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2010年 3号
Opinion
©大崎聡
20円で世界をつなぐ仕事

特定非営利活動法人TABLE FOR TWO International

代表 小暮 真久

 TABLE FOR TWO、直訳すると「二人の食卓」。先進国の私たちと開発途上国の子どもたちが、時間と空間を越え食事を分かち合うというコンセプトです。
 全世界にいる67億人のうち10億人が、食事や栄養を十分に摂ることのできない貧困状態に置かれています。その一方で、日本を含む先進国では、ほぼ同じだけの数の人が、食べ過ぎによる肥満や生活習慣病に悩んでいます。TABLE FOR TWO (TFT)はこの「食の不均衡」を解消し、先進国と開発途上国の人々をともに健康にすることを目指し、2007年10月に発足した“日本発”の社会事業を行うNPO法人です。

 社員食堂を持つ企業や団体と提携して、通常より低カロリーで栄養バランスのとれた特別メニューを提供してもらいます。そして、そのメニューの価格は20円を上乗せして設定します。その20円は寄付金としてTFTを通じてアフリカに送られ、現地の子どもたちの給食費にあてられます。つまりは、「食料が余っている先進国」と「食料が足りない開発途上国」の、世界的な食料の不均衡を解決する、という仕組みです。

 「20円」という値段には大きな意味があります。20円は、TFTが支援しているアフリカの子どもたちが学校で食べる給食一食分の値段なのです。つまり、TFTのへルシーメニューを選ぶと、その人は自動的にアフリカの子どもに給食を一食寄付したことになる、という寸法です。

 普通にランチを食べることがそのまま社会貢献になるので、面と向かって寄付だ募金だ、と言われると思わず構えてしまう人も、抵抗なく参加することができます。いいことをしながら自分自身も健康になれるので、これまでのボランティア活動にありがちだった義務感や心理的強制といった重苦しさがないところも、TFTの活動が多くの人に支持される理由になっています。TFTを導入した企業側が、CSR(企業の社会的責任)活動として対外的にアピールできることもポイントです。

 TFTは創設されてから3年弱になりますが、既に260もの企業や官公庁、大学などの団体がTFTに参加してくださり、330万食(約1万5000人の1年間の給食に相当)をルワンダ、ウガンダ、マラウィの3ヵ国の子どもたちに送ることができました。この実績は、TFTの理念や方向性が決して間違っていない、という自信につながっています。それだけ多くの人がTFTの活動に期待してくれていることの証左なのだと思っています。

 現在、社員食堂以外に、レストランやカフェでのTFTメニューの導入、コンビニや宅配企業によるTFTブランド商品の提供、TFT自販機の設置(CUP FOR TWO)、弁当箱(BOX FOR TWO)などのTFT商品の提供、屋上菜園などを多角化を進めております。また国際化と言う観点から、アメリカ・インド・スイス・台湾などへも活動を広げており、5月にはコロンビア大学で飢餓と飽食をテーマにしたイベントを行いました。

 TFTが本格的にやっている社会事業として認識され、いろいろな企業からTFTとのコラボレーション商品・イベントの申し出が増えています。例えば普通の商品に比べ寄付付きの商品は、味・価格・見た目より一般の人の心を引き付け、購買要因になっているということが顕著に表れています。ここ1年くらいで、若い人を中心に日本全体の社会貢献の意識・関心が、とても高くなってきていると実感します。

 メディアで取り上げられたTFTを知った多くのビジネスパーソン・経営者や学生が、TFTのビジネスや戦略を理解して、「これは今までの社会貢献とは違うから、仕事として協力したい」と、実際に時間を割いて彼らの経験や知識や商材を提供してくれています。
 TFTを核にした専門機能のつながりは無限に広げることができるでしょう。そして、このつながりに加わる団体の数と種類が増えれば増えるほど、発揮される課題解決能力は大きくなるはずです。

 日本ではじまったTFTがやがて各国に広がり、一大ムーブメントを引き起こす。そして世界中の人たちがTFTに参加したとき、この地球上から貧困が消える。その“想い”で日々活動しております。

TABLE FOR TWO:http://www.tablefor2.org/


『20円で世界をつなぐ仕事』小暮真久 著