地球環境
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Vol. 12 No. 290
2005年12月8日(金)

COP11及びCOP/MOP1ハイライト

2005年12月8日 木曜日



木曜、COP 11 及び COP/MOP 1 の合同閣僚級会合が引き続き開催され、75カ国の閣僚や政府高官によるステートメントが発表された。さらに、京都議定書3条9項 (将来約束)と9条 (京都議定書の検討)、UNFCCCの下での今後の進め方、適応について、各国政府代表による協議が行われた。

閣僚級会合

 各国のステートメント:閣僚と政府交渉団代表は、適応、森林減少、異常気象、CDM改革、資金拠出とキャパシティビルディング、UNFCCCと京都議定書の基づく約束、技術移転、2013年以降のプロセス、マラケシュ合意の採択などの問題を強調した。

 適応:ベニンとモーリシャスは、適応プロジェクトの優先順位をつけて実施する必要があると強調した。サモアは、様々な適応のイニシアティブや二国間協調について概要を述べた。ニウエは適応措置に重点を置くよう主張し、ガンビアは後発発展途上国(LDCs)や小島嶼後発途上国(SIDS)の適応の必要性を強調した。ブータンはLDC基金の運営を開始し、国別適応行動計画(NAPAs)が実施できるようにするよう求めた。ミクロネシアはモーリシャス戦略をUNFCCCの議題の盛り込む必要性を強く主張した。ケニアは適応に関する作業計画に基づいた具体的な活動が必要だと主張した。

 森林減少の回避:パプアニューギニアは森林減少の回避により自主的な排出削減を開始するよう提案した。コスタリカは、自国の環境サービス制度への支払い(Payment for Environmental Services system)について言及しながら、森林減少低下のインセンティブとなるプロセスを歓迎した。ガボン、パラグアイ、カメルーンは、このイニシアティブを支持した。コンゴは、森林減少の回避については京都議定書の下で検討する必要性があると強調し、COP 12 / COP/MOP 2で決定するべきだと述べた。パキスタンは、地震被害を拡大したとして、森林減少や土地劣化の影響の大きさを強調した。ギニアは農業に及ぼす気候変動の影響と脆弱性に取り組む必要性を強く主張した。

 コミットメント:クロアチアは、同国の京都議定書批准が実現できるよう国内事情を特別に配慮してほしいと要請した。カザフスタンは、同国で実施されている自主的な取組みに対する理解を締約国に求めた。キューバは先進国の排出増とこれまでの排出実績について、気候変動に対する国際的な取組みに無関心な国があると批判した。モナコはまもなく京都議定書を批准すると述べた。ベラルーシは京都議定書の附属書B国に入り、数値目標を担うことを希望していると強調した。ザンビアとモーリタニアは、京都議定書を批准する過程にあることを強調しつつ、すべての国が自らの約束を履行するよう求めた。ペルーは、先進国が率先して京都議定書に遵守することを示さなければならないと述べた。アラブ首長国連邦(UAE)は、附属書I国に対してUNFCCCと京都議定書の約束を尊重するよう求めた。

 異常気象:マダガスカル、トリニダード・トバゴ、ウルグアイをはじめ、多くの発言者が最近の異常気象に対する注意を喚起した。ルーマニアとスイスが、2005年の大洪水による影響について報告した。マラウィとレソトは、特に農業や食糧安全保障、持続可能な開発の達成などの分野で異常気象の頻発による影響が拡大していると強調した。エルサルバドルは特に台風などの異常気象について訴えた。タイは、早期警戒システムと地域社会のキャパシティビルディングが必要であると述べた。ペルーは、氷河の急速な後退について強調した。

 柔軟性メカニズム:イランはCDMの運用改善と手続き合理化の必要性を強調しつつ、CDMに基づく国別プログラムに関する決定書草案を歓迎すると述べた。 エクアドルは、CDM が炭素クレジットの環境十全性を担保する遵守の手段でなくてはならないと強調した。ブルキナファソは、小国に衡平性をもたらすような方法でCDMが実施されるべきだと発言した。スウェーデンは、柔軟性メカニズムやEU排出量取引制度の推進な役割を強調した。セネガルとマダガスカルは、CDMプロジェクト実施における地域分布の衡平性を求め、ルワンダがアフリカ諸国の緩和プロジェクトに対するさらなる参加を呼びかけた。カンボジアは、持続可能な開発を促進するためのCDMの役割を強調した。ウルグアイは、CDMに適切な指標を設けることにより全ての国がCDMプロジェクトに参加できるようにすべきだと述べた。アルメニアは、自主的な排出削減を受け入れた途上国については2013年以降すべての柔軟性メカニズムへの参加を認めることを提案した。アルメニアとアルゼンチンはCDMの長期的確実性が担保されるよう求めた。ブルガリアは、京都議定書の環境十全性を担保しながら割当量単位(AAU)の取引を可能にするグリーン投資スキーム(GIS)が経済移行国の機会を提供すると強調した。

 資金拠出とキャパシティビルディング:リビア、サウジアラビア、ナイジェリアは、附属書I国の途上国支援について、特に石油依存度が高い途上国に対して約束を尊重するよう求めた。ナイジェリアは、特別気候変動基金(SCCF)に対する支援拡大を求め、附属書I国には資金拠出やキャパシティビルディングに関して単なるリップサービスで終わることのないよう要請した。ネパールはLDC基金を中心にCOP 7で合意された3つの基金の運用及びその強化を訴えた。エルサルバドルは、地球環境ファシリティー(GEF)の協調融資の要件緩和と柔軟性強化について支持した。ベネズエラは、持続可能な開発や、緩和及び適応の促進に石油収入を活用できると述べた。ラオスは、組織能力と貧困撲滅プログラムとの連携が大きな課題であると指摘した。

 緩和:スウェーデンは、経済成長と排出量を切り離すことができたという自国の成功体験を強調した。日本は、国民の意識向上への取組みなど、排出削減に向けた国内の努力について報告した。オーストリアは、地球の平均気温の上昇を2℃以下に抑えるという目標について強調した。ポルトガルは、政策措置と風力発電を中心に再生可能エネルギーについて発言した。

 観測システム:セネガル、カメルーン、ガボンは、アフリカに観測システムを設置し、炭素隔離の評価用の指標づくりと運営キャパシティのモニタリングと強化を行うことを提唱した。

 2013年以降:ルーマニアは、2013年以降の枠組に関する議論は、各国政府間の協力関係を“強化する”機会となると歓迎した。ハンガリーは、1990年代からの変化は気候変動に対するアプローチを今、見直す時期だと示していると述べ、Dion議長の努力を支持した。日本は「温室効果ガスの排出削減をめざした長い道のり」の出発点として京都議定書を活用すべきだと述べ、すべての締約国が参加できるような実効性ある枠組みづくりのため、3条9項に関する作業と幅広いアプローチを支持した。 フィンランドは、地球全体の取組みならびに共通だが差異ある責任という幅広い文脈の中で3条9項の交渉を位置づけるべきだと述べた。トリニダード・トバゴ、インドネシア、イスラエル、チリ、ペルー及びパラグアイなど、数多くの国々が「共通だが差異ある責任」という文脈での議論を支持した。

 カナダは、京都議定書3条9項の取組みとUNFCCCの取組みを平行して実施する必要があると述べた。 ロシアは、自主的な排出削減による約束履行を認めるような新たなメカニズムづくりを求めた。スイスは、2013年以降も京都議定書の約束を継続するとの見解を強調する一方で、多国間枠組みを拡大し、新しい国(emerging countries)も参加する必要があると述べた。フィリピンは、先進国が将来約束に取り組むよう求め、モルジブも先進国のリーダーシップを要請した。ブラジルは、緩和に関する計画を途上国が採択できるよう積極的なインセンティブが重要であると指摘し、「共通だが差異ある責任」とは責任の欠如を暗示するものではないと述べた。インドは、同国の人口1人あたりの排出量が低く、経済の高度成長を見込み、持続可能な開発が必要とされることを念頭に、省エネやリスク管理を中心とした技術の開発と普及に対する協調行動の必要性を強調した。アルゼンチンは、将来レジームに対する広範な参加と途上国に適応コストを課すことによる環境債務に対する認識について支持した。

 相乗効果と協力:チェコは、気候変動の取組みのための結束を呼びかけ、ギリシャは今回の合意が温室効果ガス排出削減のための取組みの継続を保証し、気候変動の影響を受ける国々を支援するものであるべきだと述べた。イスラエルは、政治的な違いにより地球規模の環境保護努力が阻まれるようなことがあってはならないと述べた。アルジェリアとチュニジアは、砂漠化と気候変動の関連を強調。アンゴラは、貧困撲滅を目的とした地球規模の政治枠組みの中で気候変動と京都議定書実施の問題を解決するべきだと述べた。

 技術開発と移転:ベニン、コートジボワール、パラグアイ、エジプト、アルジェリアは、気候変動に取り組むために技術移転が重要であると述べた。ウガンダは、技術移転についてはまだ第1歩が踏み出されていないと主張し、クリーン技術へのアクセスとインセンティブを求めた。サウジアラビアは、化石燃料を引き続き利用しながら排出削減をめざす方策を模索するべきだと強調した。リビアは、IPCCの二酸化炭素回収・貯留に関する報告書を歓迎。クウェートは二酸化炭素回収・貯留を強調し、UNFCCC2条3項に基づく適応の取組みや対応策、経済の多角化を要請した。スペインは、気候変動が倫理的なチャレンジであり、再生エネルギーの役割が重要であると主張した。トルコは水力発電をはじめとする再生可能エネルギーの役割を強調した。
(付記: 上記の発言の完全録音は下記のウェブサイトで試聴可能。http://unfccc.streamlogics.com/unfccc/agenda.asp).


2013年以降に関する協議

 終日、多くの会合を通じて京都議定書とUNFCCCを中心とした2013年以降の進め方に関する協議が行われた。パッケージ方式には数々の懸念要素が残るが、多くの締約国が、京都議定書3条9項(将来約束)と9条(京都議定書の検討)及びUNFCCCにおける複数トラックの下で推進する案を支持した模様。

 UNFCCCに基づく将来の取組み:UNFCCCに基づく将来の取組みについて行われた非公式協議ではDion議長の修正案が議論の中心となった。同修正案は、持続的な開発目標の推進、途上国における影響の低減、適応・技術・市場の問題に対する取組みも含め、気候変動問題に締約国が取り組むための協調行動の議論を行う決意表明を求めるもの。さらに、すべての締約国が参加できるワークショップの開催とCOP 13を期限とした議論完了についても合意が求められている。

 京都議定書3条9項:1日を通して開催された会合に続き、共同議長のAlf Wills (南アフリカ) とDavid Drake (カナダ) がコンタクトグループを招集し、それぞれ4つのセクションから成る2つのオプションについて記載した括弧書き付きの草案を紹介した。Wills共同議長は、最初のセクションは決定書、2番目のセクションが「地球規模の行動(global response)」に関して挙げられた問題、3番目が9条(京都議定書の検討)、4番目が地球規模の行動と9条を取り上げていると説明した。

 午後9時を回る頃、各国政府代表により提案通りの内容でテキストが合意された。午後11時15分現在、Dion議長が閣僚級会合を開催し、2013年以降の問題に関する“包括パッケージ案”について討議を続けている。


適応に関する協議

 COP決定書草案の括弧書きを削除するべく、終日非公式折衝が行われた。作業計画の目的の中にあるSIDSの記載、経済の多角化、LDCsやSIDSに加えて北極を特に脆弱な地域として記載するかという問題が話し合われ、現在も協議中だ。


廊下にて
 3条9項については、木曜夜の進展が一部の政府代表の顔をほころばせていたものの、“当惑も隠せない。”しかし、今後の進め方に関する各種オプションを規定した括弧書きがついた決定書が合意されたことは、「極めて異例のことだが、それでも前向きな成果である」と解釈されている(情報筋のコメント)。この問題に関する包括パッケージについては木曜深夜まで閣僚級会合の討議が続いている。

 小グループの交渉に進歩が見られたという明るいニュースが伝えられる一方、プレナリーの参加者が少なくなっていることに対する懸念もあった。数多くの政府閣僚や高官はまばらとなってしまった大会議室に残って発言を続けているが、数カ国の政府代表は、テーマ毎のラウンドテーブルやパネルディスカッションでは一方通行の発言ではなく、もっと双方向の対話が必要だと提案していた。とはいえ、全体的に見て、プロセスの認知度向上や政治的なコミットメントの拡大、二国間会合の増加につながった閣僚級会合に意義があったことに異論を挟む者はいない。また、金曜日に米国のBill Clinton前大統領が急遽来訪するとのニュースが伝わり、参加者を沸かせていた。



NEDOからの委託によりGISPRI仮訳