アジアの情報通信事業戦略について
アジアの通過・経済機器を超えて情報通信革命による軌跡がおこるか
今回、アジア情報通信事業の現状とその課題の調査のためシンガポールとマレーシアに出張した。特に、アジアの情報通
信事業の先進国といわれているが両国であるが、21世紀にむけてどういう情報通
信戦略をとるか、また日・米・欧諸国との連携をどう考えるかが注目されるところである。つまり、将来のネットワーク社会、例えば、産業ネットワーク、金融ネットワーク、企業ネットワーク、人材ネットワーク等の連携をどう考えるか、それらをどう効率的に組み合わせ、経済的、社会的発展を実現するかが重要な鍵になる。最近のインドネシアから連鎖的に起こったアジアの通
貨・経済危機に直面した状況において国家の情報戦略をどう見直し、またそのための基盤をどう構築するかが大きな課題となっており、他国からの関心も集めている。
アジアの情報通信革命というものは過去のアジアの奇跡的経済発展を実現した後、将来の国家ビジョンを明確にする意味で重要である。特にシンガポール、マレーシアの戦略はアジア内でも先進的で独自性があり、今後の推進方法についても日・米・欧の主要先端企業との戦略的提携を中心として産業の活性化を推進し、産業振興政策上も重要な位
置付けとなっている。情報通信革命の中心となるネットワーク機能の強化はアジア情報の発信の基地というだけでなく、国境をこえた各種企業・機関等との対等な連携を深め、新しい産業や価値の創造へと進むのである。しかし、現在の情報通
信事業の進捗状況は最近のアジア経済・通貨危機の影響でその積極性に関する懸念も出ており、国家プロジェクトのなかで優先順位
は高いものの、慎重な姿勢が見られるようになった。
上述にような経済環境のもとで、情報通
信事業の構想自体とくに問題はないが、本当に当初期待されていた成果が十分に出るかどうか成功のための重要な鍵である。情報通
信ネットワークの構築によって、国内外における活発な情報通信関連事業が行われ、各階層ごとの提携による産業・経済・技術等の発展がすすむと予想されが、個人的には以前からアジアに対する経済成長に関する将来性に疑問を持っている。というのは、過去の経済面
での成功の主な理由は安い労働力を活用するために欧米型の産業を資本・技術・人材ごと投入し、その結果
、国際競争力が増し、輸出を推進したためである。今後も従来型の外資依存の戦略を取り続け、先進国の後を追う方法をとる限り、更なる発展は期待できない。情報通
信社会という、新しいパラダイムのなかで、また、だれもが平等にアクセスできる未来型の情報基盤のもとで創造力のある差別
化をしなければ国家として発展はないと思う。今、その転換点にきているような気がする。その場合、政府がその戦略の意図を国民に浸透させるだけでなく、国民自体、その意義を理解して行動するかが重要である。将来、アジア内でもその国の経済、産業面
でのアイデンティティを示しながら、ハブ基地として日・米・欧との連携を深めることがなければ意味のないことである。そうでなければいままで通
り、先進国の補完的な一部製品の一般的な工業国から脱却できず、他の新興工業国と同じレベルにとどまるであろう。つまり従来型の商人国家から脱却できないということで、欧米型の先進的な新たな産業は生まれてこないのである。
欧米型のベンチャー企業の創生を推進する上でベンチャーキャピタル、大学・企業との連携による新技術市場の創造、サイエンスパークの設置、各種優遇等の整備等の制度強化以外に人材の育成が重要な課題になる。若い人材が欧米の大学に留学しているが、かれらをいかにうまく活用するかも情報通
信分野の活性化につながるものである。台湾・インドは留学経験者の努力である分野では成功していると思う。
シンガポール、マレーシアの情報産業プロジェクトの現状
シンガポール
シンガポールはアジアのなかで情報通信分野の戦略構築にいち早く着手した国である。従来の貿易立国という立場に加え、インテリジェント・アイランドという発想を国家戦略に盛り込んだもので、経済発展の核にしようするものである。
IT2000
IT2000という情報通信社会に向けての基本戦略は明確になっている。21世紀のむけてシンガポールが情報通
信先進国としてすべての家庭、企業等の機関をネットワークで結び、日・米・欧との国際的連携を促進し、更なる発展を目指すものである。その中心的存在がSingapore
ONEや電子商取引という新しいシステムである。具体的にははその基盤構築が進み、各種サービスの提供が始まる予定である。今後の課題は21世紀に向けて独自の産業構造の転換・振興の推進が必要である、また日米欧の産業との差別
化、ベンチャー企業よる新産業の創生、またそのための枠組作りの検討も行なわれる。シンガポールの場合、一般
的にいわれている意図的な情報統制の問題が画一的な思想を生み、多様な価値観の検討を妨げているという不安もある。
Singapore ONE
Singapore ONEはIT2000の主要戦略で、広範囲のいわゆるマルチメディア・サービスを提供するものであり、家庭、学校、企業等の端末から自由にアクセスできるものである。広帯域の情報通
信網であり、光ファイバー網等を整備し、情報通信発進基地として国内、アジア・太平洋地域へとその質の高い情報を発進し、産業、金融等のハブ機能としての役割を果
たし、相互に発展するものである。
マレーシア
国家プロジェクトとして推進されておりMSC(Multimedia Super Corridor)も現状の通
貨危機に起因する財政支出カットの影響で他の大型プロジェクトと同様にかなり遅れている。企業誘致に関しても日米欧の有力企業のトップとの委員会(International
Advisory Panel)もなかなか予想通り進んでいない。アジア経済の先行き不安だけでなく、本来の目標・成果
が十分達成できるかに対しても厳しい目がむけられている。この事業の成功は情報通
信に関連するマレーシアの人材を効果的に活用できるか、マレーシア人が独創的な発想で新たな価値を生み出すことができるかにかかっている。そういう面
で従来の発想・価値観を変えるくらいの教育が重要になる。
Multimedia Super Corridor
首都クアランプールの南に開発した最新のマルチディア技術開発企業集積地域のことです。各企業が相互にその開発メリットを享受できる情報インフラを整備したサイバー都市である。都市インフラの強化、各種税制面
での優遇処置により海外からの有力企業の誘致に積極的な都市環境に優れ、環境にも気を配った21世紀型の新型開発である。構想自体はいいのではあるが、他のいわゆるサイエンスパーク、例えば、シリコンバレー、台湾・新竹、バンガロー等とどう差別
化していくか、良い人材をいかに効率よく集めるかが大きな課題である。