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1998年11月号

CONFERENCE

IPCC第14回全体会合等について

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第14回全体会合等が9月28日(月)から10月3日(土)にかけて、オーストリアのウイーンにおいて開催された。概要は以下の通 り。


1.日程

  • ビューロー会合:9月28日(月)

  • 作業部会(以下、WGとする)I、II、III会合:9月29日(火)〜30日(水)

    (注)WGI(気候変動の科学的側面からの検討)
    WGII(気候変動の影響および適応策の社会・経済的側面からの検討)
    WGIII(気候変動の緩和策の社会・経済的側面からの検討)

  • 全体会合:10月1日(木)〜3日(土)

2.場 所

    ウイーン国連本部

3.日本からの出席者

    谷口東京大学客員教授(IPCC新副議長)

    木村通産省地球環境問題担当審議官

    但馬通産省環境政策課地球環境対策室調整係長

    近藤気象庁気象研究所部長

    森環境庁地球環境部研究調査室長、
    三村茨城大学教授

    井上国立環境研究所総括研究管理官

    山形国立環境研究所主任研究員

    GISPRI 松尾、渡邊

 

4.概 要

(1) 新副議長就任、故清木氏に黙祷

 ビューロー会合および各WG会合で、清木(財)地球産業文化研究所専務理事の死去に伴う谷口東京大学客員教授のIPCC副議長就任の報告が行われるとともに、故清木氏に対し黙祷が行われた。

(2) 第3次評価報告書の章立ておよび執筆者について

 各WGの章立ておよび執筆者が決定された。

●章立て

    WGIおよびWGII(省略)
    WGIII
    第1章 評価の範囲
    第2章 温室効果ガスの排出シナリオ
    第3章 温室効果ガスの排出削減に関する技術的および経済的な可能性
    第4章 生物による炭素蓄積を増大させる方法の技術的および経済的な可能性
    第5章 技術および実施に関する障害、機会および市場の可能性
    第6章 政策および対策
    第7章 温室効果ガス削減のコスト評価
    第8章 温室効果ガス削減の地球的、地域的および国単位のコストおよび便益
    第9章 温室効果ガス削減の部門別のコストおよび便益
    第10章 意志決定の枠組み

●執筆者
 我が国からは、WGI:5人、WGII:4人、WGIII:12人の計21名が選出された(注)
 また、今後の作業スケジュールは以下のとおり

1999年後半〜2000年前半:専門家によるレビュー
2000年前半〜2000年中頃:政府によるレビュー
2001年前半       :報告書の承認・発表

 (3) 温室効果ガス・インベントリー・プログラムについて

 温室効果ガス排出量等を算定する方法等を決めている「温室効果 ガス・インベントリー・プログラム」について、従来よりOECD,IEAとWG?の共同事業として、OECDが事務局となって運営していたが、財政事情の悪化に伴い、IPCC議長より各国政府に対してインベントリー・プログラム事務局(Technical Support Unit : TSU)受入れの打診がなされた。

 我が国(環境庁)は、(1)TSUの日本国内設置((財)地球環境戦略研究機関(IGES)内に設置を予定)および事務局運営に係る資金提供、(2)インベントリー・プログラムのタスクフォース共同議長の受け入れを申し出、全体会合にて了承された。 なお、共同議長の内もう一人は、途上国から選出される予定である。 インベントリー・プログラムの我が国設置のTSUによる運営は、来年度以降なされる予定である。

 
(4) 吸収源に関する特別報告書について

 今年6月の気候変動枠組条約補助機関会合(科学的および技術上の助言に関する補助機関:SBSTA)において、京都議定書第3条をはじめ吸収源(シンク)に関する事項を科学的、技術的側面 から検討するため、IPCCに対してシンクに関する特別報告書の作成が依頼された。

 今回の全体会合においては、シンクに関するSBSTAワークショップ(9月23日〜25日、ローマ)で検討された章立てについてレビューが行われ、承認された。

 執筆者については、今後の調整事項となった。

今後、執筆およびレビューが行われ、最終的に2000年5月にIPCCにて承認され、SBSTAへ提出される予定である。

(5) IPCC各文書の採択手続きについて

 従来IPCCの各文書(統合報告書、WG報告書,特別 報告書、技術報告書等)の手続きが不明確であったことから、今回の第3次評価報告書からは、正式な手続きを明文化するため検討してきた。今回の会合で、基本原則(principle)については承認されたが、附属書(手続き(Procedure)の部分)については、次回会合に持ち越された。

(6) 統合報告書の採択手続きについて

 最終的に各WGの報告書をまとめた統合報告書を作成することになっているが、この統合報告書の採択手続きについて、レビューおよび承認された。

 なお、統合報告書は各WGの報告書からの政策立案者向けサマリー(SPM)とSBSTA等から要求のある政策関連の科学的質問に回答する長文報告書(50頁程度)から成る。

 採択手続きとして、SPMについては、全体会合で行毎にレビューし承認することになった。さらに、長文報告書については、節毎にレビューおよび承認することになった。

 また、「政策関連の科学的質問」の中身については案が示されたが、採択に至らず、年内に各国が検討し、次回会合に承認することになった。

(7) クロスカッティングイシューについて

 第三次評価報告書の特徴として、各WGの共通 の課題となる問題をクロスカッティングイシューと称して共通の枠組みで統一的に扱うことになっている。

 今回、議長、副議長(谷口氏、パチョーリ氏)、および各WG共同議長、事務局が集まり今後の進め方を検討した。

 その結果、各WGのLA会合が始まる11月末までに、ガイダンスペーパーを作成する。そのための執筆者および査読者を数名選出した。日本からは4名の先生方が選出された。

コスト :執筆者(松岡京都大学教授)、
:査読者(天野関西学院大学教授)
意志決定枠組 :執筆者(和気慶應義塾大学教授)
不確実性 :査読者(山地東京大学教授)

(8) 次回会合について

 来年4月に開催予定(場所は未定)

以上

日本からの執筆者等

WGIII
第2章 CLA 森田 恒幸 国立環境研究所 総合研究官
第3章 LA 柏木 孝夫 東京農工大学 教授
第3章 LA 陽  捷行 農業環境技術研究所 企画調整部長
第3章 RE 石谷  久 東京大学 教授
第4章 LA 藤森 隆郎 森林総合研究所 森林環境部長
第5章 LA 井村 秀文 九州大学 教授
第6章 LA 山口 光恒 慶應義塾大学 教授
第7章 LA 松岡 譲 京都大学 教授
第8章 LA 山地 憲治 東京大学 教授
第9章 LA 森  俊介 東京理科大学 教授
第9章 RE 谷口 富裕 東京大学 客員教授(IPCC副議長)
第10章 LA 和気 洋子 慶應義塾大学 教授
WGII
第2章 LA 西岡 秀三 国立環境研究所 統括研究官
第4章 LA 花木 啓祐 東京大学工学系研究科
第6章 LA 三村 信男 茨城大学 教授
第7章 LA 吉野 正敏 筑波大学名誉教授
第9章 LA 佐々木昭彦 国立公衆衛生院 生理衛生学部
第11章 CLA 原沢 英夫 国立環境研究所 環境計画研究室長
第11章 LA 安藤 満 国立環境研究所 地域環境研究グループ
開発途上国健康影響研究
チーム総合研究官
WGI       90
第6章 LA 中島 映至 東京大学 教授
第7章 RE 真鍋 淑郎 地球フロンティア研究システム
温暖化領域長
第8章 LA 鬼頭 明夫 気象庁気象研究所
第9章 LA 野田 彰 気象庁気象研究所
第14章 LA 松野 太郎 地球フロンティア研究システム長
(参考)
CLA :Coordinating Lead Authors 調整役代表執筆者
LA :Lead Authors 代表執筆者
RE :Review Editors 査読編集者

(注)WGIIについては、全体会合後、さらに日本から3名のLAが追加になった。