貿易と環境に関する日米共同研究ニューヨーク会議
昨年7月より、国際交流基金(CGP:Center
for Global Partnership)の後援で行われてきた「貿易と環境に関するGETS
- GISPRI共同研究」の総括として、標記会議が6月26、27日の両日にわたりニューヨークのエール・クラブにおいて開催された。会議概要は以下のとおり。
1. 出席者
GETS:Global
Environment and Trade Study
Steve Charnovitz:
Director, GETS, Yale University
James Cameron:
Director, Foundation for International
Environmental Law and Development
Daniel Esty:
Director, Center for Environmental Law
and Policy, Yale University
Mark Ritchie:
President, Institute for Agriculture and
Trade Policy
Christopher Stone: The
Law School, University of Southern
California
Andr・Dua:
Global Environment and Trade Study
Rajini Ramakrishnan: Yale University
GISPRI:(財)地球産業文化研究所
GUESTS
Laura Campbell:
Environmental Law International
茶野 純一:
国際交流基金ニューヨーク日米センター ダイレクター
芦沢 キンバリー: 国際交流基金ニューヨーク日米センター
2.会議概要
日米それぞれ用意した研究ペーパーをもとに、プレゼンテーション、コメントおよび討論という形式で会議を進め、共同研究および会議の総括として(4)の共同声明を採択した。
(1) 補助金関係
- 「世界の漁業における弊害:貿易法はその修正策を持ち得るか」Prof.
Stone
- 「農業、貿易および環境のリンケージの研究:米国の農業補助金のケーススタディー」Ritchie氏
- 「貿易と環境の問題における環境補助金」植田教授
(2) APECにおける環境
- 「APECにおける環境政策」城山助教授
- 「APECにおける貿易と環境」Prof. Esty
(3) 紛争回避
- 「APECにおける紛争調停:法制度および文化ギャプの橋渡し」Cameron氏
(4) GETS−GISPRI共同声明
貿易政策と環境政策の改善に向けて
国際交流基金後援の日米共同研究参加者による共同声明
1997年6月27日
過去1年間、Global Environment & Trade Study(GETS)と地球産業文化研究所(GISPRI)の両研究所は、環太平洋分析共同プロジェクトを実施し、米国、日本、APEC域内、そして地球規模において、貿易と環境政策をより一層相互に効果
的なものにする新しい手法を探究してきた。
本プロジェクトは、貿易と環境に関する国際的議論における枢要な時期に実施された。
1996年11月、世界貿易機関(WTO)の貿易と環境委員会(CTE)は、その最初の報告書を提出したが、世界を広く落胆させたことに、CTEはほとんど勧告を打ち出すには至らなかった。WTOでの環境関連の討議は、引き続き論争を巻き起こしている。APECの指導者達が「持続可能な発展」へコミットしているにもかかわらず、その約束を現実化するような行動は、ほとんどなされていない。
1997年6月、多くの政治指導者が国連総会で、現在の国際機関の構造が充分であるか否かや、リオ以降実質的な進展がなされなかったことに懸念を表明した。
これらの政策上の失望に直面しているとはいえ、GETS/GISPRI共同研究の参加者は、「貿易と環境」で進展する機会が多くあると見ている。特に我々は次の点に着目する。
1.APECは、アジア太平洋地域での貿易と投資の自由化の問題で、環境問題に取り組むことを確実にする上で、貴重な議論の場となる可能性がある。
APECは、地域レベルでの環境問題への取り組みに重要な役割を持つ。APECはまた、各国の環境プログラムを強化するためのキャパシティビルディングを支援し、地球規模での環境協力を強化するメカニズムをも提供する。
2.APECの環境プログラムには、アジア太平洋地域での協力を促進するため、新しい構造や手続きが求められている。この意味で、考慮すべきなのは、非政府組織(NGO)の特定の役割、
APEC内で進められている生態系や資源関連の多くの努力に取り組む常設の環境委員会、および適切な紛争調停メカニズムである。
3.気候変動は、主要な環境政策上の課題である。APECが共同実施、技術移転、他の協力手法に焦点を当てることは、効果
的で効率的な温室効果ガスの削減へ向かう上で、有益であろう。 4.一定の補助金を削減するためのイニシアティブは、貿易と環境双方の目標達成へ向けての重要な機会を提供するかもしれない。したがって、これはAPEC、OECDおよび他の多国間レベルの政策担当者にとって優先度の高いものとすべきである。補助金に関するイニシアティブを成功させるためには、さらなる理論的研究が必要である。多くの国での国内政策上の複雑さに対し、注意深い配慮がなされなければならない。
5.世界貿易機関の貿易と環境委員会は、貿易と環境それぞれの目標を調和させる上で、これまでほとんど進展をみせなかった。CTEの将来の作業努力を効果
的にするためには、より焦点を絞ったマンデート、環境面の関与の増加、分析のさらなるインプットなどが必要である。
6.いくつかの貿易と環境の緊張状態は、貿易の政策面と制度面の欠陥から生ずるものがある一方で、国際的な環境管理の諸問題に起因するものもある。この点において、高いレベルの配慮が、国際的な環境関連組織の再構築や簡素化に払われるべきである。国連特別
総会(地球サミット+5)で、ドイツのコール首相他の世界的指導者達に支持された地球環境機関(Global
Environmental Organization)設立の提案は、政策担当者達のより集中した注意に値するものである。
7.各国政府は、環境グループ、ビジネス界および他の組織などのNGOを、競合するアイデアや分析研究の提供者として、APECプロセス、WTO、そして他の国際機関での作業の中に、参加させることの価値を認識しなければならない。
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