地球環境
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Vol. 12 No. 286
2005年12月5日月曜日

COP11及びCOP/MOP1ハイライト

2005年12月3日 土曜日



土曜日、各国政府代表は、次の問題を含めた多数の問題に関するコンタクトグループの会合及び非公式協議を行った:議定書3条9項(将来の約束)、CDM理事会の報告、共同実施、資金メカニズム、技術移転、京都議定書規定のキャパシティビルディング、研究及び系統的観測、京都議定書の国際取引ログ、遵守、二酸化炭素回収・貯留に関するIPCC特別報告書、緩和、非附属書I国別報告書、京都議定書の下で設立された機関に携わる人の特権と免責事項。

コンタクトグループ及び非公式協議


事務管理、資金、組織・制度に関する問題:このコンタクトグループでは、次の二つの問題を取り上げた:事務局と国連との組織的つながり、そして京都議定書の下で設立された機関に携わる人の特権と免責事項である。

組織的つながり:締約国は、組織的つながりに関する決定書草案に関し、特にコメントや修正を行うことなく合意した。このテキストは、COPまたは国連総会のいずれかが再検討する必要があると見なすまでは、現在の事務局と国連の組織的つながりを継続することを承認する。

特権と免責事項:CDM理事会議長のSushma Geraは、京都議定書下部構成機関のメンバーおよび専門家の間で、法的訴訟の可能性について懸念があることを強調し、関連性のある国連の法律文書が個人を対象としていないことを指摘したが、少なくともドイツ国内では、UNFCCC本部に関するドイツ政府との合意文書により法的訴訟からの保護を受けられると述べた。しかし、同議長は、広範な法的責任義務に関する懸念が、理事会での審議にも影響していることを付け加えた。

締約国は、議定書の下で設立された機関に携わるメンバーおよび専門家が、第三者から訴訟を起こされる心配なしに、それぞれの職務を全うできるようにしなければならないことを強調した。また、各国政府代表は、事務局の覚書(FCCC/KP/CMP/2005/6)に記載された、この懸念に対処するオプションについて議論した。EUと南アフリカを含めた数カ国の締約国は、COP/MOP1でこの問題の最終的な解決を図るのは不可能であると述べ、EUは、全てのオプションの評価意見書を提出した。また締約国は、最終的な合意が実施されるまで、「暫定措置」により一定の追加保障を与えられないかどうかについて議論した。月曜日午後に議論を再開する。

議定書3条9項(将来約束):共同議長のDrakeは、G-77/中国、EU、日本が提出した会議室ペーパーのまとめ文書を提出した。各国政府代表は、このまとめ文書を検討することで合意し、非公式なコンタクトグループの会合を非公開で土曜日夕方まで続けた。

議定書の下でのキャパシティビルディング:共同議長のTuressonは、途上国における議定書の実施に関係するキャパシティビルディングについてG-77/中国が提出した文書に基づき、新たな決定書草案の共同議長案を提出した。締約国は、新しいテキストを議論の出発点として歓迎したが、キャパシティビルディングの枠組支援に関係する言語表現に当初難色を示した。市場経済移行国での枠組支援に関係するテキストでも多少の意見の食い違いが表面化した。UNFCCCの下でのキャパシティビルディングに関しても、共同議長によるSBI結論書草案が提出された。共同議長のTuressonは、月曜日午後のコンタクトグループ会合でこの問題についてさらに議論するため、月曜日午前11時までに、このテキストに関する意見を提出するよう各締約国に求めた。

CDM理事会報告:土曜日、2つの非公式会議が行われた。共同議長のBrackettとdo Lagoが決定書草案の改定案を提出し、各国政府代表は、括弧書きにされている箇所について意見を表明した。途上国は、CDMが2013年以降も継続することを明記する表現とするよう主張したが、先進国数カ国は、その目的には賛成でも、このコンタクトグループはこの問題で決定を行うにふさわしい場とは言えないと指摘した。締約国は、早期開始のCDMプロジェクトに対し、遡ってのクレジット発行を行う期限を延長する必要があることでは意見が一致しているようだが、この期限延長の恩恵を受けようとするプロジェクトの適格性基準など、その詳細については、なお意見の隔たりが続いた。収益の一部(share of proceeds)を理事会の管理費にあてることについて、新しい提案が出されたが、一部の締約国は理事会の原案の方を支持し、この問題では合意に達しなかった。そのほか、意見の対立があった問題には次のものが含まれる:管理上の問題、CDMの下での二酸化炭素回収・貯留、地方、国内、地域での政策基準やプログラムをCDMプロジェクト活動とみなせるかどうか、そして追加性である。月曜日に非公式協議を続ける。

遵守:遵守メカニズムの採択と、メカニズムに法的拘束力を持たせるため議定書を改正するとのサウジアラビアの提案に関し、非公式協議が続けられた。先進国グループは、COP/MOP 1決定書による遵守メカニズムの採択を提案し、改正については序文で触れるとする新しいテキストを提出した。加えて、二つの途上国から、アフリカグループの原案に決定書と改正に関するテキストを加えた新しいテキストが提出された。日曜日に議長から決定書草案が提出され、非公式協議が続けられる。

資金メカニズム:適応基金:各国政府代表は、適応基金のテキストに関し何らかの進展を得るため、土曜日中、非公開での非公式協議を続けた。午前中の会合で、共同議長は、以前に提出されたEU提案とG-77/中国案との間で共通点を探ろうとする決定書草案を提出した。その後、各国政府代表は、共同議長草案の検討を開始し、二つの提案のそれぞれから一定の要素をテキストに組み入れることで合意した。共同議長は決定書草案の改定案を提出、月曜日に審議する。

国際取引ログ:各国政府代表は、京都議定書7条4項規定の登録簿システムに関係する国際取引ログについて、決定書草案の議論を終了した。このテキストは、2007年4月までに国際取引ログと登録簿システムとの接続を可能にすることを念頭に、2006年での国際取引ログの実施に向け、そのスケジュールを設定するものである。締約国は、このログが実施可能になったところで、その機能性を実証するため、同ログの電子システムの相互通信テストを行うよう要求するとの文章を追加した。このテストの報告書はCOP/MOPに提出されることとする。

二酸化炭素回収・貯留に関するIPCC特別報告書:各国政府代表は、午前中に非公式な会合を行い、テキスト草案を検討し、二酸化炭素回収・貯留への理解を高めるとのワークショップの目的で合意し、近々予定される国別温室効果ガスインベントリプログラムに関するIPCCの2006年度版ガイドラインに関連する条項についても議論した。午後、コンタクトグループは再度会合し、各国政府代表は、特に次のことを記載するテキスト草案について合意した:二酸化炭素回収・貯留のIPCCの評価に留意し、締約国および民間部門がこの技術の研究、開発、展開、普及を支援することを推奨し、ワークショップの目的および報告書作成を規定し、GEFに対して二酸化炭素回収・貯留への支援、特にキャパシティビルディングを通しての支援が、その目的と一致しているかどうかを検討するよう要請する。コンタクトグループは、土曜日夕方早くにその議論を終えた。

共同実施(JI):各国政府代表は、議長のCOP/MOP決定書草案を議論するため、非公式に会合した。締約国は、JIの第2トラックにおいてCDMの経験をどう生かすか、特にCDMの指定運営組織(DOEs)が認定独立組織として行動することを認めるかどうか、さらにJIプロジェクトでもCDMの方法論やCDMプロジェクト設計書が利用できるようにするかどうかで、見解が分かれた。途上国は、JIとCDMではホスト国に違いがあり手順も異なることから、DOEsとCDM方法論を自動的に適用することはできないと主張した。しかし、一部の先進国はこれに反対し、マラケシュ合意に則り「JIを早期に開始するよう」求めた。これら数カ国は、DOEsがJIプロジェクトの決定に利用されるのはすでに現実になっていることを強調し、CDM方法論のいくつかは別なところでも適用可能であると指摘した。意見の一致にはいたらず、非公式協議は月曜日にも続けられる。

方法論問題:
LULUCFの共通報告様式(CRF):共同議長のRoslandは、CRFに関する結論書の改定草案を提出し、テキストを一部変更したと指摘した、その変更点には、バイオマスの燃焼と自然を乱すことに関係したインベントリの問題はUNFCCC規定の報告書作成に関係しているとして、この問題をSBSTA24で検討するよう求める文言の変更が含まれている。その後、各国政府代表は、共同議長の結論書草案およびCRFに関する注意書き及びCRFの表の改正案を含めた附属書におけるパラグラフごとの議論に移った。各国政府代表は、多少の編集上の変更をした上で、提出されたとおりのテキスト草案および表の草案について合意し、この問題に関するコンタクトグループでの議論を終了した。

LULUCFの推定値に関係する情報提供不履行の基準:共同議長のPaciornikは、 吸収源による排出量および除去量の推定値に関係する情報提供の不履行の基準に関し、SBSTA結論書草案及びCOP/MOP決定書草案を提出した。締約国は、編集上その他の多少の変更を行った上で、このテキスト草案に合意した。

非附属書I国別報告書:この一週間続けられてきた非公式協議は、3つのSBI結論書草案での合意でひとまず終了した。これら3つのテキストは、専門家(CGE)諮問グループの作業、第一次国別報告書のまとめと統合、財政支援の提供に関係するものである。この議題項目での議論は、CGEに対して、総合訓練戦略や他の技術支援を開発するよう推奨する文言に集中し、先進国グループは、その作業に焦点を当てる表現を提案したが、一部の途上国は、範囲をもっと広げられるようなテキストにすることを希望した。結局、各国政府代表は、「費用効果の高い、総合的な」戦略にするべきだとの表現で合意した。

研究及び系統的観測:各国政府代表は、附属書I締約国は、途上国による実施活動への参加をやりやすくすることを推奨するテキストの追加について議論し、海洋観測のための国内組織を指定するとのテキストを削除した。コンタクトグループは、前に非公式に合意したとおり、残されたテキスト草案を承認し、土曜日の夕方早くに議論を終えた。

技術移転:各国政府代表は、実施枠組に関するテキスト草案について議論した。汎用技術の情報をまとめ、適応技術ガイドを作成するよう事務局に要請する文章のパラグラフに関しては、意見の対立が続いた。また、汎用技術に関するサイドイベントに関係したEGTTの2006年作業プログラムを取り扱う未確定パラグラフでも、意見の対立が残った。各国政府代表は、G-77/中国の提出した決定書草案も検討した。非公式の議論が夜遅くまで続いた。


廊下にて
土曜日は、廊下もあまり混み合っていなかったが、熱心な交渉担当者は、週末はリラックスする時間などとは考えもしなかったようである。多くのコンタクトグループや協議で、熱の入った議論が続けられた。「今こそ、来週の政治合意を前に技術的な問題を整理する、この会議にとって、日は当たらなくても極めて重要な時間だ」とある参加者は説明した。前進を見た会議もあれば、そうでない会議もあったが、2,3のグループ会議から出てきた政府代表は、お祝いムードであった。たとえば、「それほど知られていないが、でも重要な」国際取引ログの議論に参加した者は、議論を終了し、LULUCFの方法論に携わった参加者も同様であった。しかし、CDMや資金などの問題は、土曜日の夕方でも解決されずじまいであった。3条9項(将来約束)や資金メカニズムの議論では、一番焦燥感が漂っていたようだ。特に、3条9項は、廊下でも依然として最も話題に上る問題で、特に、COP/COP-MOP議長が、各国代表団の長と、京都議定書ではなくて条約に関係した将来の作業についての提案を協議したとの話が広まってからはなおさらであった。また、廊下では、主要な交渉グループの中の少なくとも一名の重要な政府代表が、自分たちのグループの内外で、自国の立場の「分極化をしている」ことに、不満の声が上がっていた。

モントリオール中心部では、気候変動に関し行動を起こすよう要求する何千人ものデモが起きたことから、一部の参加者は、会議場の外で起きていることに関心を向けた。あるNGOの参加者は、「来週到着する政治家たちにもこういったことを知ってほしいものだ」と述べた。



NEDOからの委託によりGISPRI仮訳