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1996年7月号

新委員会紹介
「企業のグローバル化と国家・社会の
在り方を考える」研究委員会


 当研究所では「地域経済統合と世界経済システムを考える」研究委員会(92年度公文俊平座長)、「グローバルエコノミーシステムにおける産業競争力」研究委員会(93.4年度伊丹敬之座長)や国際シンポジウム「21世紀文明とグローバルシステム」(94年度)、「メガコンペティションと新国際秩序」(96年度)等を通 して地球経済社会のための国際システムのあり方に関する調査研究を行ってきた。標記研究委員会はこの流れに沿ったもので本年1月に発足した。

 以下にその概略を紹介する。

1.研究委員会の趣旨

 グローバルに発生する現今の諸々の課題は、従来の国家を単位 とする枠組み、国際的機構のカバー範囲を超えるものが多く、その克服、処理、調整には、新たなガバナンス構造が必要とされる。

 産業もまた、グローバルに展開され、超国家企業(TNC)による国境を超えた事業経営は、国家レベルに達するほどの経済規模と国際規模と国際的影響力を保有しつつある。しかし存在を巨大化させるグローバル企業が、既存単位 としての国家・国家群から全く独立した行動を取れる訳でもなければ、社会的関係なしに存在できないことも明らかである。国家間、あるいは国家とTNCが相互依存を一層深化させる中で、夫々はいかなる関係を築いていくのか、その在り方とそこに至るアプローチを探り、そのプロセスにおける各々の役割、責任を考える。

 本研究委員会では以上の様な問題意識をもって討議、検討を行い、以下のメンバー、討議項目に即して報告書を96年度末にまとめる予定である。

2.研究委員会メンバー(五十音順、敬称略)

 国家貿易投資研究所の佃理事長)を座長とし、国際経済、政治の研究者、国際社会の第一線で活躍しているエグゼクティブ、ジャーナリスト等、幅広い分野にわたるメンバー構成となっている。

座長  佃 近雄    (財)国際貿易投資研究所 理事長
委員  石黒一憲    東京大学 法学部教授
    伊丹敬之    一橋大学 商学部長
    牛島俊明    名古屋市立大学 経済学部教授
    小枝 至    日産自動車(株) 取締役企画室長
    古賀 一    三菱商事(株) 参与化学品担当役員補佐
    小島 明    日本経済新聞社 論説副主幹
    後藤俊夫    NECホームエレクトロニクス(株)主幹
    斎藤 優    中央大学 経済学部教授
    G.フクシマ  在日米国商工会議所 副会頭
            日本AT&T(株) 副社長
    鈴木典比古   国際基督教大学 国際関係学科長教授
    土屋武夫    麗澤大学 国際経済学部教授
    北畑隆生    通産省 大臣官房企画室長
    藤岡文七    通産省 産業政策局国際企業課長

3.研究の視点

○「属地主義」の行方
 今後、企業はトランスナショナル化への傾向を強める。中長期的には企業利益が国家利益と同義でなくなる中で、国家はどこまで「属地主義を維持・堅持すべきか?企業は進出先(ホスト国)との摩擦・衝突に母国の後ろ楯をどこまで期待し、また母国はどこまで支援・保護しうるか。

○国家主義権の衝突とその調整(国際ルールのあり方)
 独禁法の域外適用を防御する新たな仕組みとその構築(国際独禁法)
 内国民待遇、相互主義、報復(制裁)主義に代わる、より促進的政策はないか

○グローバルフレームワークのなかの企業の実態
 石油資本のグローバル化と国家の果たした役割
 日本のグローバル企業(製造、金融、マルチメディア)と国家・社会との関わり
 第三世界と技術移転における問題点

○異制度・異文化地域での企業経営のあり方
 異制度・異文化・異なる社会構造を有する国家/地域での融合化の基本思想
 グローバル企業の倫理的課題、行動規範

○日本のスタンスと具体的政策題
 グローバリゼーションとナショナリゼーションの調和、その政策
 外国企業の国内参入、日本企業の海外進出についての政策調整

4.研究項目と全体スケジュール

8年 1月 本委員会の方向性についての検討
2月 国家・企業・経済摩擦の一般分析 鈴木委員
 
3月 アジアにおけるグローバリゼーションの展開方向 斎藤委員
多国間投資協定の概要と交渉経過 通産省 吉田代理委員
4月 ヨーロッパ市場統合と企業の対応 横浜国立大学 吉森教授
グローバル企業の倫理的課題 土屋委員
5月 自動車産業における技術移転と問題点 小枝委員
金融業会のグローバル化と問題点 さくら総合研究所 亀高常務
6月 グローバリゼーションのあるべき姿、米国の懸念 フクシマ委員
韓国企業のグローバル化を阻むもの 三星ジャパン リー社長
7月 化学のグローバル化とその阻害要因 古賀委員
ソニーの国際化と国家の関わり ソニー海外調査室 山本室長
8月 マルチメデイアビジネスと国家・社会の関わり 牛島委員
国境を越える法律問題の全体像 関東学院大学 奥村教授
9月 グローバル企業と国家の役割 小島委員
米国資本主義の陰鬱 興銀NWアセットマネジメント 奥村社長
10月 技術移転における第三世界と日本の役割 後藤委員石黒委員
中国進出企業の現状 ヤオハンCCBC 秋山副社長石黒委員
11月 グローバル化をめぐる国内制度、政策の調整 北畑委員石黒委員
グローバル化と国際ルールのあり方 経済企画庁 未 定石黒委員
12月 グローバリゼーションとナショナリゼーション 伊丹委員石黒委員
まとめ 佃座長石黒委員