ニュースレター
メニューに戻る


1996年10月号

96年度第1回地球産業文化委員会の概要


 題記委員会がさる8月29日に地球産業文化研究所会議室で行われ、地球産業文化研究所の方向性、重要課題等について2時間にわたって審議を行った。
 ご出席の委員は、木村委員長、阿比留委員、岩男委員、北岡委員、河野委員、島田委員、福川委員。この他、通 商産業省大臣官房企画室、環境立地局地球産業対策室よりオブザーバー参加があった。
 以下は事務局で議事内容を要約したものである。

(挨 拶)
○木村委員長 カエルに乗って川を渡るサソリは、カエルを刺すと自分も溺れるとわかっていても本能的にカエルを刺してしまう(或る映画にあったエピソード)。このように全世界的に非合理主義が大きな力を持ちつつある。今こそ、合理的な発想、判断が有効だ。

(地球環境問題に対する人々の意識)
○島田委員 一般の人に地球環境の問題がどのぐらいシェアされているのか。経済学部の学生が公定歩合を知っているように、CO2問題を考えさせる手だてはないか。食糧問題は経済よりはるかに重大だ。
○福川委員 温暖化とエネルギー消費の悪循環を切らないといけない。

(原発立地、安保、ゴミと民主主義など)
○島田委員 エネルギー問題は都会の問題だ。
○福川委員 都会と立地地域の受益と負担の問題がある。
○阿比留委員 安保の問題と同様、都会と地方という問題をどう整理していくか。
○岩男委員 立地地域と消費地の問題だ。
○島田委員 エネルギーと食糧とごみと安全保障、豊かな社会でこれをどう負担するか。

(サステナビリィーの見極めの必要性)
○清木専務理事 地球環境については地域間の不公平にどう対応するかだ。
○島田委員 オオカミが来ると訴える事も必要だ。
○木村委員長 これからの日本でどこに重点を置くか見極めるときだ。資源、エネルギー、所得。本当の意味の「エコノミー」。総点検をする時代だ。
○福川委員 短期の問題と超長期の問題をどうするか。レスター・ブラウンの指摘の中で一番心配なのは水だ。
○島田委員 環境と経済の研究をドッキングし、研究結果を一般の人々がシェアできるようにしないといけない。

(いわゆる「トイレ」の問題、地方自治)
○河野委員 環境の専門家と政治経済の専門家が、交流しないといけない。環境は環境、経済は経済という風潮だ。日本産業の大量 廃棄は、あと10年ぐらいで統計的には行き詰まる。地方はごみ捨場になりたくない。そこに住民運動が起こる。これが子孫全体に影響を与え、皆で反省するような契機にもなる。
○岩男委員 今までは補助金によって地方のもつ内発的な力がそがれてしまった。
○島田委員 基地収入が住民間の格差を生み、町は貧血状態だ。国の均一な政策では対応できない。目に見えない安全とかごみの不快感とかを基準財政需要の中に組み込み、住民への再配分を考えるだけでも、何か違ったことができるんじゃないか。
○河野委員 地方交付税のシステムがあるから原子力発電所がなくたって金が来る。そういう状況下でごみを、原子力を、廃棄物をお願いしなければならない。地方分権には財政の矛盾が絡んでいる。今の仕組みでは自主財源がふえたら交付金は減る。
○島田委員 行政改革して公共費を減らしたら地方が潤う仕掛けが必要。行政改革して税率を下げた地方には富裕層が集まって来て税収が上がる。
○河野委員 それが出来れば楽なんだが。
○島田委員 「あすの民主主義」をやりませんか。

(日本の課題)
○北岡委員 権限移譲は大きな政権変化でしか実現しない。
 20世紀システムの限界に日本だけ手がついていない。
○島田委員 財政赤字からやがて貿易赤字になり、ディクラインして長期的に為替レートが下がりインフレになる。実質賃金が下がって輸出競争力がリバウンドする。発展の時代は終わって静かなディクライン。日本はその程度の国だという考え方もある。
○木村委員長 日本人はまた働き出しますよ。
○福川委員 働こうにも情報技術などで遅れている。
○岩男委員 人口が少子化で減るという問題がある。
○島田委員 ぜひ提言してもらいたいのは移民法だ。門戸を開いたとき、国の魅力とは何かが問われる。
○福川委員 ヨーロッパはアメリカより改革後の日本のシステムに学びたいと思っているが。
○木村委員長 研究テーマに日本を入れる必要がある。
○島田委員 自治と責任の話。「トイレ」をどうするという根本的な価値観は非常に重要なテーマだ。今までの民主主義が機能するのかどうかわからない。それに人口の長期低減。人口が減って成長しないと金利が払えない。生産と分配システムが変わる。日本が最初に経験する問題だ。

(価値観)
○北岡委員 価値の問題、「文明の衝突」は焦点を決めて取り組むといい。たとえばインド人はインドのことをどう教え、インドの何を誇り、インドのどういう過去をどう正当化し、それを未来にどう生かそうとしているか。教育の次元などで見て、あるべき日本という価値を再生産する過程を比較研究的にやることが必要だ。もう1つは、無意識に前提とする自分の国らしさを比較したらどうか。もう1つ、次のアジアで問題になるのは法治主義、紛争処理だ。最近のアジアの発展を基礎にインドからイスラムまで視野に入れた比較法の研究はあまりない。