この問題が、これからの会議でもっとも扱いが難しいものの一つになる可能性があると懸念している。このため、ある政府代表からは、クリントンとゴアが出席するなら、事実上、「会議を救う」ことになるのではとの発言もとび出した。



NEDOからの委託によりGISPRI仮訳