「途上国の都市排水問題解決と中・長期の水資源
開発・利用に関するセミナー」について
持続可能な都市の発展へ向けて
当研究所は、WRI(世界資源研究所、ワシントンDC)、ICETT((財)国際環境技術移転センター、四日市)等と共同で平成5年度に新たに掲げた「環境技術協力国際フォーラム」の2年目の活動として、来年1月にバンコクでセミナー及びフォーラム会合を開催すべく計画中である。これは、主にアジアの途上国の中で、より具体的で地域別
に共通する環境問題として、経済的発展の著るしいアジアの途上国の都市部に焦点をあて、そこに存在する排水処理問題を、中・長期的観点からの水資源開発・利用問題をタイをケース・スタディとして行うものである。そして途上国のNGOとの対話を通
して問題提起を行い、これからの現実的な解決策へのアプローチとして取り組んでいきたい。
<途上国(特に都市における)排水の処理問題、とりわけ家庭排水と水資源開発問題に焦点をあてることの意義>
水質汚染問題への対応は、大気汚染問題とならんで途上国での緊急の環境課題になっている。とりわけ急速な工業化と都市化がほぼ同時期に進行しつつあるアジアのNIESと、それらの国に追いつこうとしている国々では、水質汚染問題が首都圏に代表される大都市地域において顕在化しつつある。こうした事情を背景に、例えばUNDPが支援し、世界銀行が1989年に開始したMEIP*(Metropolitan
Environmental Improvement Program:首都圏地域の環境改善計画)の基本的考え方も、一方で国・地域の継続的な発展を念頭におきつつ、他方で急速に顕在化しつつある環境問題にアジアの都市地域が取り組むことを支援しようというものであった。
中でも水処理問題は、大気汚染とならんでアジア諸国の都市部の健全な発展の為には、緊急に対策を要請されている問題である。特に、十分な都市計画がなされないままに、急速な都市化が進行しているこれら地域の大都市においては、一方では住民の衛生問題の観点からも、また実施に携わる行政サイドの対応の観点(どのような組織で対応するのか、従来の組織との職務分掌はどうするのか、生じるコストはどのように賄われるべきなのか等)からも、比較的対応が容易な産業排水問題とは異なり、コスト/パフォーマンスの悪い(生活)排水処理問題が現実に重要な課題になっている。
この問題は、途上国特にその都市部が健全な発展を達成する上で、是非とも克服すべき主要課題の一つである。この点で、過去にそうした問題を経験し、克服してきた我が国を始めとする先進諸国が、具体的な貢献をすることができる余地が大きな分野と考えられる。
<何故、タイの水問題か?、フォーラムとのつながりは何か?>
アジアの途上国の中では、先行するNIESに次いで先進国の範畴にはいるタイのバンコクでフォーラム会合を、政府ベースではなく民間のイニシアティヴで開くこととしたのは、一つには政府間での活動を側面
から支援し、合わせて民間部門同士の具体的な問題を共に検討することを通
して相互理解を強め、結果を関係諸機関にアピールしていこうという上記「フォーラム」の基本的な思想を現実の活動に反映させていこうとの意図からである。共同主催者であり、タイ側のカウンターパートであるTEI(Thailand
Environment Institute)は、昨年5月にTDRI(Thailand Development Research
Institute)の環境部門が独立してできた新しい民間組織である。背景には・健全な環境NGOsを育成しようというタイ政府の方針があるといわれる。
二つ目にはこうした水処理問題での対策が具体的に検討され、それが上手く軌道にのるならば、近隣諸国へ将来的には伝搬する可能性もある点に着目したことである。いわば南南協力へ向けての触媒作用が可能かどうかのテスト・ケースにもなりうると考えたわけである。
<具体的な目的は?何を検討するのか?>
タイにおける以下のような諸項目のケース・スタディとそれに基づく議論を通
してフォーラム参加の諸外国(当面はアジアからはインドネシア、中国、インドの3か国)の専門家、現地タイの行政、民間企業、学識経験者、NGOs、更に日系企業を含む関係者を含めた人々との共通
理解を深め、ひいてはこの分野での民間部門を中心として望ましい国際的な技術協力の具体的な形態を模索するのが、このセミナーの狙いである。
<セミナーでの検討予定内容>
1.水汚染の状況と排水管理の対策。
2.環境問題解決に際して市場メカニズムの機能を適用することの実現可能性。
3.環境のモニタリング及び解析の面での民間セクターの参加促進。
4.NGOs、民間セクター、政府及びメディアといった関係するすべての当事者の環境に対する意識高揚。