Vol. 12 No. 289
2005年12月8日木曜日 |
COP11及びCOP/MOP1ハイライト
2005年12月7日 水曜日
水曜日、COP 11及びCOP/MOP 1の合同閣僚級会合が始まり、プレナリーでは、48カ国の閣僚その他の政府高官、及び国連機関と専門機関の8名の長がステートメントを発表した。また各国政府代表は、数件の未決事項に関する非公式協議を開き、遵守及びCDM理事会の報告に関して合意に達した。議定書3条9項(将来約束)とUNFCCCでの今後の進め方に関する非公式な議論が続けられた。
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閣僚級会合
会議の開会:COP 11及びCOP/MOP 1の議長であるStphane Dionは、自身が「三つのI」と呼ぶ、「実施(implementation)、改善(improvement)、革新(innovation)」における進展状況を紹介した。実施に関し、同議長は、マラケシュ合意と遵守メカニズムの採択に焦点を当て、改善では、適応やCDMに関するイニシアティブを取り上げた。革新に関して、同議長は、この会議では議定書3条9項の議論を推進するとの強い意志を示す必要があると述べたが、(米国や途上国に配慮し―訳注)3条9項の行動は解決策の一部でしかないとも述べた。
国連副事務総長のLouise Frchetteは、全ての先進国がその努力を強化し、途上国世界での行動に道を開く必要があると述べた。同副事務総長は、政策とインセンティブの適正な組み合わせはグリーンな技術を促進し、企業や消費者の習慣を変えることができると述べた。
UNFCCC事務局長代行のRichard Kinleyは、途上国、特にLDCsへの財政支援を増額する必要性を強調した。同事務局長代行は、2005年ではプロセスに新たな推進力が加わったことを強調し、この会議はさらなる前進の機会であると述べた。
カナダのPaul Martin首相は、気候変動で最も大きな犠牲を払うのは途上国であると述べ、先進国に対し、それぞれの責任を果たすよう促した。同首相は、自己満足のときは終わり、行動しないというオプションはなくなったことを強調し、気候変動は、世界規模での対応が必要な地球規模の課題であることを強調した。
国連機関および専門機関のステートメント:世界気象機関(WMO)は、各国の気象機関及び途上国が参加する研究や気候モニタリングの重要性を強調した。国連経済社会委員会は、2005年世界サミットでの結論を想起し、気候政策と開発政策を統合する必要があることを強調した。国連環境計画(UNEP)は、千年紀開発目標と脆弱な地域での気候の影響に注目し、温室効果ガス排出量を迅速かつ大規模に削減するよう求めた。国際民間航空機関(ICAO)は、航空輸送での排出量を削減するオプションとして、技術基準、管制の最適化、航空路の短縮、排出量取引を挙げた。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、第4次評価報告書の現状を締約国に報告した。地球環境ファシリティー(GEF)は、資源割当枠組(Resource Allocation Framework)のプラスの影響について説明し、GEFの第四次資金補填に関する交渉の現状を説明した。生物多様性条約は、気候変動が生物多様性の喪失を推進する力の一つであるとし、UNFCCCと生物多様性関連の協定との連係を強調した。砂漠化防止条約は、適応を支援し、砂漠化と戦うため、条約同士の協調を進めるよう求めた。
各国のステートメント:各国の閣僚および政府代表団の長がステートメントを発表し、適応、極端な天候現象、CDMの改革、資金供与とキャパシティビルディング、京都議定書の下での約束、技術移転、2013年以降のプロセス、マラケシュ合意の採択といった問題に焦点を当てた。
フランスのJacques Chirac大統領はビデオによるステートメントの中で、京都議定書は、2050年までに世界の排出量を半分にするための第一歩であることを強調した。同大統領は、国連を中心とした多国間での対応が必要なことを強調し、二国間や地域単位での対応や技術協定だけでは、十分ではないと述べた。
適応:オーストラリア、メキシコ、パナマは、気候変動の影響に適応することの重要性を強調した。メキシコは、途上国が適応努力や緩和努力を推進できるようにするための協議開始を提案した。ヨルダンは、途上国による適応に支援を提供する必要があることを強調した。
極端な天候現象:G-77/中国の立場で発言したジャマイカや、グアテマラ、ドミニカ共和国など、多くの発言者が、最近の極端な天候現象で多くの犠牲者が出ていることを指摘した。モーリシャスは、AOSISの立場で発言し、海洋表面温度の上昇とハリケーンの強度との結びつきを指摘し、適応やCDM、モーリシャス作業計画に関してさらに努力することを求めた。
柔軟性メカニズム:数カ国の締約国は、柔軟性メカニズムの改善と能率化を図る必要性を強調した。パナマは、取引コストを削減する必要があると指摘し、コロンビアは、透明性があり効率的な組織枠組を求め、メキシコは、CDMは各国の努力を強化し補うものであるべきだと述べた。ギニアビサウは、CDMと貧困削減との関連性と、技術移転の必要性を強調した。モロッコは、再生可能エネルギープロジェクトを支持した。ベルギーは、炭素市場は必要な経済変革をもたらすと述べ、ウクライナは、CDMとJIを調整する必要があることを強調した。
資金供与とキャパシティビルディング:ガーナ、ヨルダン、マリ、ギニアビサウを含めた多くの発言者が、適切な資金供与とキャパシティビルディングの重要性を強調した。バングラデシュはLDCs,に代わって発言し、気候変動を原因とする損害の補償を求め、適応努力とNAPAの実施を支持した。ガーナは、特別気候変動基金(SCCF)及び適応基金の運用開始を熱望していると述べた。G-77/中国は、SCCFへの資金供与を求めた。ニュージーランドは、LDC基金への支援とSIDSのニーズを強調した。
ナミビアは、GEFの厄介な役割を指摘し、適応基金の管理では革新的な方法をとるよう求めた。グアテマラは、森林面積の保持を支援するための資金メカニズムを提案し、ドミニカ共和国は、適応に関する5ヵ年作業計画へのGEFの支援に焦点を当てた。スロベニアは、産業界にとり、長期的な予測可能性が重要なことを強調した。
スーダンは、キャパシティビルディングに関して発言し、人々の適応能力やキャパシティビルディングを受ける機会を確保するよう求め、トーゴは、連帯及び衡平性、そして若い人の間で意識の向上を図る必要性を強調した。マケドニアは、機会を最大限にするには協力が重要であることを強調した。
京都議定書の約束:附属書I締約国の数カ国は、自国の目標を達成するとの約束を強調した。英国はEUの立場で発言し、ルーマニアおよびブルガリアと共に、EUは2010年までに8%目標に1.3%削減量を上乗せできる見込みであると指摘した。英国代表は、遵守メカニズムの採択を求め、CDMを支持すると誓い、今後の作業として、2020年までに15-30%の温室効果ガス排出量の削減を求めることや、全ての国に開かれた革新的な協議への支援を挙げた。リトアニアは、自国の京都義務を達成する予定であると述べた。
緩和:多くの発言者がそれぞれの緩和活動を紹介した。ルクセンブルグは、2050年までに世界の排出量を全体で半分にすることを含めた、さらなる緩和努力の重要性を強調した。
2013年以降:アイルランド、マルタ、韓国、その他の国は、今回の会議でこのプロセスを開始することを支持し、ノルウェーは、さらに野心的な約束とすることを支持した。G-77/中国、マレーシア、ボリビア、南アフリカ、オランダ、コロンビア、EC、パナマ、メキシコは、共通だが差異ある責任の原則を強調した。数カ国は、UNFCCCの下での2013年以降というDion議長の最新の提案を支持したが、G-77/中国は、議定書3条9項の下で将来約束を扱うことを支持した。タンザニア、ナミビア、その他は、途上国を自主的な形で取り込み、他の諸国による強制力のある約束と組み合わせることを提案した。ドイツは、途上国に考えを押し付ける必要はないと指摘し、議定書の構造に則った2013年以降の体制を構築するよう求めた。
南アフリカは、議定書を強化し、途上国に支援をして途上国が公平な分担を担えるようにするという2トラック方式を提案した。コロンビアは、一つの総合的な体制が必要であると述べた。ボリビアは、新しい約束期間では、森林減少回避の重要性が認識されるべきであると述べた。デンマークは、2013年以降の枠組決定では明確なスケジュールを立てる必要があることを強調した。ニュージーランドは、排出量を効果的に削減し、公平で公正かつ費用効果が高く、経済的に実行可能な2013年以降の体制とすることを支持した。米国は、気候変動との戦いには全ての国が参加するべきであると述べた。同代表は、二国間および多国間のパートナーシップの重要性も強調した。
オーストラリアは、将来約束に関するDion議長のペーパーでは、京都式の国家目標方式とする場合、一部の国が参加しないことが認識されていると述べた。同代表は、全ての主要な排出者が行動を起こす必要があると述べ、アジア太平洋パートナーシップやG8プロセスの重要性を強調した。イタリアは、多国間、二国間のメカニズムを含め、経済を非炭素化するための組織的な地球規模の行動をとらなければならないことを強調した。
共同作用と協力:マリは、環境条約同士の共同作用を高めることを強調し、環境努力が貧困の削減にどう貢献するか、評価するよう提案した。
技術開発と技術移転:ノルウェーとオーストラリアは、技術の重要性を強調した。アイスランドは、再生可能エネルギー、特に地熱エネルギーに対する開発援助の増額を発表した。中国は、現在の大規模なインフラ投資を考慮し、技術協力を求めた。タンザニアは、水田(稲田)における気候変動の影響に関する研究、及びバイオマスを含めた再生可能エネルギーの必要性に関する研究を想起した。ポーランドは、土地の劣化に関係する問題に焦点を当てた。スロバキアは、排出量と経済成長の乖離を強調した。(注:上記の発言の完全録音は、下記のホームページで聞くことができる:http://unfccc.streamlogics.com/unfccc/agenda.asp)
コンタクトグループと非公式協議
CDM理事会の報告:各国政府代表は、非公式協議後、共同議長の決定書草案をCOP/MOP 1に送ることで合意した。このテキストは、CDMの機能効率化に関するものであり、次の項目が含まれる:締約国や利害関係者のニーズに対する反応性、適切な説明をつけた理事会の決定の公表。この決定書草案は、遡ってのクレジット発行の詳細を定義づけし、追加性について公開意見を募集するよう理事会に要請し、理事会の管理費に当てるため区別された収益の一部(share of proceeds)のことを含める。また締約国は、COP/MOP 2において、二酸化炭素回収・貯留プロジェクトに関するガイダンスを提供すると決定し、政策や基準はCDMプロジェクトとはみなされないが活動計画の下でのプロジェクトは単一のCDMプロジェクトとして登録可能であると決定した。
遵守:共同議長のMamadou Honadiaは、非公式協議後、決定書草案を提出、この草案は、締約国が決定書24/CP.7に含まれるとおり、遵守メカニズムを「承認し、採択した」と記述する。このテキストには、議定書改正の検討は、COP/MOP 3での決定を念頭に、SBI24から開始するとの文言が加えられた。締約国は、これに異議をはさまず、この文書をCOP/MOP 1での採択に向け、同会議に送ることを決定した。
議定書3条9項:議定書3条9項の下の将来約束に関し、非公式協議が続けられた。各国政府代表は、3条9項の扱いが決まるまでは、このグループでの9条(議定書の検討)の議論をしないことで合意した。その後、このグループでは、公開されたアドホックワーキンググループに進むべきか、それともワークショップに進むべきかが議論の中心となった。
UNFCCCの下での将来行動:Dion議長の提案(FCCC/CP/2005/CRP.1)に基づき、条約の下での将来行動に関するラウンドテーブルでの議論が続けられた。木曜日の朝、さらに協議し、テキストの改訂版が出ると見られる。
廊下にて
遵守とCDMに関する作業が会議の終了二日前に終わったことで、多くの交渉担当者は安堵のため息をもらした。ある交渉担当者は、これで「本当に重要な問題」の議論をする時間ができたと述べたが、これはあきらかに将来行動を指していると見られる。この問題に関しては、議定書3条9項の下での将来約束を望むもの、条約の下での方法に傾きつつあるもの、そして「2トラック方式」で十分とするものの間で、意見が分かれている。オーストラリアが’Dion議長のイニシアティブに共感を寄せていることについても、米国の姿勢と対比させたコメントがあった。またCOP/MOP 2での議定書の検討に言及する議定書9条規定の議論も、話題に上ってきた。
さまざまな非公式の議論で進展があった、なかったと、噂が渦巻く中、数人の参加者からは、UNFCCCの前事務局長であるMichael Zammit Cutajar氏の参加を歓迎する声が上がった。ある交渉のベテランは、「今の時点では、賢明な指導者を持ってくるほうが良い」と述べた。
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