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ニュースレター
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1998年5月号 |
CONFERENCE |
欧州環境技術移転動向現地調査平成9年度「アジア地域における環境技術移転研究委員会」活動の一環として、先進国による途上国向け環境技術移転支援について最近の動向を把握する目的で、欧州の政府機関、国際関係機関、NGOを訪問し、基礎調査を実施したので報告する。 1.「欧州・アジア環境技術ネットワーク」ワークショップ国際環境保全・廃棄物処理機材技術展(於ドイツ・デュッセルドルフ:注)の開催に併わせ、ドイツの民間団体である国際環境技術移転センター(ITUT)の主催により行われた。 ASEM(アジア欧州首脳会議加盟国)では、持続可能な開発を促進するために、環境技術移転による欧州−アジア環境技術協力の促進を行うこととしており、その中核組織となる、「アジア欧州環境技術センター(AEETC)」をタイに設置することを計画している。この機能としては、環境保全に対する現地側のニーズと提供可能な環境技術情報のマッチングを行う、情報仲介組織(バーチャルセンター)であり、早い段階での環境産業の参加と支援が望まれている。同様な機能として、日本では既にAPEC域内での環境技術の情報交流を促進する「APEC環境技術交流バーチャルセンター」が1997年4月から正式に運用を開始している。今後、こうした既存組織が持つ情報コンテンツを共有化し、途上国へ適切な技術情報をスムーズに移転・普及させていくことが、今後の課題である。 (注)ドイツ機械プラント製造者協会協賛。73年に第1回が開催され、今年で第9回目。ドイツをはじめとする世界40カ国、1,100社以上が出展。従来型汚染対策である大気浄化、水処理、廃棄物処理に加えて、今回は地球温暖化防止への動きを反映して、エネルギー分野(省エネ、新エネ等)の出展企業が独立したホールで展示を行った。 2.EUレベルでの途上国向け環境ビジネス支援オランダのNGO組織であるJIN(注)によると、欧州委員会のエネルギー担当第17総局は、1990年から”Thermie”プログラムを開始した。これは、欧州企業の持つエネルギー技術の利用促進を通 じたSO2、NOx排出削減による大気汚染の緩和、途上国向け技術移転推進、また、再生可能エネルギーに関する、クリーン・高効率技術のデモンストレーションとその促進を目指すもの。95年からは、”Joule-Thermie”として98年まで引き続き4年間のプログラムが行われている。 (注)オランダ経済省と環境省が支援するJI Initiative fundで運営されている世界のAIJ/JI(共同実施活動/共同実施)関連情報収集、普及センター。 3.ドイツの環境協力プロジェクトドイツ経済協力省の委託を受けたドイツ技術協力公社(GTZ)は、主として相手国(途上国)からの要請ベースで相手国の開発援助プロジェクトへの協力を行っている。この内、環境面 での協力として、途上国の環境技術対応能力(capability)を強化するパイロットプロジェクト(ETC)が行われている。これはドイツと途上国の政府、産業、研究、教育それぞれのセクター間での環境技術交流促進を目指すもので、当面 の対象国はタイ、インドネシア、インドの3カ国である。 4.欧州復興開発銀行(EBRD)の環境対応プロジェクトEBRDのエネルギーチーム、省エネルギーチーム、自治体環境インフラチームは、1997年度に総額2億米?の6件のプロジェクトへの融資を決定している。その他のプロジェクトの中での環境保護の設備投資等(2.2億米?)を合計するとEBRDの総額融資の17%は環境事業または環境関連投資向けとなっている。EBRDはまた再生可能エネルギー利用の発電所や、地方自治体運営の地域暖房熱供給会社等のエネルギー分野への投融資を行うことにより、地球温暖化ガス排出削減への貢献をも行っている。 (注)91年設立の旧ソ連・東欧の市場経済化支援を目的とする地域国際金融機関。(了)
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