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ニュースレター
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1999年7月号 |
REPORT |
出張報告
I 「発展および公平性と持続可能性(DES:Development, Equity and Sustainability" Expert Meeting)」に関する専門家会合 IPCC第三次評価報告書(TAR)において横断的に取り扱うこととなった課題の中で「不確実性」「コスト」「意志決定枠組み」および「DES」については執筆者のための手引書(Guidance paper)を作成することとなっている。本会合でアジア、北中南米、EU、アフリカ各地域から約40名が参加し横断的課題の中で南北問題を含め課題の多いDESについて話し合われた。以降、簡単な内容を記した。 1.開会式 まずキャンドルタワーへ代表出席者が順番に点灯するセレモニーがとりおこなわれた。これは会議の成功を祈って行うスリランカの伝統的儀式である。土木大臣事務次官の歓迎の挨拶に続きムナシンゲ教授(コロンボ大学、世界銀行)の出席者紹介があった。谷口IPCC副議長、メッツIPCC第三作業部会(WG3)共同議長、土木副大臣、科学技術大臣、産業発展大臣と挨拶が続いた。スリランカ政府の積極的な貢献が感じられた。 2.持続可能性(Pachauri IPCC副議長) 経済性(成長率、安定性)、社会性(文化)、環境性(生物種、自然資源、汚染)といった要素のバランスの重要性が挙げられ、上記三要素の評価の構造化、概念を越えた評価軸の選定、三要素の関連の確認が必要であるとされた。社会的持続可能性のためには気候変動に対する脆弱性と影響を軽減する政策が必要でありこれらは社会・国の弾力性を高めるという意見があった。 3.発展性(議長:Davidson IPCC TAR WG3共同議長) 気候変動への関連性がなくとも持続可能な発展のための政策はそれ自体でGHG排出の低減を可能にする。しかし持続可能な発展は地域規模の10年スケールのものであるのに対し気候変動問題は地球規模・100年スケールのものであるため、階層的な解析を行って両者を連携させることが重要であると示唆された。また、技術的資源の利用効率が社会・行動活動レベルの上昇を補うものであるためこれらの変革の両方を考慮すべきであるとされた。 4.公平性(議長:谷口IPCC副議長) 貧困の評価を多次元的に行うことで貧窮者に対してさらに多くの関心を寄せることになった。世代間の公平性については現在の世代、そして次世代の気候変動の結果 に関する評価の世代分配を明確にすることとなった。地域的相違は可能な限り社会福祉という評価軸から認識する必要があるとされた。 5.まとめ(議長:Metz IPCC TAR WG3共同議長) 解析的枠組みの全体像の認識が重要である。これは様々な課題のための適切な方法論を明らかにし、DESにおけるそれら方法論の長所とその限界を記述することである。
II Tata Energy Research Institute (TERI)訪問報告(デリー、インド) IPCC副議長であるPachauri博士が所長を務めるTERIとの情報交換に出張した(平成11年5月2日)。 1.付属研究施設見学(Gual Pahari
Campus) 研究所の建物、敷地を使いさまざまな技術を試験的に実践する場である。実際に研究所付属の宿泊施設としても利用するとのことであった。導入技術は太陽エネルギー利用としては太陽電池、温熱利用や自然採光(間接照明)、また、植物による下水浄化槽、地下ヒートシンク利用冷換気システム、リン酸型燃料電池の利用、積極的な二次電池利用(鉛蓄電池)などである。訪問時は建築中で本年夏ごろ完成予定である。現時点では各技術の設計・選択に多少問題があるが、このように研究者のための技術導入実現の場が提供されることは大変素晴らしいことであり今後の成果 が大いに期待されるものであった。 1.2 TCPP: Tissue Culture Pilot Plant (細胞培養試験場) 品種改良、植物のクローニングの研究が盛んであり、基礎研究、培養(写 真5)から敷地を利用したプランテーション試験まで一貫して行うことが出来る施設である。施設内はアロマテラピーをも兼ねた空調管理が徹底しており、暑期のインドの息苦しさを一時忘れることが出来た。クローン植物のフィールドテストでは90%以上の生存率、種子栽培よりも高い成長率を達成したとのことであった。 1.3 バイオマス・ごみ利用ガス化システム 木片から燃料ガスを製造するシステムでありディーゼルエンジンの燃料に80%利用している(1kWhの電力に対し、1.2kgの薪が必要)。インドの絹糸紡績業への利用が主な目的である。薪に依存していたこれまでのシステムに比べ、薪の消費量 を6割削減し一定温度を保つことができるため製品の質・量向上が可能となった。また、野菜などのごみ処理による燃料ガス製造システムも実験されていた(メタン70%含有のガス)。これは同時にごみ処理の役目も果 たしており現在はキャンパスから出る1日50kgの生ごみが投入されている。 再生可能エネルギーの利用、持続可能性をにらんだ研究例である。
2.TERI研究活動説明会 (IHC: India Habitat Centre) 2.2 地球環境研究チーム モデリング、エネルギー供給、自然資源について担当している(各テーマ2〜3名)。前述のGual Pahari 研究所にも関わっている。 2.3 エネルギー安全保障プロジェクトチーム アジアが主な着眼点である。発表では情報公開・流通 性、規制緩和と自由競争が必要であるとの結論であった。 2.4 TERI Web site作成チーム (参考:http://www.teriin.org) TERI組織図と活動内容の掲載が中心である。また、アジア地域の国別 エネルギー情報のデータベースづくりに力を入れている。
今回の調査は私にとって驚きの連続であった。印象深かったことを簡単に書こうと思う。まずスリランカで日本の車の中古車が非常に多かったこと。「〜自動車学校」「〜会社」などの馴染んだフレーズがぼろぼろの車のボディーに頻繁に見られた。あれら車のエンジンだけでも性能のいいものに変えたらどれだけ燃費と排気ガスの質が向上するのだろうか。そしてインドで郊外に出たときのこと。これほどまでに貧困を目の当たりにすることがつらいことだと思っていなかった。彼らの生活に必要なのは新エネ技術ではなく新鮮な水や食料、下水設備なのであろう。そしてその貧困層の圧倒的な厚さも数字で見知っていたよりもはるかに凄まじかった。 (田中加奈子) |
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