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ニュースレター
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1999年5月号 |
LECTURE ON |
第35回地球問題懇談会から 「省エネルギー法改正について」
1.法改正の背景と全体概要 最初に、省エネ法の改正がどのようなバックグラウンドであったかというのをご説明します。省エネ法を改正する前に、総合エネルギー調査会において、どのぐらいの省エネルギーをすればいいかを計算したときの根拠の数字として、1990年から比較して、2010年までに原油換算で5600万kl下げることを1つの前提として積算されました。その中で、産業界では1810万kl、民生部門では450万kl、運輸部門で450万kl、さらに中堅工場等の省エネルギー対策で150万kl、これを合わせると2860万kl、すなわち目標5600万klの約半分の量 となりますが、この量の担保措置として、省エネルギー法の改正が行われるということです。 また、今回の法律改正は過去のエネルギー消費の実態を分析し、合わせて今後の社会システムも考慮した結果 、従来の製造業で使用するエネルギーを中心とする省エネルギー対策ばかりでなく、国民一般 の生活に直結したエネルギー消費にも目を向け、民間エネルギー消費機器である自動車・家庭用機器・業務用機器について製造設計から省エネルギーを促すところがポイントといえます。すなわち、生産現場や一般 社会生活の中でエネルギーを消費する機械・機器のより効率の高いものへの計画的転換を法制化したものといえます。 2.工場・事業所におけるエネルギー使用の合理化 従来のエネルギー多消費型製造業であるエネルギー管理指定工場に対しては、基本的に経団連で取りまとめた自主行動計画による、省エネルギーの推進を着実に遂行してもらうことを期待し、そのフオローアップを行うものであります。法改正の主な点は従来より行っていました省エネルギーのための管理を、よりきめの細かい設備単位 ・行程単位・製品単位に進めてもらうほかに、より設備改造的な具体的中長期計画を立てて、結果 的に年平均1%のエネルギー原単位の低減を目標にした対応を求めています。全体的な省エネルギー計画の推進の担保措置として、判断基準に対し不十分な場合の合理化計画の提出や公表、命令、罰金などの厳しい措置もあることをうたっています。また、業種を問わず中堅的なエネルギー使用事業者に対しても、省エネルギーに対する関心、推進努力を持つように年間、原油換算1500kl以上のエネルギー使用事業者は、第2種エネルギー使用管理エ場として届け出を義務とし、エネルギー管理員を選任して、エネルギー管理を自主的に行うことを求めています。このことは、業務用のビル使用者、自治体、学校、病院など、エネルギーを使用する極めて多くの人々が、省エネルギー法に関与してくることを意味しております。この省エネルギー法の規制強化に対して、同時に、省エネルギー技術に対するインセンティブを与えるような経済的助成措置も強化されております。従来の税制補助、特別 融資のほか、昨年からリジェネティブバーナー、先導的省エネルギーモデル事業などの補助金制度も発足されています。 3.トップランナー方式による自動車・電気機器などのエネルギー消費効率の改善 民生エネルギー消費に対する対策としてのトップランナーシステムを導入することにより、エネルギー消費機器の製造に対しては、ある期間のうちに(たとえばガソリン自動車でいえぱ2010年まで)所定の目標(エネルギー効率としてkm/Lのような)の省エネルギー性能が製品に求められます。さらに、その目標は現在の最高水準に対して今後の開発等を見こんだ水準としていることが見逃せない点であります。また、目標年度における目標達成判定は設けられた区分毎に製品の出荷台数で加重平均したエネルギー消費効率の値であるため、製造者側でもエネルギー効率の高い商品を多く生み出すことにより、別 な意味で市場が要求する商品も投入できる余地を残しています。一方、製品に対してのあらゆる部品に対しても、軽量 化、省エネルギーにつながる要素が商品価値となり、裾野の広い新たな競争市場が生まれることになります。WTOの場でEU、米国などから貿易障害とのクレームが出ましたが、今後益々世界は共通 の規範や基準について、いかに先導するかということが重要になっております。また、長期的には今後の技術開発が日本産業活性化にとっても重要なキーポイントになっているとも言えるでしょう。 4.企業における省エネルギーの観点からの戦略 企業はより長期的なビジョンを持って戦略を立てる時期となっています。企業はグローバルなスタンダードに常に目を光らせていなければならず、今後は利益の追求のみでは成長しにくいといえるでしょう。すなわち、今後の企業はより社会性が求められ、社会に貢献しているかどうかが常に問われることになります。製造業にあっては、製造時の周辺住民に対する、情報公開、環境指向、省エネルギーの実施などが求められ、製品に対しては、社会に対する環境性、省エネ性などがそのまま製品スペックとなって、付加価値として評価または販売条件となってくるでしょう。 企業としての商品競争力の1つの条件として、従来の経済性評価から、他企業にない独自性、サービス、あるいは一般 市民に開かれた企業イメージが求められる等、総合的な要素が必要になりつつあります。 省エネ法改正のポイント ●工場・事業所にかかわる措置の改正のポイント 〈改正前〉----------------------------------------------- エネルギー管理指定工場 [対象]熱(原油換算)3,000kl/年以上 [措置]合理化の取り組みの実状が、判断基準に照らして著しく不充分な場合、合
〈改正後〉----------------------------------------------- 第1種エネルギー管理指定工場 [対象]熱(原油換算)3,000kl/年以上 [措置]合理化の取り組みの実状が、判断基準に照らして著しく不充分な場合、合 第2種エネルギー管理指定工場(新規創設) [対象]熱(原油換算)1,500kl/年以上 [措置]合理化の取り組みの実状が、判断基準に照らして著しく不充分な場合、 ●トップランナーシステムのポイント 1.法律改正で対応する箇所自動車、家電・OA機器に係る措置対象(政令指定)現行の指定機器(9機器)ガソリン乗用自動車、エアコン、照明器具(蛍光灯)テレビ、複写 機、電子計算機、磁気デスク、ガソリン貨物自動車、VTR、以下の機器の追加ディーゼル乗用自動車、ディーゼル貨物自動車、電気冷蔵庫(検討中) 2.省エネルギー基準の設定方法設定した区分内において、現在商品化されている製品(特殊品等は除外)のうち、エネルギー消費効率が最も優れている機器の性能水準を勘案して、目標値とする。 3.省エネルギー基準の担保措置省エネルギー基準に照らして性能の向上を相当程度行う必要があると認めるときは、当該製造事業者等に対し、その目標を示して当該性能の向上を図るべき旨勧告することができる。さらに、勧告に加え、勧告に従わなかったときの公表、命令、罰則(罰金)。
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