第8回北東アジア経済フォーラム米子会議
〈期 日〉:’98.7.28(火)〜29(水)
〈場 所〉:米子コンヴェンションセンター
〈参加国〉:中国、北朝鮮、韓国、日本、モンゴル、ロシア、アメリカ
〈参加人数〉:基調講演:2,000人、会議500人
〈主 催〉:鳥取県、米子市、北東アジア経済フオーラム、東西センター、他
〈後 援〉:UNEP、UNDP、通産省、外務省、環境庁、他
地球環境対策部 寺田 隆(記)
1.北東アジア経済フオーラムの目的
北東アジア地域の人材、自然、天然資源を活用し、お互いの協力により、飛躍的に発展させたいとの願いより、米国の東西センター(NGO)が中心となりフオーラムが誕生。
2.歴史
1991年より毎年開催。今年で8回目。
3.このフオーラムが発展している要因
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関係国間の国交が改善されてきた。
冷戦後は中・ソ関係が改善され、1989年に国交正常化実現。
韓国・ロシア関係も1988のソウルオリンピックから急速に改善され、1990年には交流が大幅に増加。
中国・韓国の関係も1992年に国交回復。
日本・ロシアは北方領土問題で正常化していないが、定期首脳会談等で急速に接近中。
残る課題は北朝鮮と韓国・日本との国交である。
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この地域では各国の経済的な補完性が高い。
ロシアは石油、鉱物、森林、漁業資源、中国と北朝鮮は労働力、韓国・日本は資金および技術力。市場規模も人口3億人、GDP5.5兆ドル。
4.図們江開発の位置付け
図們江は長白山に源を発し、北朝鮮、中国、ロシアの国境を抜けて日本海に注ぐ全長516Kmの大河。図們江開発は北東アジア経済圏形成の突破口。現在は三国がそれぞれ開発を行っている。北朝鮮は社会主義の国であるが、羅津・先鋒自由経済貿易地帯は市場経済に窓を開き、諸外国の企業が進出している。現在約50の企業があるが、ほとんどが零細企業。ただし今後中継輸送地域としての発展は有望である(羅津は天然の良港、50Km先には吉林省という大マーケットあり、ロシアの国境からも50Km足らずで広軌の鉄道が入っている)。主な進出企業としては、オランダからING銀行が合弁銀行を起こしている。またタイのロックスレーという会社も通
信業務に進出している。
5.日本政府の対応
図們江開発に限らず、日本政府の北東アジアの開発に対する姿勢は、非常に消極的であり、韓国の後をついていっても良いといった程度。この理由は、北朝鮮とは国交が樹立しておらず、政情が不安定であり、拉致による行方不明事件や韓国とも問題を起こしていること等である。
6.今後の開発の主体
地方自治体、民間企業による経済活動によって開発を進めるのが主。問題はインフラ整備の資本をどう調達するか。試算では年間50億ドルの資金不足発生するとも。世界銀行、アジア開発銀行を補完する北東アジア開発銀行の設立や、アジア開発銀行の中に北東アジア開発基金を創設することなどが、検討されている。
7.感想
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経済発展の可能性各国の環日本海の地域は、いずれもその国の経済活動の主体となっている地域ではない。日本ではむしろ、過疎化の進んでいる地域である。ただ、各国のこの地域の特性を、相互補完的に役立てることができれば、この地域の経済発展は他に類を見ない、大成功をおさめる可能性を秘めているといえる。
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リスク北朝鮮を抜きには考えられない経済圏構想。現段階でのリスクはかなり大きいといえる。日本国政府としてはバックアップできないのも理解できる。
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今後の展望
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政府の支援を期待せずに、地方自治体、民間資本の協力により、純粋に市場原理に基づいて開発を行う必要があろう。
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日本のエネルギー源は中東依存率が大であるが、今後中国がエネルギー輸入の比率をますます大きくすることは、明らかであり、世界的なエネルギー争奪戦が始まることが予想される。この観点からは、この北東アジア天然ガスパイプライン構想が、実現するかどうかは大きな影響力を持つことになる。今すべきことは、日本としてエネルギー輸入戦略ストーリーをどう構築するか。次にそれに沿った外交政策の立案・実施であろう。
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地域自立の開発という観点にたてば、この地域を、漁業資源の供給基地として位
置付けることも、重要な開発のありかたであると思う。そのために漁業をどう復興させるか?過疎化の進展の防止策にもなる。
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いずれにしても北朝鮮とどう信頼関係を築き、経済開発に組み入れていくかがこの地域の開発推進の大きなキーフアクターである。
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北朝鮮について食糧不足による飢餓問題を抱えている。対中国貿易のための森林伐採が主要因。国家政策の誤りといえる。北朝鮮は天然鉱物に恵まれており、農業国としてよりも天然資源で国を繁栄させる方策もある。
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中国のエネルギー政策(方針)中国のエネルギー源の70%は石炭に依存。この傾向は今後も続く。石炭鉱山の近くに発電所を設置していく方針。オイル・天然ガスは開発の段階。省エネと開発を同時に行う方針。火力発電所ではコジェネの導入。環境保全では、脱硫設備の導入、自動車のガソリンの無鉛化促進を行いグリーン産業を興す。エネルギー開発の共同プランを作る。事業者には法的保護を与える。多国籍企業のプロジェクト参加を促し、天然ガスプロジェクト等から民間資本を入れて行きたい。ロシア、中国、モンゴル、北朝鮮は資金がないが、エネルギーを必要とする韓国、日本には資金がある。
米子宣言(詳細省略)
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研究活動、専門家会議、地方政府の役割を再認識
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地域経済協力に向け機能的アプローチを採っている。この勢いの継続が不可欠。
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資本の導入は最も重大な課題。解決手段に関して引き続き討議を続ける。
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図們江流域開発を経済開発モデルとして先行実施したい。
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通信システムは地域開発に重要。次回の会議で専門家会議の報告を期待する。
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次回開催は天津市。