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ニュースレター
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2003年 1号 |
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Open Experiment | ||||||||||||||||||||||||
昨年12月16日(月)・17日(火)の2日間、(財)地球産業文化研究所は(財)日本エネルギー経済研究所と共催で排出権取引公開実験を実施した。昨年に引き続き2度目の開催となる。実験では、大阪大学の西條教授を委員長とする国際排出権取引制度研究委員会にて構築されたコンピュータシミュレーションシステムを使用した。以下、本実験研究の概要説明および公開実験の実施報告を行う。 1.排出権取引制度設計研究の概要−実験経済学からのアプローチ 平成11年度より始まった国際排出権取引制度研究委員会では、どのような排出権取引制度を用いれば京都議定書における温室効果ガス削減目標を経済効率的に(市場全体で見て最も安い費用で)達成することができるのか、という点について検討を行ってきた。 具体的には、被験者を用いたコンピュータ実験を実施し、排出権取引制度における問題点・市場の傾向等に関するデータを蓄積・分析することによって、その最適解を見出すことを目指している。実験の可変条件としては、「責任制度(売り手責任、買い手責任)」「取引方法(相対取引・ダブルオークション)」「情報の開示・非開示」の3つのファクターを用いてきたが、今回の公開実験ではこれに「約束期間リザーブ[1]」の概念を追加し実験を行った。 排出権取引実験については他の企業・シンクタンク等でも実施されているが、他実験の多くが排出権取引市場における仮想取引の体験、すなわちフライトシミュレーター型の実験に主眼をおいているのに対し、本実験は制度設計を目的とする風洞実験型である点が大きな違いと言える。 2.公開実験の概要 今回の公開実験では、東洋学園大学のご厚意により設備・場所のご提供いただき、昨年よりも規模を拡大して実施した。具体的には、前回は1日10組20名を対象としたものであったが、今回は1日20組40名を対象とした実験を2日間開催し、計80名にご参加いただくことが可能となった。参加者の募集は(財)地球産業文化研究所、(財)日本エネルギー経済研究所の会員企業、および実験にご協力いただいた東京工業品取引所、東洋学園大学、学際の関係者に対して行い、計160名以上の応募を頂いている。昨年に比べて応募企業の幅は広がってきており、エネルギー関連企業に加え、金融、メーカー、鉄鋼、建設、科学、研究機関など多岐にわたる企業・団体からの申し込みがあった。 また応募者が予想以上に多かったことから、今年は別途見学説明会を開催することとなった。被験者のシステム操作画面をリアルタイムに別室のモニターで見学し、西條教授より実験の概要について解説を頂く、というスケジュールである。見学会に対しても60名以上の参加があり、全体的に排出権取引に関する関心が高まってきていることが伺われた。 実験は、午前に実験の概要説明とシステム操作練習、午後に実験本番と結果解説というスケジュールで実施した。参加者は2名1組(10組×2グループ/日)となり、ある国の代表という立場で実験に参加、1期5年分の排出権取引および自国内での排出削減を行う。1年は10分間の国内削減・削減のための投資時間と20分間の取引時間とで構成されており、参加者は削減と取引によりなるべく多くの利益を出すことを求められている。[2] 3.実験結果の概要 公開実験前に大阪大学で実施した実験結果からは、4つの価格変動パターン[3]が観測されているが、今回の2日計4回分(1日2グループ×2日)の実験結果は全て「バブルケース」と名付けられたパターンになった。これは取引が高い価格で始まり、その結果各国で必要以上に削減が行われ、市場全体で排出権が過剰となった結果、最後に価格が暴落するという市場効率性の低いケースである。昨年の公開実験でもこの「バブルケース」を観測しており、計5回の公開実験では1度も他のパターンが起こらなかったことになる。この点については、参加者特性の違い(大阪大学の実験では学生対象、公開実験では主に企業の環境問題の担当者が対象)も含め、今後その原因を探ってみる価値があると思われる。 なお前述の「約束期間リザーブ」の効果については、今回も大阪大学での実験結果と同様、取引に対する影響力(制限力)はもたないという結果となった。 参加者の方々からは今回の実験に対し、「百聞は一見にしかず」であり有意義な経験であった旨のご意見を多く頂いた。実験の前提条件についても様々な指摘・意見が出るなど、実験内容に深く踏み込んだ質疑が行われ、また実験を2回行いたかったとの要望も多数あがっていた。内容がかなり複雑かつ専門的であるにもかかわらず、参加者の理解度・満足度は概ね高かったと言えるだろう。 今回の実験に対する反響が大きかったことからも、今後も排出権取引市場に対する理解を深める一助として、また本研究をより深めるためにも、継続的な公開実験の実施を検討していきたいと考える。
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