I.グローバル・ガバナンスと貧困援助 冷戦が終結すると、国際開発の意義が問われることになった。市場グローバル化は96年リヨンG7サミットの主要テーマになり、世銀は貧困とアフリカに焦点を当て、IMFも世銀と協調しつつ貧困問題の重要さを認識するようになった。 一方、90年代に入ってEUで第三の道政策が生まれた。この政策アジェンダを背景に2000年9月の国連ミレ二アムサミットの宣言が採択され、中心課題が貧困削減になった。 しかし、第三の道政権コンセンサスは、市場グローバル化に対応しきれないため崩れ始めた。米国では2001年に保守的な共和党政権が生まれ、日本も、明確な保守政権が誕生した。 国際社会において、01年時点は、貧困支援のコンセンサスは崩れ始め、紛争解決、平和構築が新たな課題として、徐々に重要度をあげつつあった。 「9.11事件」は、このような状況で起こった。貧困、平和、及び持続可能な開発の共通項としてガバナンスが出てくるのも時間の問題とも思える。 最初に大きな影響があったのは貿易の分野。01年のドーハにおける第4回WTO閣僚会議で、内容的には途上国の重要さに焦点をあてた合意がなされた。他の大きな影響は、ODA分野。02年モントレーにおける開発援助に関する国連サミットが開催され、米国、EU共に今後ODAの増大を表明した。 ガバナンス論を中心とした日、米、欧の三極構造のODAコミュニテイでは、世銀、UNDP等のマルチ機関と、三極のそれぞれの結びつきが、今後の行く方を決めると思われる。 次に、グローバル・ガバナンスによる貧困援助例として、世界銀行を見てみる。世銀とは1944年設立の国際復興開発銀行(IBRD)と1960年設立の国際開発協会(IDA)の総称である。 世銀の国際開発目標は、2000年の国連総会で採択されたものを採用しており、「貧困削減」、から「環境面で持続可能な開発」まで、7項目を個別目標としている。 具体的な貧困対策としては、
また、今後の貧困削減の課題としては、
II.二国間援助の現状と課題、その他 二国間援助の現状と課題については、国際協力銀行(JBIC)について分析した。 貧困に対する我が国の政策
円借款による貧困への取り組み
貧困削減とインフラ
次に、貧困削減、環境及びジェンダーへの取り組みを考察した。 ジェンダーと貧困の現状
取り組みの方向性
環境と貧困の関係性
取り組みの方向性
III.ローカル・ガバナンスと貧困緩和 最後に、ローカル・ガバナンスと貧困緩和について述べたい。 都市貧困層の居住福祉とローカル・ガバナンス
戦争・平和とNGO
寛容や多文化共生の課題
9.11以降の世界で国家による暴力やナショナリズムの問題がクローズアップされる中、国境を越えた市民による連帯と共生を目指すNGOの役割がますます大きくなってきている。 しかし、NGOが真の意味で市民社会に根付いたものとなるためには、普通の人々の現実に根ざし、実行可能かつ大多数の人々に支持される提案を行う必要がある。グローバル化が一層進む世界にあって、途上国と先進国それぞれの草の根に結びついたNGOは、「目指すべき社会のビジョン」を明確にすることが求められている。 |