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1999年11月号

CONFERENCE

IPCC第三次評価報告書第三作業部会代表執筆者第二回会合
及びクロスカッティングイシュー会合報告


  ノルウェー、リレハンメルのラディソンSASリレハンメルホテルにおいて1999年9月14日から16日に第三次評価報告書第三作業部会代表執筆者第二回会合が開催された。ここではその会合と、前日9月13日に執筆者にむけて開かれたクロスカッティングイシュー会合について簡単な報告を行う。


I.第三次評価報告書(TAR)第三作業部会(WG3)代表執筆者(LA)第二回会合

 会議の背景:WG3の評価報告書は11/1を〆切として執筆者による現在第1次ドラフト作成の段階に入っている。本会合は、その一つ前の第0次ドラフトについてのinformal review(主にLAやビューローメンバーによるもの)をもとに今後のドラフティング作業について方向性、具体的な作業計画を議論するものである。この会合の結果 を踏まえて各LAが現在の第1次ドラフト執筆を行っている。

 会議の形式及び概要:初日午前と最終日に全体会合を行い、会期中は報告書各章(1〜10章まで)ごとに小部屋に分かれ議論を行うというものであった。途中、LAを統括するCLA (Coordinating Lead Author)による各章間の連携を保つ小会合や、いくつかのサイドミーティングも開かれた(例えば、技術移転、排出シナリオ、土地利用と林業、DES南米専門家会合、副次的便益専門家会合、地域経済影響など)。

 会議の内容:全体会合で初めに、ワトソン議長よりTARは学際的かつ政策的な内容であり地域影響も重視しており、産業界・NGO、政府組織の関与による、科学/技術/経済の協力が必要だという話があった。他には特別 報告書の活用、クロスカッティングイシューの重視、発展途上国の情報収集の重要性など話があった。また、科学的評価報告書として文献に基づいた執筆の強化が徹底されるとともに、非英語圏の文献の利用が促進された。各章では様々な議論があったが、特にLA会合としての成果 は、他章とのつながりの明確化や議論の連携が見られたことである。

 今後の予定:11/1に第1次ドラフトの〆切、その後expert reviewを経て来年2/8-11に第3回LA会合がドイツ、アイゼンナッハで予定されている。

II.クロスカッティングイシュー会合

 会議の背景と目的:TARにおいて横断的に取り扱うこととなった課題(=クロスカッティングイシュー)の中で「不確実性」「コスト」「意志決定枠組み(DAF)」及び「発展性、社会的公正及び持続可能性(DES)」のガイダンスペーパーは現在第二あるいは第三次ドラフト段階である。本会合はIPCC副議長である谷口教授及びインドのPachauri博士を中心に開かれた。

 執筆作業における各ガイダンスペーパーの応用法について執筆者からの見解を明らかにしたのち全体討議を行うことで、課題の取り扱いを容易にするとともに本課題に対する関心を高め、ペーパー自体の一層の内容の充実を図ることを目的とした。また4つのペーパーを統合し、形式を揃え、Action Orientedな部分をまとめたUser's Guideの紹介も行った。現在は筆者作成の暫定0次ドラフトであり今後WG2の内容も含め改訂される予定である。これは各LAやレビューエディターのための4ペーパーのサマリーを載せたガイドであり、イシュー全体への関心を高めガイダンスペーパーをよむ足がかりとすることが目的である。

 会議の内容:初めに不確実性についてYohe博士から発表があった。定性的・定量 的な評価手法の構築(方法論の確立と共通認識)とその利用の頒布に重点をおいた内容であった。0次ドラフトでは評価手法利用は少ないのが現状である。

 DESはMunasinghe教授で、DESと持続可能な発展の関連、経済性/社会性/環境性の3軸からの評価、DES記述のためのシステムマネージメント手法例について発表があった。本課題は未だ理論が確立していないため取り扱いが定まっておらず、また各章間のバランスがとれていない課題である。

 Toth博士によりDAFの紹介があった。現ペーパーは意志決定手法のリストアップが中心であり、やや教科書的な内容であった。内容で不足しているものとして、DAFの選択が様々な解析結果 に及ぼす影響評価、DAFの選択の基準、実際に用いられるものとの乖離などが挙げられる。

 コストに関してはMarkandya博士から、東京でのコストの専門家会合の後重要点として修正した部分で、適応策のコスト、Time Dimension(割引率など)、社会的公正の取扱いの説明があった。

 Use's Guideはペーパーの縮約による誤解が生じる、LAを束縛するのではないかと言った厳しい指摘もあったが、概ね利用価値があると好評であった。これらの意見をうけて再度コメントを収集・訂正後、LA会合初日に配布した。

 今後の予定:ペーパーについては本会議の結果 を取り込んで必要であれば改訂作業を行い、User's GuideについてはExpert Reviewの期間に改訂版配布を予定している。

(田中加奈子)