地球環境
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第20回補助機関会合速報−後半
2004年6月21〜25日
2004年6月26日
篠田 健一
蛭田 伊吹


 前半の静かな雰囲気と打って変わり、後半は代表団の数も増え、夜遅くまで非公式コンサルテーションやコンタクトグループ会合が開かれたり、気候変動問題に対する世界の最新動向を紹介するサイドイベントが多く催されたりと盛り沢山であった。

 後半におけるSBSTAのポイントは、まず「気候変動の影響、脆弱性、及び適応措置の科学的、技術的、社会経済的な側面」(アジェンダ7)、及び「緩和措置の科学的、技術的、社会経済的な側面」(アジェンダ8)の2つの案件に関する議論が本格的に始まったことであろう。ワークショップの結果を受け、今後COP11までにどのような活動を行うかについて各国の思惑が色濃く現れた議論が連日行われた。また一週目、主に非公式で行われてきた小規模吸収源CDMのルール作りは、後半から議論が公開されパラグラフ毎のドラフティング段階に入った。サイドイベントは、特に市場メカニズム関連の案件が充実しておりこの分野を中心にウォッチした。特にEU排出量取引とCDM/JIのリンクや、法律・会計処理面でのクレジットの扱い、GHGプロトコルによるGHGの算定など実務に関連する情報に関心が集まっていた。

 以下、アジェンダ7及び8、小規模吸収源CDM、の議論の概要及び結果と、サイドイベントの概要を紹介する。

【「気候変動の影響、脆弱性、及び適応措置の科学的、技術的、社会経済的な側面」(アジェンダ7)、及び「緩和措置の科学的、技術的、社会経済的な側面」(アジェンダ8)】

 SBSTA19で、適応策と緩和策について初めて別々のアジェンダとして議論することが決定されたことを受け、それぞれのアジェンダにおけるより早い進展が期待されていた。しかし、2つのアジェンダが一つのコンタクトグループで議論されたことで、特に適応措置について先進国からの援助の確約を期待していた途上国からは大きな不満が出た。(コンタクトグループの会合自体は2つに分けて行われ、結論も別々に2つ作成された。)

 コンタクトグループでは、David Warrilow氏(UK)及びKok Seng Yap氏(マレーシア)の両議長によって、主にワークショップに対する意見及び今後このアジェンダの下で議論すべきことについて各国に意見が求められた。SBSTA19で決定している通り情報の共有が中心であることは間違いないが、それをどのような形で行うかについてスイス、アフリカグループを始め多くの国々が作業プログラム(又は実施計画)を作成することを推奨し、中国、日本、USを始め多くの国々はもっと傍聴者と発表者の意見交換の時間を増やした形でワークショップを行うことを提案した。また、実際の検討内容としては、脆弱性・リスク評価方法論の開発(スイス等)、地域モデルの開発(スイス、アルゼンチン、EU、フィリピン等)、国家持続的開発計画への適応・緩和策の組み込み(殆どの締約国)、win-winオプション(US、カナダ等)、措置の効果と機会(スイス、サウジ)、利害関係者の認識等のギャップやニーズ(スイス)、資金問題とキャパシティビルディング(G77+China)、ビジネス界の技術開発における取り組み(日本、US、オーストラリア)及び技術普及の障壁と打開策(中国)、緩和措置の実施による悪影響・スピルオーバー効果(サウジ)等、様々なトピックが挙げられた(()内は主な提案国)。交渉はその後非公開コンサルテーションとなり、結論案の内容(特にどのようなトピックをワークショップで議論するか)について議論された。

 最終的に採択された2つの結論案(アジェンダ7:FCCC/SBSTA/2004/L.13、アジェンダ8:FCCC/SBSTA/2004/L.14)はほぼ同じ内容で、適応策・緩和策両方についてSBSTA21でも、SBSTA20と同じく、情報交換を主としたワークショップを開催することで合意された。ワークショップにおける検討内容は以下の通り:
  アジェンダ7
  気候変動の影響とそれ対する脆弱性及び適応策を評価する方法及びツールについて(含む地域モデル)
  持続可能な開発と適応策のリンケージ
  アジェンダ8
  緩和技術の革新・採用・普及(含む障壁の特定と除去)
  持続可能な開発に貢献する緩和措置の導入機会と解決策
 なお、以上の内容及びワークショップについて、各国は8月31日までに意見を提出することになっている。更に、事務局は、ワークショップで議論される内容について参考資料を作成し、関係論文もウェブサイト上で入手できるよう手配することとなった。そして、このアジェンダの下で情報交換するだけでは「不十分」として更なる活動を求めるウガンダや、ワークショップで扱うトピック以外にも同じように重要なテーマがあるという殆どの国の意見を考慮して、SBSTA21後の検討テーマについては、再びSBSTA21で議論することとなった。

【小規模吸収源CDM】

 小規模吸収源CDMに関する議論は、後半も大きく揉めた。21日に再開されたコンタクトグループでは、COP10での合意に向けた議長ノンペーパーが発表された。環境及び社会経済に対する影響評価や、PDDの内容についてはほぼ合意され、更に、ベースラインについては、クレジット期間中ベースラインにおける炭素固定量を一定とみなすこと、また実際の追加的吸収量については簡易化されたモニタリング方法論をCMDEBに決定してもらう方向で決定した。特にモニタリングについては地元関係者の参加を求める意見が出された。

 22・23日のコンタクトグループでは引き続きノンペーパーが検討され、Indigenous people organizationsからは事前のコンサルテーションによる低所得コミュニティへの考慮等をPDDに示すことが主張された。また、リーケージ及びベースラインの扱いについては、Appendix B(Indicative simplified baseline and monitoring methodologies for selected types of small-scale afforestation and reforestation project activities under the CDM)が紹介され、プロジェクトを実施しなければその土地において吸収量が変化しない場合は、プロジェクト前の炭素貯蓄量をベースラインとしクレジット期間中一定とみなすこと、また吸収量が変化する場合はCMDEBの簡易化されたモニタリング方法論を利用して計算することが決定された。また、CDMEBが今後吸収源CDM関連でどのような作業を行うべきかについてもAppendix Bに示された。更に、バンドリングに関してはG77+Chinaから、「ホスト国は、有効性審査・認証・発行にかかる費用削減にために、プロジェクト参加者が同意すれば、いくつかの吸収源SSCプロジェクトを『coordinate』することが出来る。」というパラグラフを追加すれば、その他のバンドリングに関わるすべての未定箇所を認めるという提案が出た。しかし、EUや日本はcoordinateの意味やプロジェクト参加者の同意、更にホスト国だけでなく投資国のcoordinateの可能性等について懸念を示したことから、パラグラフが追加されたとしてもSB20時点では他のバンドリングに関係する箇所はそのまま未定としておくこととなった。

 結論案(FCCC/SBSSTA/2004/L.9)及びSBSTA21で利用される交渉テキスト(Annex)は最終日の朝公開された。結論案には、SBSTA21では吸収源SSCのルールだけではなく、このようなプロジェクトの実施を促進するための措置に関する決定文書案も作成すること、またルール及び措置に関する決定文書を採択した場合の事務的作業及び予算への影響についても事務局が資料を作成することが記されている。
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【サイドイベント】

サイドイベントは会合の最終日前日の24日(木)に全プログラムを終えた。総数は44(IETA独自開催分を入れると46)と多くはないが、紹介されたCDM 関連、EU排出量取引、京都メカニズム等のイベントは具体的な内容に富むものであった。市場メカニズムに興味を寄せる人達にとってはサイドイベントこそこの会合の裏の主役といえる。

前半に引き続き、市場メカニズム関連のイベントを中心にウォッチした。
後半の主なイベントの概要は以下の通りである。
AIJへの取り組みと教訓(6/21 オランダ政府)

 オランダ政府が1996年から8年間に亘り取り組んできたAIJ(Activities Implemented Jointly)を総括した。AIJはJIのパイロット実施で厳密なバリデーションや認証までは行わない。22百万ユーロをつぎ込み6百万トンCO2換算の削減を得たことや、技術面では風力・バイオマスといった再生可能エネルギー(ソーラーはほとんどなし)が金額面で約半分を占めたこと、地域別ではラテンアメリカが約半分を占めること(人件費の高さも影響)が紹介された。また具体的事例としてレンガ工場のエネルギー効率アップや廃土利用、WIND FARM(風力発電で牧場で必要なエネルギーを賄う)などが紹介された。全体を通じて強調された点はパートナーシップの重要性である。政府の民間への強力な支援や、ホスト国との相互の信頼関係の構築が、この種のプロジェクトを実施する最大のキーであることが反復して強調された。
EU排出量取引リンク指令とCDM/JI(6/21 European Community)

EU排出量取引制度の概説の中でオープンスキームである点が強調された上で、4月に欧州議会が可決したリンク指令のポイントが紹介された。

まずリンクするには、キャップ&トレードが前提で、目標遵守において1CER、1ERUは1EUAllowance(EUA)は等価であることが示された。CERは’05〜、ERUは’08〜リンク可能である。リンクする京メカクレジットは原子力による削減分とLULUCF分は対象外となっている。LULUCFの除外は昨年のCOP9で決まっただけに精査する時間的余裕がないことが理由で2006年に指令を見直す際には入ることになりそうである。

質問で、JIとEU排出量取引制度下での削減(余剰EUAが発生)のダブルカウントによるJIの制限について確認するものがあったが、今回可決されたリンク指令ではERUとEUAのどちらでも選択的に獲得できるとの回答であった(ERUを選択したときはその分EAUを取消口座に入れることに指令で規定されている)。また、補足性の点から京都メカニズムのクレジットがどの程度EU排出量取引の中で使えるのか、そのゲートウェイ機能はどうなっているのかを確認するものがあったが、明確な数量的上限は回答されなかった。リンク指令に書いてあるレベル程度の、補足性に留意して用いるべきということしか回答せず、数値的な点は明言を避けている印象を受けた。(かなり高い比率で京都メカニズムクレジットを使う国があるのかもしれない。)


補足性(supplementary)

京都議定書やマラケシュ合意に示されている考え方で、市場メカニズムの使用は国内対策に対し補足的に用いるべきものとされている。まずは自国内で努力し、その不足分をクレジット購入等で補うべきことを示している。EU排出量取引でも、排出上限(キャップ)を守るために京都メカニズムクレジットが使用可能だが無制限ではなく補足性を考慮して使うべきことと、NAPでも各設備ごとの排出枠割当に対する京都メカニズムクレジット使用比率を明示するべきことがリンク指令に規定されている。
EUの気候変動プログラム (6/22 European Community)

EUは、15カ国全体で▲8%(90年比)という京都議定書目標を負っている。しかし、BAUでは2010年には+8%と予測され、既存の施策でも議定書目標の達成は難しいと予測される。そこで、2000年3月にECCP(EU気候変動プログラム)を策定した。ECCPでは、10数個のワーキンググループにて個別テーマを検討しワーキンググループ報告書を作成する。報告書はECCPステアリング委員会の審議を経て最終的に閣僚理事会のアクションプランに反映される。2003年5月には第2次報告書が出された。ワーキングループには、排出量取引、柔軟性メカニズム、エネルギー供給、エネルギー需要、需要家設備、運輸、ガス燃焼、調査研究、農業、吸収源、森林 などがある。

報告書からの施策により、578〜696百万トン/CO2/年相当の削減ポテンシャルがあるといわれており、これは京都目標の▲8%の2倍に相当する。

■エネルギー部門の主な施策には、排出量取引、CDM/JIとのリンクに加え、CHP(コジェネレーション)の促進、エネルギー効率の向上、運輸部門でのバイオ燃料の導入、再生可能エネルギーの促進などが上げられている。

再生可能エネルギーは、2010年までに使用日の12%、発電量の22%、運輸バイオ燃料5.75%などかなりチャレンジングな目標設定となっている。

■運輸部門の施策は、モーダルシフト、代替燃料の導入(最重要)に加え、鉄道の民営化、インフラ改革(提案)、自動車メーカーとの自主合意(新車はCO2削減仕様とする:日韓のメーカーと締結)を柱としている。バイオ燃料については、2020年までに燃料シェアの20%を目指しており、巨大な市場となると予測が紹介された。

■農林業部門の施策は、森林吸収源、農業土壌、農業の3つのワーキンググループで検討されているが、まとめとしては土地による炭素隔離(Land-base-C-sequestration) は重要な温暖化の緩和施策たり得る。ただし、まだ土地による炭素隔離のメカニズムなどには多くのリサーチが必要で不確定な面も多くのこっている。また地理的条件によっても結果は異なる。だが、開拓中の分野でありlow-hanging-fruits は多い。バイオによるエネルギーや素材の代替は、吸収源よりも大きなポテンシャルがあるのではないかとのことであった。
EU排出量取引の実務上の課題(6/22 IETA)

  法的、会計処理上の実務課題について紹介があった。

まず、排出量取引は法的に未整備な分野なため、相互の契約において法的なシステムを作りあげていくべきことが指摘された。これに関し、常設仲裁裁判所のメンバーから、契約不履行の処理には各国間の法的制度の違いがリスクとなるため、そういった場合を想定した仲裁条項を設けることが重要であるの提案があった。また、会計処理については、有力会計事務所(バリデーターでもある)KPMGのメンバーが、国際会計基準上の解釈指針(IFRIC)(2003年5月)が、
排出枠(Allowance)は無形資産で、公正価値で評価する。
排出枠の公正価値と(排出枠取得への)支払額の差は政府補助金(grant)として処理する。
排出に応じ負債が生じる。負債の評価額は、必要となる排出枠分の価値である。
資産(排出枠)と負債(排出)は別々に認識される(資産は排出枠割当時に認識され、負債は排出するのにつれて認識される)。
としていることを紹介した。

会計実態にあわない点もあるが、既存のGAAP[1]ではこれ以上に適切な解釈も導きにくいとのことである。

この点、多くの関係者が排出枠を金融資産或いは通貨ではないかと見ているが、排出枠の実際を考えるとき、資産としての実態があり、一種のライセンスのようなものではないかと指摘した(無形資産)。

負債は、排出に対応する排出枠数の価値が負債の額となるため、排出枠の時価を用いると、価格の高下が損益計算書に反映し、排出枠の値段が上がれば、損を計上することになってしまう点を指摘した。重要な点は、排出に伴うコストと収益の財務バランスを適切に把握することであるとした。

現在、IFRICでは昨年11月にパブリックコメントを受けて一度解釈を改訂したが、さらに改訂中とのことである。
登録簿トランザクションログの構築(6/22 UNFCCC)

京都議定書17条やマラケシュ合意に基づく国別登録簿、CDM登録簿、トランザクションログの作成についてUNFCCC事務局より紹介があった。国別登録簿は、従来から組み込まれていた国家の保有口座、法人の保有口座、償却口座、取消口座に加え、COP9でのシンクCDMの議論を受け置換口座(シンクCDMで得られるt-CER、l-CERを失効前に同量のクレジットで置き換える際に使う)が新設されている。

また、CDM登録簿については、国別登録簿と機能・構造的に似たようなものとなるが、2004年第4四半期には稼動するとのことである。なお、非附属書T国の保有口座がCDM登録簿上に開設できるか、非附属書T国もCERのtransfer(いわゆる排出量取引)が認められるのかについては、CDM理事会での議論を待つとのことである。

各登録簿間を橋渡しするトランザクションログは独立のもの(ITL)と補助的なもの(Supplementing :STL)の二つがあるが、ITLは2005年半ばには稼動するとのことである。ITLは取引のチェック機能を持ち、連関する各登録簿群も含めたシステム全体の統合を図るものである。リアルタイムの取引自動チェック機能、監視機能(トランザクションのクリーンアップ、t-CER、l-CERのイクスパイア等)を持つ。

来年1月からの開始に備え、EU排出量取引の登録簿も今年中に作成される。EU-Allowanceを発行、保有するためである。各登録簿間のデータ交換にはUNFCCCのデータ変換基準を用いる。

なお、外部へクレジットを移転する際のチェックフローは、コミュニケーションハブチェックによる取引フォーマット確認、UNFCCCのトランザクションログによるチェック、EUのコミュニティ・トランザクションログでのチェックの三段階を経ることになるという。
GHGプロトコル コーポレートモジュール改訂版(6/23 WBCSD)

今年春に改訂版が出たGHG Protocol Corporate Standard について改訂点と、実際にこの基準を使って会社のインベントリを作成する取り組みについて発表があった(ロシア、メキシコ、日本)。改訂のポイントは、モニタリングや、インベントリの質についての記述の追加、GHG排出量のベリフィケーションの記述の補充等である。

コーポレートモジュールと併行して作成中のプロジェクトモジュール(Project Quantification Standard)についても紹介があり、企業・事業者単位の排出削減と、プロジェクト単位の排出削減の計算の仕方が本質的に違うことが強調された。すなわち、企業・事業者単位の排出削減は年次の排出量の経年変化(引き算)で測るが、プロジェクトでの排出削減は、そのプロジェクトがなかった場合の排出量(ベースライン)と、プロジェクト実施時の排出量の差によって求められる。

また、GHGインベントリ作成への取組については、ロシア企業のGHGマネジメントの事例などが紹介された。ロシア政府は、啓蒙活動、排出予測の策定、GHGのモニタリング・測定の実施、削減対策の策定や評価等に関するアクティブストラテジーを紹介した。パルプ・紙業界からもGHGマネジメントと作成したインベントリの実例紹介があった。メキシコ天然資源省からもGHGパイロットプログラムとして、企業の自主的GHG算定・報告の取組が、GHG削減を費用効果的に進めるのに役立つことが紹介された。また日本からは関西電力が日本の地球温暖化対策推進大綱や自主行動計画を紹介した後、電力削減プロジェクトの事例について間接排出削減(コージェネレーションなどオンサイトの発電設備を導入して電力会社からの購入電力を減らすことで、電力会社の発電による排出を間接的に削減すること)の計算方法について、事業者の排出削減報告(インベントリの経時変化)との整合性をとるべきだと主張した。そのために、火力・水力・原子力の全発電量と全CO2排出量からもとめた平均排出係数を使うべきであると主張した。会場からはマージナル排出原単位とは、具体的にどのようなものが考えられるのか、といった質問があった。これに対して関西電力より原子力等を含めた全ての電源を考慮した全電源平均原単位をマージナル排出原単位と考えるとの回答があった。
CDM契約(6/23 IETA)

IETAから、CERの売買契約書の雛形が提示された(CDM Emission Reductions Purchase Agreement v1.0 2004)。プロジェクト実施者と買い手の間の売買契約書である。引渡の不完全履行等債務不履行時の詳細な規約が盛り込まれている。取引形態はCERのUNIT単位(1トン)の不特定物売買である。引渡最低量を定める。債務不履行の際の扱いは、例えば、プロジェクト実施者側が最低取引量を確保できないときは買い手に通知し、それを受けた買い手は不足分の調達を要求できるが、後に継続する契約年で不足分が補える旨が通知の中に書かれてあれば、後の契約年での埋め合わせも可能である等である。
EU排出量取引へのリンクの戦略的側面 (6/23 IETA)

EU側からリンクして排出量取引の枠組を拡大する意味について、より大きなマーケットを構築することで競争を促進し流動性も高められることと、国際競争下のグローバル企業にとってはカーボン市場が1つに統合されているほうが望ましいことなどが説明された。
他のスキームとのリンクに際しては、相互リンク合意(bilateral linking agreement)を結ぶことになるが、その際には以下の点が重要であるとした。
モニタリングやレポーティングが一定の質を保っていること
罰則のレベルがつりあっていること(EU排出量取引は第1期間40ユーロ/トン、第2期間 100ユーロ/トン)
京都議定書で求めている登録簿を整備していること
環境に関する目標設定のタイプと一定の厳格さがあること
(具体的にはキャップ&トレードタイプで、かつ厳し目の割当を行うこと)
政府の投資がなくても民間部門だけで市場を作っていること
逆に、取引期間や排出枠の割当の仕方(グランドファザリング、オークション等)、対象部門や対象ガスなどはさほど重要ではない、とした。 

これらの条件を考えるとなかなかリンクは容易ではなく、リンクするにはおのずとEUの制度に近いものを構築せざるを得ないのではないかという印象を持った。

EUに加盟していないがEU排出量取引にリンク予定のノルウェーは、京都目標の達成がかなり厳しい上に一国だけの狭い市場では限界があるので、リンクによる市場拡大とCDM/JIの活用促進へ期待と意欲を示した。

オランダは2010年BAU排出量の▲20%に相当する40Mトンを削減する必要があるが、その半分を国外からのクレジット購入、残りを税や自主協定等国内対策で賄う予定である。EU排出量市場のCDM/JIへのリンクによりEUでのCDM/JIのインセンティブとなること、リンクによる市場拡大でクレジット価格が下がること等に期待を示した。
CDMプロジェクトへ向けた準備(6/24 IETA) 

今までのCDMの経験の積み重ねからより効率的な実施へ向け議論が行われた。

EcoSecuritiesのメンバーからは、CDMの承認手続きが遅い上に、承認されるかどうかというリスクもあることや、方法論が個別案件ごとにあまりに固有化しており実際のプロジェクトに当てはめて使いにくいことが指摘された。従って、CDMの手続き自体もっと簡単にすべきであり、また方法論は、統合されたもの(consolidated methodology)が必要であることが強調された。

またCDMプロジェクトを認証するバリデーター・ベリファイヤーの立場から、SGS社のメンバーは、プロジェクト実施者にとってバリデーションのサイクルがいまひとつ明確でないこと、プロジェクトに追加性をもたせるのも容易ではないのにガイダンスが欠けていること、ベリフィケーションについてもガイダンスが必要なことを指摘した。

CDM理事会のボースティング氏は、CDMのボトムアッププロセスは時間を取りすぎることから、CDM理事会として方法論に関する手順を見直す必要があることを認めた。今の方法論審査が固有の案件ベースに傾きすぎていることについて、統合された方法論を導入することで解決していきたいとするなど、CDMの手順のわかりやすさスピードアップへ意欲を示した。
以上

[1] GAAP(Generally accepted accounting principles). 一般会計原則. 制度・法律. 妥当とされた会計概念、基準、および、実務の体系。 財務諸表の作成にあたり、その基準となる。