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2007年 2号
Council

カーボン・マーケット・インサイト2007
参加報告


 
■カンファレンス概要
   カーボン・マーケット・インサイトはポイントカーボン社によるカーボン取引に関するカンファレンスとして毎年開催されている。今年の開催概要は下記の通りである。
    日時:平成19年3月12日〜3月15日  
    場所:デンマーク コペンハーゲン 国際会議場ベラセンター  
   参加者数は昨年の約1,100名に対して1,600名強と大幅に増加しており、本分野の注目が一層高まっていることを感じた。一方で日本からの参加者は48名から半数程度に大幅に減少した。日本の参加者を昨年と比較すると、エネルギー業界を除く産業部門や認証機関からの参加が激減したのに対し、金融機関からは7名から8名と増加しており、マーケットに重点を置いたイベントという認識が定着したことを感じさせた。
     
 
   
     
     
■会議の内容
【一日目】
 導入編として、京都議定書や京都メカニズムの概要、欧州排出量取引制度(EU-ETS)、2012年以降の議論の状況についてポイントカーボン社から説明があった。
     
【二日目】
 午前はPlenary Session、午後は「Carbon Trading Stream」「Carbon Projects Stream」「Carbon & Energy Stream」の3セッションに分かれて開催された。筆者は「Carbon Projects Stream」に参加した。概要は下記の通り。
  Plenary Session
  Al Gore前米国副大統領による基調講演が行われた。
 
「気候危機」とも言える現状では、@キャップ・アンド・トレードシステム、A税、B規制の全ての政策を活用すべきであり、中でも@を強く主張したい。
 
カーボン市場については言いたいことは、@EU-ETSの成果の活用、ACDMの改善、B米国の参加がある。米国については、州知事、市長や企業リーダーでかつて京都議定書に反対した人が現在は具体的な行動を求めている等転換期を迎えつつある。
  Carbon Projects Stream
 
中国は既に最大のCER供給国であるが、自らCERを扱うことは不得手である。
 
既にこれだけ投資が行われているのだから市場を維持する必要がある。ただし目的はもちろん環境保護である。
     
【三日目】
 二日目午後と同様に3セッションに分かれて開催された。筆者は引き続き「Carbon Projects Stream」に参加した。
  Carbon Projects Stream
  価格、ファンドの役割、アナリストの視点、GIS、ボランタリオフセット、CDM/JIのプロセスについて議論が行われた。
 
2012年までに270MのERUが発行されるとするポイントカーボンの予測はほぼ妥当な水準ではないか。
 
GISが上手く行かない理由として、売り手の政策が決まっていないこと、買い手が世間の評判を気にしていることがある。
     
【四日目】
 午前5つ、午後6つのワークショップが開催された。筆者は下記のワークショップに参加した。
  Forecasting carbon prices in the Kyoto period
  EU-ETSとCDM/JI市場の構造、需給や価格決定要素について説明があった。
 
全供給と政府等の需要を考慮すると、EU-ETSで利用可能なクレジット量は1.1Gtと見積もられる。
 
カーボンバランスを見ると、EU-ETSのPhaseTでは347MtCO2の余剰、PhaseUではPhaseVへのバンキングを考慮すると±0と考えられる。
 
不確実性要素としては、ポスト2012年、EU-ETSのPhaseVの需要、EBとJISCの効率性等が挙げられる。
     
 
 
■所感
 地球温暖化対策が重要な課題であることは多くの人が認識しているが、理念だけでは人は動かない。よってカーボンに価値を与えて、温暖化防止のための努力・投資を促すという手法は理解出来る。本カンファレンスに参加して、カーボンをビジネスにしようとする参加者の熱い思いを肌で感じた。
 しかし反面、金融関係者を中心に未だ未成熟なカーボン市場にこれだけ熱くなっていることに危うさを感じた。市場の形成や短期的なカーボン価格の変動ばかりが意識されると、市場が温暖化防止のためではなく彼らの利益のためにあると見られかねず、結果として成功しないであろう。
 温暖化対策は中長期の課題である。政策の方向性の明確さやカーボン市場の透明性を担保することで、企業や投資家が腰を据えて取り組めるようにする努力が求められる。彼ら金融関係者の熱い思いと冷静で納得感のある政策のバランスが温暖化防止のためには重要と感じた。
 
以上
(文責 地球環境対策部 柴田 憲)