地球環境
メニューに戻る

Vol. 12 No. 288
2005年12月7日水曜日

COP11及びCOP/MOP1ハイライト

2005年12月6日 火曜日



火曜日、各国政府代表が参加した第23回補助機関会合の最終会合が終わった。また、資金メカニズム、緩和、適応、遵守、共同実施 (JI)、途上国の森林減少、及び京都議定書3条9項 (将来約束)などの問題に関する非公式協議が開催された。実施に関する補助機関 (SBI) では、火曜日夕方からの作業を完了し、資金メカニズムや国別報告書、キャパシティビルディング、及び教育・訓練・啓発に関する討議を終了した。火曜の夜半には、科学・技術上の助言に関する補助機関 (SBSTA) が方法論に関する問題、 技術移転、 適応及び緩和をはじめとする全議題の審議を終了した。

SBI


 Thomas Becker (デンマーク)議長により午後6時半から会合が行われた。

 附属書I国 国別報告書:SBI はUNFCCCに基づく2006-2007年附属書I国国別報告書の審査手続きを簡素化し(FCCC/SBI/2005/L.23)、京都議定書が義務づけている2006-2007年の附属書I国の報告手続きをレビューすること(FCCC/SBI/2005/L.24)で合意した。

 非附属書I国 国別報告書:SBIでは、非附属書I国の国別報告書に関する専門家諮問グループ(CGE)の作業に関する結論書(FCCC/SBI/2005/L.27)、第1次国別報告書の編纂及び統合に関する結論書(FCCC/SBI/2005/L.26)、及び資金及び技術支援(FCCC/SBI/2005/L.25/Rev.1) に関する結論書が採択された。南アフリカは2006年の途上国専門家向け地域別ワークショップの開催国となると申し出た。

 UNFCCC 6条:SBIは、教育・訓練・啓発に関する結論書 (FCCC/SBI/2005/L.18)を採択した。

 UNFCCC 4条8項 及び 9項の実施:後発発展途上国(LDCs)に関する問題について、SBI はLDC 専門家グループの新たなマンデートに関する結論書(FCCC/SBI/2005/L.17)を採択した。

 事務管理及び組織・制度に関する問題: 2004-2005年度のUNFCCC予算収支に関して、COP決定書草案および結論書(FCCC/SBI/2005/L.21 & Add.1)が採択され、UNFCCC事務局と国連との組織的連携の継続に関する決定書(FCCC/SBI/2005/L.19)がSBIからCOPに送られた。コンタクトグループのMasao Nakayama議長(ミクロネシア)が、京都議定書の下で設立された機関に携わる人の特権と免責事項についてSBI24で京都議定書締約国が引き続き審議を行うことになると説明した。

 事務局レビュー:SBI は関連する結論書(FCCC/SBI/2005/L.20)を採択した。

 UNFCCCに基づくキャパシティビルディング:SBIがこの件に関して結論書 (FCCC/SBI/2005/L.36)を採択した。

 京都議定書に基づくキャパシティビルディング:京都議定書が規定するキャパシティビルディングについて、途上国での実施(FCCC/SBI/2005/L.35)と経済移行国での実施(FCCC/SBI/2005/L.37)に関する結論書と決定書草案がSBIにより採択された。

 資金メカニズム:適応基金:政府代表はコンタクトグループと非公式協議で資金問題を討議した。共同議長により改訂版テキストが紹介され、COP/MOP決定書草案のセクション数カ所を削除するよう提案した。締約国は、特に前文、基金の目的に関する引用部分、基金運営に関するガイダンスについて記載した残りのテキストに合意した。これには、以下の事項が含まれる。基金運営のための政策や事業優先順位と適格性基準に関する追加ガイダンス(COP/MOP2で採択予定)、SBI24で検討するための政策や事業優先順位と適格性基準に関する意見書の提出に関するテキスト、基金運営のための追加ガイダンスについてのSBI24前のワークショップに関するガイダンス。

 承認された文言は当日中にSBIに提出され、これを受けて結論書とCOP/MOP決定書草案(FCCC/SBI/2005/L.32)がSBIにより採択された。コンタクトグループ共同議長のRawleston Moore (バルバドス)は、本件について今後の会合でさらに作業をする必要があると述べた。

 GEFへのガイダンス:政府代表はコンタクトグループの討議を続行し、COPとGEFの間で締結された覚書(MOU)をCOP/MOPとGEFに対しても適用するとした改訂版決定書草案を検討した。南アフリカはG-77/中国の立場から現行の覚書はUNFCCCを対象としていることから新たな覚書は必要ないと述べた。一方、日本、EU、スイスは、覚書が必要だとして草案を支持した。SBI議長のBeckerは、合意に至らなかった旨をプレナリーで報告し、今後の検討事項としてSBI24に付託された。

 特別気候変動基金:結論書草案(FCCC/SBI/2005/L.34)の残りの括弧書き部分の削除を提案したBecker議長の案は合意が得られず、議長により新たな結論書(FCCC/SBI/2005/CRP.4)を紹介した。南アフリカはG-77/中国の立場から議長のテキストを支持せず、SBI22からのテキスト (FCCC/SBI/2005/10 Annex 1) 及びG-77/中国 の提出文書の両方をSB24の審議に回すよう提案した。 SBIは、SB22のテキストをSB24に付託することで合意した。

 COPに対するGEF報告書:SBIは本件に関する結論書 (FCCC/2005/SBI/L.30)を採択した。

 決定書5/CP.8の実施:SBIは本件に関する結論書 (FCCC/2005/SBI/L.28)を採択した。

 資金メカニズムの運営組織に関する追加ガイダンス:SBIは結論書(FCCC/2005/SBI/L.29)を採択した。

 SBI23 報告書:SBI は同会合の報告書(FCCC/2005/SBI/L.16)に合意し、午後9時34分をもってBecker議長によりSBI 23が閉会した。


SBSTA


 京都議定書が規定する方法論に関する問題:SBSTAは温室効果ガスの排出量推計方法に関する情報提出義務不履行の判断基準に関する結論書とCOP/MOP決定書草案 (FCCC/SBSTA/2005/L.18 & Add.1)を採択し、議定書以外の環境条約の目的達成にCDMのプロジェクト活動の実施が及ぼす影響に関する結論書とCOP/MOP決定書(FCCC/SBSTA/2005/L.27 & Add.1) を採択した。

 UNFCCCが規定する方法論に関する問題:SBSTAは、伐採木材製品に関する結論書(FCCC/SBSTA/2005/L.16)と共通報告様式に関する結論書とCOP決定書草案(FCCC/SBSTA/2005/L.19 & Add.1)を採択した。

 国際航空・海上輸送向け燃料からの排出量:Jose Romero (スイス)は、協議では何ら合意が得られなかったとSBSTAに報告した。EUとノルウェーはさらに交渉する時間が必要だと要請したが、サウジアラビアの反対にあった。非公式協議が再開されたが、括弧書きのテキスト(FCCC/SBSTA/2005/CRP.1)は保留された。プレナリーでは、EU、南アフリカ、日本、 オーストラリア、チリ、小島諸国連合(AOSIS )などが括弧書き部分の削除を支持するとともに文書の承認に賛成したが、サウジアラビア、クウェート、リビアがこれに反対した。中国とアルジェリアが、本件の審議をSBSTA 24まで延期するというBenrageb議長の提案に賛成した。この件の合意が得られなかったため、SBSTAは本件をSBSTA 24 に付託するという簡単な結論書(FCCC/SBSTA/2005/L.28)を採択した。

 国際取引ログ:結論書とCOP/MOP決定書草案 (FCCC/SBSTA/2005/L.20 & Add.1)がSBSTAで採択された。

 小島嶼後発途上国(SIDS):Benrageb議長は、SIDSの持続可能な開発のための行動計画の実施の検討に関する国際会議(International Meeting to Review the Implementation of the Programme of Action for the Sustainable Development of SIDS)のフォローアップに関する議題を棚上げするよう提案した。米国がこの件はSBSTA 22で決着したと考えられるとして、議長案に反対を唱えた。ツバルは、AOSISの立場から、モーリシャス戦略が国連によるSIDS向けの計画として国連総会でも認められていると強調した。EUとオーストラリアは、何の進捗もなかったことに失望感を示した。非公式協議で本件をSBSTAの議題として残すべきかどうかという問題を取り上げる。例えばサイドイベントやワークショップでこの問題を話し合う道を選ぶよりは本件を無期限に棚上げしておくことが有効かという議論の後、午前零時半にSBSTA24の暫定議題に本件を含めることでようやく締約国の合意が得られた。

 技術移転:技術開発と技術移転については、枠組実施に関する問題の結論書(FCCC/SBSTA/2005/L.24) と2006年度のEGTTの作業計画 (FCCC/SBSTA/2005/L.23) 及びCOP決定書草案 (FCCC/SBSTA/2005/L.24/Add.1)がSBSTAにより採択された。

 研究及び系統的観測:SBSTAにより結論書(FCCC/SBSTA/2005/L.17)が採択された。

 他の国際機関との連携:二酸化炭素回収・貯留に関するテキストを含む結論書(FCCC/SBSTA/2005/L.26)が採択された。

 その他の問題:SBSTAは複数の進捗状況報告書に関する結論書(FCCC/SBSTA/2005/L.25)を採択した。京都議定書2条3項 (悪影響)の実施に関する問題については、Abdulla副議長が非公式協議でも決着しなかったことを報告した。サウジアラビアとナイジェリアは、この件の対応について不満を表した。本件はSBSTA 24で再度取り上げるとして、SBSTAが結論書(FCCC/SBSTA/2005/L.22)を採択した。

 緩和:本件については、月曜の深夜まで続いた非公式協議の審議を受け、火曜午前にコンタクトグループによる討議が再開された。これまでの経験や過去の排出実績及び人口1人当たりの排出量の算定に関する問題についての意見の対立は、これらの記述をすべて削除するということで決着がついた。事務局によるワークショップ向けテクニカル・ペーパー作成に関するパラグラフについては意見が分かれ、この部分が削除されることになった。火曜の深夜、再度SBSTAに報告された後に本件の結論書(FCCC/SBSTA/2005/L.29)が採択された。しかし、もっと野心的なプログラムの合意が得られなかったことにEUが失望感を表明した。

 適応:広範に行われた協議の結果を受け、SBSTAは結論書を採択し、括弧書きの入った決定書草案(FCCC/SBSTA/2005/L.30 & Add.1)をCOPに付託した。

 SBSTA23報告書:SBSTAは本会合報告書(FCCC/2005/SBSTA/L.15)に合意した。Benrageb議長は各国政府代表の多大なる努力に感謝の意を表し、多くの締約国が議長の過去2年の功績に感謝し、午前1時半をもって、SBSTA23閉会となった。


COP・COP/MOPコンタクトグループ及び非公式協議


 遵守:非公式協議後も合意が得られなかったとDovland共同議長が報告し、COP/MOP1の遵守メカニズム採択問題や京都議定書改正に絡んで法的拘束力をもったプロセスをいかに継続させるかという問題について、意見の相違が残ったままであると説明した。また、未決の問題については、今後の非公式協議もしくはDion議長による解決を待つことになると述べた。意見の隔たりは縮まったとはいえ、火曜午後の非公式協議では何も合意に至ることがなかった。

 共同実施 (JI):Stoycheva議長が“議長の友人(Friends of the Chair)”による協議を月曜夜に、非公式協議が火曜の午前に開催したとコンタクトグループに説明した。テキストの括弧書きが削除されるという大きな進展もあった。その後の討議を受けて、暫定的に指定運営機関(DOEs)がJIプロジェクトを決定することができるということで合意されたが、その決定はJI監督委員会がそのDOEを独立認定組織と認定して初めて有効となるとした。コンタクトグループでの作業はこれで終了となり、COP/MOP 1の採択に向けて決定書が送られた。

 途上国の森林減少:政府代表による非公式協議が再開され、関連する科学的・技術的問題や方法論に関する問題と政策アプローチや積極的なインセンティブをはじめとする情報の交換に関する問題について、締約国及び信任されたオブザーバーが2006年3月31日までに文書を提出するように要請するCOP決定書草案が合意された。これらの問題を検討するため、COPは今後のプロセスに関する提案を要請した。SBSTA27で報告するために、本件について提出された提案書はSBSTA24で検討される。加えて、COPは、SBSTAに対してSBSTA25の前にワークショップを開催するよう求めた。

 CDM理事会報告書:政府代表による非公式会合が行われ、共同議長の決定書草案の中の未決事項について討議された。1日を通して進展は見られたが、火曜夜の現在も引き続き交渉が行われている。

 3条9項(将来約束):政府代表の非公式協議で、京都議定書が規定する将来約束について引き続き討議されており、火曜夜も討議継続中となっている。


廊下にて
 深夜に及んだSBSTA会合でも小島嶼後発途上国(SIDS)のモーリシャス戦略がきちんと議論されなかったことに失望感を抱いた政府代表の声も聞かれた。多くの締約国がこの件の検討に賛成していたが、手続きに問題があるとする米国の強硬な反対にあった。「小さな島国(small island states)は大きな大陸国(the large mainland States)の波に押し流されて溺れてしまう」とあるオブザーバーは訴えていたが、「他のフォーラムですでに検討尽くした問題であり、ここはこの問題を議論する場として適切ではない」と米国は強く主張していた。その他のニュースとしては、閣僚による昼食会合が火曜日インターコンチネンタルホテルで開催されるが、その後のDion議長の前向きなイニシャティブを期待する声も聞かれた。



NEDOからの委託によりGISPRI仮訳