地球環境
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国連気候変動枠組条約第18回補助機関会合(SB18)ハイライト


2003年6月5日木曜日



UNFCCC補助機関の第18回セッション(SB-18)は、6月4日水曜日、ドイツのボンで開会された。科学的・技術的助言のための補助機関(SBSTA)は、午前と夕方のセッションで集まり、実施のための補助機関(SBI)は午後に会合した。SBSTAは、組織上の問題、手法上の問題、IPCC第三次評価報告書(TAR)を取り扱った。SBIは、組織上の問題、UNFCCC4.8条および4.9条(悪影響)の実施、運営および資金上の問題を取り上げた。コンタクトグループは、5条(手法上の問題)、7条(情報の連絡)、8条(情報の検討)、およびCDMでの吸収源の問題を議論するべく、会合した。

SBSTA

セッションの開会:SBSTA議長のHalldor Thorgeirsson(アイスランド)は、SBSTA-18への出席者を歓迎した。UNFCCCエグゼキュティブセクレタリーJoke Waller-Hunterは、SBSTAの議論が、将来の作業計画を形作るものであると述べた。G-77/中国を代表しモロッコが、適応に注目するよう求め、議定書およびUNFCCCにおいて創設された資金の運用実施を行なう必要性を強調した。同代表は、途上国代表の出席に対する資金援助が減額されないことと、議定書の発効を呼びかけた。EUは、手法についての努力が目録の完璧さを確保するはずだと述べた。ツバルはAOSISを代表して、IPCC TARは気候体制の発展に関する議論についても情報を提供するべきであると述べた。スイスは、同国が、2003年6月2日に京都議定書を批准したと発表した。

SBSTAは、議題書(FCCC/SBSTA/2003/1)を修正なく採択した。

手法上の問題:UNFCCCおよび議定書における手法問題での作業の再検討:IPCCは、SBSTA-17で要請された1996年の目録ガイドラインを改訂する作業について報告した。出席者は、特に次の点についての必要性を指摘した:主題別議論から手法上のニーズを明らかにする、統一に適用される手法と各国の事情に特定した手法を区別する、さまざまな問題について専門知識を持つ広範囲な科学者の参加を得る。Thorgeirsson議長は、Harald Dovland(ノルウェー)氏に対し、非公式折衝を進め、SBSTAでの検討のため、結論を出すよう求めた。

議定書5条、7条、8条に関係する問題:Auden Rosland(ノルウェー)は、5.2条(調整)に関して開かれたワークショップについて報告した。同氏は、調整に関する技術的ガイダンス案を練り上げる議論の結果を概括し、SBSTAで検討されるべき、調整についての保守的要素に関する表に焦点を当てた。スイスとEUは、レビューアーを訓練することの重要性を強調した。日本は、筆頭レビューアーの言語上の必要条件に懸念を表明した。Thorgeirsson議長は、Helen Plume(ニュージーランド)およびNewton Paciornik(ブラジル)に対し、SBSTA結論書案とCOP決定書案を作成するコンタクトグループの共同議長となるよう要請した。

7.4条(登録簿)に関し、Murray Ward(ニュージーランド)は、登録簿と取引記録簿に関するセッション前の協議について概括した。同氏は、協議では、データ交換基準の推敲と、登録簿開発に関する各国の経験の共有化に、焦点が当てられたと述べた。同氏は、事務局がこの問題に関する作業を継続できるよう、十分な資金が必要であることを強調した。Thorgeirsson議長は、Murray Ward氏に対し、この問題での非公式折衝を持ち、決論書草案およびCOP決定書案を作成するようにと述べた。

附属書I諸国温室効果ガス目録の報告とレビューに関する問題:Thorgeirsson議長は、専門家レビューチーム(ERT)メンバーの訓練の問題と機密情報の扱いに関する問題は、5条、7条、8条に関するコンタクトグループで扱われると述べた。

議定書12条規定のLULUCF新規植林および再植林の活動:Thelma Krug(ブラジル)は、第一約束期間において新規植林および再植林(A&R)プロジェクト活動を12条(CDM)規定に含めるための規則および定義づけに関する最近のワークショップの概要を紹介した。同代表は、このワークショップが12条規定の規則および定義づけに関し、確固とした文章案を作成するのに役立ったと述べた。 Thorgeirsson議長は、生物多様性条約が、UNFCCC関連の問題について作業していることを指摘し、これがSB-18や以後のセッションでの作業に影響を与えるであろうと述べた。Thorgeirsson議長は、この問題に関するコンタクトグループでは、Karsten Sach(ドイツ)とThelma Krugが共同議長を務めると述べた。

LULUCFに関する:良好な実施方法ガイダンス:
IPCCは、LULUCF、および良好な実施方法ガイダンスについての二稿、森林での直接的な人為的劣化や、他の植生タイプでの非植生化からの排出を目録化するための定義づけおよび手法オプションでの、IPCCの作業に関し報告した。また同代表は、間接的かつ自然の影響から直接的な人為的変化を抽出する手法についても作業を開始したと述べた。FAOは、Collaborative Partnership on Forests(森林に関する協同パートナーシップ)の作業について報告し、森林や炭素関係についての用語統一、森林での炭素貯留量とその変化を鑑定するための合理的な手法、そして簡潔な報告書作成が重要であることを指摘した。LULUCFでの共通の報告書作成問題に関する非公式折衝は、Margaret Mukahanana-Sangarwe(ジンバブエ)とAuden Roslandが共同議長となる。

国際的な航空輸送および海上輸送で使用される燃料から生じる排出:International Civil Aviation Organization(ICAO:国際民間航空機関)は、信頼性の高い航空輸送排出目録の必要性を強調し、航空輸送排出を抑制または削減する政策オプションに関しての作業継続、技術の開発とこれに関係する世界全体での排出基準の策定、運用手法改善による燃料燃焼量の削減、そして市場本位メカニズムの利用について説明した。International Maritime Organization (IMO:国際海事機関)は、船舶からの温室効果ガスに関する報告およびその比較可能性の質を向上させるための作業について議論し、UNFCCCとIMOの事務局同士の非公式会合について報告した。

IPCC TAR:気候変の影響および気候変動に対する脆弱性や適応の科学的、技術的、社会経済的側面、および緩和の科学的、技術的、社会経済的側面:マレーシアは、G-77/中国を代表して、TARの結論を慎重に扱うべきであると述べた。中国は、一部の結論について「広範囲な疑惑や異論」があることを指摘し、SBSTA がIPCCにこういった結論についてのさらなるコメントを求めるよう提案した。スイスは、TARがすべての議題項目で常時考察に入れる必要があるものだとし、これからの脚注付議題には、TARを引用するよう提案したが、G-77/中国はこれに反対した。オーストラリアはカナダ、EU、AOSISとともに、TARに関する議論を個別議題項目とするよう提案した。またAOSISは、SBSTAがこれまでのところSBSTAでの作業にTARでの発見事項を十分取り入れていないと指摘した。カナダは、適応と緩和の両方に関係するクロスカッティングイシューについて議論する必要性があることを強調した。David Warrilow(英)とWalid Al-Malik(UAE)が共同議長を務めるコンタクトグループが、これらの問題についてさらに議論を重ねる。

SBI

セッションの開始:SBI議長のDaniela Stoycheva(ブルガリア)は、SBIの第一回会合を開き、採択に向けた議題書(FCCC/SBI/2003/1)を提出した。スイスは、G-77/中国の支持を受けて、議題に非附属書I 国別報告書を含めるよう提案した。米国は、カナダとオーストラリアの支持を得て、この議題で第二回およびそれ以後の国別報告書の提出も扱うよう提案し、G-77/中国はこれに反対した。Stoycheva議長は、G-77/中国が米国案を検討できるよう、議題書の採択を延期することに合意した。

4.8条と4.9条の実施:決定書5/CP.7規定の活動実施における進展:事務局は、決定書5/CP.7(4.8条と4.9条の実施)で義務付けられている、他の多国間環境条約・協定との相互協力の可能性に関するワークショップを、7月2-4日、フィンランドのヘルシンキで開催する予定であると発表した。

Stoycheva議長は、保険関連事項に関する最近のワークショップについて報告した。クウェートは、対応措置の悪影響を最小限にする長期的な国際解決策を呼びかけた。ブルキナファソは、保険業界のこの問題に関する理解を深めるため、この業界に気候交渉プロセスでのオブザーバーとしての立場を与えるよう提案した。カナダは、マラケシュ合意が、決定書5/CP.7の実施について十分なガイダンスを与えていると述べ、各国の持続可能な開発戦略の中で適応能力および本来の気候変動への適応を強化する必要があることを強調した。米国とEUは、この点での開発途上国の努力を支援するため、GEFへの第三次資金供与を行なうことの重要性を強調したFadhel Lari(クウェート)とRobert Mason(英) が共同議長を務めるコンタクトグループがこの問題を考察し、決論書草案を作成する。

LDCs関連問題:LDC専門家グループ(LEG)議長のLaavasa Malua(サモア)は、LEGでの作業について報告した。タンザニアはLDCsを代表して、目前のそして緊急なニーズを支援するため、LDC基金を短期に立ち上げる必要性を強調した。カナダは、決定ガイダンスが特定の適応措置に力点を置くものであってはならず、これは各国の適応行動プログラム(NAPAs)の結果に予断を与える可能性があるからであると述べた。EUは、NAPAの実施が他の国連条約との連携を強化するものであることを確実にする必要性を強調した。

運営および資金上の問題:Stoycheva議長は、2002-2003の2年間予算期における中間決算を提出したが、この決算書は850万米ドルという巨額の滞納金を示しており、加盟国の3分の2が2003年度の拠出金を出していないとの指摘を受けた。Karsten Sachは、ドイツ政府が、ボンにあるすべての国連機関を一箇所に集中させ、支援することに合意したことを指摘した。エグゼキュティブセクレタリーは、2004-2005年の2年間期に於けるプログラムの提案と予算を提出し、これには2003-2004年の2年期における29%の予算増額が含まれている。事務局では、議定書が2004-2005年の期間に発効するなら、その活動に320万米ドルが必要であると予測している。サウジアラビアは、ワークショップのような経費項目では、二年間予算での収支バランスウを図る必要があることを強調した。米国は、事務局予算についてさらに詳しい情報を要求し、また. 議定書活動での資金の配分案に懸念を表明した。カナダは、予算での「1回限りの大幅な上昇」を支持した。

コンタクトグループ

議定書 5条、7条、8条:コンタクトグループ共同議長のHelen Plumeは、このグループの取り上げる課題には、筆頭レビューワーを選抜する資格基準や、ERTsの訓練、機密情報の取り扱い、ERTsの能力と職業意識の向上、調整に関する技術ガイダンスおよび8条の議論の完了が含まれると指摘した。調整について、Auden Roslandは、不確実性レベルの中で不確実性を抑制する保守的要素を計算するための「バンド」アプローチについて説明した。また出席者は、情報の位置づけ、ERTsの慎重さに制限を加えること、そして調整について再計算をどう取り扱うかも議論した。

機密情報の取り扱いについて、EUは、レビューチームが机上レビューを行なうときには、機密情報が利用可能とされるべきであると述べ、電子情報を管理するためのガイドラインの開発に力点をおき、中国はこれを支持した。また出席者は、附属書I諸国温室効果ガス目録のレビュープロセスの中での機密情報の扱いについて、実施規則を考察した。出席者は、機密情報を守るため、事務局のスタッフとERTメンバーの両方が責任についての指導を受け、取り扱い手続きについての訓練と試験を受けることとすることで合意した。

専門家レビューサービスの合意に関して、スイスは、機密情報を公開した場合の処分について質問した。共同議長のPlumeは、調整のガイダンスに関する作業のため、非公式の草案作成グループが会合すると述べた。

CDMでの吸収源:Karsten SachとThelma Krugが共同議長を務めるこのコンタクトグループは、A&Rプロジェクト活動に関するまとめの文章案を提出するため、夕方、短時間の会合を行なった。

会場外では:廊下では

SB-18は、水曜日、「活気の薄れた」開始となった。SBIは、非附属書I国別報告書という議題項目の可能性に関する出席者間の理解のずれにより、議題書の採択が行なえなかった。報告書提出頻度を扱う議題項目を入れるべきなのか、それとも入れることにより関係する資金問題を討議しなければならなくなるのかについての混乱は、交渉グループ内および交渉グループ間での亀裂を示している。予算問題での議論が出てきたこともあいまって、SB-18は、これまでのところ、資金問題での懸念が、これからの1週間半の議論でも大きなものになりそうな兆候を見せている。
今日の注目点
SBI:SBIは、午前10時から午後1時までプレナリーで会合し、議論を採択するとともに、運営上および資金上の問題、政府間会合のアレンジ、非附属書I諸国の資金上の問題、そしてキャパシティ・ビルディングについて、他の議題とともに討議する。

SBSTA:SBSTAは、午後3時から6時まで集まり、政策措置、技術移転、研究と体系的な観測、および関連国際機関との協力、その他の問題を取り上げる。

非公式グループ:非公式コンタクトグループは、IPCC TAR、CDMでの吸収源に関し会合する。