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1995年7月号

「ダイナミック・アジア」出席報告


 去る、3月27日〜29日の3日間、インド・ニューデリーにて、国際商業会議所(ICC)主催の「事業機会会議−ダイナミック・アジア」に出席し、巨大市場への成長が期待されるインドが目指す経済発展とその過程における諸々の課題をインド自身が、どのように捉らえ、また他の国々は、どう考えているのか等、直に見聞することができたので概要を報告する。開催目的は、講演・討論を通 じてインドさらにアジアでのビジネスチャンス拡大へのカギを探ろうとするものである。参加は日本を含み、計63ヶ国、日本からの8名を含む700名を数えた。

 会議は初日、N.ラオ首相の公式開会スピーチで幕を開け、アジア経済の展望ほか、規制緩和、地域経済協定、海外投資と開発、中小企業育成・支援のセッションテーマの下で、各国のビジネストップスによる、45件のプレゼンテーションと討論が3日間にわたって持たれた。

 インドでの産業・経済発展と市場の拡大への課題として、道路・港湾・電力供給・水利等インフラ整備の必要性が多くの発表で指摘され、更に、ダウンサイジングの壁となっている現行労働法の改正、軽視されがちな知的所有権の尊重、金融市場の育成等、早急な対応を求める声が、西欧工業国からの発表で相次ぐ一方、シンガポール、フランスからは、アジア市場への西欧からのアプローチには、双方の文化的側面 の理解の重要性にも留意すべし、とのメッセージが示された。アジア製品を排除せず、自由競争を確保するようにとのアジア諸国から先進工業国への要求、WTOの趣旨を損なわぬ 地域主義「オープンリージョナリズム」の堅持、自由競争導入と対をなす社会保障システムの整備の重要性、企業民営化のもたらす様々な社会的・経済的メリット、税制と投資に関する政策の明確化、人的資源開発の強化・促進などが、全体的なメッセージとなった。

 閉会は、M.シン蔵相の45分にわたる講演により、21世紀にむけてのインド経済システムの課題と展望が披瀝され、「富の分配の質」を向上させる、新たな国際貿易のアプローチのために、インドの教育、貯蓄、技術開発、インフラ等の高度化、国家の近代化の推進、アジア内での相互協力を進め、真の「アジアの時代」構築を目指そうと格調高く結び、会場はしばし拍手が鳴り止むことがなかった。

 今回、初のインド訪問の機会を得、短期間の滞在ではあったが、悠久の歴史に裏打ちされた、インドの持つ奥深さと巨大なエネルギーを垣間見ることが出来た。現政治体制の安定性に、多少懸念の向きもあると聞くが、まさにこれから立ち上がろうとする今のインド産業経済の勢いには、限りない可能性が感じられ、その発展の足取りには深い関心を寄せざるを得ないとの思いを強くした。