地球環境
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Vol. 12 No. 284
2005年12月2日

COP11及びCOP/MOP1ハイライト

2005年12月1日 木曜日



木曜日は、コンタクトグループの会合や、COP、COP/MOP、及び補助機関会合の議題事項の作業を進めるための非公式協議が数多く開催された。コンタクトグループでは、CDM理事会の報告書や、他の環境条約に対するCDMの影響、共同実施(JI)、京都議定書に基づくキャパシティビルディング、京都議定書の国際取引ログ、京都議定書3条9項(将来約束)、研究及び系統的観測、途上国の森林減少、附属書I国の国別報告書、IPCCの二酸化炭素回収・貯留に関する特別報告書、事務局と国連との組織的連携、京都議定書の下で設立された機関に携わるスタッフの特権と免責事項等に関する会議が行われた。非公式協議としては、技術移転や資金メカニズム、緩和、航空・海上輸送からの排出などの問題が取り上げられた。


コンタクトグループ


 事務管理上の問題:このコンタクトグループでは、UNFCCC事務局と国連との組織的連携と、京都議定書の下で設立された組織で働く人材の特権と免責事項の2つの議題について検討した。組織的連携に関しては、Nakayama共同議長がこれまでのCOP決定書との一貫性があると述べているCOP決定書草案について政府代表が討議した。特に大きな意見の違いは見られず、次回のコンタクトグループ会合に同テキストを返すことで合意した。特権と免責事項については、事務局の提案(FCCC/KP/CMP/2005/6)についてもっと討議できるように次回のグループ会合でも本件を取り上げることで合意した。CDM理事会からは理事の代表が懸念事項について説明予定。

 附属書I国の国別報告書:政府代表はCOP決定書草案を見直し、初めてCOP/MOP決定書草案に対する所感を表明した。COP決定書については、京都議定書の締約国でもある附属書I国に追加的な審査要求をすることになるとして、審査手続きの簡素化を求める米国提案が合意された。さらに、第4次国別報告書の審査の「迅速化」よりも事務局の「集中管理」を求めるテキストが政府代表により合意された。その後、2007年に2006年の年間インベントリ審査が様々な審査プロセスとの調整上遅延する可能性があるという注釈(reference)をつけるというEUの提案について討議が行われたが、米国がこれに反対した。次回コンタクトグループで検討できるよう、共同議長がCOP決定書草案の改訂版を作成し、その際に政府代表もCOP/MOP決定書草案の見直しを行う。

 キャパシティビルディング (京都議定書):Goco及びTuressonの両共同議長は、 途上国と経済移行国に関する2つの決定書草案の作業を行うと説明した。日本は、決定書3/CP.7に規定されているように、枠組みに関する議論に集中するべきだと述べた。G-77/中国は、CDMのためのキャパシティビルディングの必要性を強調した。日本は、本件をCDMコンタクトグループで検討すべきだと発言した。南アフリカは、キャパシティビルディングは横断的問題(cross-cutting issue)であると強調した。

 CDM理事会報告書:同コンタクトグループの第1回会合では、議題として取り上げるべき問題点の把握と整理が中心となった。また、プロジェクトの早期開始に向けた登録期限や環境十全性、2013年以降のCDMの継続性、京都議定書に批准していない国・機関との協力、及び技術移転など、CDMの実施に関わる一般的な問題について検討を行うという決定が下された。日本は、二酸化炭素回収・貯留技術をCDMの対象から除外してはならないと述べ、ブラジルは本件に関する COP/MOP 1のガイダンスを求めた。

 さらに、CDMのガバナンス(統治)とCDM理事会の運営計画及び資金調達に関して討議された。今後数年以内に数多くのプロジェクトを処理する必要性があることから、EUは、こうした問題を優先して議論すべきだと述べた。

 ベースラインと方法論については、追加性や運輸・省エネなどの特定のプロジェクト・タイプ向けの方法論なども含め、議論する必要があると認識された。また、参加とキャパシティビルディングの問題に焦点を当てるとともに、後発発展途上国(LDCs)やアフリカ、小規模プロジェクト、再生可能でないバイオマスが、議論が必要な分野と認識された。アフリカグループ は、アフリカ向けのキャパシティビルディングに関する具体的な決定書づくりを求めるとともに、この問題を京都議定書に基づくキャパシティビルディングのコンタクトグループで議論してもいいのではないかと述べた。

 その後に開催された非公式協議では、前文と5つの見出しがつけられ、午前中に整理された問題点について取り上げた共同議長提案が締約国によって検討された。1CERにつき20セントをCDM事務管理費として徴収する提案が政府代表の前で発表された。

 途上国の森林減少:本件に関する処理開始に向けた締約国からの提出意見書が合意され、技術問題に関する提出文書に専念すべきか、あるいは政策の問題も取り上げるべきかという点を政府代表が議論した。多くの締約国がより広範なアプローチを支持したが、米国はSBSTAの下で科学、技術及び方法論に関する問題に専念するよう求めた。広範なアプローチを推しつつ、ツバルは、SBSTAとSBIの両方に本件を付託するよう提案し、ブラジル、中国、スイスなどがこれを支持した。Hernan Carlino議長は、12月5日(月)に開催される次回コンタクトグループ会合で配布できるよう決定書草案を作成する。

 教育・訓練・啓発 (UNFCCC 6条): D’Auvergne議長が作成した結論書草案について討議するため、同コンタクトグループが再度招集された。政府代表は、地域別ワークショップやUNFCCC 6条に関するニューデリー作業計画及び資金調達に関するパラグラフを承認した。また、SB25に先立つ形で開催されたワークショップに関する統合報告書や、オンライン情報センターCC:iNetに関する意見書(提出期限:2006年8月4日)、SB24に先立つ形で小島嶼後発途上国(SIDS)に関するワークショップの開催を求めるテキストが合意された。数カ国の途上国が、地域によってインターネットのアクセスが無く、政府連絡窓口が重要であると指摘した。ナミビアは本件に対する追加テキストを作成するよう提案した。D’Auvergne議長は、金曜日の午前中には改訂版テキストを用意すると述べた。

 国際取引ログ:割当量(AAU)の算定方法に関して、事務局が決定書19/CP.7以降に行われた作業の進展を報告した。また、締約国がマラケシュ合意を採択した水曜のCOP/MOP 1で、この決定書が正式に採択されたことを伝えた。国際取引ログの運用者の役割を規定した決定書16/CP.10をはじめとする他の決定書がすでにこの問題を取り上げているとして概要報告があった。Murray Ward議長(ニュージーランド)は運用者に関する最初の年次報告書に関する決定書草案を紹介した。こうした進展について、数カ国が歓迎の意を示すとともに所感を述べた。今後、さらに会合が予定されている。

 IPCCの二酸化炭素回収・貯留に関する特別報告書:EUは二酸化炭素 回収・貯留についてさらに議論できるようなワークショップを会期中に開催するよう提案し、サウジアラビアなどがこれを支持した。米国は、そうしたワークショップはこれまでの経験に焦点を当てるべきだと述べた。ノルウェー、EU、及びG-77/中国は、海洋貯留の検討は時期尚早であると述べた。小島嶼国連合(AOSIS)は二酸化炭素回収・貯留に関連したリスクについて懸念を示し、リビアはさらに研究が必要だと述べた。オーストラリアは、G-77/中国とともに、先進国と途上国の双方で実証プロジェクトを行う必要があると強調した。イランはそうしたプロジェクトをCDMに含めるよう求め、中国はこの件について「(機会の)扉を開放しておくべきだ」と述べた。Agyemang-Bonsu及びVerheye両共同議長が非公式協議を行う。

 共同実施 (京都議定書6条):資金調達や管理問題、CDM方法論の活用、CDMプロジェクト設計書(PDD)と指定運営機関(DOEs)と実施済みのJIプロジェクトのための手続きなど、JI監督委員会に対するCOP/MOP 1のガイダンスが必要な議題項目をStoycheva議長がリストアップした。EUは、JIを即時開始し、JI向けDOEの信任をはじめCDMから学ぶ教訓をできるだけ活用すべきであると強く主張し、カナダとロシアなどがこれを支持した。一方、中国はG-77/中国の立場から、CDMとJIの違いに触れ、DOEsとCDM方法論をそのまま適用すべきではないと警告した。Stoycheva議長は金曜までに決定書草案を作成すると述べた。

 方法論に関する問題: 他の環境条約に対するCDMの影響:締約国からの提出文書や見解書に基づき、HCFC-23破壊によるクレジットを獲得するというインセンティブの歪み対策として、1)CDMベースライン手法に適用するための原則の採用、2)CDM承認プロセスにある該当プロジェクトによる負の影響を防止するための具体策についての合意、3)HCFC-23をクレジット対象外とする、という3つの選択肢があるとBorsting議長が説明した。コロンビアやペルーなどは対象除外案を支持したが、中国や、EU、カナダなどが様々な技術的オプションを検討するよう提案した。Borsting議長がテキスト草案を作成する。

 京都議定書3条9項 (将来約束):G-77/中国、EU、日本が作成した3つの提出文書が提起された。ベルリン・マンデートを想起しつつ、G-77/中国の提案は無期限でアドホック・グループを設け、COP/MOP 4での成果文書の採択を目指して附属書I国による将来約束を検討するべきだと要請した。EU提案では、特に、京都議定書9条(京都議定書の検討)について想起しつつ、京都議定書3条9項に従って、附属書I国の約束に関する検討開始を決定し、締約国に対してはSB 24でさらに検討するための提出文書作成を求めた。日本は、同じく9条を想起しつつ、京都議定書は第一歩にすぎないことを認識し、非附属書I 国の排出量が急増していることに触れ、次の提案を行った。附属書I国の約束について踏み込んだ検討の開始、9条に基づいた検討に向けた準備、COP 12で全ての締約国が参加できる実効性のある枠組みづくりに向けたUNFCCCによる検討の開始。

 この問題は京都議定書の正当性(legitimacy)のために重要であり、明確な期限を設定してプロセスを開始する必要があるということで締約国が合意した。G-77/中国はかれらの提案を交渉の叩き台とするよう要請したが、EUと日本がこれに反対した。共同議長により土曜のコンタクトグループ会合用の文書がまとめられる。

 研究及び系統的観測:国連食糧農業機関(FAO)の地球観測基準や、GCOSの包括的な報告書(決定書 5/CP.10による要請)とその時期、国別報告書の報告ガイドライン、海洋観測、データ交換と国際データ交換センターの必要性、地域別ワークショップ・プログラム、及びキャパシティビルディング(対アフリカを中心とする)など様々な問題について初の意見交換が行われた。Rosner及びGwageの共同議長が結論書草案を作成する。


非公式協議


 資金メカニズム:特別気候変動基金や適応基金、GEF報告書及び決定書 5/CP.8の実施に関する問題など、様々な問題について、終日非公式協議が行われた。金曜日にコンタクトグループが再会合を行う。

 緩和:共同議長のテキスト草案に関する進捗状況が報告されたが、会期中に開催されたワークショップでは合意が得られず、経験から学んだ教訓についても議論されなかった。この件については金曜日のコンタクトグループで討議予定。

 技術移転:議題事項8a (枠組実施)と8b (EGTT作業計画)については、共同結論書とすべきか、個別に2つの結論書とするべきかという問題をめぐり非公式協議が行われた。G-77/中国は個別の結論書では今後の技術移転には別の議題事項を設けることにならないかと懸念を示した。EGTTの2006年作業計画については、汎用技術の問題は別として、全般的に合意が得られた。


廊下にて
 木曜日の舞台はプレナリーからコンタクトグループや非公式協議の議論に移ったが、UNFCCC第 6条や国際取引ログなどの議論は会議場の外まで熱気が伝わってくることはなかった。とはいえ、京都議定書3条9項 (将来約束) に関するグループ会合が夕方遅くに行われた際は確実に廊下まで興奮が伝わってきた。なかなかドアを通り抜けることができない程多数の参加者が集まった為ばかりではない。ある代表曰く−800ポンドの寝ているゴリラを起こさぬようにしている問題−であるためだ。しかし、すでに3提案が審議中で、定員約100名の部屋に300人の政府代表がすし詰めになっている中で“眠れるゴリラ”は今まさに目覚めの瞬間にあるのかもしれない。

 訳注)ちなみに、900-pound gorilla(900ポンドのゴリラ)という表現は巨大な影響力をもつ者の象徴として使われる。



NEDOからの委託によりGISPRI仮訳