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ニュースレター
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2000年12月号 |
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EDITORIAL ROOM | |
職場からのオピニオン
先月号でご紹介したように、当研究所は学力低下問題に焦点を当てた「教育政策に関する緊急提言」を発表、教育改革論議に一石を投じました。本提言の素材を検討した研究委員会にずっと参加していた立場から、この問題について若干の感想を述べてみたい。 第1に、教育政策にもアカウンタビリティーが必要だという点です。提言は学力低下が進行しているという危機感から発せられたものですが、肝心の文部省は学力低下を否定しています。従って、本提言が世間一般 の賛同を得られるかどうかは、学力低下に関してどれだけ説得的な材料を提供しているかにかかっています。ところが、この点を検証するための信頼できるデータが殆どないのが実情です。そこで、本問題に関心のある大学研究者が幾つかの独自の調査を行い、学力低下が進行していることをデータで裏付けたわけです。ただ、これらの調査だけで充分な裏付けになっているかどうかは分かりませんが・・・。 そもそも行政が客観データに基づいて学力に関する教育成果の検証を行っていれば、「学力論争」は起こらなかったはずです。「検証なしの改革」といわれるような従来の教育改革の進め方は、是非改めなければなりません。ただ最近、文部省も遅ればせながら大規模な学力データの整備方針を打ち出したようなので、今後に期待したいと思います。 第2に、学力低下のツケは教育システム内部で対処すべきという点です。学力低下の原因は、「ゆとり教育」路線の中で教科学習時間が減ってきたこと、大学入試において科目選択制が拡大し、学生の「質より量 」の確保が優先されたことにあります。こうしてみると大学は、学力低下の被害者であり加害者でもあります。今大学では基礎学力が低下した学生が多数入学しているため、大学教育に支障をきたしているといわれています。どちらの責任が大きいかはともかくとして、そのツケを社会全体に回すことは避けて欲しいと思います。 最後に、「学校は本来勉強するところ」という基本に立ち戻るべきという点です。この当たり前のことがなかなか実践できないところに大きな問題が潜んでいるようです。教育の現場では「ゆとり教育」の下で、ともすれば勉強の価値を否定する考え方がまかり通 っていたことは現職の文部官僚も認めています。社会の側も、学校に対して勉強以外のことで多くを期待したり、責任を押し付けるような風潮は改めるべきでしょう。
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